夢を見た、それは地獄。
赤い空が広がり、目の前は俺が今まで殺してきた人々の死体で埋め尽くされている。
そして、聞こえてくる、感じる。
叫び、憎しみ、未練、悲しみ
俺はいつもそれを背負うことをせず、ずっと目を背け続ける。そして意識は現実へと戻っていく。
「ご馳走さまでした」
「それはどうも」
俺は今血盟騎士団の任務を終え、アスナと57層のレストランに来ていた。後、何故か俺の奢りで。
俺とアスナは料理を食べ終わると、今回の血盟騎士団の任務について思い出し、溜息を吐く。
「最近多いよね…睡眠PK」
「ああ、そうだな」
今回の任務は睡眠PKについての調査と注意の呼び掛けだった。
睡眠PKとは寝ているプレイヤーに決闘を申し込んで、相手の指を勝手に動かしてOKボタンをクリックする。そのまま、相手を一方的に攻撃して殺す手段だ。
俺とアスナはそのPKが多発してるところに行き、調査や注意を行っていた。
「これで少しは被害が減ればいいんだけど…」
「これで減ったら困らないんだが」
そしてその話の途中、突然外から大きな女性の悲鳴が聞こえた。
「きゃあああああ!」
その声を聞いた瞬間、俺とアスナは誰よりも速く剣を抜き、立ち上がる。
「外からだ」
店を出ると、そこには沢山のプレイヤーが集まっている。そしてそのプレイヤーたちの上には信じられない光景が見えた。教会の窓から、プレイヤーがロープに吊られている。
しかし、問題はそのプレイヤーの胸に黒い槍が刺さっていることだった。
「速く抜くんだ!」
俺が声を掛けるも槍は刺さっていて、そのプレイヤーは動くことができない。俺とアスナはそのプレイヤーがいるところまでダッシュした。
その時、突然そのプレイヤーは光の粒となり、消えていった。
…ありえない。
俺は直ぐに恐らくあるであろう、決闘のウィナー表示を探す。しかし、教会の隅から隅まで探したが、見つかることなく三十秒経ってしまった。
「一体どういうこと?」
「分からない。後、これを見てくれ」
俺がアスナに指差したところには、テーブルにロープが縛られており、そこから窓に向かって伸びていた。
「ありえないわ。圏内でHPは減らない!もしそんなことを可能にできる技が発見されたのなら調べなくちゃ」
「それじゃあ、とりあえず聞き込みかな」
こうして、俺とアスナはこの圏内PKの謎を解くべく、探偵の仕事をすることとなった。
「怖い思いしたのにごめんね。あなたの名前は?」
「えっと…ヨルコって言います」
俺とアスナはとりあえず、最初に悲鳴を上げた女性に話を聞いてみることにした。
「さっきの人は知り合いか?」
「はい、そうです。 あの人はカインズって言います。昔、同じギルドに入っていて、たまに一緒に狩りや食事をしていました。今日も食事をしようとここに来きたんですが、逸れてしまって。そしたら教会に吊るされていて、胸に槍が刺さっていたんです」
「なるほど。その人の後ろに誰かいなかったか?」
「はい。誰かいたような気がしました」
「そうか…」
「ありがとう。下層まで送るわ」
「君も狙われる可能性がある。フィールドだけじゃなく、街中でも注意してくれ」
こうしてヨルコさんを下層まで送り届けた後、この後の方針をアスナと決める。
「さて、どうする?」
「私はこの槍をリズに聞いてみるわ」
「それじゃあ、俺は今回のことについて何か情報がないか、アルゴに聞いてみるよ」
…一応、ヒースクリフにも聞いておくか。
こうして俺とアスナは少しの間、別行動することになった。
「何か分かった?」
「なんにも」
「…そう。こっちで分かったことといえば、固有名がギルティーソーン、そしてプレイヤーメードで、名前がグリムロックということ。後、圏内でダメージを与えられる効果はないらしいわ」
「グリムロック…。恐らく、手がかりになるのはこの名前だけだな」
お互い情報を交換するが、特にめぼしい情報はなかった。いや、こっちは事件に関することはなかったって感じだ。
奴等がここ最近、何かしら動いていることが分かった。
「明日の朝の十時にヨルコさんに話を聞く約束してるし、この名前についても聞いてみることにするか」
「そうね」
「一応カインズさんが死亡してるか、確認しておこう」
この後一層に転移して、カインズの死亡確認を行い、今日はその場で解散となった。
明日も同じ時間に投稿します。