ご注文は護衛ですか?   作:kozuzu

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グリザイアの迷宮、楽園アニメ化しているのを観て書きたくなってしまいました。
初投稿です。宜しくお願いします。
グリザイアの時系列は学園入学する直前です。
ごちうさの方はココアが入って少し。プールに行く前です。
それでは、


プロローグ 護衛と敵影ってなんか似てるよな。それが答えだ。

「今日から、お前に護衛がつく」

 

「え?」

 

 

唐突に親父に呼び出された私は、いつもなら「了解いたしました」と言うところを府抜けた返事をしてしまった。

そればかりか、鳩が豆鉄砲をくらったような面まで晒してしまう。淑女にあるまじき失態だ。

 

 

「発言を許可する」

 

「あ、そ、その・・・何か特別な事情でもあるのか?」

 

 

そんなこと、訊かずともわかっている。

特別な事情でもない限り、私に護衛が付くことなどあり得ない。それは私が幼い頃から軍人の子として育てられたからである。

ちょっとやそっとのことでは動じない為の訓練は積んできたつもりだ。暴漢や変態などの類いなどには遅れはとらない。

その事は、そう育てた親父が一番理解しているはずだ。

であれば、だ。

何か私の手に負えない状況なのかもしれない、そう推測するのは自然なことだ。

ラビットハウスや学校の皆にも危害が加わる可能性があるのかもしれない。

そう思うと、自然と顔が強ばり、背筋が延びる。

だが、そんな私の緊張を察した親父は、頬を緩ませる。

 

 

「大丈夫だ。特にそういった事情ではない」

 

「そ、そうか…なら、良いのだが」

 

 

まずは一安心といったところだろうか。

皆に危害が加わる心配は拭えたわけだが、それだと、私に護衛が付く意味が余計に理解できない。

 

「まあ、護衛といっても形だけのものだがな」

 

と、親父は苦笑する。

ますます意味がわからない。私は首をかしげるばかりだ。

 

 

「事情はおいおい説明する。まずは、護衛に付く者を紹介しよう。…入ってくれ」

 

「はい」

 

 

親父の呼びかけに一拍置き、聞き慣れない声が真後ろから聞こえた。

 

 

「!?」

 

「そう警戒するな。彼に敵意はない」

 

 

そうは言っても、これでも私は実戦に出たことはないが厳しい訓練を、受けた(受けさせられた)身だ。人の気配には人より少しだけ、ほんの少しだけ敏感なはずだ。

それが、全く気付けないなんて……。

 

 

「紹介しよう。今日からお前の護衛の任に付いてもらう、風見雄二君だ」

 

「本日付で護衛の任にあたることとなった、風見雄二であります! お嬢と同級であります」

 

「な!?」

 

入室してから直立不動、さらに軍人のような台詞で自己紹介を無表情に告げる彼。

そう、彼。 男。 男性。 少年。

様々な異性を意味する単語が頭に駆け巡る中、私は狼狽する。

 

 

「どういう事だ親父!?」

 

「こういうことだ」

 

「答えになってないぞ!!質問の答えには具体的かつ簡潔な返答をしろと教えたのはあんただろ!?」

 

「まあ、落ち着け」

 

「これが落ち着いていられるか。百歩譲って護衛の事は置いておくとして、何故それがお、おおお、男なんだ!?おかしいだろ!!」

 

「話せば長くなるんだが……そうだな、少し前に起きた旅客機の立て籠もり事件は覚えているか?」

 

「ああ」

 

 

確かに、空港でテロリストの旅客機の立て籠もり事件があったとテレビで放送されていたが、それがこの護衛の事と何の関係があるというのだろうか?

 

 

「あれで人質に取られた女性、メディアには内密にされているが、うちの軍の元帥の一人娘だったらしい」

 

「はあ!?」

 

 

衝撃の事実だ。確かに、少し前に旅客機の立て籠もり事件があったのはニュースで観た。

人質を取られたが、軍の突入部隊の活躍により、犯人のテロリスト以外は乗客、乗組員、人質までもが傷一つなく解放されたという、記憶に新しいニュースだ。

だが、先ほどの親父の言葉が本当であれば、軍の危機管理で軍法会議もの事案だ。

 

「どうも、元帥が一人娘と喧嘩して家出中の出来事だったらしい。その時は元帥は別件で立て込んでてな。歯がゆい思いをしたと同時に、その時一番の功労者、つまりは彼にお礼がしたいと申し出た」

 

「功労者……?」

 

「あの霧の中で、旅客機の入口に立っていた1300m先の犯人の、銃を持っている手だけを正確に打ち抜いた。そして、知っての通り、人質は無事だった。全くの、無傷」

 

「う、嘘だろ……??」

 

訓練の内容には、勿論実弾射撃も含まれていた。なので、その状況下での狙撃の無謀さ、またそれを成功させた手腕は、もはや凄腕という肩書をすっ飛ばし神業にまで匹敵する。

 

 

「流石に眉唾だろ……?」

 

「ああ、私も話を聞いたときには同じことを思った。戦果は往々にして尾ひれが付くものだ。兵士の士気を向上させるためにな……だが、彼は本物だ。私が、自分の目で確かに見た。約4000mにも及ぶ、超遠距離射撃をな」

 

 

その異常性は、もはや言葉に出来るものではなかった。対人狙撃最大有効射程は、差はあれど大体800~1000mが相場だ。

対物ライフルとそれに対応する弾薬を使用したとしても、その有効射程は2300mほどだったはずだ。その、約二倍。対人狙撃では、約四倍近い超々遠距離射撃だ。600m先の的にも当てられるかすらわからない私にとっては、もはや未知の領域だ。

 

 

「発言、よろしいでしょうか?」

 

「ああ、構わん。というか、肩書は護衛だが、君は我が国の元帥の恩人。もう少し砕けた口調で構わんよ」

 

 

親父は頬を緩ませる。だが、彼の表情は全く変わることはなかった。

私はそれが少し不気味だった。彼の変わることのない表情が、闇夜をさまよう幽鬼のようで。

 

 

「ありがとうございます。では、差し出がましい様ですが、さすがに4000mは尾ひれがつきすぎです」

 

「そ、そうだよな。流石に、4000mはないよな……ははは」

 

 

流石に、4000mは脚色が過ぎる。

全く現実味に欠けた数字だ。

 

 

「正しくは、4350ヤード。メートル換算で3977.64mです」

 

 

そこなのか!! 単位の問題なのか!?

 

 

「ははは、まあ約4000mという事でいいだろう」

 

「は、話を中断させてしまい、申し訳ございませんでした」

 

「ええと、どこまで話したかな…?ああ、そうだ。で、元帥がどうしてもお礼がしたいと申し出た。……そこで彼は、なんて言ったと思う?」

 

 

親父が、まるで小さな子供に諭すように私に疑問を投げかける。

そのニヤついた顔が心底気色悪く、思わずナイフを投擲しそうになったが、どうせ投げても最低限の動作で回避されるのが目に見えていたので、私は何とか心を鎮め、答えを模索した。

 

 

「……そうだな、二階級特進、とかか?」

 

「何故助けた相手を殉職させる必要があるんだ、違う」

 

「じゃあ、うさぎのぬいぐるみ」

 

「確かにそれはそれで笑えるが、違う」

 

 

面倒になってきた私は、投げやりに答える。

 

 

「じゃあもう、一個師団寄越せ、とか無茶な要求したんじゃないか?」

 

「そうだったら元帥は彼をここまで気に入らなかっただろうな」

 

 

じゃあ、何だというのだ。

面倒だ。さっさと答えが欲しい。

そんな不満げな表情を親父は満足そうに確かめ、こう言った。

 

 

「答えは、『報酬は既に貰っている。追加報酬は無用だ』と」

 

「一軍人の模範解答じゃないか。それのどこが元帥に気に入られる要素になりえるんだ?」

 

「まあ聞け。続きがあるんだ。その後に付け足すように『どうしてもというなら……そうだな、酒池肉林か又は……普通の学校というのに、通ってみたかった』ってね」

 

「……」

 

 

私は、本日二度目の豆鉄砲を食らい、先程よりもひどい阿呆面を晒した。

が、今度は瞬時に回復。すかさず反撃。疑問を親父にぶつける。

 

 

「それが何で私の護衛につながるんだ?」

 

「ああ、それは元帥の意向だ。本当は普通の学校に通わせてやるつもりだったのだがな、彼の所属する会社がそれを許さなくてね」

 

「それで?それがどうして」

 

「彼を所有する会社から、買い取った。丸ごと彼を」

 

「はああぁ!?」

 

「で、その才能を腐らせてはいけない、いつでも、起用できるようにと階級と軍属を与えた。流石に士官待遇というわけにはいかなかったが、護衛という任務を与え、あくまでその任務という建前で彼には卒業まで普通(、、)の学園生活を送ってもらうことにした」

 

「何故形だけの護衛なのかは理解した。でも、なんでわざわざ私のところなんだ?他にも学校は腐るほどあるだろう?」

 

「ああ、本来なら元帥の一人娘の学園に入れてやるのがしかるべきなのだろうが、残念ながら彼女の学園は女子高だ。更に運の悪いことに、彼と同い年の子供を持ち、尚且つ、その子がとある条件(、、、、、)を満たす学校通っている、という軍人が軍の中で十数名ほどしかいなくてな。どうすべきか揉めたのだが…結局、くじ引きになった。で、だ」

 

なんてしょうもない、と思いつつもそれでさらに揉め事が起きて足並みが乱れては笑えない。そんな顔で親父は言った。まあ、ここまで推理の材料が用意されているんだ。もう、答えは一つしかない。

親父は、一呼吸おいて、

 

 

「くじ、当たっちゃった」

 

 

予想通りの答えを、口にした。しかも、軍人にあるまじき超軽い態度で。

 

 

「いや、私も女子高なんだが……」

 

「いや、何事にも例外はつきものだしな」

 

「じゃあなんで元帥の娘の学校にしなかったんだよ!?」

 

「あそこはほら、軍の圧力とか効きにくいから」

 

「うちの学校は何とかなるような言い草だなおい……」

 

「知らなかったのか?あの学校、母体は我が軍関係だぞ」

 

「……おおう」

 

 

またもや衝撃の事実だった。

という事は、とある条件(、、、、、)とやらは、軍が学校の運営に関与しているか否かといったところだろう。

であれば、それらの条件を備えた軍の関係者は確かに数が限られてくる。だが、だからといって、そこで見事くじに当選してくる、この親父の無駄な幸運を恵まれない子供たちに分配しなおしてほしいところだ。

かなりのところまで追い詰められた私に、親父は、

 

 

「それにこれは元帥直々の行動だ。それに今更異議を唱える、などという事をしては後々の関係維持に支障が生じるかもしれん」

 

「だ、だが」

 

「最も、お前が嫌だというのであれば、この話は彼には悪いがなかったことにしてもらおう。お前の意志を、私は尊重する」

 

 

このタイミングでその発言は、多分確信犯だ。私が、断れないという状況をあえて作り出している。

元帥たってのお願いとあらば、逆らうことは許されない。先程言った通り、くじに参加し、当選した後にわざわざ辞退するなどという不祥事をやらかせば、元帥の面目は丸潰れ。印象は最悪だ。

 

「……」

 

 

隣に立つ彼を横目で観察するが、自分の境遇に対して話し合われているのに、まるでご近所の井戸端会議を聞き流しているかのような態度だ。

彼的には、別にどうでもいいし、なんでもいいのだろう。

自分の意見など、全く意味を成さない。それが日常だった世界の住人。その無表情からは、何も読み取ることが出来なかったが、私にはそれが一種の諦めのように感じられた。

……………何故だかそれが、私の心のどこかに引っかかる。

こんな感情は初めてだった。恋愛感情や、疎ましさとはまた別の何か。

心の中で、親父に対する怒りと、軍での立ち位置に関する冷静な損得勘定、そして、得体のしれないもやもやが入り混じって………やがて、私は溜息を一つ、そして、口を開く。

 

 

「わかった。引き受けよう」

 

「すまない、今度の休み一緒に買い物でも行こう」

 

「いや、お金だけ渡してもらえれば友達といってくる」

 

「………、」

 

 

沈んでいる親父はともかく、護衛とは言ったものの、隣に立つ彼の影からは護衛であるという状況下での頼もしさは感じられず、その影はまるで、野戦の最中に視界の端にチラリと一瞬だけ映り込んだ敵影のようだった。

これが、風見雄二と私こと天々座 理世のなんとものど越しの悪いファーストコンタクトだった。

 




あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~
この言葉に、何度救われたか、もう数えることが出来ません。
全く、ごちうさは最高だぜ!
なんて調子こいてssを書いてみたものの、「どうしよう、癒された分だけ叩かれて心をへし折られたら、どうしよう」なんて今もキーボードを叩く手が震えています。
ああ、本当に、怖い、暗い・・・・ですが大丈夫。例え、たたき折られても、アニメで回復すればいいのさ(叩かれること前提)
さて、そんなこんなでグリザイアの果実、迷宮、若干楽園要素を詰め込んだssとなっております。
時系列は前記の通り、美浜学園に入学する直前。もしも助けた相手が学園長じゃなくて、リゼちゃんの親父さんとこのお嬢さんだったら?というifストーリーとなっています。
グリザイアはなまじ原作の出来が良かったため、グリザイアファンの方々には大変お見苦しい出来となっていることと思います。
また、ごちうさに関しても、原作の可愛さはもはや神の領域なので、0.00001%でもかわいさが伝えられたらと思っています。
長々と失礼いたしました。今回はここまでで筆をおかせていただきます。
次回から本格的にラビットハウスやその面々との出会いと絡みを書かせていただきたいと思います。それでは、あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~


追記:なんだかんだで台本形式から脱してみました。

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