「まったく、どいつもこいつも見ない間にいなくなりやがって……」
SAO事件が終わって数ヶ月後、無事にリハビリを終えた俺は病院から退院して墓参りにやってきていた。目の前には小さいお墓だが誰よりも大切だった人が眠っているお墓がある。
「何で……何でだよ!」
SAOから戻ってきた俺は雄二から現実世界で起こったことを聞いた。
恩師でもあり、親の代わりにもなってくれた麻子の死。さらにダニーも家族と共に事故で亡くなってしまった。
「兄さん」
「雄二……」
「夜も暗くなってきた。中に入ろう」
「……ああ」
俺はずっと暮らしていた思い出の家に雄二と共に入っていく。
そして雄二から麻子が死ぬ直前のことを聞いていく。まったく、最後までかっこいいこといいやがって。
守ってみせろ……か。
俺はゲームにいた奴らのことを思い出す。そして無意識に拳を強く握った。
SAOは国内のアクセスからでないとログイン出来なかったはず。ということは奴らは既に日本にいるということだ。さらに……
ヒース・オスロ
奴もいずれ二人を引き連れて接触する可能性が高い。大切な人を守ってみせるさ、絶対に。命をかけてな。
俺は雄二を見ながら心の中で決意した。
「大樹。体の調子はどう?」
「JB。おかげさまでリハビリも終わったし、直ぐにでも仕事に復帰できる」
「ああ、そのことなんだけど」
「?」
JBから話を聞くと俺と雄二は雄二の仕事が片付き次第に学校に通うことになっているそうだ。
今さら学校とは。これは一体……
俺は首を傾げる。しかしなんとこれは雄二が頼んだことらしい。
「本当なのか?」
「ああ、兄さんと一緒に普通の学園生活を送りたかった」
「雄二……」
雄二の仕事も順調らしく二ヶ月後にはその学校に通えるということだった。まさか、また雄二と学校に通える日が来るなんて。思わず嬉しさに涙が出そうになるのをこらえる。
「それと大樹のライセンスだけど。凍結になってるから近くの組織の施設で再試験を受けておいてね。まぁ無理だったら時間を掛けて取っていけばいいわ。学校に通う間は基本的に仕事は回ってこないように調整してあるから」
「了解」
JBから説明を聞いて俺は今後のスケジュールを立てていく。自由に動けるようになった俺だがやらなくてはならないことが沢山たまっている。試験までになんとか勘も取り戻さなくちゃならないしな。
ふと、俺はあの世界で最後に彼女に伝えた言葉を思い出す。俺の中でまだ彼女に対して迷っている部分があった。このまま会わない方が彼女やあの世界の仲間たちにとって幸せなのではないのかと。故に迷いがあった。それでも俺の生き方は変えることは出来ない。
俺は一息ついて飲み物を飲む。そしてスケジュールを立てていると机の上に何枚かの紙が閉じてある冊子を見つけてそれを手に取った。
「JB、これは?」
「前に言っていたSAOに関わる資料よ」
「見ていいか?」
「大丈夫よ」
俺は冊子の中を見ていく。そこにはSAO帰還者たちから集めた情報が細かく記載されている。
さすがにプレイヤーに関する個人情報までは乗ってないがその他についてのことはあらかた記載されていた。
そしてページはギルドの笑う棺桶に関するところで止まった。彼らについての肝心な情報を俺は組織には知らせていない。
ヴィサゴにテュポーン……そしてオスロ。
組織に彼らの情報を渡せば雄二に知られる可能性もある。なにより、奴らは俺の手で終わらせる。そう、決めたからな。
そして俺は最後のページで思わず手が止まってしまった。
「未帰還者……」
「未だに意識が戻らないプレイヤーたちね。原因は未だ不明。でも最近はナーヴギア側の問題だとよく言われているわ」
「……」
俺はそこに書かれている名前をゆっくりと見ていく。そして思わず最後に書かれている名前を見て言葉を失った。
「アスナ……」
結城明日菜。あの世界で共に過ごし、戦ったパートナーの名前がそこにはあった。
ALO編がスタート。