Croce World―君に呼ばれて―   作:紅 奈々

22 / 44


随分お久しぶりの投稿・・・・・・;;
それで更に申し訳ないのですが、旦那の転勤が決まり、引っ越す事になったので、暫くバタついて更に更新ができなくなる恐れが・・・・・・m(_ _)mホントモウ、スマヌ
ある程度は話の再構築に目処が立ってきたと言うとこで、これだもんな。
本当、評価とかコメとかお気に入りしてくれてる人には申し訳ないm(_ _)m



第4章 「温もり」
第1話


それから、授業もまともに受けられず、琉歌は学校にいる間の3時間を無駄に過ごした。

ベル達は水田に絡まれていて、ろくに琉歌と話が出来ずに、時間が過ぎていっただけである。

それを横目に気にしながら、琉歌はベル達も水田側(あっち)か・・・・・・とぼんやり考えた。

それならそれで良いだろう。いや、むしろ、ベル達は水田側(あっち)に居た方が良いのかも知れない。

自分と居れば、孤立するし、良い事は全くないじゃないか。

そこまで考えていた時だった。

麗奈がこっちへ向かって、声を掛けてきた。

 

 

「安藤さん!」

 

 

元気な声に琉歌は顔を上げると、仏頂面を作る。

コイツも、向こうに行くようにした方が良いな。

本能でそう思った。

別に、人助けとは言わない・・・・・・自分が学校全体で何て言われているかは解っている。

その為、麗奈が近くに居ると、麗奈まで誤解されかねない。

人は必ず、こう言う奴と一緒に居るんだから、コイツもこうだろう、と、固定観念を抱く。

それで、転入生が学校に馴染めなかったら、こっちは後味が悪い。

それは、ベル達にも言えるようなことだ。

 

 

「何?」

 

 

敢えて、抑揚のない沈んだ声で答える。

まず、これで大抵の人は避けるだろう。

更に、集会の後のあの騒ぎだ。

それで避けようとしない人間は居ないはずである。

 

 

「安藤さんは、何処住みなんですか?」

 

 

有り触れた質問に琉歌は「総紗」と、短く答えた。

一応、訊かれたことにはちゃんと受け答えする常識は持ち合わせている。水田は例外だが。

すると、麗奈はパァァァと、見て解る様に顔を明るくした。

麗奈が言う前に、琉歌は言葉を挟む。

 

 

「だけど、一緒に帰らないよ。

その顔は何を期待しているか知らないけど・・・・・・総紗なら、水田(アイツ)も同じだから、一緒に帰ればいい」

 

 

琉歌は、水田を指しながら言った。

下校の時間は、琉歌が唯一楽になれる時間だ。それを邪魔されるのは嫌だ。

だが、琉歌の思いとは裏腹に、麗奈は首を振るった。

 

 

「私、安藤さんともっと話してみたいんだ!

実は安藤さんなんでしょ?

「悪ノ歌姫」って歌い手!!

声聞いて、解っちゃった!」

 

 

そう、琉歌は趣味で「歌ってみた」や生放送やラジオ番組などを動画サイトでアップしていた。

どうやら、麗奈は琉歌がその生放送のパーソナリティだと、解っていたようだ。

で、彼女曰く、毎回、楽しみに動画を見せて貰っています、との事。

そこで、折角一緒の学校に通えることが出来たので、仲良くなりたいと思ったこと等、麗奈は言った。

そこまで聞いて、考えが変わる―――――ような琉歌ではなく。

琉歌は、水田やベル達の群れの中心にいる1人の女子生徒を指指した。

 

 

「彼奴は、竹内美香。

この学年で猿山のボス猿みたいな立ち位置に居る奴だ。

まぁ、弱い人間は群れを作って、自分を大きく見せようとする。

どこでもそれは一緒で、彼奴は自分より弱い奴を仲間にして、朱に染まれない人間を省く。

目を付けられたら、君まで孤立するよ。私のようにね」

 

 

茶髪のショートヘアーにシャツにジャージという、動きやすそうな服装をしている女子生徒―――――竹内美香は、取り巻きと楽しそうに話して、笑っている。

それを横目で見ながら、琉歌は説明した。

そう、琉歌は何故か竹内に目を付けられて、孤立してしまっていたのだ。

何故かは知らないが、琉歌の悪口などを琉歌に聞こえるように言ったりしている。

それに便乗しているのが、水田である。

その所為で、琉歌は学校全体の生徒に悪い印象を持たれて、孤立していたのだ。

ただ、教師だけは琉歌と変わらずに接しているが。

 

 

「解ったら、私とは関わらない方が賢明でしょう。

私も、誰とも関わる気は無いので。

それでも、関わろうなんて思っているなら、どうぞお好きな様に。

過度に関わらないようなら、返事くらいは返しますから」

 

 

それだけを言うと、琉歌は席を立って鞄を持ち上げ、教室を出た。

教室を出て、下駄箱に着くと、不意に後ろから声が掛かった。

 

 

「ちょっと、安藤さん」

 

 

掛けられた声に無言で振り返ってみれば、そこには2年の女子生徒が立っていた。

その女子生徒は琉歌を睨むように見ている。

「何ですか」と琉歌は抑揚のない声で女子生徒に用件を聞く。

こっちはさっさと帰りたいんだ、こんな所で絡んでくるなよ・・・・・・。

琉歌は面倒くさそうに手に持っていた靴を落とした。

 

 

「マーモン君と一緒に暮らしてるって本当なの?」

 

 

「本当ですよ」

 

 

女子生徒の質問に即答する、琉歌。

こればっかりは嘘を吐いても仕方のないことだ。

琉歌の回答が気に食わなかったのか、女子生徒は顔を歪めた。

その表情を琉歌は怪訝に思いながら、じっと見つめる。

琉歌にとっては、何故マーモンの事で自分が絡まれた挙げ句に睨まれなきゃならんのか、と頭を抱えたくなる。

 

 

「用がないなら、帰りたいんですが?

私、暇じゃないんです。

頭良くて暇な人達と違って、私は頭悪いので、人一倍勉強しないと追い付けないんですよ」

 

 

琉歌はその言葉に皮肉をたっぷりと含んで、言った。

こう言う人達は自分が一歩下がって、少し上げてやらないと面倒くさい。

実際に、琉歌は頭は良くないが、今までの水面下の努力のお陰で成績上位をキープできている。

それを知らない女子生徒は、琉歌を見下した目で見てきた。

 

 

「なら、マーモン君と暮らしている余裕もないんじゃない?

それに加えて、あの二人でしょ?

一人くらい、こっちに回してきても良いのよ?」

 

 

琉歌を見下しながら上から目線の言葉に、琉歌の腸が煮えてくる。

こう言うタイプの人間が一番嫌いだ。

「後輩の負担を減らそうとしてあげてるアタクシ、マジ天使」とでも思っているのだろうか。そんな気もない癖に。

琉歌は「余計なお世話です」と切り捨てた。

 

 

「彼らは私の知人ですから。

他人たる貴方にお世話になるなんて、以ての外です。

まぁ、一番は彼に直接聞くのが一番だと思いますが?」

 

 

「マーモン」と、琉歌は続けて曲がり角の壁に声を投げかけた。

女子は驚いた様に振り返る。

すると、女子が立っていた壁の後ろから、マーモンが出てきた。

 

 

「よく解ったね、琉歌?」

 

 

無機質な声からは窺えないが、マーモンの顔は少しだけ目を見開いて、驚いている様だった。

 

 

「ただの当てずっぽうだよ。

カマを掛けたつもりが、本当に居たなんて思わなかった。

いつから居たの?」

 

 

琉歌は薄ら笑いを浮かべて、マーモンに問う。

「さっきから居たよ」とマーモンは返した。

正直、この修羅場と言うべきかは解らないが、この現場を目撃して、出て行こうか立ち去ろうか考えていた所に、琉歌から呼ばれたのだ。

琉歌は「カマを掛けただけ」と薄く笑っているが、今朝の件もあり、本当かどうか怪しい。

まぁ、声を掛けられたお陰で、盗み聞きなんて悪趣味な事をしなくて良くなったのは、良い事であるが。

 

 

「そう。なら、話はもう解ってるね?

マーモンはどうする?」

 

 

「どうって・・・・・・琉歌の家に居たらダメかい?」

 

 

琉歌の問いにマーモンは少し考える素振りを見せた後に、小首を傾げて、琉歌を見る。

マーモンが琉歌の家に居たいのは唯単に、琉歌の観察をしたいが為である。それと、琉歌の料理。

今日は何を作ってくれるかなー、とマーモンは授業中、そんな事しか考えていなかった。

それはともかく、琉歌はマーモンが首を傾げてそんな事を言うから、思い切りノックアウトされた。

自分よりは高いが、男子の平均よりも身長の低いマーモンがそんな仕草をすると、ショタを連想してしまう。

基本、男は受け付けないが、二次元ならば男はショタから青年まで、幅広い守備範囲を持っている。

特に琉歌は、ショタ・天然専攻の為、今のマーモンはドストライクだった。

まぁ尤も、これが周りに誰も居なければ、発狂しながらアンコール連発して、写メを撮りまくっていたのだろうが、今は外野が居るので、冷静な外見とは裏腹に内心は悶えている、というカオスな修羅場だ。

 

 

「私は全然問題無いよ?

知っての通り、ウチは1人で暮らすには広いし」

 

 

しれっと言っている琉歌だが、内心は修羅場だ。

そんな事も知らないマーモンは、「問題無いなら、琉歌の家に居る方が良い」とキッパリ断言した。

 

 

「と、言うわけなんで先輩、折角の申し出は有り難いのですが、ありがた迷惑なのでお断りします。では。」

 

 

それだけを言うと、琉歌は女子の話も聞かずにその場をさっさと離れた。

マーモンも、その女子に目をくれる事はなく、琉歌の後に付いていく。

そして、2人で駅へと向かった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。