ご注文は護衛ですか?   作:kozuzu

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べ、別にエタってたわけじゃないんだからね!


……うん。なんか思い付きで始めたもう一方の作品が思いの外好評で、中々こっちに帰ってこれんかった。



……まあ、まあまあまあまあ。ごちうさ二期も始まったことですし、気長に行きましょう!








第八話 君がいたその席には、狂おしいほどの殺意を抱くよ

人間、興味というものを失うと、人間性も徐々に薄れていく。

例えば、今まで大好きだった歌手や漫画、ぬいぐるみの収集みたいな趣味。

突然興味を失くしたりすると、今まで心を満たしていたそこに、ぽっかりと穴が空くことがある。

そんな時その心の穴は、大体は代用を見つけようと大きくほかの物事を強く吸引する。

まあ、そんな穴が空いていなくとも、女子と言う生き物は常にある一定の物事に対しては、どこぞの掃除機のように変わらぬ吸引力を持つ。

それは、

 

 

「それで、今朝の風見君との件についてだけど……どうしてそうなったのでしょうか…?」

 

「ええ、ええ。大丈夫です。考えられる最悪のパターンを全て頭にインプットしましたわ……もうこれで、何も怖くない」

 

 

 

 

 

「「「「それで、今朝のお姫様抱っこ登校は一体どういうことですか?(ですの?)(なの?)」」」」

 

 

 

 

ズバリ、恋バナ――――恋愛関連の話である。

 

 

 

まあ、なんというか私、天々座リゼは今、絶賛現実逃避中なのである。

恋バナ、そう、恋バナ。

私とて女子高生の端くれとして、そういう話に興味がないわけではない。

だが、だがしかし、それは話の対象が自分でない場合に限る。

 

 

「だから、何度も言っているだろう!? アレは事故なんだ! というか、その時私は意識なかったから、何とも言えないんだよっ!」

 

「嘘だッ! あんなにたくましいお、おお、男の人の腕の中で安眠なんて、出来るはずない!! 私だったら、私だったら…………え、ええ………私たちにはまだ、は、はやいよ…でも、風見君がどうしてもって言うんだったら……」

 

「戻って来てくださいませ! それ以上逝ったら、戻れなくなりますわよ!?」

 

 

 

カザミサマノオヒメサマダッコ……キュウ

 

キャアアア、マタヒトリギセイシャガ‼

 

ナンテコトナノ、ソンナニカザミサマノオヒマサマダッコノモウソウガハカドルワケ……アァァアアア……

 

ダレカ、コノナカニセイシンカイハイラッシャイマセンカ‼

 

 

 

「もう、なんだこれ……」

 

 

今、教室はまさに混沌(ケイオス)に支配されていた。

何度も何度も同じ質問を壊れたオーディオ機器のように繰り返され、最初の方にあった彼への怒りの炎は鎮火し、それどころか衰弱した私の心は、口元に「アハハ」という虚笑を自動的に浮かべさせるぐらいにはまいっていた。

そんな時だ。私の制服の内ポケットが振動し、メールの受信を告げた。

 

 

brrr……brrrr……

 

 

「うん?……メール…?誰だよ、こんな時に……」

 

 

 

 

 

From 風見

 

件名 なし

 

本文

 

調子はどうだ?

 

 

 

 

 

 

……………。

ビチッ!

私の中で何かが切れて、新しい何かが電流のように通った音がした。

 

 

「あぁいいいぃいつうぅぅうう!!!」

 

 

ほとばしる憤りを、短文に乗せ、私はスマートホンの送信ボタンを親指で叩く。

 

 

 

 

To Re:風見

 

件名 なし

 

本文

 

誰のせいでこうなったと思っている!!

 

 

 

もしもこれが漫画の世界だったとしたら、私の額には乙女にはあるまじき青筋が何本も通い並び、山脈のようになっていることだろう。山脈は山脈でも、バリバリの活火山帯である。

そうして、マグマのように煮えたぎった私の心を弄ぶかのように、彼からの返信をスマホが受信した。

 

 

From Re Re:風見

 

件名 なし

 

本文

 

リゼが人気者だからじゃないか?

 

 

 

んなわけあるかあああ!!

どう考えてもお前のせいだ!お前が明らかな戦犯だ!!

ああ、もう、こうなれば……。

 

 

「わかった。お前がそういうつもりなら……よろしい、ならば戦争だ」

 

 

素早く、かつ正確無比に私の指がスマホのスクリーンを踊り、簡素な一文を完成させる。

 

 

 

 

To Re:Re:風見

 

件名 なし

 

本文

 

よし分かった今すぐそっちに行く首を洗って待ってろ

 

 

 

 

スマホのサイドについているボタンを一撫でしてスリープ状態へ移行させると、それを静かに制服の内ポケットにしまう。

未だに混沌とした様相を呈しているクラスを尻目に、私は静かに席から立ち上がった。

それを目ざとく発見したクラスメイトの一人が、私を呼び止めようとするが、

 

 

「天々座さん?どちらへ行かれるのですか……?まだお話はおわっていn」

 

「悪い。ちょっと……御首級(みしるし)を摘みに行ってくる」

 

「え、ええと……行ってらっしゃいませ?」

 

「ああ。―――――逝ってくる」

 

 

それだけ言い終えると、私は静かに席を立ち、堂々とした態度で教室を出た。

カツン、と僅かな開閉音をドアがこぼし、それが私と彼の開戦の合図となった。

 

 

「かざぁああみいぃぃいいいい……!!!」

 

 

低い声で心の叫び(乙女が決して上げてはいけない類の)を上げた私は、奴のいる方向を探す。

学院の廊下はほぼ白い大理石でできており、その冷たい外装が、私の熱くなった頭の熱を少しずつ緩和していく。

だが、心の中のマグマは煮えたぎったままである。

そして、ひとまず周囲を奴がどこへ行ったのか、という情報を収集するために廊下を見渡すと、

 

 

「風見先輩……思ったよりもとても素敵な殿方でした……ハ! 私としたことが、いつの間にか風見先輩のクラスへ来てしまいました……」

 

 

階段から、何やら惚けた顔で下級生が上級生の階へ迷い込んで来ていた。

そして、そのつぶやきを拾った私は、

 

 

「そちらかッ!」

 

 

迷わずその方向へ駆け出す。

下級生が昇って来た階段を駆け下り、下の階へと降りてゆく。

すると、

 

 

「ああ、風見様……危ないところを助けていただきましたわ……」

 

「ええ、殿方はあまり慣れていないのですが、とっても気さくに接してくださって……」

 

 

その更に下の階から生徒が彼の話題を口にしながら階段を上って来ていた。

 

 

「もっと下の階か!」

 

 

そして、その後も、

 

 

「ああ、風見さん……」

 

「そっちの方向だな!」

 

 

またその後も、

 

 

「風見様ぁ……」

 

「今度はそっちか!」

 

 

またまたその後も、

 

 

「とっても素敵な殿方でしたわ……風見様…」

 

「この学内列車に乗ったんだな!?」

 

 

その後も各地で、それも同じような惚けた顔で「風見」と呟く少女たちを、なんだかヘンゼルとグレーテルのパンの切れ端を追うかのように駆け回っていると、

 

 

「ここか……!」

 

 

ついに私は、学院内食堂までたどり着いたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




学院内での風見雄二の見つけ方。

その1 まず、「風見」と呟いて惚けている生徒を探す。

その2 それをたどっていく。

その3 風見雄二発見。






さて、ギャグもそこそこ。
まずは、二か月近く更新できず、誠に申し訳ございませんでした。m(_ _;)m
というのも、まえがきで書いた通り、私のもう一方の作品が、ノリで書いたらものっそい反響でして、お気に入りの伸び方を見て作者は半狂でして。(親父ギャグ飛ばしてる場合じゃない)
そして、その作品との折り合いをつけるべく、今回からこの文量、多分3000文字ぐらいになるんじゃないかと思います。
「ここの、あの重厚感が好きだったんじゃぼけこの亀作者!」という方も勿論いらっしゃるかと思います。
ええ、自分も毎回あの文章量が唯一の誇りでした。
ですが。……ぶっちゃけ、マジきついっす。あの文章量。
てなわけで、大変私事ではございますが、今回から減量したします。お腹に着いた肉は減量いたしません。


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kozuzu@二次創作小説 (@kozuzu_monokaki) https://twitter.com/kozuzu_monokaki?s=09





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