Croce World―君に呼ばれて―   作:紅 奈々

20 / 44

昨日、更新しようと思っていたけど、謎の停電により出来なかった件・・・・・・Orz




第6話

「いやぁ、遅くなりましたね、すみません」

 

 

教師を待つこと10分。

いい加減、待つことに飽きていた琉歌はケータイを弄っていた。

本日分の小説の更新がまだだったからである。

そうすると、いきなり食堂のドアから、男性の声が聞こえた。

琉歌がドアに目を向ければ、白髪でスポーツ刈りの所為で殆どスキンヘッドになっている丸々とした男性教師が食堂に入ってきた。

「いやぁ~、暑いですねぇ~」と言いながら、額から流れる汗をハンカチで拭き取る様は、その教師の体脂肪率がどれだけ多いかを示しているようだ。

 

 

「遅いですよ、先生。

転入生達が待ちぼうけて死にそうじゃないですか」

 

 

琉歌が口を尖らせて言うと、教師は苦笑いで返した。

 

 

「すみませんね、こんなに早いとは思わなかったんですよ」

 

 

「それはアレですか?

私がいつもギリギリで教室に入ってるから言ってるんですか?

それとも、大体は遅刻するから言ってるんですか?」

 

 

教師の言葉に琉歌は口を尖らせて詰め寄る勢いで問い詰める。

詰め寄る勢い、と言うだけで詰め寄らないのは、琉歌は極端に男を嫌っているからである。

ただし本人曰く、「二次元は別」との事。

目つきの悪い琉歌に睨まれてるような気がして、教師は苦笑を返した。

実際は睨んではいない。

ただ、見ているだけである。

目つきが悪いので、睨まれているようにしか見えず、今までそれが軋轢を生んでいた。

更に、この性格である。誤解されても仕方がない。

 

 

「えーと、転入生はみんな揃ってますね?」

 

 

話を切り替える様に、教師はベル達を見回す。

人数が揃っているのを確認して頷くと、話を始めた。

 

 

「それじゃあ、まず・・・・・・」

 

 

 

それから、30分くらいで説明は終わり、琉歌とベル、マーモンとフランと女子生徒は、教室へ向かっていた。

ついでに、琉歌は転入生の世話係にされてしまい、「さっさと逃げておくべきだった・・・・・・」と後悔していた。

 

 

「この奥が1年の教室ね。

で、奥から1年、2年、3年で、階段を挟んで、4年の教室になる。

大体、集会とかは4年の教室であるから、それだけは頭に入れといて。

今日の1時間目はこの4年の教室に集合だって。

原則5分前には着いておくように・・・・・・らしいから、そこはちゃんと守って。

で、後は授業の度に説明するけど、マーモンは学年が違うから、先輩から教えてもらって」

 

 

階段を上りきって、向かいから右手を指しながら、順番に説明していく、琉歌。

大体、こんなもんで良いだろう、と琉歌は説明を切り上げた。

そして、右手の廊下を歩いて、教室へ向かう。

 

 

「それじゃあ、マーモン。

後でね」

 

 

1年の教室は奥なので、途中でマーモンと別れて、マーモンは2年の教室へ入る。

琉歌とベル、フランと女子生徒は1年の教室の扉を開いて、教室に入った。

 

教室に入ると、クーラーが利いているらしく、教室の中が涼しくなっている。

よく見てみれば、水田がもう、教室に着いていた。

水田は琉歌の姿を認めると、笑顔で寄ってくる。

 

 

「あ、安藤さん、おはよ~う!!」

 

 

登校からハイテンションな彼女を無視して、ベルとフラン、女子生徒に目を向けると、一言だけ口にした。

 

 

「ここ、席とか決まってないから、好きなところに座ればいいよ」

 

 

最早、水田は視界に入っていない様子。

そんな琉歌を気にすることもなく、ベルは「お、おう」と返事をした。

今、声を掛けられて、普通に無視を決め込んだよな?と、ベルは内心、思った。

すると、水田はベルとフランと女子に目敏く気付くと、琉歌に話し掛けた。

 

 

「ねぇねぇ、この人達は?

転入生?」

 

 

甲高い声で問うてくる水田を無視して、琉歌は定位置の廊下側の一番後ろの席に座る。

そんなん、見たら解るだろうが。

何も答えない琉歌に水田は「疲れているのかな」と思って、ベル達に目を向けた。

 

 

 

「うち、水田こゆきって言うんだ!

3人は何て言うの?」

 

 

いきなり自己紹介してきた水田に若干、「何こいつ」と思いながら、ベルとフランは顔を見合わせる。

すると、初めに口を開いたのは、女子生徒だった。

 

 

「私は本田麗奈です、よろしくね、水田さん!」

 

 

女子生徒は笑顔で自己紹介をした。

それに続いて、ベルとフランが口を開く。

一応、名前を訊かれたら答えろ、と琉歌に言われていたのだ。

 

 

「俺は、ベル」

 

 

「ミーはフランと言います―。

一応、よろしくくらいは言っておきますかねー」

 

 

それぞれが自己紹介すると、2人は琉歌の席の左隣と、前に着席した。

左はベル、前はフランだ。

すると、後を追うように、麗奈と水田も寄ってくる。

琉歌はそれに目もくれず、ケータイを弄っている。

 

 

「琉歌―。

そう言えば、アンタだけ自己紹介してないように見えましたけど、したんですか―?」

 

 

フランが琉歌の方に椅子を向けて、話し掛けてくる。

それを見た水田が、これまた目敏く反応した。

 

 

「安藤さんとフラン君って、知り合いなの~?」

 

 

水田の目敏さに鬱陶しさを覚えつつ、水田を無視して琉歌は顔を上げると、麗奈の方を見た。

 

 

「安藤琉歌。

好きに呼んで下さい」

 

 

それだけを言うと、琉歌はまた、ケータイに視線を落とす。

 

 

「安藤さんって、絡みにくいでしょ?

初めは誰にもそうなんだよ。

私に馴れるのも時間掛かってさ。

ちょっと、緊張しているみたいだけど、馴れたらいい人だから!

少し、大人しいだけなんだよね」

 

 

水田が解ったような口調で琉歌のことを説明する。

そのことに苛つくと、琉歌はヘッドフォンを耳に当てて、音楽を聴き始めた。

知ったような顔で自分のことをとやかく言われるのは、虫酸が走る。

ケータイのディスプレイを見ると、琉歌は立ち上がった。





麗奈のプロフィール3


明るく気さくな転入生。
アニメや漫画が好きで、転入先に「悪ノ歌姫」を名乗る生放送のパーソナリティであり、歌い手である琉歌が居た為、仲良くなりたいと思う気持ちから、琉歌に絡もうとする。
目標は、親友になれればいいな、だそう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。