その日々は突然、ノックしてきた。
第1話
清々しい空気を孕んで、紫がかった空が夜明けを告げる。
窓から吹き込んでくる風がベッドに眠る少女の頬を撫でると、少女は布団に顔を埋めた。
夏とは言え、明け方の風は少し冷えている。
《ゔぉぉぉぉい!!早く起きろぉ!!》
そんな清々しい早朝の空気をぶち壊すように、何処からかそんな大声が聞こえた。
外からではない。眠っている筈の少女しか居ない筈のこの部屋からだ。
その声は男性のモノで、何回か聞こえると少女は身じろぎをして、その声の元を手繰り寄せる。
それは、紫にカラーリングされた旧式の携帯だった。
そのケータイから、男性の声は聞こえていた。
どうやら、キャラクターボイスらしい。その声は知る人ぞ知るアニメのキャラの声だった。
少女は煩わしそうにそのケータイのサイドボタンを押す。
すると、音は止んだ。
「ん~、今、何時だと思ってんだよ・・・・・・」
自分がセットしたアラームに文句を言いながら、少女はケータイのディスプレイを見る。
もう少し寝かせろよ。
寝ぼけ眼でそう思いつつケータイのディスプレイを見て、少女は絶句するのだった。
「わぁぁぁぁぁぁぁああああ!?
バイト!今日からだったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!?」
時間を見ると少女は飛び起きた。
少女は顔を洗って、髪を整える。
肩よりも少し長いくらいの茶髪を後ろで纏めて、黒いTシャツとズボンに着替える。
少女は今年高校に入学して、最近漸くバイトを見つけたのだ。
今日はそのバイトの初出勤だった。
少女は鞄を肩に掛けると、家を急いで出た。
少女の名前は、安藤
入学するのと同時に家を出て、1人暮らしを始めた。
趣味は音楽鑑賞、ネット徘徊、小説を書く、絵を描く事。
根っからの二次元オタクで、未だに学校には馴染めていない。
それでも良いと、琉歌は特に周りの人間を気にしていない。
琉歌にとって、他人は別に関わらなくても生きていけるようなどうでも良い存在なのだ。
だから、今までも誰とも関わろうとはしなかった。
そんな彼女は敵の方が遥かに多い。
高校に入って半年で直ぐに孤立してしまったのだ。
彼女はそれを特に気にしていなかった。
誰に何と言われようと、彼女は誰も受け入れなかったのだ。
バイト先に着いた琉歌は裏口から店に入って、店長に挨拶に行った。
店長からバイトの説明を受けると、制服を貰って更衣室で着替えた。
制服と言っても、コックが着るような白服と薄い茶色のエプロンと帽子だけ。
制服を着て厨房に入ると、一人の男性が居た。
「あぁ、君が今日から入ってくる安藤さん?」
男性は琉歌に気付くと声を掛けてきた。
優しそうな声。
年齢は少し上くらいだろうか。
と、言ってもマスクをしていて顔は見えないが。
琉歌は返事を返した。
「あ、はい。
安藤琉歌です。
よろしくお願いします。」
「俺は藤崎司ゆうねん。よろしくな」
ちょっと中途半端な大阪弁で藤崎司は名乗った。
彼に仕事を教えて貰いながら、雑談もする。
初めてのバイトは楽しいと思いながらバイトをしていたら、バイトは早く終わってしまった。
作中で琉歌が使っていたスクアーロのキャラボイス、実は作者も使ってましたw
いやぁ、スクのキャラボイスは目覚ましに丁度良いんだよね~ww