Croce World―君に呼ばれて―   作:紅 奈々

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お待たせしました!
今日はこれで更新終了です!
続きは未定・・・・・・←おい
いちおう、書いてはいるんですがね?
ストックがぁ・・・・・・orz


第2話

琉歌が千鶴を避けている理由を千鶴が知ったのは、それから、半月が経った頃だった。

その頃になると、琉歌と千鶴が仲が良い事を知っているクラスメイトたちは、琉歌と千鶴が連まなくなっているのを見て、色々と噂を立てていたのだ。

安藤と樹里(いつき)が喧嘩して、絶交している、とか、樹里が安藤を見限った、など、根も葉もない噂ばかりが立っていた。

それを琉歌は気にすらしていない。

そんな噂が流れていたから、担任や養護教諭が心配したのだろう。 養護教諭は、千鶴に琉歌と何かあったのか、と訊いたのだ。

千鶴が琉歌と最後に話した時の事を話すと、養護教諭は琉歌が千鶴を避けていた本当の理由を推測して、千鶴に話したのだった。

 

「琉歌」

 

家のチャイムが鳴り、誰かが玄関の扉を開けて来客に応じる声が聞こえたかと思うと、部屋の前に誰かが来て、声を掛けてきた。

部屋と外を隔てるものは襖の為、向こう側の声が聞こえる。

声からして、千鶴だ。

母親なら、こちらに構わずに襖を開けてズカズカと入り込んでくるから、すぐに解る。

 

「何の用ですか。 君と話す事は何もありませんよ。

先生に連絡袋は頼まれていない筈。 君がここに来る理由はないでしょう」

 

琉歌は機械的な感情の籠らない声色で、千鶴に応える。

琉歌が敬語で話しているという事は、琉歌は千鶴を赤の他人だと見做(みな)していると言う事だ。

それを知っている千鶴は悲しくなった。

もう、友達には戻れないのだろうか。そんな思いが胸を締め付ける。

沈黙が二人の間に流れる。

琉歌が襖に凭れて座ると、その襖越しに千鶴が同じ様に襖に凭れて座る気配がした。

 

「……琉歌は、どうして私を避けるの?

あんなに一緒だったのに……」

 

ポツリ、と沈黙を破ったのは、千鶴だった。

琉歌は細く溜息にも似た息を吐く。

 

「前にも言いました。

君が鬱陶しくなったからですよ。

それ以外の理由はありません」

 

「嘘……」

 

「君に嘘を吐く理由はありません。

仮にそれがあったとして、何の為に私が嘘など吐かないといけないんですか」

 

淡々とした琉歌の声に、千鶴は言葉を詰まらせる。

やっと出た言葉は、余計に自分を傷付けた。

確かに、琉歌が自分に嘘をつく理由はないのかもしれない。

だけど、それは本当なのだろうか。

そして、千鶴は養護教諭の話を思い出した。

 

「私を孤立させない為にわざと傷付くようなことを言って、突き放したんでしょ?」

 

「勝手な憶測はやめて貰いたい。 私がそんな良い人間に見えますか。

これだから、脳内快適系は──」

 

「じゃあ、どうして!」

 

千鶴の言葉を否定する琉歌を遮る様に千鶴は声を荒げた。

温厚な千鶴からは考えられない様な声の荒ぶり様に、琉歌は言葉を無くす。

千鶴は一呼吸置いて落ち着くと、また、声のトーンを戻し、言葉を紡いだ。

 

「・・・・・・どうして、ずっと辛そうだったの・・・・・・?」

 

「・・・・・・」

 

千鶴の言葉に琉歌は何も言えなくなる。

千鶴はこの半月、琉歌が時折辛そうな表情をしている事を知っていた。

琉歌が体が弱くて、時折、辛そうにしている所を見た事はあったが、その時に浮かべる表情ではなかった。

千鶴は続ける。

 

「苦痛なのを押し殺そうとしてるみたいだった。

今も、感情を抑えた様な声をしてる。

もうこれ以上、自分を傷付ける事はやめてよ・・・・・・」

 

言葉の最後の方が萎んでよくは聞こえなかったが、千鶴が何を言いたいのか、琉歌には手に取るように解った。

自分の感情を押し殺し、千鶴を傷付けて遠ざけた代償は、自分の心を擦り減らして傷付けて、自分を追い込んでいた。

千鶴にはそれが何となしに解っていたのだ。

感情移入しやすい千鶴は、琉歌の感情に共感して静かに涙を流した。

 

「私に“友達”って呼べる存在が居るとしたら、琉歌だけなんだよ。

私は元から、ずっと独りだったんだ。

私が孤立しないようにって言う琉歌の気遣いは最初から要らなかった。

私は、琉歌と居たいよ……ずっと。

・・・・・・友達で居たい」

 

「……」

 

千鶴の言葉に、琉歌は掛ける言葉もなく、ただ黙っているだけだった。

自分が本当に信じられるのは自分だけ。 そう思って生きてきた琉歌にとって、千鶴はただ、自分の事を理解し、信じているフリをして近付いて来ているただのクラスメイトという認識でしかなかった。

邪魔になればいつでも切り離すだけのただの暇潰しの相手。

話が合うから、絡むのには丁度良かった。 ただ、それだけの存在だった。

その筈なのに、千鶴を切った後、琉歌はずっと良心の呵責に苛まれていた。

無視されていると解っている筈なのに、千鶴は何も言わずに微妙な距離感で琉歌の傍に居続けた。

それを琉歌は知っている。

自分の友達は琉歌だけ。そう言った彼女をこれ以上、突っ()ねて良いものか。

あぁ、もう、こいつは。

琉歌は、降参する以外の選択肢を持ち合わせてはいなかった。

 

「降参だよ、千鶴。 悪かった」

 

「琉歌……!」

 

千鶴を隔てていた襖を開けて、琉歌は両手を挙げ、言った。

千鶴は久し振りに向き合った琉歌に安堵の涙を浮かべる。

ここまで自分を信じて、必要としてくれる人間はこれまで居ただろうか。

逆の人間なら、今までたくさん見てきた。

だから、人なんて信用するに値しない生き物だ、と琉歌は自分に言い聞かせていた。

彼女は信頼できる。 きっと、信用しても良いのだろう。

だって、彼女は私を信用してくれている。

それに応えないワケにはいかない。

出会って一年、琉歌は千鶴とこれまでよりも良好な交友関係を築いていた。

 

──あの日、までは……。

 

「っ!!」

 

 

琉歌は、目が覚めると飛び起きた。

荒く乱れた呼吸を整える為に肩を上下させ、息をする。

額には大量の寝汗が浮かんでおり、Tシャツをぐっしょりと濡らしていた。

 

また、あの夢か……。

落ち着いた琉歌は、膝を三角に折り、蹲る。

最近は見ていなかった、昔の夢。

恐らく原因は、マーモンとの昨日の出来事だろう、と琉歌は推測する。

決して今まで忘れた事のない、(かつ)ての友との遠くて近い日の記憶。

あの出来事がなければ、私は誰を信じようとも思わなかった。

だけど──。

 

琉歌は、ベッドから降りると、机の上に放置して充電を忘れていたケータイを開いた。

充電が切れているらしい、ケータイはブラックアウトしていて、何処のキーを押しても長押ししても、うんともすんとも言わない。

 

「チッ」

 

舌打ちすると、机の真上に付いている簡易本棚に置いてあるデジタル時計に目をやった。

時刻は午前10時。 寝すぎた。

琉歌はふーっ、と溜息を吐いてケータイに充電器を挿すと、部屋から出た。

遅めの朝ごはんでも食べようか。

食欲はないけど、シリアルくらいなら牛乳で流せるだろう。

食べなきゃ、ルッスーリアに詰め寄り顏で詰め寄られる。

それだけは勘弁だ。

 

台所の棚を漁っていると、隣の部屋からXANXUSが出てきた。

琉歌に気付いたXANXUSが、琉歌に話しかける。

 

「今起きたのか」

 

「おはよ。 まぁね。

昨日は寝付きが悪くてさ。 お陰で寝不足だよ」

 

「そうか」

 

琉歌の回答を聞いて短く頷くと、XANXUSはふと思い付いたかのように口を開いた。

 

「そう言えば最近、何かあったのか?」

 

「・・・・・・え、何もないけど、何で?」

 

唐突なXANXUSの質問に、琉歌は一拍遅れて答える。

何か様子がおかしい様に見えるのはおそらく、気の所為ではないのだろう。

どうやら、現実世界(こっち)に来ても超直感は消えていないらしい。

 

それを以前、琉歌に相談すれば琉歌は「それはおそらく、“直感が鋭い”と言う事で残されているのだろう」と答えた。

曰く、こっちの世界では霊能者などがその様な力を持っているらしい。

琉歌も、霊能者ではないが霊感があるらしく、度々、予知夢を見たりする事があるそうだ。

 

目の前でキョトンとした顔を向けて腑抜けた顔をしている彼女にそんな力があるとは到底思えない。

XANXUSは、キョトンとしている琉歌の頭をクシャッ、と撫でた。

 

「何でもないなら良い。

だが、何かあれば言え。 できる事はする」

 

「怖っ。 XANXUSが他人を気遣う所なんか、ジャンプや単行本、アニメですら見たこと無いよ」

 

「・・・・・・可愛くねぇ女」

 

「そりゃどうも。 私の事を“可愛い”だとか言う人間は皆、眼科か脳外科に逝った方が良い。

目か脳がイカレてる証拠だからね」

 

「じゃあ私、部屋に戻るから」そう言って琉歌は、シリアルと牛乳を入れた皿を持って、キッチンを出た。

キッチンに残されたXANXUSは、思わず撫でてしまった琉歌の髪の感触の残る手に視線を落とす。

癖毛の割には案外、柔らかかった気がする。

そんな事を思った頭を振って、マグカップを手に取った。

ちなみに、昼間からの飲酒は琉歌に禁止されているので、XANXUSは大抵珈琲を飲んでいたりする。

 

「今の、琉歌だろぉ?

最近、様子がおかしいよなぁ」

 

ひょこっ、とスクアーロが部屋から出てきて、琉歌が出ていった扉に目を向けると、心配している様に言った。

どうやら、スクアーロも琉歌の最近の様子は気になっていたらしい。

ちなみに、XANXUS達が使っている部屋はキッチンに面していて、会話が殆ど筒抜けである。

 

「あぁ・・・・・・彼奴らと何かあったのかもしれねぇ。

マーモンはともかく、ベルとフランとはよそよそしい・・・・・・いや、琉歌がベルとフランを避けている様にも思う」

 

「彼奴らかぁ・・・・・・。

彼奴らなら、何かやらかしそうだとは思っていたが・・・・・・」

 

「違うよ」

 

XANXUSとスクアーロが話していると、マーモンがキッチンに入ってきて会話に入ってくる。

そして、マーモンは続けた。

 

「ベルもフランも勿論僕も、彼女には何もしてないよ。

ただ・・・・・・そうだね、彼女の事を良く理解できていなかっただけで」

 

「どういう事だぁ?」

 

マーモンの話を聞いたスクアーロは、マーモンに訊く。

少し考えた後で、マーモンは口を開いた。

 

「琉歌は、人間が嫌いなんだって。

編入した時の全校集会で僕らが生徒に囲まれた時、さっさと教室に戻ろうとしてた琉歌を、ベルとフランが呼び止めたんだ。

大勢の中に居ると、気持ちが悪くなる、って怒って教室に行ってしまったんだけど・・・・・・

よく見たら琉歌、凄く真っ青になってたから、可哀相な事をしたな・・・・・・」

 

「・・・・・・それで、お前達を避けているような素振りなのか?」

 

「ううん、琉歌やベル達から話を聞いた限りだと、どうもそれが直接的な原因ではないみたいだ」

 

マーモンの話を黙って聞いていたXANXUSが、口を挟んだ。

 

「琉歌、学校じゃあ根も葉もない噂を流されたり、先輩に目を付けられたりしてるみたいで、同級生からも遠巻きに陰口を叩かれたりしてるみたいなんだ。

初日に琉歌は僕らに言ったんだ。

『孤立したくないなら、私に関わらない方が良い』って。

琉歌は多分、僕らを孤立させないように僕らを避けてる・・・・・・」




†作者の独り言

琉歌のCPはもう決まってるんですがねぇ。
これを書いた後で

「ハ・・・・・・ッ!
琉歌XANも美味しそう・・・・・・っ!
ロリコンになりそうだけど、でもこれって、XANXUSルートも悪くない・・・・・・ッ!!」

と言う、アホな事を考えた作者でした。←

tk、一応作者の夢小説にXANXUSとくっ付くツワモノな夢主はいるんだけど、キャラの設定だけで話自体は手付かずという・・・・・・orz

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