Croce World―君に呼ばれて―   作:紅 奈々

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ふははは、待たせたな、Mdイガ栗⊂( ・∀・) 彡 =͟͟͞͞(✹)`Д´)

はい、大変長らくお待たせしました。
第4話です。
良い子の学生諸君!
学校お疲れ様ですのだよ!


第4話

学校も終わり、琉歌は一足先に総紗に戻っていた。

特にやることが無い。

さて、これからどうしたものか・・・・・・と、琉歌は駅を出て考える。

 

「安藤さん、一緒に帰ろ!」

 

後ろから、水田が声をかけてきた。

うげっ、そう言えばこいつも、途中まで同じ帰宅路だった。

琉歌はあからさまに嫌な顔を浮かべる。

しかし、周りは薄暗い為、水田にその顔は見られることはなかった。

 

「私は──」

 

──パッパー!

不意に、琉歌の言葉を遮る様に車のクラクションが鳴った。

音のした方を見れば、後ろに見たことのある黒い車が停まっている。

 

「琉歌ぁ!」

 

「スク・・・・・・? どうして?」

 

車から聞こえた声に、琉歌は目を丸くして、呟く。

車が移動してきて、琉歌の隣に停まった。

 

「何でスクが? 珍しいね。

明日は局地的に国際宇宙ステーションでも降るのかな?」

 

「涼しい顔で不吉なこと言ってんじゃねぇ。

近くで用があってなぁ。

この辺まで来たことだし、お前を拾って帰ろうと思っただけだ」

 

琉歌の言葉にスクアーロは肩を落とす。

琉歌の隣に居た水田は、未だに驚いている顔で固まっている。

軈て、水田は口を開いた。

 

「安藤さん、誰!?

このイケメンな外人さんは!?

安藤さんの彼氏!?」

 

水田は興奮している様だった。

琉歌もスクアーロもそれを見て、引く。

 

「な・・・・・・何だぁ、こいつは?

お前の友達か?」

 

「まさか。 背景(クラスメイト)

 

「お前の言葉に容赦のない意味が含まれているように思うのは俺だけか?」

 

「事実だもの」

 

琉歌の言葉にスクアーロは肩を竦めた。

琉歌に友達が居ない理由って、こう言う所も原因じゃねぇのか?とも思う。

 

「私、安藤さんの友達の水田こゆきって言うの!

安藤さんがお世話になってます!」

 

語尾に星を付けて言う、水田。

スクアーロは琉歌の肩を小突いた。

 

「友達言われてるぞぉ?」

 

「やめて。 背景(クラスメイト)背景(クラスメイト)だよ。

それ以上でもそれ以下でもな・・・・・・

・・・・・・以下だから」

 

「何故言い直した? そして、言い直した方が(ひで)ぇな、おい。

まぁ、良い。

少しドライブでもしてこうぜぇ。

どうせお前、帰っても暇だろぉ?」

 

「いや、私は・・・・・・」

 

「あ、じゃあ、琉歌の代わりに私が・・・・・・」

 

「俺は琉歌と話してるんだよ。

ちょっと黙ってろぉ」

 

琉歌とスクアーロの間に入ってこようとした水田に、スクアーロはあからさまに嫌悪感を剥き出して言った。

スクアーロは、水田の名前を聞いた時、思い出したのだ。

 

マーモンが言っていた。 琉歌をハブいている女子の一人であると言う事。

琉歌が水田の事を好いていない事は、琉歌の態度からも解る。

しかも、厚かましいと来た。

これは自分も嫌いなタイプである。

 

「お前に話があるんだよ。

いいから少し付き合え?

何なら、お前の好きな所に付き合ってやるよ」

 

スクアーロは琉歌に耳打ちをする。

しかし、琉歌はスッパリと言った。

 

「話なら、一緒に住んでるんだから家でも出来るでしょ。

今、物凄く気分悪いからさぁ、帰ってからにしてくれない?」

 

チラリと水田を横目に見ながら、琉歌は言った。

 

「えっ!? 一緒に住んでるってどういう事!?

だって、マーモン先輩やフラン君とベル君も一緒に住んでるんだよね!?」

 

「そうだけど?

このロン毛は、マーモンとベルとフランの兄貴なの、一応」

 

「誰がロン毛だぁ!

それより、良いから来いよ。

大切な話だ。 お前も彼奴らに聞かれるのは嫌だと思って、言ってるんだが?」

 

「・・・・・・」

 

琉歌は考えた。

スクの話って何だ?

チラリとスクアーロを見れば、物凄く真剣な顔をしていた。

 

「解ったよ、付いてくりゃあ良いんだろ。

ほら、助手席の鍵開けて。

ちゃっちゃと行って帰ろ。 疲れてんだから。

と言う訳で、私はもう帰るから。

一人で帰ってよね」

 

後半は水田に向けられた言葉だ。

水田が呆気に取られている間に琉歌はスクアーロに鍵を開けて貰い、車に乗り込んだ。

琉歌が車に乗り込んだのを確認すると、スクアーロは車を出した。

 

 

「で、話って何?

その為だけに態々(わざわざ)私を待ってたんでしょ」

 

「う゛ぉい、バレてんのかよ・・・・・・」

 

「まぁね。

スクには私の帰宅時間は教えてないし・・・・・・今日早く帰ったのも予定外だし。

と言う事は、スクは私の帰宅時間を知らないから、必然的に早い時間から駅で私を待っていないといけなくなる。

――どうせ、スクの話も今朝のどうでも良いような事でしょ」

 

「探偵か何かかよ。

つか、ホントに可愛くねぇな、おい。

こう言う場合はもう少し喜ぶとかだなぁ・・・・・・」

 

「普通の女ならキーキーキャピキャピ言いながら、猿の如く喜んでたかもね。

猿人系女子じゃなくてごめんなさい?」

 

「謝罪なのか嫌味なのかどっちかにしろぉ!?」

 

琉歌の嫌味たっぷりな謝罪を受けて、スクアーロは思わず突っ込んだ。

 

「で、話とやらをしてもらおうか。

明日はバイト休みだけど、ちょっと予定が入ってんのよね、朝から」

 

「そうかぁ、それは悪いことしたなぁ。

まぁ、ちょっと話したら帰るぞぉ」

 

話している内に、車は目的地へと着いた。

そこは、蒼星川(あおほしがわ)の河川敷だった。

車を停めたスクアーロは、琉歌に向き直る。

 

「最近、何かあったかぁ?

クソボスとか、気持ち悪ぃほど心配してたぞぉ」

 

「何も無いよ。

全く・・・・・・XANもスクも、ホント気持ち悪いって・・・・・・。

本当に明日、宇宙ステーションでも降ってくるんじゃないの?

自分と同等かそれ以上の実力を持ってる人間以外を気にしないスクはおろか、人間不信その物なXANまで、本当にどうしたのさ?」

 

「そんなモンが簡単に降って堪るか。

つーか、何だぁ?

お前の中じゃオレ達はどんな認識なんだよぉ?」

 

肩を竦めて言う琉歌に、スクアーロは首を傾げて訊く。

自分たちの事は知っているみたいだが、それを踏まえて琉歌が自分たちをどう思っているのかを少し知りたかったのだ。

琉歌は「んー」と顎に湯べを添えて考え込み、軈て口を開いた。

 

「XANは、人間不信の憤怒の塊、スクは傲慢な鮫、ルッス姐は変態死体愛好家(ネクロフィリア)、マーモンは守銭奴、ベルはサイコパスな殺人鬼、フランは毒舌蛙、んで、この場には居ないけど、レヴィ・ア・タンはタコスを擬人化したような顔のすっごく弱そうな三十路過ぎのボストーカー」

 

「何気に(ひで)ぇなぁ、おい。

つか、レヴィの事も知ってんだな」

 

「まぁね。

言ったじゃん、スク達は漫画の世界の住人で、私はその漫画が大好き。

二次創作だって書いてるよ」

 

「あぁ・・・・・そう言えば言ってたなぁ、そんな事」

 

琉歌の話に頷く、スクアーロ。

今の今まで普通に何事も無く過ごせていたので、スクアーロは自分たちが夢渡りをしてきたのだと忘れていたようだった。

 

「だから、まぁ・・・・・・皆ちょっと怖かったかな・・・・・・。

私の言い方にも誤解を生む所はあったにせよ、殺気駄々漏れで寄られると、ちょっとね」

 

「あン時かぁ。

俺たちもそれぞれの任務の帰りに突然飛ばされたモンだからよぉ、警戒しすぎちまってたんだよなぁ。

それは今でも悪かったと思ってるぞ」

 

「まぁ、普通は目が覚めれば見知らない所、なんて殺し屋じゃなくても警戒するわな」

 

琉歌の言葉の後に静寂が訪れる。

少しだけ静かにしていれば、スクアーロからポツリと切り出した。

 

「今は皆、お前に感謝してるんだぜぇ?

お前が居なけりゃ、俺たちは知らねぇ所で野たれ死にしてた所だ。

だから、まぁ・・・・・・俺たちもそうだが、ベルやフラン、マーモンがお前を避けたり疎う理由がねぇ。

学校で何があったかは訊かねぇが、もう少し彼奴らを信用してやっても良いんじゃねぇか?

お前が学校で疎まれてようが、彼奴らはそんな事を気にする様なヤワな奴らじゃねぇ。

それはお前も、解ってんだろぉ?」

 

「・・・・・・」

 

スクアーロの言葉に、琉歌は顔を俯けて黙り込む。

確かに、自分の心配は杞憂なのかもしれない。

でも、自分のせいであの三人が孤立するくらいなら──。

 

「彼奴らは思ってることは素直には言わねぇが、彼奴らなりにお前を気にかけてんだぜ?

それを無下にできるほど、お前は冷血か?」

 

「わた、しは・・・・・・」

 

琉歌は、それ以上何も語らなかった。

どうしたら良いのだろう。

スクアーロ伝いに聞いても、マーモン伝いに言われても、それはベルとフランの言ったことではないのでそれを信じる事は出来なかった。

 

社交辞令では? 腹の中では何を思ってる?

そのままを受け止めて良いものか?

ぐるぐるとそんな考えが琉歌の中で回り回る。

 

嫌な考え方だが、琉歌にとって人間と関わる事は、石橋を叩いて渡るよりも慎重にならないといけなかった。

軈て、琉歌は口を開く。

 

「もう少し、確信が欲しい・・・・・・。

信じても大丈夫だという確信。

私自身、彼らと仲良くしていきたいとは思ってるよ。 ルームシェアしてるし。

でも、やっぱり彼らの事を考えると、クラスメイトとの交流は絶対必要なワケで。

私なんかと関わっていたら、彼らは孤立してしまう。

それは、あの学校にいる上では良くない。

特に、私の学年はやたらと協調性を重視してくるから・・・・・・」

 

「一人をハブる事で得る協調性は、協調しているとは言わねぇぞ?」

 

スクアーロの言葉に、琉歌は顔を上げた。

スクアーロは続ける。

 

「協調性っつーのは、お互い妥協しながら歩み寄って行く事を言うんだぁ。

一人を省いて仲間意識を持ってるんならそれは、誰も何も妥協してねぇ。

そんな仲間意識は、その一人が居なくなりゃ直ぐに瓦解するぞ。

そんなヤワなグループにいるより、少人数でもちゃんと安定した関係を持てるグループにいる事を彼奴らは望むだろうなぁ」

 

「・・・・・・」

 

スクアーロの話を聞いて、琉歌は黙り込んだ。

確かにスクアーロの言うことも一理ある。

 

今のクラスは、特に女子は一人を標的にして均衡を保っている様に見える。

その証拠に、リーダーが居なけりゃ水田はこっちにすり寄ってくる。

それはつまり、何かを標的にしないと均衡が取れないと暗に言っていた。

 

「ま、時間はあるんだぁ。

まだ帰れる兆しもねぇし、ゆっくり考えれば良い。

彼奴らにも、琉歌については暫くそっとしておいてくれるだろうよ」

 

ポンッと琉歌の頭に手を乗せて、スクアーロは微笑んだ。

 

「・・・・・・うん・・・・・・」

 

不思議と嫌じゃない。

マーモンに髪を撫でられた時とはちょっと違う様な気がする。

少し擽ったい様な、でも、安心する。

 

スクアーロの左手は義手だから両手に手袋をしているので、体温的な暖かさは感じないが、不思議と胸のあたりがポカポカする。

小さい頃、たまにしか会えない兄に頭を撫でられた時と同じ感覚に近いかもしれない。

 

琉歌とスクアーロは暫く、月の光を反射してキラキラ光る水面を眺めて、帰路に就いた。




琉歌教カースト
親友<友人<クラスメイト<他人<背景(←水田ココ)

琉歌の好き嫌いや琉歌とどう関わっているかで左右されるカースト。

・背景
最早、クラスメイト・・・・・・いや、他人ですらない。
琉歌が大嫌いな人間が主に分類され、琉歌が気にすら止めない。
空気。

・他人
全く話したことのない、または必要以外話さない人。
そこ行く人間もとりあここ。
現時点では本田麗奈。

・クラスメイト
教室では話すが、それ以外では関わりのない人。
今の所、フランとベル。

・友人
教室でも話すが、外でもたまに会う人。
ここまで来るのは中々キビシイ。

・親友
教室でも話すし、暇さえあれば外で遊んだり、お互いの家を行き来する。
言いたい事もズバズバ言える間柄。
ここまで来た人間は、今の所、樹里(いつき)千鶴のみ。
その道のりは険しい。

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