実に四ヶ月とちょっと。
いやぁ、少しネタに詰まってしまいましてね。
それなのに、次から次にへと書きたいネタがわんさか出てくる・・・・・・。
Croce Worldもだけど、悲哀恋歌も次から次にへと書きたいネタがありすぎて、現在の話を忘れてしまう・・・・・・ww←おい
そんな第6章1話です。
ここからちょっと、琉歌の過去編へGO→
2話目は一時間後にうpされますので、乞うご期待?
第1話
それは、いつの話だっただろうか?始まりは遠過ぎて忘れた。
ただ、覚えているのはきっかけだけ。
ほんの些細な事がきっかけで、その子とは仲良くなった。
まだ琉歌が中二の頃だった。
琉歌は転入して間もなく、新しいクラスメイトと溶け込めずに五月を迎えた。
五月に入り、席替えが行われた。窓側から二列、前から二番目の席に変わり、班も変わった。
「
自己紹介をすると会釈して着席する、女子。
その女子は艶のある真っ黒くて長い髪が特徴で、いつもその髪を両サイドの低い位置で結っていた。
明るく、気さくな雰囲気の可愛らしい女の子だと、琉歌は思った。
隣り合わせで机を合わせている真面目そうな男子に「次、安藤さんの番」と声を掛けられ、琉歌は立ち上がった。
「安藤琉歌です。趣味は読書、音楽鑑賞に創作を少々。髪は地毛なので突っ込まないでください」
琉歌はそれだけを言うと、着席した。
髪についてはいつも、突っ込まれる前に初めから説明しておく。でないと、後々面倒だからだ。
この頃の琉歌は、今よりもかなり髪の色素が薄かった。根元は焦げ茶なのだが、毛先に行くほど色素が薄くなって、毛先は殆ど金髪だった。そんな琉歌はいつも、染髪していると勘違いされてきた。
だから琉歌は、初めからそう説明することで少しでも質問されることを防いでいたのだ。
琉歌のあまりの素っ気なさにリーダーの男子は「お、おぅ……」と引き攣ったように笑う。
その時、千鶴は琉歌に惹かれていた、と一年後に琉歌に打ち明けるのだ。
琉歌の、針を纏って他人を遠ざけているような雰囲気に千鶴は何故か惹かれた。
その時から千鶴は琉歌と話してみたい、と思うようになる。
話を掛ける切っ掛けが出来たのは、その翌日だった。
琉歌の中学では、朝は三十分の読書タイムがあった。
琉歌がお気に入りの小説を机の中から取り出して、栞を挟んであるページを開いた時、するり、と栞が本の間から滑り落ちる。
あ、と小さく呟いた時には琉歌の席から二番目の机の下に滑り込んでいて、琉歌では取る事が出来なかった。
まずいな・・・・・・と、琉歌は思う。
栞は自分で作った物で、裏と表に絵が描いてあった。
別に自分がオタクだと思われるのは問題ない。事実だから。だがしかし、自分の描いた絵を見られるのは嫌だった。自分の描く絵が下手だからだ。
実際、その栞にはガン●ムSE●Dのス●ラとカ●リを描いていたのだが、髪型と服装を見て、何となく誰か解る様な画力だった。
琉歌はどうしよう・・・・・・と一つ先の机の下に落ちた栞が気になって、とても読書所ではなかった。
読書が終わり、朝の会が終わって机を正面に戻した琉歌は、栞を拾おうと、二番目の机に行こうとした。すると、一足先に千鶴が栞を拾ったようで、千鶴が栞を持ってきた。
The end of 私・・・・・・。琉歌は内心、項垂れた。
誰にも見られたくなかったのに・・・・・・。
そんな琉歌を余所に、千鶴は琉歌に話を掛けてきた。
「この栞、安藤さんの?」
「はい、そうです」
ニコリ、と微笑んで千鶴が栞を琉歌に差し出すと、琉歌は栞を受け取った。
これで終わりだと琉歌が思っていたら、千鶴は琉歌に更に話し掛けた。
「それ、自分で作ったの?趣味、創作って言ってたね。
ガン●ム・・・・・・好きなの?」
質問してくる千鶴に少し苦手意識が出てくる。
自分に関わってこようとする人間は
それなら、初めから誰とも関わらないで居た方が良い。
この時の琉歌は―今でもそうだが―人間関係が極端だった。
警戒しながらも、「そうですが・・・・・・?」と答える。
別に、訊かれたことに対して好きなモノは隠す必要は無い。
答えた琉歌に千鶴は顔を明るくした。
「本当!?実は、私もアニメとか好きで、ガン●ムって聞いたことはあるんだけど、キャラの名前とかしか知らなくて!
良かったら、色々と教えて!
他に好きなアニメとかは?」
アニメを見そうもない千鶴がアニメが好きだと言って、琉歌は少し驚いた。
話が合いそうだ、と琉歌は思う。
「他には・・・・・・リボーンとかですかね。
あと、Fe●t/St●y Nightとか、蒼穹のファ●ナーですね。
えっと……」
「あ、私、樹里千鶴!
へぇ~、私もREBORN!好き!面白いよね。
マク●スは曲しか知らないな、面白いの?」
琉歌が名前を呼ぼうとして詰まると、千鶴は笑顔で自己紹介した。
琉歌は特に、人の顔を覚えるのが苦手だった。名前は解るけれども、顔が一致しない。
失礼だと思うが、琉歌はどうしてもこれだけは直せなかった。
この日から、琉歌と千鶴は連み始める。
ただ、琉歌はどうしても彼女に心を開くことは出来なかった。いつ、何処で千鶴が離れていくのか解らないからだ。
琉歌が千鶴を信用するのには、一年の時間を要したのだった――――。
その翌年でも、千鶴と琉歌は同じクラスだった。
嬉しそうな千鶴とは対照に琉歌は物思いに耽っていた。
この頃、琉歌への人当たりが冷たい。
決定的になったのは、部活の後輩が自分の姉と部室で話してた内容だった。
「安藤琉歌と関わっていたら、先輩から修学旅行のお土産が貰えない」と言うモノ。
その言葉は、琉歌と関わるな、という事を暗に伝えていた。安藤琉歌に関われば、先輩から省かれるぞ、と。
その言葉を聞いた後輩の殆どが琉歌から離れていった。
残ったのは、姉に忠告された後輩と、元から他の先輩と関わっていなかった後輩だけだった。
自分が学年で良く思われていないのは知っている。それでも、千鶴とは連んでいたかった。
だが、ここまで来たらもう、切り捨てないと千鶴が孤立してしまう。
自分と関わっていることで孤立します、なんて、琉歌にとっては後味が悪い。
琉歌は千鶴が風邪を引いて学校を休んだ時に連絡袋を届けるついでに様子を見に行こうと、千鶴の家に向かった。
信頼はしていないけれど、自分と関わっている人間が病気だと聞いたら一応、心配にはなる。
家のチャイムを鳴らせば、冷えピタを額に張り付けた千鶴が出迎えた。
「琉歌!」
「調子はどう?
それと、お見舞い」
嬉しそうな千鶴に琉歌は無機質に訊くと、紙袋を渡した。
「ありがとう」と、千鶴はそれを受け取る。
「もう、お母さんが大袈裟すぎるんだよ。ただの風邪なのに、重病人扱い」
「参っちゃうよ」と、千鶴は苦笑した。
「それだけ、大切にされてるって事だよ」と、琉歌は苦笑する千鶴に返す。
琉歌が風邪を引いても、両親は自分に見向きもしない、寧ろ熱があろうが家事をさせ、出来なければ罵倒される。
それを思えば、千鶴はまだ良い。琉歌は千鶴を羨ましく思った。
琉歌が風邪を引けば、義理の父親に罵倒され、詰られていた。そして、お構いなしに家事をさせられる。
千鶴みたいに心配してくれる人は居ないのだ。
「千鶴・・・・・・」
言いにくそうに琉歌は言葉を詰まらせる。
千鶴は「何?」と琉歌の言葉を待った。
何してるんだよ。関係を切るくらい、造作もないだろ?琉歌は、千鶴を切る為の言葉を何故か探していた。
どうやって、遠回しに傷付けずにそして、確実に伝えられるだろうか。
そんな事を探しても、見つからないクセに。
そして、漸く琉歌は口を開いた。
「これからは、私に関わらない方が良い―――関わるな」
「え―――?」
琉歌の言葉に、時間が止まったかのような感覚を感じた。
風に揺れた木の葉と葉か擦れる音が静寂の空間に広がる。
千鶴は、体の底から熱が這い出すような感覚を覚えた。それはきっと、風邪を引いて下がりきらない鬱陶しい熱の所為だけじゃないと思う。
また、独りに戻るのが怖い。千鶴は絶望にも似た感覚を覚えた。
そんな千鶴の口からは、言葉が零れていた。
「何で・・・・・・?」
「何でも。そろそろ、君が鬱陶しくなってきたんでね。
私も、群れるのは嫌いだし。まぁ、良い暇つぶしにはなったよ。
じゃあね」
それだけを言うと、琉歌は逃げるようにその場から離れた。
琉歌は、これで良いんだ、と言い聞かせる。
人を突き放すのは慣れていた筈だ。それなのに、どうして――この心は空虚なのだろうか。
今まで、人から離れていくことなんか造作もないことだったのに。
何ともない事だったのに。
虚しさだけが重くのし掛かって行くみたいだ。
そんな琉歌の心中を知らない千鶴は、琉歌が去った後を呆然と眺め、その場に