Croce World―君に呼ばれて―   作:紅 奈々

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うわぁ、こんな感じのキャラで良いのだろうか、麗奈って。
わっかんねぇ――――っ!!




第7話

1時間目が始まり、全校集会がある為、琉歌達1年の生徒は4年の教室に移動していた。

後から、人がどんどん集まってくる。

生徒全員が教室に入ってきた頃、教卓に校長が立っていた。

全員、長ったらしい校長の話を半分聞き流しながら、ひそひそと話を始める。

内容は、教室の隅に立っている転入生についての話題だ。

「あの人、格好いいねー」とか、「あの子、可愛くない?」とか、そんな有り触れた会話をしている。

特に騒がしかったのは、その転入生が在籍している学年だ。

要するに、1年と2年、特に1年が五月蠅い。

ピーキャーピーキャー五月蠅い雑音に眉を顰めつつ、琉歌は睨むように前を見ていた。

いや、正確には睨んでいない。ただ、睨んでいるよう(・・・・・・・)に見えているだけで、実際は普通に目を向けているだけだった。

 

 

「それじゃあ、全校集会を始める前に、1年と2年に留学生と転入生が来たので、紹介したいと思います」

 

 

司会進行役の生徒会長が特に抑揚のない声で先に進めていく。

それと共に、待ってました―!!と言わんばかりに教室が騒がしくなった。

「留学生と転入生ごときによく騒ぐ」と、琉歌は騒ぐ生徒を宥める教師を我関せずと言う様に横目で見やる。

何で、「転入生」と言うだけで騒げるのだろうか。

単純すぎる人間の脳細胞に疑問を抱きたくなる。

そんな事を思っていたら、転入生が教卓の前に整列していた。

視線を教卓に移すと、丁度真ん中にいたマーモンと目が合った。

「五月蠅いだろ、この学校?」と、琉歌は肩を竦めて苦笑してみた。

それが通じるかは解らないが。

すると、苦笑が返ってきて、小さくマーモンが頷いた。

どうやら、何となく意味が解ったようだ。

 

ベル、フラン、マーモン、麗奈の順に自己紹介をすると、4人の転入生は教師に指定された席に着く。

全校集会の時は出席番号順に席に着くようになっている。

4人が着席したのを見計らって、生徒会長が先に続けた。

 

 

 

集会が終わると、琉歌は真っ先に教室を出て行く。

ベル達を待つことはない。

どうせ、ベル達は転入生と言う事もあって生徒達に囲まれているだろう。

そんな人間を待っていられるほど、こちらは暇でもなければ、群れることが好きなわけでもない。

むしろ、集会中はずっと、噎せ返っていた程だ。

後ろから、主に女子の声が聞こえている。

まあ、3人はあの外見だ。

女子が寄って来ないことはまず無いだろうとは思っていた。

だからこそ、さっさと教室を出たのだ。

 

 

「あ、琉歌、待ってくださーい!!」

 

 

不意に一段と大きな声が聞こえて、琉歌は思わず立ち止まる。

フランの声だ。

琉歌は頭を抱えたくなる。

フランのお陰で、注目の的になってしまった。

視線が集中してきて気持ち悪い。

振り返れば、フランとベル、マーモンが寄ってきていた。

辺りは更にざわついて、五月蠅くなる。

主に、女子からの疑惑の声だ。

 

 

「ちょ、あの子、確か1年の安藤琉歌よ!」

 

 

「フラン君達とどういう関係なのかしら?」

 

 

女子は好奇や妬みなどの混沌と化した視線を琉歌に送ってくる。

うわぁ、今、この場から飛び降りたい。

琉歌は思わず、飛び降りたい衝撃に駆られた。

そんな琉歌の思いに気付かず、フランはさらりと言った。

 

 

「ミーとベルセン・・・・・・サンとマーモンさんは、琉歌の家でお世話になっているんですー」

 

 

あっさりとフランが打ち明けると、女子からギロッと睨まれた気がした、琉歌。

あンの馬鹿野郎・・・・・・帰ったら、G(ジャイアント・)P(パンダ・)D(デスロック)食らわせてやる。

琉歌は恨めしそうにフランを密かに睨んだ。

 

 

「え、どういう事!?

一緒に住んでるの!?」

 

 

きゃーっ!!と、女子から甲高い悲鳴のような声が上がる。

そこまで騒ぐことでもないだろう、と思いながら、琉歌はその場を離れようとした。

だが、それはベルに腕を掴まれた事によって阻止された。

 

 

「置いていくなよ、琉歌」

 

 

慌てたように掴まれた腕は、何気に力が入っていて、痛い。

だが、それどころではない琉歌は、ベルの手を振り解こうとする。

 

 

「離せ、私に待って貰いたいんだったら、その群れをどうにかしろよ!

私は群れの中に居ると気持ち悪くなるんだよ!!」

 

 

つい、きつい口調になってしまう、琉歌。

気持ち悪さに耐えきれず、思わずキツく言ってしまったのだ。

しーんと辺りは静寂に包まれ、次第にひそひそと琉歌を非難する声が上がっていくが、琉歌はそれに構わずにさっさと走り出した。

冷静になって考えてみれば、ベルが自分を呼び止めるのは当たり前じゃないか。

ベル達は馴れない環境で頼りに出来るのは琉歌しか居ない。

少し、言葉がきつ過ぎたな、と琉歌は教室に戻って、席について、冷静になったところで我に返った。

それに、ベル達は自分が人間嫌いだと言う事を知らない。

教えても居ない。そんな彼らに突然、あんな事を言っても、いきなりでは対処できないだろう。

改めて、自分が彼らに我が儘をぶつけたのだと思い、自己嫌悪に陥る。

折角、仲良くなれると思ったのに。これでは、嫌われてしまいそうだ。

折角、一緒に住んでいるのに。

グルグルと、琉歌の頭を後悔と嫌悪感が巡っていた。






琉歌から見た麗奈


変な奴

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