楽園を求む転生者   作:厨二王子

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49話 任務

『……』

 

ダイキくんが家に入った後、その場には暗い雰囲気が広がった。

 

「ダイキくんは、どんな人生を歩んできたのかな?」

 

「わからない……」

 

「私は知りたい」

 

「だが、それは本人が教えてくれないと、分からないじゃないか!」

 

キリトくんは強く言葉を出した。

 

「俺はアイツが自分の言葉で、俺たちに伝えてくれるって信じてる。それにユイちゃんも心配してるし、今日はこのくらいにしようぜ」

 

クラインさん……。

 

「そうだな。皆部屋に入ろう」

 

この後は、皆くらい感じになったが、クラインさんが怒涛の盛り上がりを見せて、今夜のパーティーは終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

「突然呼び出して、すまなかったね」

 

「別に……俺を呼んだということは、休暇は終わりということか?」

 

「そういうことだ。しかし、昨日は随分と、盛り上がったそうじないか」

 

「まさか、呼んでほしかったのか?」

 

「まさか」

 

パーティーの次の日、俺はユイとともにヒースクリフに呼び出され、血盟騎士団の本部に呼び出されていた。人払いしてあることから、どうやら裏の任務らしい。とりあえず、ユイは俺の横で静かにしている。

 

「で、俺だけではなくユイまで呼び出して、何の任務だ?」

 

「なに、そう慌てなくても、構わんよ。少し上層を見てきてほしいんだ」

 

「上層?」

 

「そうだ。しかもただの上層ではない、百層だ」

 

「なるほど……でも、何でまた」

 

「実は、一ヶ月前にこのゲームにあるシステムが介入してきてね。どうやら、その影響でバグらしきものが発生してしまったようなんだよ」

 

「そのシステムって、何なんだ?」

 

「それは私の口からは、言えない。ただ一言表すなら、『災害』ともいえるな」

 

災害……。

 

「まぁ君の事だ、いずれ知ることになるだろう」

 

「めっちゃ気になるが、今は気にしないことにしておくよ」

 

「それが、賢明だ」

 

とりあえず俺は、謎のシステムのことは頭の隅に追いやり、任務について聞くことにした。

 

「で、任務っていうのは?」

 

「それは百層に異常がないか、調べて来てほしいんだ。もし、バグを発見したら、対処はせず、ここに戻って来てくれ」

 

「それだけで、いいのか?」

 

「ああ、それだけで構わない」

 

俺の休暇明け任務はそこまで、そこまで大変な任務ではないらしい。後は、想定外が起こらないことを願うことかな。

 

「その任務には、彼女も連れて行きたまえ」

 

「何で?」

 

「100層にはカーディナル本部と、繋がっているGM用システムコンソールもある。彼女の本来の記憶も戻るだろう」

 

「GMって……目の前にいるじゃん」

 

「例えグランドマスターでも、やれることは限られるということだよ。どちらかと言えば、カーディナルの方がやれることは多いんでね」

 

「そうなのか」

 

GMさんも、いろいろあるらしい。

 

すると、ヒースクリフが二つの結晶を渡してきた。

 

「何だこれ?」

 

「一つは管理者権限付き転移結晶だ。これさえあれば百層や、転移無効エリアなど、どこにでも転移することができる」

 

「なるほど……じゃあ、もう一つは?」

 

「これはもし、そのシステムを一人の少女…として、思っているのなら君の役に立つだろう」

 

「『心の器』……」

 

「では、頼んだよ」

 

「ああ、任された」

 

俺はヒースクリフとの話を終えると、さっそく転移結晶を使い、ユイと共に百層に向かった。

 

 

 

 

 

「システムが感情を持つとは……本当に、この世界には様々な可能性がある」

 

ダイキくんが任務に向かうと、私は一人このゲームのシステムについて考える。

 

「カーディナルに彼女が消されるまで、もう時間がない。がんばることだな、ダイキくん。しかし……私も変わったな」

 

たった一人の人間に、ここまでの執着するとは……。

 

私は一人、誰もいない部屋で呟いた。




次回予告

「一姉……なのか?」

「久しぶりね、大樹」

次回ついに、邂逅する。
お楽しみに!






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