僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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読者諸君、待たせたな
これが、文化祭じゃぁぁぁぁ!!


文化祭編
出し物の決定と騒動の始まり


新緑が強く印象付く季節。

 

そんな季節に、文月学園の文化祭は催される。

 

そんな文化祭の名前は、清涼祭である。

 

そして、ここAクラスでは……

 

「……というわけで、AクラスとFクラスは合同で模擬店を出すことに決まりました」

 

「わかりました!」

 

翔子と雄二の二人が話し合い、二クラス合同出店が決まった。

 

「Fクラス代表の坂本だ。今回は、こちらからの申し出を受け入れてもらって、感謝する」

 

と雄二が頭を下げると、Aクラスの生徒達は友好的な声を掛けた。

 

「気にすんなって」

 

「あの教室は確かに、勉強には向かない環境よ」

 

雄二がAクラスと合同出店を決めたのは、Fクラスの環境の悪さが原因だった。

 

詳しく調べてみた所、教室に使われている畳の半数以上は腐りかけており、卓袱台はボロボロ

 

壁はヒビだらけで、隙間風が通る始末だった。

 

これはあまりにも酷いと思った雄二は、西村に文化祭で得た収入で設備を買い換えるなどは出来ないのかを相談した。

 

そうしたら、意外なことに出来ると言われた。

 

これは好機と思った雄二は、収入を増やすためにAクラスとの合同出店に踏み切ったのだ。

 

しかし、来ているのは雄二を含めて数名のみで、他のクラスメイト達は廊下にすら居る気配が無い。

 

それを不思議に思った明久は、手を上げて

 

「ねえ、雄二。他の皆は?」

 

と問い掛けた。

 

すると雄二は、無言で親指を窓に向けた。

 

それを見た明久は、席から立ち上がり窓の外を見た。

 

そこでは……

 

「行くぞ! 横溝!」

 

「来いや! 須川!」

 

バカ共が野球をしていた。

 

「お前なんか、俺が投げるスライダーの餌食にしてやらぁ!」

 

「はっ! てめぇのへなちょこ球なんざ、ホームランにしてやる!」

 

須川の挑発に横溝はそう言いながら、ホームラン宣言をしていた。

 

明久がそのことに固まっていると

 

「貴様ら! なにを野球なんぞしているかぁ!!」

 

西村が凄い勢いで走りながら、怒鳴り声を上げた。

 

「げぇっ!? 鉄人!?」

 

「全員、逃げろ!」

 

誰かわからないが、その声が響くとバカ共は散り散りに走り出した。

 

「待たんか貴様ら! 貴様らのその曲がった性根、補習室で叩き直してくれるわ!!」

 

西村は声を張り上げながら、散ったバカ共を追い掛けた。

 

「待ってくれ鉄人! これは坂本が率先して始めたんだ!」

 

と須川が言うと

 

「バカめ! 坂本ならば、模擬店に関しての話し合いをAクラスで行っているわ!」

 

と、西村は返した。

 

「なんだと!? おのれ、坂本め! 男の摂理に逆らうとは! あいつを異端審問に掛けなければ!」

 

西村の言葉を聞いて、須川がいきり立った様子でそう言った。

 

すると、西村の背後にオーラが漂い

 

「なるほど……貴様らの性根が腐ってきているのは、十分に分かった……ならば! 俺がそれを叩き直してくれるわぁ!!」

 

西村はそう言うと、右手を前に突き出した。

 

「行くぞ! 流派、東方○敗が最終奥義ぃ!」

 

「な、なにぃ!?」

 

「まさか、あの技は!?」

 

「に、逃げ!」

 

西村の言葉と構えを見て、バカ共は顔を青ざめた。

 

「石破天○拳!!」

 

その直後、バカ共が宙を舞った。

 

「ギャアアァァァ!?」

 

この時、西村が放った技はなぜか、腕組みした胸に28という数字が書かれた存在が見えたとか。

 

なお、この時を境に度々、同じ存在が空を飛んでるところが目撃されるようになるのは、また別の話である。

 

閑話休題

 

そして鉄人は、撃破したバカ共を一気に担いで補習室に連行していった。

 

一連の光景を見て、明久達は呆然としていた。

 

その後、出店内容はコスプレ喫茶に決まったので、明久、謙信、雄二、翔子の四人は正式な許可を得るために学園長室へと向かった。

 

そして、学園長室の前に到着すると

 

『……長こそ……事はな……』

 

『なにを……るんだい。あん……そ勝手に……』

 

と、中で言い争っている声が聞こえてきた。

 

「どうやら、学園長は居るみたいですね」

 

「はっ、行き違いにならなくて良かったじゃねぇか」

 

謙信の言葉を聞いて、雄二はそう言うと

 

「失礼するぞ」

 

と、ノックと同時に中に入った。

 

「失礼なガキだね。普通は返事があるまで待つもんだよ」

 

雄二の行動に、学園長である藤堂カヲルは非難の声を掛けるが、雄二は無視した。

 

「すいません、学園長」

 

「申し訳ありません」

 

「……夫がごめんなさい」

 

明久達は口々に謝罪するが

 

「待て翔子、まだ結婚してないからな?」

 

雄二は翔子に突っ込みを入れていた。

 

「やれやれ……このタイミングで来客ですか……まさか、学園長の差し金ですか?」

 

と言ったのは、メガネを掛けた白髪混じりの男性

 

教頭の竹原だった。

 

この竹原はクールな言動により、一部の女子には人気だが、成績の低い者や素行の悪い生徒には侮蔑のこもった視線を向けるのである。

 

その証拠に、明久と雄二には侮蔑がこもった視線を向けている。

 

「はっ、なに言ってんだい。なんでアタシがそんなセコい真似をしなければいけないんだい?」

 

竹原の言葉にカヲルがそう返すと、竹原はメガネを指で押し上げてから

 

「どうでしょうかね? 学園長は隠し事がお好きなようですから」

 

と言った。

 

「はん。それこそ言い掛かりさね。なんでアタシが隠し事をする必要があるんだい?」

 

カヲルがそう言うと、竹原は肩を軽くすくめて

 

「いいでしょう……今日はこれで退散しましょう」

 

と言って、左後方に僅かに視線を向けた。

 

明久はそれに気づき、隣りに居た謙信に小声で

 

(謙信、左後方にはなにがある?)

 

と問い掛けた。

 

問い掛けられた謙信は、左後方を僅かに見ると

 

(あるのは、観葉植物のようですが……)

 

と、明久と同じように小声で教えた。

 

(そっか……ありがとう)

 

明久達がそう会話していた間に、教頭は退室していた。

 

教頭が退室すると、カヲルは視線を明久達に向けて

 

「で、あんたらは何のようさね?」

 

と、問い掛けてきた。

 

すると、雄二と翔子の二人が一歩前に出て

 

「AクラスとFクラスの合同出店の許可を貰いたい」

 

「……別に問題はないはず」

 

と言った。

 

「そりゃあ問題は無いがね……どういうつもりだい?」

 

二人の言葉を聞いて、学園長はそう問い返した。

 

「Fクラスの設備を買い換えるための資金を得るためだ」

 

「……合同出店したほうが、収入は多く得られるはず」

 

二人がそう言うと、カヲルはなるほどと頷き

 

「そういえば、文化祭で得た収入を使って、設備の拡充は許可していたね。いいだろう。合同出店を許可する」

 

と言った。

 

カヲルの言葉を聞いて、二人は満足そうに頷いた。

 

「あと、これはついでなんだがな」

 

と、再び雄二が口を開いた。

 

「なんだい?」

 

「教室施設の改修工事を依頼したい」

 

カヲルからの問い掛けに、雄二は即答した。

 

すると、カヲルはバカにしたように笑い

 

「なに言ってるんだい。教室施設の差は今更じゃないか」

 

と言うが、雄二は首を振り

 

「いくらなんでも、壁のひび割れや割れたガラスはヤりすぎだ! あれじゃあ、体調を崩してもおかしくない!」

 

と言った。

 

それを聞いたカヲルは、眉をひそめて

 

「どういうことだい?」

 

と、雄二に問い掛けた。

 

すると雄二は、懐に手を入れて

 

「これを見ろ」

 

と数枚の写真を、机の上に投げた。

 

カヲルは雄二が投げた写真の一枚を拾い上げ見ると、目を見開いた。

 

すると、カヲルは次々と写真を見ていき

 

「これが……Fクラスだってのかい?」

 

と雄二に問い掛けた。

 

カヲルの言葉を聞いて、雄二は眉をひそめた。

 

「どういうことだ? これはババアの指示じゃねぇのか?」

 

雄二からの問い掛けにカヲルは首を振って

 

「いくらアタシでも、こんな施設の指示は出さないし、許可もしない!」

 

と、声を荒げた。

 

彼女も学園長という立場上、やはり生徒を思っているのだろう。

 

それを聞いた雄二は

 

「誰がこの施設の点検と指示を?」

 

と問い掛けた。

 

その質問にカヲルが答えようと、口を開いた時だった。

 

「学園長、ちょっと待ってください」

 

明久が静止した。

 

カヲルと雄二達が訝しむような視線を明久に向けると、明久は人差し指を口の前に持っていき、静かに、というジェスチャーをした。

 

そのジェスチャーに全員が首を傾げていると、明久は左後方にあった観葉植物に近づいて

 

「ふっ!」

 

短い呼気と共に、蹴りを放った。

 

明久の蹴りにより、観葉植物が植わっていた鉢が割れた。

 

「吉井、あんたなにを!」

 

「明久!?」

 

「……吉井?」

 

と三人が驚いているが、明久は無視して土の中から何かを取り出した。

 

「これですよ、学園長」

 

明久は取り出した物を、机の上に置いた。

 

それは、ビニールに包まれた黒い物体だった。

 

「こいつは……」

 

とカヲルがその物体を見つめていると

 

「盗聴器ですよ」

 

と明久は言いながら、机の上にあった文鎮でそれを叩き壊した。

 

「盗聴器だと!?」

 

「……誰が?」

 

雄二と翔子は驚いているが、カヲルは覚えがあったようだ。

 

「これは先ほど、教頭が見ていた観葉植物の中にありました。学園長、全て、話してください」

 

明久がそう言うと、カヲルは観念したように

 

「アタシの無能を晒すようで嫌なんだがねぇ……」

 

と呟いた。

 

この時を境に、明久達は学園を巡る騒動に巻き込まれることになる。


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