ご注文は護衛ですか?   作:kozuzu

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ごちうさ、グリザイアクロス。
プロローグを経て、本格的に本編に入っていきたいと思います。
未だつたない点もあると思いますが、生暖かい目で見守っていてください。



第一話 そんな護衛で大丈夫か? 大丈夫だ。問題しかない。

「風見雄二だ。不慣れ事も多く迷惑を掛けると思うが、お手柔らかに頼む」

 

 

私たちのブレザーと全く同じデザイン服を来た彼が、丁寧にお辞儀をする。同じ、そう、同じ学校の制服(、、、、、、、)だ。だが、そこには一つ、決定的な違いがあった。

 

 

………きゃぁぁああああああああああああああああ!!

 

「転校生がくるって聞いていたけど、まさか男の子だったなんて!!」

 

「お嬢様学校に放りこまれて以来、男性との交流なんて、古典の高松先生(御年51歳)だけでしたのに……棚からショコラですわ!!」

 

 

その違いとはズバリ、スカートではないという事だ。

黒いワイシャツに白を基調としたシンプルかつ、清潔なデザインの制服。普段、学園のそこらじゅうで見慣れているはずなのに、何故か男の人がそれに見合う白いズボンを履いている、というだけで何故か別物に見えるのは何故だろうか?

 

 

「しかも、結構なイケメンです!」

 

「それにそれに、身長も高いわ!!」

 

「少しお色直ししてくる」ガタッ

 

 

一瞬の静寂の後、クラス中が貯水ダムが決壊したかのように黄色い声が教室中に反響している。

そんな中、私、天々座 リゼは一人頭を抱え、苦虫を百匹は噛み潰したような渋面をしていた。

先程クラスメイトの一人が言っていた通り、うちは女子高。しかも、上流階級向けの、所謂『お嬢様学校』というやつだ。

当然ながら、生徒は全員女子。

ならば何故、その女の園に何故男が転校してきたのか。してくることが出来たのか。

色めき立つクラス。そして、その喧騒をものともせず、私たちと少しだけ違う制服をまるで、スーツか何かの様にキッチリと身に纏い無表情で佇む彼。

これほどの刺激的な状況だ。

その手の話題に飢えた年頃の女の子にとって、与える効果は劇薬にも等しい。

普段ならば、私も普通の女子高生として渦中の人物を面白おかしく観察、考察した後、みんなと情報交換としゃれ込むはずだった。

何の因果だが知らないが、こと私に関してはそうもいかない。

 

 

 

「はい!質問いいですか?」

 

「風見君が困らない程度の節度をわきまえた質問であれば、許可します。風見君も、よろしいですか?」

 

「ええ、問題ありません」

 

 

(いや、そもそもお前がそこにいること自体が問題だろ)

そう言いたいのはやまやまだが、藪を突いて蛇を出してしまうわけにもいかないので、私は沈黙を選んだ。

 

 

「それじゃあ、私がみんなを代表して、一番聞きたい事を………なんでこの学校に転校してこれたんですか?」

 

 

確かにみんな気になってはいたが、それを直接訊くか普通!?

 

 

「ふむ、そうだな……強いて言うのであれば、一人の女の為ならばこそ、というのが適切だな」

 

 

きゃぁあぁあああああああああああああああああああああ!!

 

 

(間違っちゃいないが、その言い回しはとてつもなく不適切だぁああああああ!!!!!)

 

 

「ではでは、その子はうちの生徒ですの?」

 

「ああ」

 

「うちのクラスですか?」

 

「肯定だ」

 

「どの列ですか?」

 

「俺から見て、一番右の列だな」

 

 

(これは不味い、非常に不味い)

私の席は教卓を正面に右端の列、その最奥。つまり教室の端だ。

その教室の端っ子でどんどん狭まりつつある包囲網を前に、私は背中に冷たい汗をじっとりとかいていた。

冗談じゃない。

『お 嬢 様 学 校 に 転 校 し て き た 学 校 唯 一 の 男 子 が 、私 の 護 衛 で あ る 』なんてことが知れた日には、瞬時に学校中に、ひいては町中に広がり、動物園のパンダ状態となり後ろ指をさされ、『聞きました?奥さん。あの子、護衛なんて連れているらしいわよ?しかも、女子高なのに学校にまで連れ込んで』『まぁ、これだから最近の若い子は……!!』なんてことはになるかもしれない。いや、先ほどの黄色い声を聞けばそうなるのは火を見るより明らかだ。

それだけは、避けねばならない。私が普通の女の子として過ごしていく安寧の日々の為に。

(な、何とか、何とかしないと!?……そうだ!新しい話題でこの話題から興味を移させよう)

 

 

「しゅ、趣味は何ですか!?」

 

 

私は絶対に失敗は許されないという恐怖に背中をせっつかれて盛大にテンパりながらも、何とか話題を逸らそうと他のジャンルの質問をぶつける。

テンパっていたのになかなかいい球を投げたと、私は自画自賛した。

 

 

「趣味というほどではないが、本はよく読む。ジャンルは…特に気にしたことはないな」

 

(よし……!!)

 

 

何とか話題を逸らすことに成功し、私は内心ガッツポーズを決める。

だが、

 

 

「それで、その子の名前は?」

 

 

(ダメだった!?…………ああくそう、さようなら。私の普通の学校生活……。短い付き合いだった……願わくば、普通に、かわいいと、言われて……みたかった……ガク)

私は絶望し、机に突っ伏す。

私の視界の端が何かでにじみ、視界から光が消え失せようとしていた。

だが、

 

 

「流石にここからは個人情報となる。当人の許可なくしては、容易に口を割ることはできないな」

 

 

そう言って彼はフッと口元を緩める。それを一種のサービス勘違いしたクラスメイトたちは、更に黄色い声を上げる。

だが、私は見逃さなかった。彼が一瞬こちらを見てから口元を緩めたという事を。

(あいつまさか、全部ワザとか!?)

そう思うと、どうにも油断ならない。何故身辺を警護し安心を与えるはずの護衛に、こうも精神をすり減らされなくてはいけないのだろうか?

あそこで断っておけば、などと益体のないことを考え始めたが、あの場ではYESがベストの回答だという自分自身の冷静な部分と現状を嘆く自分が干渉しあい、堂々巡りになりそうなのでやめておいた。

 

 

「はい、それでは風見君の席ですが……丁度、天々座さんの隣の席が空いていますね」

 

「え?」

 

 

ふと、隣の席を確認すると、先程まで何もなかった私の席の隣に真新しい学習机と椅子のセットが既に設置されていた。

 

 

「天々座さん?どうかしましたか?前からその席は空席でしたが?」

 

「いえ、何でもありません……」

 

「それと、あなたには彼のお世話係を任せたいの。彼がここになれるまでの間でいいの。頼まれてくれるかしら?」

 

「え、あっはい」

 

その瞳には、有無を言わせぬ光が宿っていた。

(逆らったら殺られる!?)

厳しい訓練を積んできた私が、気圧されている事実に衝撃を受けながらも私は自然と首を縦に振っていた。

 

 

「お世話係なら、クラス委員であるこの私が引き受けますわ!」

 

「私だって保健委員だもん。クラスメイトのお世話をする義務がある」

「よろしい、ならば戦争だ」

 

ワタシヨ! イイエワタクシガ! ワーワーガヤガヤ……

 

「風見君のお世話係は、天々座さんに決まりました。イイデスネ?」

 

『アッハイ』

 

 

またもや有無を言わせぬ口調と瞳の光で、クラスを鎮めた。

これが、このお嬢様学校の現役教師の実力だ。

 

 

「それでは、一時限目を間もなく始めます。授業の準備をしてください。あ、早速ですが天々座さん彼に今現在進めている範囲についての簡単な説明と、教科書がまだ届いてないので、見せてあげてください」

 

「わ、分かりました」

 

「では、始めましょう。号令をお願いします」

 

キリーツ、レイ オネガイシマス

 

こうして、風見雄二はこの学園での生活をスタートさせた。

 

 

~昼休み~

 

 

「お前、ちょっと来い」

 

「なんだ?体育館裏か?見取り図的にはそこが一番人目につかない場所のようだが」

 

「いいからさっさと来い!」

 

 

私は声を潜めながらも、語勢を強くして彼を教室の外へ連れ出した。

後ろから「抜け駆けよ!」という声が多数聞こえたが、この際そんなことは些事だと捨て置く。

 

 

「ここまでくれば大丈夫だろう」

 

 

教室から離れ、掃除用具の倉庫まで来た。昼休み、ここに近づく者は殆どいない。

 

 

 

「ふむ、お嬢様と聞いていたが、意外と行動的なのだな初日から物陰に連れ込まれるとは……」

 

「その言い方は誤解を招くからやめろ。それと、行動的なのは昔から親父に待つだけの女になるなと教え込まれただけだ」

 

「いい親父さんじゃないか」

 

「私の親父の話は今は良いんだ!それより、貴様どういうつもりだ?」

 

「どう、とは?」

 

「……お前、一応形だけとはいえ任務なのだろう?いいのか?一般人に情報を漏らしても」

 

「なに、お嬢様学校というだけあって、みな社交スキルは高い。であれば、相手から吸い上げられる情報とそうじゃない情報ぐらい見分けがつくさ。現に、俺が少し待ったをかけたらみんな素直に聞いてくれただろ?」

 

「それは……そうだが」

 

「まあ、安心してくれ。任務はキッチリこなす。その上で、少し羽目を外す。だが、学園では一応、友人という立ち位置に収まりたいと思っている。……どうだろうか?」

 

「訊かなくてもわかっているんだろ?このどSめ」

 

「あまり誉めてくれるな。照れるだろう?」

 

「無表情で照れると言えるお前の図太さには素直に感心するよ……」

 

 

そこで、私は大きく深呼吸を一つ。そして気持ちを入れ替える。

 

 

「わかった。今からお前と私の関係は友人だ。これでいいんだろ?」

 

「協力感謝する」

 

「ああ、もういい。早くランチにしよう。友達を一人待たせているん……うひゃあ!!」

 

「どうした、やけに可愛い声で鳴くじゃないか?」

 

「か、かわ!?う、うるさい!ううう……そ、その、なんだ……あそこに虫が、だな」

 

 

私の目線の先には、一匹の小さな甲虫が地面を這いずっていた。

 

 

「意外だな。女の子らしい一面もあるじゃないか」

 

「お前は私を何だと思っていたんだ。言ってみろ!」

 

「拳銃を普段から携帯する男勝りな女だな」

 

「こ、この……言わせておけば」

 

「お前が言わせたんだろうが」

 

「く、くぅうう……!!お前、絶対性格が悪いって言われるだろ!!」

 

「そんなことはない。『イイ性格してるな』と、よく仲間には言われたもんだ」

 

「それは絶対にニュアンスが違うだろ!?」

 

「ああ。どうでもいいが、さっきの虫だが、今はお前の足元にいるんだが平気なのか?」

 

「それは早くいええぇぇぇえええ!!!」

 

 

冷静さなど地平線の彼方まで飛んでいった私は、思わず彼に飛びついてしまう。

普通ならば、突然の衝撃に二人して床に倒れこんでしまうのだが、そこは曲がりなりにも私の護衛。

しっかりと受け止め、尚且つ受け止めた私を両手で下から救い上げるような姿勢へ。

まあ、その、なんといか、所謂『お姫様抱っこ』という姿勢になってしまった……。

 

 

「……!!!!」

 

「どうした?熱病か?顔が真っ赤だぞ」

 

 

それなのにコイツはまるで、無理やり荷物持ちに付き合わされ辟易している、とでも言わんばかりの呆れ顔をしていた。

だが、何を思ったか今度はいつもの無表情に戻ったかと思うと、ニヤリと新しいおもちゃを見つけた少年のような顔をする。

短い付き合いではあるが、確実にわかる。こいつは不味い。

危険を察知した私はジタバタとコイツの腕の中でもがく。

 

 

「は、離せ!この!」

 

「ふむ、良い肉付きをしている。つくべきところに肉が付き、胸を除き、余計な脂肪はついていない」

 

 

ヤツは冷戦に分析し始め、私は必死に抱きかかえた姿勢から脱しようと更に四肢に力を込めてもがくが、その入れた力をうまく体と腕で外へ逃がされてしまう。

 

 

(これは、合気道!?いや、違う。これはCQCの応用か!!)

 

 

神業的な狙撃をする、と言っていたので、勿論CQCにも精通しているとは推測していたが、近接格闘においても全く尋常ではない技量を持っている。

全く、親父はこの平和な町にとんだスーパーマンを呼び込んだらしい。と、少しだけ戻って来た冷静な感情が告げる。

そして、それと同時に、当たり前の事を思い出す。

 

 

(ひょっとして今この状況、知り合い、というか人に見られたらヤバくないか!?)

 

 

ひょっとしなくても、非常に不味い状況だ。

ここはプライドを一時的に捨て、この状況から抜け出さなくては。

取り敢えず体の力を抜き、上にあるコイツの目を見る。このとき、上目遣いになっていたのは、体勢的に仕方のないことだった……。

 

 

「な、なあ。もういいだろ?いい加減離してくれよ……」

 

「別に困らせるつもりはなかったんだ」

 

 

そう言ってコイツはまた笑うが、その笑い(、、)嗤い(、、)に思えてしょうがなかった。

ここでさっさと下りればよかったのだが、何を思ったか、この時私は、「そういえば、お姫様抱っこされるなんて、普通の女の子みたいだ」なんて思ってしまったからいけない。

私の頬は仄かに朱に染まり、そのままコイツと見つめ合う格好になる。

そこへ、金色のふんわりヘヤーで、いかにもお嬢様といった風貌の少女が一人、こちらに手を振りながらこっちへ走ってくる……!!

 

 

「リゼせんぱーい、探しましたよ。待ち合わせの場所になかなか来ないので、教室まで探しに行ったんですけど、クラスの方々がこち、らの方面、へ行ったと、お、おお、しえて、てててええええええええええ!?!??!??!??!?」

 

 

手を振った格好のまま、少女はフリーズし、絶叫する。

よりにもよって。この学校で一番見られたくない友人にこの恰好を目撃されてしまう!!

 

 

「しゃ、シャロ!?違うんだこれは!!じ、事情があってだな!!」

 

「り、りりり、リゼ先輩が、お、おお、男の人と一緒で、男の人が、リゼ先輩と一緒で、ふ、、二人が抱き合ってて!!お姫様でええぇぇえぇえええええ!!」

 

「シャロ、頼むから落ち着いて話を聞いてくれ!」

 

 

そんな私の呼びかけは金髪の少女――桐間紗路(きりましゃろ)には全く届いている様子はない。

 

 

「お、おお、おおお?」

 

「シャロ?聞いているのか?シャロ!?」

 

「お邪魔しましたぁあああああーーーーー!!!!」

 

「待ってくれぇええーーー!!話をきいてくれえええーーー!!!!!!」

 

 

私の絶叫も虚しく、シャロは語尾のあを伸ばしたドップラー効果と共に、廊下の曲がり角を曲がって、姿が見えなくなってしまう。

 

 

「何やら、大変なことになってしまったな」

 

「お前がそれを言うか!?ことの発端はお前だろうが!!」

 

「いや、元をただせばさきほどお前の足元にいた……この甲虫が原因だな」

 

 

ヒョイ、と彼は私の足元にいた甲虫を摘み上げ、窓から外へ逃がした。

 

 

「何だ、殺さないのか?軍人だろ?臆したか!この臆病者め」

 

 

かなりの興奮状態にあった私は、勢いのまま過激な挑発をする。あわよくば、この挑発に乗ったコイツの隙を狙い、コイツから距離を取る為に。

だが、その後に意味深な返しが待っていた。

 

 

「確かに軍人だが、今の任務は殺しじゃない。それに、殺しだったとしても、俺には殺せない。文字通り、虫一匹たりとも、な」

 

「は?」

 

 

肩すかしを食らったかのように、私はあっけにとられ、眉をひそめる。

意味が解らない。

本当に、意味が解らない。だが、私はこのときコイツの大切な何かに微かに触れた。そんな気がした。

そして、今の発言はその言葉を発した本人さえも、少なからず驚いているようだった。なんて自分は今こんなことを話したんだ、といった具合に。

その驚いた拍子に力が微かに緩み、私は飛びだすように彼から距離を取る。経過はどうあれ、作戦は成功した。

しかし、距離を取ったは良いものの、この後どういった行動を起こせばいいのか、私はわからなくなった。

静寂が訪れる。

だが、そんな静寂を前に、先に意識を回復した彼がそれを破った。

 

 

「こんなとこで油を売っていていいのか?友人を待たせているんだろ?」

 

「あ、そ、そうだな、早くシャロと合流しないと。……って、さっきとんでもない誤解を受けたばかりだぞ…。どんな顔して会えばいいんだ」

 

「試しに、変顔で会ってみたらどうだ?緊張はほぐれるぞ」

 

「余計頭がおかしくなったと警戒されるだろうが」

 

「別に、通常通りでいいんじゃないか?やましいことはなにもないのだからな。きちんと話し合えば余計な衝突は避けられるだろう」

 

「そ、それはそうだが……いや待て、そもそもこれはお前が原因なのであって」

 

「その話はもういいだろ。今は、お前の友人にどうやって話をするかだ。軍人の娘なら、今やるべきことと、そうでないことの見分けぐらい付くだろう?」

 

「……わかった。お前の一件は持ち帰った後、処遇を決定する。……取り敢えず、シャロに連絡をしよう……だが、なんていえばいいんだ……?」

 

 

そこまで言われては、流石に頭も冷える。冷えた頭で改めて考え、誤解を解くのが先だとするが、そうなると、今度は連絡手段は普通に電話でいいだろう。

素早くポケットから携帯電話を取り出すが、そこで尻込みをしてしまう。

 

 

「……面倒だ。携帯を貸してくれ」

 

 

それを見かねた彼は、私から携帯をひったくると、シャロの番号に勝手に電話をかけてしまう。

 

 

『リゼ先輩!?……じ、実はですね。さっき妙な白昼夢を見まして。すごいんですよ。リゼ先輩とうちの制服を着た知らない男の人が、先輩をお姫様抱っこしてて、その人の顔を先輩が赤らんだ頬と、潤んだ瞳で上目づかいで見上げてるんです。アハハ、ほんと、すごい白昼夢ですよね~』

 

「リゼ先輩、とやらは預かった。返して欲しくば、先程の掃除用具室までこい。制限時間は一分だ」

 

「ちょ!?」

 

 

ぶつ、と言いたいことだけ言った彼は、通話を終了してしまう。

 

 

「おいこら、どうして誘拐犯なんだよ!?」

 

「こちらの方が急いでくれると思ってな」

 

「お前なぁあ!!」

 

「り、リゼ先輩!!無事ですか!?って、さっきの男の人!!??!??あなたが犯人だったんですか!?」

 

「人違いだ。他を当たってくれ」

 

「あ、そうなんですか、すみません」

 

(信じた!?)

 

「リゼ先輩!!ご無事ですか?」

 

「あ、ああ、大丈夫だ。この通り、ぴんぴんしている」

 

「よ、よかったぁ。さっき先輩の携帯から電話がかかってきて、知らない男の人が先輩を預かったなんて言うので。ああ、でも、無事なら良かったです」

 

「心配してくれてありがとう。……それで、さっきの事なんだが…」

 

「さっき?」

 

「ほ、ほら、コイツと私が、そ、その、抱き合っていたことだ」

 

「……夢じゃなかったんですか?」

 

「ああ、いっそのこと、私も夢の出来事にしてしまいたいが、事実だ」

 

 

友達には嘘はつけないし、付きたくないので、私は、こうなるまでの経緯を説明した。

彼の素性も含めて。

彼は「一般人に話していいかと聞いてきたのはお前じゃないか」とでも言いたげな顔をしていた。

そのことで多少溜飲は下がり、何とかシャロの誤解を解くことには成功した。

 

 

「と、いうわけなんだ」

 

「た、大変だったんですね」

 

「ああ、リゼは想定していたよりも体重が重くて大変だった」

 

「そんなことないだろ!?」

 

「なに、脂肪よりも筋肉が発達しているだけだ。太っているわけではない。安心しろ」

 

「なんのフォローにもなってない!!」

 

「えっと、と、取り敢えず、私、桐間紗路って言います」

 

「風見雄二。雄二でかまわない」

 

「じゃあ、雄二先輩で」

 

 

あんなことの後だというのに、丁寧に自己紹介を済ませるシャロ。あの社交性の高さは是非とも見習いたい。

と、思ったのだが、

 

 

(相手の歩幅三歩分距離が空いてる)

 

 

警戒はといていなかった。

 

 

その後、彼が食堂に出ていくのは注目を集め、尚且つ野放しにしておくのは危険だ、という事で、購買でサンドイッチを今日驚かせてしまったお詫びとして、私と彼が互いにシャロに昼食を奢った。

表面上は何も言わなかったが、明らかにシャロは彼を警戒していた。

そんなこんなで、シャロと彼――風見雄二のファーストコンタクトは、私に次ぐ惨事で幕を下ろしたのだった。

 

 

 

 

 




はぁ、はぁ。
途中、間違えて閉じてしまい、途方にくれました。
書き直してから気づいたんですけど、自動保存なんて便利な機能があるんですね。。。。
はははは、今日も平和だなーー(目の端に光るもの)


追記:台本形式から脱却、誤字脱字、おかしい表現などを修正

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