後の話を考えると、ここで切っておいた方がキリが良いかな、と;;
ヴァリアーが夢渡りしてきて1ヶ月が経ち、夏休みも近くなった頃。
琉歌はもう、この生活に馴染んでいた。
バイトのない日は朝、ルッスーリアに起こされて皆で朝ご飯を食べて、マーモンに勉強を教えて貰い、昼になれば皆で昼食、そして、マーモンとベル、フランと昼過ぎに出掛けて、学校へ行く。
夜は授業を受けた後に、四人で蒼星川に行き、一頻り駄弁った後で家に帰って、夜食・・・・・・と言う、生活サイクルがいつの間にかできてしまった。
中々、充実しているな、と琉歌は思う様になった。
今までの生活が嘘の様だ。
ただ、未だに学校には馴染めていなくて、悪い噂は絶えない。
そんなある日の事だった。
この日は、珍しく四人で早く学校に着いて、補食室で暇を持て余していた。
琉歌はマーモンに勉強を教えて貰い、ベルとフランはその隣で談笑している、と言うか、ベルがフランにちょっかいを掛けて、フランがそれを冷たくあしらっている。
すると、職員室に繋がっているドアが開いて、社会の教師が入ってきた。
それに気付くと、琉歌は「こんにちは」と短く挨拶をした。
教師は、「こんにちは」と笑って返す。
「最近、また一段と暑くなりましたね~」
教師が、痩せこけた前髪が後退している額に汗を浮かべながら、言った。
どうやら、ずっと職員室にいたわけではなさそうだ。
琉歌は蛍光灯の光を反射して光っている前髪が後退した額を見て、言った。
「そうですね、最近、とても暑くて。
もう、前髪が長いから授業中前髪が張り付いて、鬱陶しくて、掻き分けてるんですよね~、こんな風に」
これ見よがしに琉歌は前髪を掻き上げながら、ニヤリと笑みを浮かべて言った。
すると、隣で会話を聞いていたベルが噴き出して、フランは笑いを堪えているらしい、マーモンは苦笑していた。
教師はと言うと、「何ですって、安藤さん」と笑いながら詰め寄ってこようとしていた。
すかさず琉歌は、マーモンの背中に「キャータスケテー、コワーイ」と巫山戯た様子で縋る。
「自業自得じゃないか」と言うのは、マーモンの言葉だ。
「それはともかく、最近、どうですか?
学校には慣れましたか?」
教師の言葉は、四人に向けられた。
この言葉には四通りの回答が寄せられる。
「案外、悪くねぇな、授業はチョロいけど、しししっ」
「楽しくない事はないんですけどねー」
「悪くはないね」
「まぁ、ぼちぼちです」
ベル、フラン、マーモン、琉歌がそれぞれ、答える。
皆の回答に満足げにニコニコと笑って、「そうですか」と教師は返した。
「安藤さんなんか、最近良く笑う様になりましたよね、入学したての頃と比べると。
だんだん、表情が豊かになってきました」
「そうですか?」
教師の何気ない言葉に琉歌はあっさりと返すも、テーブルの下で左手首を握り締めているのがマーモンには見えた。
こっちに来て1ヶ月が過ぎて、段々暑さが増してきたにも関わらず、琉歌は未だに長袖のパーカーを着ていた。
本人は、日焼けしたくないだの、室内に入ると空調が効き過ぎて寒いだの言っているが、家に居る時でさえ、パーカーを脱ごうとはしない。薄手の生地だとか言われても、見ている分には暑いのだが。
きっと琉歌は、まだ何かを隠している様でもある。
そう言えば、琉歌から家族の話は一切聞いた事がない、と、マーモンはぼんやりと考えた。
琉歌の仕草と琉歌がパーカーを離さない事、琉歌が家族の話をしない事は何か関係しているのだろうか。
少なくとも、琉歌がパーカーを手放さない事と琉歌の仕草は関係がある気がする。
マーモンは、未だに有らんばかりの力で手首を握っている琉歌をじっと見つめた。
琉歌の顔は、無理に笑っている様にも、嘲笑している様にも見える。
「そんなに険悪な顔してたのか、こいつ?」
ベルが教師に訊く。
教師は、そう遠くない時間に浸る様に感慨深く頷いてみせた。
「えぇ、それはそれは立派な仏頂面でしたよ。
水田さんが居なければ・・・・・・」
水田、と教師が口にした瞬間、それを遮る様に琉歌はガタン、と音を立てて椅子から立ち上がった。
まるで、水田が琉歌の事を変えたかの様に言おうとした教師の言葉に不快を感じた琉歌だったが、その事を読み取れない教師は、何故琉歌が不機嫌になったのか解らずに豆鉄砲を喰らった鳩の様な顔で琉歌を見上げた。
その視線に苛立つ。
琉歌は鞄を取り上げると、補食室を出て行った。
「琉歌!!」
マーモンが琉歌の後を追う。
それに続いて、ベルも補食室を出た。
状況が解らずに教師は頭にクエスチョンマークを浮かべて、「ど、どうしたんですか?」と狼狽えている。
ベルを追い掛けようとしたフランが立ち止まって振り返った。
「琉歌がその水田に何て言われているか、アンタは解んないんですかー、鈍感教師!」
吐き捨てると、フランも補食室を出て行った。
補食室には、未だに現状が理解できていない教師がポツンと取り残されていた。
ちなみに、余談。
琉歌が教師に言った「そうですね、最近、とても暑くて。
もう、前髪が長いから授業中前髪が張り付いて、鬱陶しくて、掻き分けてるんですよね~、こんな風に」と言う台詞は、作者が高校時代に実際に教師に言った言葉ですww←
いやぁ、あン時は髪の毛が可哀相な教師を弄るのが作者の中でのブームだったんですよww
会う度に髪の毛ネタで弄っていました。
ちなみに、冬Vr.もあったりしますが、それはまた後ほどww←いらねぇよ!ペッ