Croce World―君に呼ばれて―   作:紅 奈々

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とーーーーーーーーーっても久しぶりの更新です!w
いやぁ、Preghiera di duo〜月に祈りを 星に願いを〜が終わって、気が抜けててこの小説の存在を忘れてましたw←

└|・_└|ソノハナシハ |┘_・|┘コッチニオイトイテ
さて、第3話ですよーw


第3話

「おい琉歌、待てよ!」

 

 

駅を出て暫く歩くと、後から追っかけてきたらしいベルが琉歌の腕を掴んで呼び止めた。

ベルの後ろには、フランとマーモンが息を切らせて肩を上下させている。

「何?」と振り返った琉歌の目を見て、3人はギョッと目を見開く。

日本人にしては色素が薄い褐色の瞳は、光がなく、冷たく暗く沈んでいた。

いつもの琉歌と明らかに様子が違う。それはいつからだった?

いつの間にか変わってしまった琉歌の様子にベル、フラン、マーモンは愕然とその顔を見る事が精一杯だった。

それでも、ベルは声を絞り出した。

 

 

「なぁ、お前さ・・・・・・最近」

 

 

「あのさぁ」

 

 

ベルが何を言いたいのか何となく察した所で、琉歌はベルの言葉を遮った。

どうせベルが言いたいのは、「最近、俺達のことを避けてないか?」だろう。なら、早く言ってやった方が良いかもしれない。と、琉歌は思ったのだ。

 

 

「もう、外では私に関わらない方が良い・・・・・・関わるな」

 

 

琉歌の冷たく突き放すような言葉が、3人に刺さる。

それに比例して、琉歌に罪悪感が込み上げてきた。

良心の呵責なんぞ、私にはないんだ。知らない。

自分に言い聞かせる。

琉歌の言葉に驚愕したフランは、やっと喉から苦し紛れに言葉を吐き出す。

 

 

「何で・・・・・・ですかー。

ここ最近の琉歌は可笑しいですよ!?何で、ミー達を避けるんです!?

初めはあんなに優しかったのに!」

 

 

「『優しかった』・・・・・・?勝手に期待されても困る。

私は元からこんな人間。たった一月(ひとつき)ルームシェアをしてただけで、私の事を解ったように言わないでもらいたい。

ずっと、鬱陶しかったんだよ。何処に行くでもアンタ達が居て、私が1人で居る時間が殆どなかった。

私は群れるのが嫌いだ。それは今でも変わらない。

解ったらもうこれ以上、私の領域に踏み込んでくるな!!」

 

 

言いたいことだけ言って、琉歌はベル達の前から走り去っていった。

思っている事と反対のことを言ったのは、ベル達を遠ざける為。

近付いてくる人間をその身に纏う針で刺してしまうのは、自分に近付けない為。自分に近付くと傷付けてしまう。

本当は嬉しかったんだ。楽しかったんだ。

3人が居てくれて、何処に行っても「独りじゃない」と言う現実が嬉しかった。

それでも傷付けたのは、自分から彼らを遠ざけたかったから。

それは、彼らの為だ――――と、琉歌は思いたかった。

だが、よく考えればそれは琉歌の利己主義(エゴイズム)で、本当は自分がもう、これ以上傷付きたくなかったのだ。

それを彼らの為と建前を立てることで、自分を納得させる以外になかった。

 

 

「琉歌・・・・・・」

 

 

「フラン」

 

 

琉歌を追い掛けようとするフランを呼び止めて、マーモンは首を振った。

それを見ると、フランは視線を落として追い掛けるのは止めた。

マーモンは琉歌が去っていくほんの一瞬、琉歌の目から涙が零れていたことに気が付いたのだ。

さっき言っていたのは本心なんかじゃない。マーモンはそう直感した。

術師としての力は使えなくても、どうやら直感は衰えていなかったようだ。

 

 

「絶対、あの水田ですよー。

彼奴が琉歌に何か吹き込んだんだ、絶対」

 

 

「俺もお前に同感。

それ以外に考えられねーし」

 

 

フランがポツリと呟いて、それにベルが頷く。

2人が感情的になっていることは一目瞭然で、普段無表情のフランが微かにその顔を怒りに染めていることがマーモンには解った。

「落ち着きなよ」とマーモンが諭す。

 

 

「今ここで僕等が感情的になっても仕方ないだろう。

琉歌が「関わるな」って言ってきてるんだ。

だったら、今はそっとしておくしかないだろう?」

 

 

「これ以上、関係を拗れさせない為にもね」マーモンの言葉にベルとフランは黙るしかなかった。これ以上は何を言っても仕方がない。

自分達が騒いだところで、どうにもならないのだ。

だからと言って引き退るような事はしたくなく、ベル、フラン、マーモンはどうしたらいいのか最善策を模索するのであった。

 

 

 

「ほんっっっっっと最低だよな、私は……。」

 

 

ベル達を振り切った後、琉歌は蒼星川の畔の橋に膝を抱えて座っていた。勿論、レジャーシートを敷いたその上に、だが。

こんな時にも服が汚れることを気にしている余裕のある自分に嗤いがこみ上げるが、それよりも今は、先程の自分の振る舞いに嫌悪感が湧き出てきていた。

彼らを傷つけている事は重々承知している。だが、あんな形でしか自分は彼らを遠ざけることができない。

ふと、琉歌の中でいつかの記憶が蘇ってきた。そう、随分と前にも同じような事があったのだ。

それは、自分が中学2年の時だった。

転入したての頃、やはり浮いてしまった自分に声を掛けてくれた子がいた。自分と違って、本当の意味で優しく、暖かい子だった。

自分と彼女は直ぐに仲が良くなったがある日、自分に対する有る事無い事酷い噂が流された上に学年中から村八分状態にされた事があって、今回のマーモン達と同じ様にその子を自分から遠ざけようとしていたのだ。

だがそれは、彼女が何度も何度も手を伸ばして、傷付けてしまっても諦めずに傍に居たことにより、結局今までずっと、2人で一緒に居た。

今では良い思い出話となっている。

 

彼女と自分はそんな事があったが、今回はどうだろう。

ふと、琉歌は彼らの事を考えた。

まさか、自分から離れておいて訳が解らないが、彼らがこのまま関わってくることなどないのだと思い、少々寂しさの様なものが過ったのを感じた。

そんな馬鹿な。

今までの関係を壊したのは自分なのに?自業自得雨じゃないか。

まさか、彼らが自分に手を伸ばしてくることを何処かで期待しているのか?

彼らには、彼らを捨てた自分に手を差し出してくる様な理由などない。

傷付いてまで自分に関わってくる様な理由はないのだ。

 

 

「……っ、馬鹿じゃないの……」

 

 

呟くと、琉歌は気分を切り替える為に息を吸った。


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