僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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さて、新たに二人登場です


営業妨害

明久と謙信の二人が教室に戻るために歩いていると、途中で雄二達と合流した。

 

「あ、雄二に康太」

 

「明久と上杉か」

 

「……休憩か?」

 

「ええ。ですが、これから戻るところです。試合はどうでした?」

 

「勝ったに決まってるだろ」

 

四人は互いに確認しあうと、教室に向かって歩き出した。

 

そして数分後、曲がり角を曲がった時だった。

 

「む。ようやく見つけたのじゃ!」

 

なぜか、秀吉が現れて駆け寄ってきた。

 

「秀吉、どうしたの?」

 

明久が問い掛けると、秀吉は頭をポリポリと掻きながら

 

「実は、困ったことになってのう……」

 

と言葉を濁した。

 

「なんだよ。はっきり言え」

 

雄二が先を促すと、秀吉は意を決した様子で

 

「実はのう……営業妨害なのじゃ」

 

「営業妨害?」

 

秀吉の言葉に、四人は揃って首を傾げた。

 

数分後、五人は揃って教室前側のドアから中を見た。

 

「ほれ、中央の席の二人じゃ」

 

秀吉に言われて、四人は中央の席に視線を向けた。

 

そこでは、禿頭とソフトモヒカンが特徴の二人の男子が大声で喚き散らしていた。

 

「いいから、責任者を呼べって言ってんだよ!」

 

「接客がなってねぇんだよ! 文句を言ってやる!」

 

二人はそう喚きながら、机を蹴った。

 

よく見ると、二人の襟元のバッチから二人が三年生とわかった。

 

「まったく……最上級生がなにをしているのやら……」

 

謙信が呆れていると、康太が懐から手帳を取り出して

 

「……あのハゲ頭の方は常村勇作(つねむらゆうさく)、ソフトモヒカンは夏川俊平(なつかわしゅんぺい)だ……両方とも、三年Aクラス」

 

と言った。

 

「最上級生のAクラスの高が知れるな……よし、あいつらは常夏コンビと呼ぼう。どうせ、頭の中も常夏だろうしな」

 

雄二はそう言うと、教室に入り、二人に近づいた。

 

「お客様、大変お待たせしました。なにかご要望でしょうか?」

 

普段の雄二からは想像出来ないような笑顔を浮かべながら、雄二は声を掛けた。

 

すると、二人は雄二を睨みながら

 

「遅ぇんだよ! 客を待たせるんじゃねえ!」

 

「責任者でこれかよ。この店の高が知れるなぁ、おい?」

 

二人の言葉を、雄二は軽くスルーして

 

「して、ご要望はなんでしょうか?」

 

再び問い掛けた。

 

「てめぇの所の接客はどうなってんだ、ああ!?」

 

「対応がなってねぇんだよ! こんなんでよく出店したな、ああ!?」

 

二人がそう言ったタイミングで、雄二の背後に信玄が近寄り

 

「その二人が要望したのは、座って付き合え。というものです」

 

と小声で伝えた。

 

それを聞いた雄二は、笑みを崩さず

 

「お客様。お客様がご要望なさったのは、こちらの対応外となっております」

 

と言うが、二人は目くじらを立てて

 

「んなこと、知ったことじゃねぇんだよ!」

 

「こっちはお客様だぞ! お客様!!」

 

そんな二人の様子に雄二が悩んでいると、明久が近づいてきた。

 

「申し訳ありません、お客様。足元のゴミを拾わせていただきます」

 

明久はそう言うと、二人の足元でしゃがんだ。

 

確かに、二人の足元には二人が蹴ったからか、紙ナプキンが散らばっている。

 

そして、明久がその紙ナプキンを拾おうと手を伸ばした時

 

「邪魔だ!」

 

「失せろ、このバカが!!」

 

二人は同時に、明久を蹴飛ばした。

 

「ぐっ!?」

 

蹴飛ばされた明久は、隣の机にぶつかり、ぶつかった机の下敷きになった。

 

「明久!」

 

謙信は蹴飛ばされた明久に近寄り、明久を抱き起こした。

 

よく見れば、衣装の一部が僅かに赤く滲んでいる。

 

どうやら、傷口が開いてしまったようだ。

 

「けっ! 元々の対応がなってねぇから、ゴミが有るんだろうが!」

 

「こんな店、来るだけ無駄だったな!!」

 

二人はそう言うと、立ち上がって教室から出ようとした。

 

だが

 

「おい……」

 

「……待て、貴様ら」

 

それを、雄二と康太の二人が止めた。

 

「ああ? なんか用か?」

 

「こちとら、これから帰るんだがな?」

 

常夏コンビは雄二達を睨むが、雄二達は視線を逸らさず

 

「こんな事をして、恥ずかしくないのかよ?」

 

「……貴様ら三年生のモラルを疑うな」

 

雄二達がそう言うと、常夏コンビは拳を鳴らしながら睨みつけて

 

「ああ? それが三年生に対する態度か!?」

 

「年上に対する態度ってもんを、教えてやろうか!?」

 

と怒鳴った。

 

「上等だ……」

 

「……友人を傷つけられて、黙ってられるか」

 

常夏コンビの言葉を聞いて、雄二達も拳を鳴らしながら身構えた。

 

その空気はまさしく、一触即発と言えるだろう。

 

その時だった。

 

「騒いでる生徒が居るというのは、ここですか!?」

 

「風紀委員会です! 大人しくしなさい!」

 

二人の女子を筆頭に、十数人の生徒達がなだれ込んで来た。

 

片方は愛という漢字の髪留めを付けた女子で、名前は直江兼続(なおえかねつぐ)

 

もう片方は、少し外に跳ね気味のセミロングの髪にヘアバンドが特徴の女子

 

名前は島津義弘(しまづよしひろ)である。

 

その二人は常夏コンビを認識すると、溜め息混じりに

 

「常村に夏川、また貴方達ですか」

 

「こちらも暇ではないんです。いい加減にしてください」

 

と言った。

 

「おいこら。どこを見てんだよ!」

 

「どう見ても、こいつらが因縁付けてるじゃねぇか!」

 

常夏コンビがそう言うと、雄二達が

 

「ふざけんじゃねぇ! 明久を蹴飛ばしておいて、被害者面してんじゃねぇ!」

 

「……しかも、その前から営業妨害してるだろ!」

 

と怒鳴った。

 

すると、兼続は倒れてる明久と抱き起こしてる謙信に気づいて

 

「謙信様、明久様! 大丈夫ですか!!」

 

駆け寄ると、謙信を手伝って明久を抱き起こした。

 

その時、義弘は近寄ってきた他の風紀委員から話を聞くと、常夏コンビに近づいて

 

「状況と他のお客の話を聞いたら、あんたらが悪いみたいなんだけど?」

 

と言って、二人を睨んだ。

 

「なっ!?」

 

「んだと!?」

 

義弘の言葉を聞いて、常夏コンビが絶句していると、義弘が背後の風紀委員達に振り向いて

 

「二人を捕縛! 本部に連行して」

 

「はっ!」

 

義弘の命令を聞いて、風紀委員達は常夏コンビを押さえ込んだ。

 

「待て、ふざけんじゃねぇ!」

 

「離しやがれ!」

 

常夏コンビは喚くが、風紀委員達は無視して連行していった。

 

義弘は見送ると、雄二達の方に振り向いて

 

「私達のクラスメイトが、迷惑を掛けたわね」

 

と言いながら、頭を下げた。

 

「いや、俺達は大丈夫なんだが……」

 

「……明久が」

 

二人はそう言うと、心配そうな視線を明久に向けた。

 

そこでは、謙信と兼続に肩を貸されてなんとか立っている明久の姿があった。

 

すると、明久と謙信の姿を見た義弘は軽く驚いた表情を浮かべて

 

「剣聖と軍神!?」

 

と驚きの声を上げた。

 

「ケガをしてる。保健室に連れて行ったほうがいい」

 

兼続がそう言うと、義弘はハッとしてから首を左右に振って

 

「彼は、私達が責任を持って保健室に連れて行くから。安心して」

 

と言うと、謙信と代わって明久に肩を貸して教室を去った。

 

謙信はその後を追っていった。

 

雄二は明久達を見送ると、頬を軽く叩いてから教室を見回して

 

「お客様。大変お騒がせしました。只今いらっしゃるお客様に関しましては、全員二割引にさせてもらいます。ごゆっくりとお楽しみください」

 

と言ってから、頭を下げた。

 

「ああ、お構いなく!」

 

「それより、あの蹴られた子は大丈夫?」

 

「あーあ、あいつら酷い事をしやがる……ほれ、机は大丈夫みたいだ」

 

雄二の言葉を聞いて、客達はそう返した。

 

雄二は客達の言葉に感謝しながら、クラスメイト達に指示を出して対応を始めた。


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