僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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長かった
これにて、試験召喚戦争編は終了です!


A対Fクラス戦 終

Aクラス対Fクラス最終戦

 

どちらが勝とうと、この戦いで全てが決する。

 

現在の状況を言うなれば、戦況はAクラスが優勢である。

 

次にAクラスが勝てば、Aクラスの勝利が確定する。

 

そんな状況で、Aクラスからは代表の霧島翔子が

 

Fクラスからは、同じく代表の坂本雄二がフィールドに上がった。

 

それを高橋女史は確認すると、視線を翔子に向けて

 

「Aクラスは教科を選択してください」

 

と、教科選択を促した。

 

それを聞いた翔子は、一瞬悩むと

 

「……日本史でお願いします」

 

と、教科を選択した。

 

教科を聞いた高橋女史は、パソコンを操作すると

 

「日本史に設定しました。召喚してください」

 

と、召喚を促した。

 

促された二人は、同時に頷いて

 

試獣召喚(サモン)!」

 

キーワードを唱えた。

 

その直後、幾何学的な模様の魔法陣が浮かび上がり軽い爆発音がした。

 

そして、二人の召喚獣が現れた。

 

翔子は、いかにも上等そうな侍風の鎧と刀

 

そして雄二は、改造学ランとトンファーだった。

 

その数秒後、二人の点数がディスプレイに表示された。

 

日本史

 

Aクラス代表 霧島翔子 457点

 

VS

 

Fクラス代表 坂本雄二 463点

 

その表示された点数を見て、Aクラスでは動揺が走った。

 

「おいおい……あいつは本当にFクラスか!?」

 

「僅かだけど、代表を上回ってるわよ!?」

 

「いやまて、聞いたことがある! 確か、坂本は昔、神童って呼ばれてたって!」

 

「マジかよ!?」

 

そんなAクラスを尻目に、Fクラスは喚起に沸いていた。

 

「よっしゃ!」

 

「これは勝てるぞ!」

 

「ハッハー! 見たか、Aクラス!」

 

そんな男子達(バカたち)を見て、信繁達は溜め息を吐いた。

 

「お前らが戦ってるわけじゃねぇだろ……」

 

「これは教育が必要でしょうか……」

 

「御館様、言っても無駄かと」

 

だが、そんな声はフィールドに立っている二人には聞こえていなかった。

 

「行くぜ、翔子……」

 

「……うん、この時を待ってた」

 

二人がそこまで言った時、高橋女史が片手を上げて

 

「試合、開始!」

 

最終戦のゴングを鳴らした。

 

ゴングが鳴ったと同時に、二人は駆け出した。

 

先制攻撃を繰り出してきたのは、武器のリーチが長い翔子だった。

 

翔子は間合いに入った瞬間、刀を突き出した。

 

翔子の召喚獣は点数の高さも相まって、まるで弾丸のように雄二に突きを放った。

 

だが雄二は、自身に迫る刃を冷静に見極めると、左手のトンファーを使って刀を逸らしてから、右手のトンファーを回しながら翔子に繰り出した。

 

翔子はそれを大きく体を右に倒すことで避けると、その勢いを利用して左足によるハイキックを雄二目掛けて放った。

 

雄二はハイキックをしゃがんで避けると、体を独楽のように回して足払いを放った。

 

その足払いを翔子は側転の要領で避けて、逆立ちになると蹴りの連撃を繰り出した。

 

さすがに避けられないと悟ったのか、雄二はトンファーを交差させて受け止めると、その勢いを利用して距離を取った。

 

僅か数秒間の二人の攻防は、ハイレベルかつ、ハイスピードだった。

 

その戦闘を見ていたほとんどの生徒は、あまりのハイレベルかつハイスピードの戦闘に唖然としていた。

 

「まさか、カポエラとはな……いつ覚えた?」

 

「……前にテレビのアニメで」

 

雄二が問い掛けると、翔子はいつもの表情で返答した。

 

すると二人は、互いの武器を構え直して

 

「そんじゃま、仕切り直しといこうぜ」

 

「……うん」

 

その言葉を皮切りに、第二ラウンドを始めた。

 

そこからは手数では雄二が、威力の高さでは翔子が勝り続けて

 

約十分後

 

日本史

 

Aクラス代表 霧島翔子 38点

 

VS

 

Fクラス代表 坂本雄二 30点

 

後一撃で終わるところまできた。

 

点数としては翔子が勝っているが、どちらも油断出来ない状況だった。

 

「次で終わらせるぞ、翔子……」

 

「……うん」

 

二人は頷きあうと、腰を低くして構えた。

 

二人は互いに無言で相手を見つめ続けて、見守っていた生徒達もあまりの緊張感に黙っていた。

 

その沈黙は数秒間続いて、誰かが息を呑んだ次の瞬間

 

「っ!」

 

二人は同時に相手目掛けて、飛び出した。

 

そして、同時に武器を繰り出して二人の召喚獣がぶつかり合った。

 

そのまま二人の召喚獣は、数瞬固まっていた。

 

そして、翔子の召喚獣だけが消えた。

 

日本史

 

Aクラス代表 霧島翔子 0点 LOSE

 

VS

 

Fクラス代表 坂本雄二 1点 WIN

 

「勝者、坂本雄二!」

 

高橋女史が勝者を宣言するが、誰も声を上げなかった。

 

すると、優子が

 

「今、なにが……」

 

と呟いた。

 

その疑問に答えたのは、隣に座っていた謙信だった。

 

「今の一瞬の間に、霧島さんが放った突きを坂本君は首を横に倒して避けながら同時に、首目掛けてトンファーを叩き込んだんです。ようは、カウンターですね」

 

と謙信が説明を終えると、Fクラス側から

 

「勝った……?」

 

「勝ったんだよな?」

 

「ああ、坂本が勝った!」

 

「よっしゃぁぁぁ!」

 

一人の呟きから始まって、歓声が上がった。

 

対照的に、Aクラス側は悲観に満ちていた。

 

「そん、な……」

 

「代表が……負けるなんて……」

 

「嘘だろ……」

 

その時、パソコンを見ていた高橋女史が再び、口を開いた。

 

「これにより、Aクラス対Fクラスの一騎打ち勝負は終了。互いに二勝二敗二引き分け一無効となり、引き分けです!」

 

高橋女史のその言葉に、全員がへ? という、表情になった。

 

「それにより、この後をどうするかは代表同士が話し合って決めてください」

 

引き続き紡がれたその言葉を聞いて、雄二は小さくガッツポーズをした。

 

予定外のトラブルは起きたが、雄二が求めていたのは、まさしくこの状況だった。

 

すると、翔子も雄二を見ながら微笑んでいた。

 

それに気づいた雄二は頷いて、翔子と一緒に前に出た。

 

「和平交渉を申し込む」

 

「……受けます」

 

二人のその言葉に、双方のクラスにどよめきが起きた。

 

「代表、和平交渉なんてする必要はありません!」

 

「そうですよ! 私達は勝てます!」

 

「相手はたかが、Fクラスですよ!?」

 

「総合では我々が勝ってます!」

 

と喚いたのは、Aクラスの生徒達である。

 

が、翔子は首を振って

 

「……それは無理。私の点数が一教科だけとはいえ、0点だから、即敗北になるかもしれない」

 

と言うと、Aクラスの生徒達は黙った。

 

すると、Fクラス側からは

 

「そうだそうだ!」

 

「お前らの代表は負けたんだ!」

 

「俺達の勝ちだ!」

 

と大声で言った瞬間、バカ共は黙った。

 

理由は簡単、雄二や信繁達が睨んでいたからだ。

 

「てめぇらは黙ってろ」

 

「あなた達は戦っていないでしょう……」

 

「それなのに、相手に対して罵倒とは……分をわきまえなさい」

 

信繁、幸村、信玄の三人が順に言うと、バカ共は無言でコクコクと頷いた。

 

バカ共が黙るのを確認すると、雄二は視線を戻して

 

「こちらからの提案は、そちらのクラスでの合同授業だ」

 

と提案した。

 

それを聞いた翔子は頷いて

 

「……承諾します。ただし、こちらが許可した人以外は入室を禁止する……」

 

「了解した。こちらとしても、そちらの勉強の邪魔はしたくないから、その提案を受け入れる」

 

と雄二が言うと、翔子は頷いた。

 

「……高橋先生、AクラスとFクラスは和平交渉により停戦します」

 

翔子の言葉を聞いた高橋女史は、頷いて

 

「了解しました。これにより、Aクラス対Fクラスの試召戦争は終了!」

 

高橋女史の宣言により、Aクラス対Fクラス戦は和平交渉にて終了した。

 

その時、Fクラスを監視していた西村が一歩前に出て

 

「さて、我がFクラスの諸君。これにて終わりだ」

 

西村の言葉を聞いて、Fクラスのほとんどがポカンとした。

 

「我が……Fクラス?」

 

「鉄人……それは、どういう?」

 

男子達が問い掛けると、西村は頷いて

 

「ああ、貴様らの担任が福原先生から俺に変わったぞ。喜べ、これから一年間死に物狂いで勉強出来るぞ?」

 

「なにーーーー!?」

 

「どういうこった!?」

 

西村の言葉を聞いた男子達は、悲鳴を上げた。

 

勉強嫌いの彼らにとっては、死刑判決に等しいだろう。

 

「確かに貴様らはよくやった。Aクラスと引き分けになったほどだ。だが、いくら【底辺でも頂点に勝てる】というのを証明したとはいえ、人生を歩んでいく上で強力な武器の一つになるのに、蔑ろにはできない」

 

「まあ、その通りだな」

 

西村の言葉を聞いた信繁は、腕組みをしながら頷いた。

 

「故に、貴様らは集中的に監視してくれる! だが、坂本、武田兄妹、真田の四人に関しては、補習は免除とする」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

西村の言葉を聞いた須川か、西村に詰め寄った。

 

「なんだ?」

 

「どうして、坂本達は免除なんだよ! あいつらだって、同じFクラスじゃないか!」

 

須川の言葉を聞いた西村は、目を細めて睨みつけながら

 

「だったら、貴様らは坂本達並みの点数を取れるのか?」

 

と、須川に問い掛けた。

 

「ぐっ……」

 

問い掛けられた須川は、何も言えずに悔しそうに歯噛みした。

 

「取れないのだろう? それは貴様らが勉強してないからだ。そんな貴様らにはこれから放課後は毎日、一時間の特別補習を行う!」

 

「なにーーーー!?」

 

「ふざけんな!」

 

「いくら教師だからって、そんなの横暴だ!」

 

西村の言葉を聞いた男子達は次々に文句を言うが、それを西村は大きく

 

「やかましい! 貴様らが頻繁に試験召喚戦争を行ったから、授業が遅れとるんだ!」

 

と一喝して、黙らせた。

 

全員が黙ったのを確認すると、西村は視線を雄二に向けて

 

「それで、坂本。目標は達成出来たか?」

 

と、問い掛けた。

 

問い掛けられた雄二は、一瞬意外そうな顔をしたが、すぐに笑みを浮かべて

 

「ああ、文句無しにな」

 

と、答えた。

 

 

こうして、Fクラスが起こした下克上はAクラスと引き分けという類を見ない結果を残して幕を閉じた。

 

なお、今回の一騎打ちにて問題となった島田は観察処分者に命じられた。

 

余談だが、Aクラスにて授業を行うことを許可されたのは、雄二と武田兄妹と幸村、康太と秀吉だけだった。

 


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