僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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凄い
自分でも驚く執筆速度


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文化祭が終了して、数十分後

 

明久達は近くの公園に集まっていた。

 

その理由は……

 

「お前ら、模擬店は大成功だ! お疲れさん!」

 

「お疲れー!」

 

文化祭が大成功に終わったので、それの祝賀会である。

 

なお、売り上げはFクラス全員の机や椅子を買っても余ったので、それの一部を今回の祝賀会に使っている。

 

何枚も敷かれてあるビニールシートの上には、近くで買ってきた飲み物や余り物の料理やスイーツが並んでおり、クラスメイト達は各々好きに食べている。

 

「しかし、お前も無茶しやがって」

 

「……風紀委員会が間に合ったから、良かったものの」

 

「あははは……ごめん」

 

苦言を呈する雄二と康太の前では、明久が苦笑いを浮かべながら座っており、謙信が寄り添うように座っている

 

ちなみに、事の次第と明久がした事を知った謙信は涙を滲ませて

 

『明久は無茶し過ぎです!』

 

と言ってから、明久の治療を行った。

 

その後から全く離れようとしないので、相当心配したようだ。

 

そして、あるシートでは姫路がスヤスヤと眠っている。

 

理由としては、何を考えたのか料理を作ろうとしたので、颯馬が首筋に注射を突き刺したのである。

 

その活躍に対して、雄二達は心から賞賛を送った。

 

姫路のケミカルクッキングによる悲劇を、未然に防げたからだ。

 

明久は自分で料理や飲み物を取ろうとしたが、颯馬や謙信がそれを許さなかった。

 

暴露すると、明久の傷口は今回の騒動で大分開いていたのだ。

 

謙信としては、今すぐに病院に行って適切な処置をしてほしかった。

 

だが、明久が

 

『せめて、今日の祝賀会には参加させて』

 

とお願いしたのだ。

 

謙信は承諾する代わりに、翌日に必ず行くという約束を取り付けたのだ。

 

特に負担が大きかったのは、牙の型の奥義、幻だ。

 

これはいわゆる、多段突きなのである。

 

ただし、吉井流剣術では最低で二段から最大で五段突きまであり、明久が今回放ったのは三段突きだ。

 

それを明久は《親指と人差し指のみで塚を握り、最高速で放った》のだ。

 

故に、明久が今回放った幻は本来の幻よりも間合いが長く尚且つ、威力も高かった。

 

だから、今回のは幻改と言うべき技だったのだ。

 

だから特に、技を放った左腕の負担が大きかった。

 

だから実を言うと、今明久の左腕はボロボロなのである。

 

どれくらいかと言うと、左腕を少しでも動かしたら引きつるような痛みが走るほどだ。

 

だから、颯馬や謙信が取るようにしているのだ。

 

そんな折、明久は謙信が持ってきた飲み物を口にして固まった。

 

「なんだろ……嫌な予感がする……」

 

明久はそう言うと、自身が持っている缶の裏側に書かれている銘柄を見た。

 

そこには、《カシスオレンジ》と書かれてあった……

 

「なんでさぁぁぁ!」

 

明久が雄叫びを上げると、雄二が近寄ってきて

 

「いきなりどうした?」

 

と声を掛けた。

 

「雄二……これ見て」

 

明久はそう言うと、自身が持っていた缶の銘柄を見せた。

 

「カシスオレンジ……って、酒じゃねえか!?」

 

雄二は驚愕すると、周囲に視線を向けた。

 

気づくと、チラホラと顔が赤いクラスメイト達の姿があった。

 

「買い出し班のバカが……適等に買ったな……」

 

雄二は頭を掻きながら、渋面を浮かべた。

 

その時、明久はふと思い出した。

 

謙信は、酒に弱いのである。

 

それを思い出した明久は、恐る恐ると視線を謙信に向けた。

 

「ヒック……」

 

時すでに遅しだった。

 

謙信は顔を赤くして、トローンとした表情を浮かべていた。

 

「アウトーーー!」

 

明久が再び叫ぶと、今度は信繁が近寄ってきて

 

「あーぁ……酒飲んじまったか……間に合わなかったな」

 

と溜め息混じりに言った。

 

「悪い。気づいて、忠告しに来たんだが、間に合わなかったみたいだな」

 

信繁はそう言いながら、頭をボリボリと掻いた。

 

その時、謙信が両腕を明久の首に絡ませてきた。

 

「け、謙信? どうしたのかな……?」

 

明久が恐る恐る問い掛けると、謙信は明久を見上げながら

 

「明久は……ヒック……無茶し過ぎなんですよ……ヒック……」

 

と言い始めた。

 

「う、うん……心配掛けてごめんね……?」

 

明久が謝ると、謙信は唇を尖らせて

 

「ダメです……許しませんよ……ヒック……」

 

「だったら、どうしたら許してくれるかな?」

 

明久はそう言いながら、頬を掻いた。

 

「キス……」

 

「……へ?」

 

謙信の言葉に明久が呆然としていると、謙信が腕の力を強めた。

 

次の瞬間、明久と謙信の唇が重なった。

 

明久が驚いて固まっていることを良いことに、謙信は長い時間キスしていた。

 

そして数十秒後、謙信は唇を離すとホニャリと微笑んで

 

「これで許します……」

 

と言うと、パタリと倒れるように明久の膝に頭を乗せた。

 

顔を真っ赤にしながらも、明久は謙信の顔を見た。

 

謙信は安らかに眠っており、規則的に胸部が動いていた。

 

「酔い潰れただけか……」

 

と明久が安堵した瞬間。

 

「異端審問会! 開廷(セットアップ)!」

 

「ヤーハー!」

 

「ぶっ殺!」

 

「■■■■■■!」

 

明久の背後に、黒尽くめの集団

 

異端審問会こと、FFF団(バカ共)が現れた。

 

「横溝、あ奴の罪状を読み上げい!」

 

「はっ! 被告、吉井明久(以下からは甲とする)は美少女と……」

 

須川らしき人物に言われて、横溝が紙を読み上げていると、須川がムチを鳴らして

 

「長い! もっと簡潔に言え!!」

 

「要するに……美少女とイチャコラしやがって、死にさらせ!」

 

と声を上げた。

 

「実に分かりやすい! 被告、吉井明久……判決、死刑!」

 

須川がそう言いながら腕を振り下ろすと、周囲に展開していたFFF団(バカ共)が明久目掛けて飛びかかった。

 

次の瞬間

 

「旋車!」

 

「ヘリカル・トワイス!」

 

「ディメンション・スタンピード!」

 

「……シャドウ・ステッチ!」

 

「ラウンド・アクセル!」

 

「ワール・ウィンド!」

 

その手に武器を持った信繁達により、瞬く間に殲滅された。

 

「ギャアアアァァァ!」

 

「攻略組だと!?」

 

「バカな!?」

 

「しまった! 黄昏の風が居た!」

 

「おまっ!? それ別作品!(作者は同じ)」

 

信繁達の攻撃から生き残ったFFF団は、顔を青ざめながら距離を取った。

 

「お前ら……俺達が居て、攻撃が通ると思うなよ?」

 

「さあ……あなた達の罪を数えなさい」

 

「……葬る!」

 

信繁達はそう言うと、FFF団(バカ共)に飛びかかった。

 

「えっと……ほどほどにねぇ……」

 

明久がそう言った直後、再びFFF団(バカ共)の叫び声が響き渡った。

 

こうして、陰謀塗れの文化祭は幕を閉じたのだった。


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