Croce World―君に呼ばれて―   作:紅 奈々

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更新しました〜!
次の更新は明日の15時30分ですw←
何故かって?
続きが気になる〜!と思いながら悶々と1日を過ごす姿を想像すると、面白いからですよ←

焦らして焦らして焦らしまくる・・・・・・これぞ、S!←おい、青⚫️院蜻蛉



第3話

マーモンの話を聞いたスクアーロとXANXUSは、何とも言えない表情を浮かべ、黙り込んだ。

琉歌から学校での話を一切合切聞かないのは、その所為だったのか。

ルッスーリアが訊いても、はぐらかす訳だ。

 

「琉歌の事、守ってあげたいとは思ってるんだ。

現状のままは良くないと思うからね。

琉歌はただ、自尊感情が低くて卑屈になってるだけで、本当は凄く優しい子なんだと思う。 だけど・・・・・・」

 

「お前達が関わってくる事を拒絶してるんだろぉ?」

 

「うん」

 

「そこがネックだな。

琉歌の方が心を開かないと、こっちは何もできねぇ」

 

「そうだなぁ。

俺達は学校の方はどうにもできねぇから、学校の方はお前らに任せるしかないが・・・・・・せめて、家だけは彼奴の居場所であって貰いたいが・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

XANXUSとスクアーロの言葉を聞いたマーモンが、怪訝そうな顔で2人を見ている。

スクアーロはそんなマーモンに気付くと、「どうしたぁ?」と声を掛けた。

少し間を開けて、マーモンは口を開く。

 

「・・・・・・自分と同等かそれ以上の力を持った人間にしか興味を示さないスクアーロはともかく、他人自体に興味を示さないボスが琉歌を気に掛けているのが怖すぎる、と思っただけだよ。

・・・・・・何か悪いモノでも食べたの、2人とも?」

 

信じられない、と言いたげな表情をフードの下の顔に浮かべて、マーモンは言った。

2人の本来の性格を知っているので、マーモンは尚更、引く。

すると、スクアーロが言った。

 

「う゛ぉぉい、お前も人の事言えねぇぞぉ、この守銭奴ぉ!」

 

「まぁ、それは否定しないけど」

 

「べ、別に俺は餌付けされたとかそんなんじゃないからな!」

 

「お前キャラ何処行ったぁぁぁあ!?」

 

 

3人が話しているのを、琉歌はダイニングに続くドアの前で聞いていた。

別に、聞きたくて聞いていたワケではなく、食べ終わった皿を下げようとキッチンに向かっていたら、聞こえたのだ。

 

琉歌は何を思うでもなく、しかし、今キッチンに入るのは気まずいので、琉歌は部屋に戻る事にした。

 

 

「馬鹿じゃない・・・・・・」

 

琉歌は部屋に戻った後、机に皿を置いて、ベッドに体を無造作に投げる。

ふかふかの布団に体が沈んだ時、ポツリと呟いて枕に顔を埋めた。

 

別に、気にする必要は無いじゃないか。 ルームシェアをしていると言っても、唯の他人だ。

それなのに、どうして気にする?

琉歌にはそれが理解できなかった。

 

ふと、自分の両親のことが頭を過ぎった。

 

『家族』だけで暮らしたいから、と、義理の父親に高校入学早々追い出されたのだ。

その『家族』に琉歌は含まれていない。

琉歌はあくまで『連れ子』であり、『邪魔』な存在でしかなかったのだった。

 

『せめて、あんたが男だったら・・・・・・』

 

出ていく直前、母親が言い放った言葉が蘇る。

どうして? あんたが今、腕に抱えている子供は女の子じゃないか。

私はダメで、その子は良いの? どうして・・・・・・。

 

琉歌の視界が歪んだ、その時──。

 

“・・・・・・歌”

“・・・・・・琉歌”

 

 

 

「琉歌、ねぇ、琉歌ってば」

 

「うぇ・・・・・・?」

 

誰かに起こされて、琉歌は薄く目を開ける。 瞼が重くて、濡れている感覚がある。

目の前には、心配そうなマーモンの顔があった。

マーモンがずっと呼びかけていたらしい。

琉歌は寝惚け眼で間抜けな声でマーモンに応える。

 

どうやらいつの間にか、眠っていたようだ。

 

「はれ・・・・・・? まぁもん?

ゔー・・・・・・っ。 いま、なんじ・・・・・・?」

 

「4時だよ。 君、ずっと起こしてたのに起きなかったんだ。

ベルとフランは先に行かせたから」

 

「4時ッ!?」

 

寝起きで舌が回らず、舌足らずに質問をする、琉歌。

マーモンの回答を聞くと一瞬で目が覚め、直ぐ様ケータイを机から取り上げると、画面を開いた。

 

そこには、大量の手紙を扇子のように持ってそれを振っている、頭がやたらとでかいブルーベリー色の歪な人形が画面を縦横無尽に歩き回っていた。 その吹き出しには「4時」と書かれており、ブルーベリーが時刻を告げているようだ。

 

琉歌は飛び起きた。

 

「うわぁぁあ、ごめん! 急いで準備する!

あと5分だけ待って!」

 

慌ててベッドから降りると、琉歌はバタバタと身形を整え、鞄を肩に掛けた。

 

「ごめん、ちょっと急ぐよ!」

 

「あ、うん、解った・・・・・・待って、琉歌」

 

マーモンの言葉に琉歌は歩き出そうとした足を止め、マーモンに振り返る。

「マーモン?」と首を傾げる琉歌の髪に手を伸ばして、マーモンは琉歌の髪を梳く様に撫でた。

 

「え・・・・・・っ、と、あ、あのー?」

 

目を見開いて驚いている琉歌の顔が次第に紅くなっていくのを見て、マーモンはハッと我に返る。

 

「あぁ・・・・・・ごめん、嫌だった?

髪、まだ寝癖が取れてなかったからさ。

もうちょっと待って」

 

驚いている琉歌とは対照に、マーモンは至って冷静に返す。

マーモンに髪を撫でられながら、琉歌は俯く。

 

(何だろ・・・・・・変なの。

なんか凄く擽ったい・・・・・・。

人間・・・・・・特に男なんか嫌いなのに、男に触れられるのは生理的に嫌悪感すら感じるのに・・・・・・。

マーモンに撫でられても、嫌な感じがしない・・・・・・寧ろ・・・・・・)

 

その時の琉歌にはまだ、その感情の答えが解らなかった。

それに気付いたのは、もっと先の話。

 

 

「はぁー・・・・・・ごめん、琉歌・・・・・・」

 

「ま、良いよ。よくある事だしね。

気にしない気にしない」

 

あれから、琉歌とマーモンは急ぎ駅に向かったが、二人でホームに入ったのと同じタイミングで電車が出て行ってしまったのだ。

息を切らせながら謝るマーモンに、琉歌は特に気にしていない様に手を振る。

 

「じゃあちょっと担任に遅刻連絡(ラブコール)でもしますかねー。

マーモンもちゃんと遅刻連絡(ラブコール)はしときねよ」

 

「あ、うん、解ってる」

 

電話を掛けながら、琉歌はマーモンに口早に言った。

暫くして琉歌が電話に向かって話しているのが聞こえて、マーモンも携帯を取り出すと電話を掛けようとした。

しかし、それは琉歌に阻止される。

暫くして、電話を切った琉歌は言った。

 

「担任がまだ来てなかったから、鈴原先生に私とマーモンの遅刻、教えといた。

だから、マーモンは連絡しなくて良いよ」

 

「そうか、ありがとう」

 

「ま、ついでだし?」

 

話題が無くなって沈黙する。

夏の風が閑散とした田舎の駅に流れる様に吹いた。

 

隣の琉歌を見ると、もうすっかり暑いというのに琉歌は黒い長袖のパーカーを着ている。

 

「琉歌っていつも長袖着てるけど・・・・・・暑くないの?」

 

話題がなくてつい、その話を持ってくる。

マーモンの言葉に少しだけ思案すると、琉歌は言った。

 

「メッシュの薄いパーカーだし、暑くないよ。

パーカーないと落ち着かなくてね」

 

「へぇ・・・・・・でも、見てるこっちはかなり暑苦しいよ。

何か、脱げない理由でもあるの?」

 

マーモンがそう言った時、琉歌は確かに表情を変えた。

それは、初めて会った時に見せていた、警戒の表情。

何か失言したかな?と考えたマーモンに、琉歌は言った。

 

「・・・・・・あまり、余計な詮索はやめて貰おうか。

私は、詮索するのもされるのも好きじゃなくてね」

 

明らかに警戒心を剥き出している、冷たい声。

マーモンは息を呑んだ。

クラスメイトや学校での先輩達に話し掛けられて受け答えする時の無機質で他人行儀な声とは明らかに異なった種類の冷たい声だ。

絶対零度の冷気すら感じる。

パーカーについてはこれ以上探らない方が良さそうだ。

 

「訳ありなのはお互い様でしょ?

マーモン達がどういう目的で夢渡りしてきたかなんて知らないし、詮索もしないけど・・・・・・それと同じ様に、必要以上に私の事を詮索するのはやめて貰いたい。

特に理由もない事だし、詮索されても困る」

 

「うん、解ったよ。

ごめん、もう何も訊かない」

 

「それが賢明だよ。

・・・・・・いつ帰るか解らないのに、深入りはしない方が良い。

それが、お互いの為だし・・・・・・余計な感情は時として正常な判断を鈍らせる・・・・・・」

 

《間もなく、普通・高倉行きの電車が参ります。

危険ですので、黄色い線の内側でお待ち下さい》

 

後半の言葉は、間もなく電車が来る事を知らせるアナウンスに掻き消されて、マーモンには届かなかった。

 

「ほら、電車が来たよ。

・・・・・・行こう?」

 

次の瞬間には、警戒心を剥き出していた顔に微笑を浮かべて、マーモンに電車に乗るように促す。

その顔には先程の警戒心は微塵も感じず、琉歌が浮かべた微笑に安堵を感じた。

 

「うん」

 

マーモンは頷くと、琉歌の後に続いて電車に乗り込んだ。

帰宅ラッシュ真っ只中の車内は何処にも座る所はなく、マーモンと琉歌はドアの傍の椅子に凭れ掛かるようにして立った。

ドアが閉まると、電車は黄昏に染まり始めた風景を置き去りにするように、目的地へと加速を始める。

琉歌は置き去りにされていく様に通り過ぎる黄昏の風景を横目に、ただ電車が目的地へ着くのを黙って待ちわびた。




現在、解っていること その4

*琉歌はパーカーのことについて触れられると、突然三重の壁を築き上げて、ウォー⚫️・シーナに閉じ篭もる。

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