とある夏休みの暑い日、僕ら兄妹三人は珍しくそろって部屋でそれぞれの机に座り作業をしていた。俺はラノベを読み、雄二は勉強をそして一姉は絵を書いていたが突然一姉が言った。
「外で遊びましょう!」
俺はあまりにも突然言い出すので、思わず本を床に落としてしまった。しかし雄二は相かわらず特にリアクションなく勉強を続けている。
「家の中にいてもおもしろくないじゃない。外に出て遊びましょうよ」
一姉はよほど外で遊びたいのか説得してくる。
俺はちらりと雄二の様子を見るが、特に何か言いそうにもない。とにかく、俺はこんな暑い日に外にでるのはごめんなので反論する。
「一姉、さすがに今日は暑いからちょっと…」
「大樹、あなたが毎日走ったりしてるのは知ってるけどたまには姉弟そろって遊ぶことも重要だと思うのよ」
「はぁ」
そう俺は自分で歩けるようになってから、親の目に入らないところでランニングを始めたのだ。おそらくこれから先に体力は重要になると考えたからだ。だが、やはり、一姉に気付かれていたか…。
「とにかく姉弟で遊ぶ事は大事なの分かった?」
「はい…」
いくら心や頭脳は大人なのに、何故か口で負けてしまう。
やはり一姉は天才だったか…。
そして、俺と一姉が争っていると雄二が立ち上がる。
「どうしたの雄二?」
「…下に行く」
雄二はそう言うと、階段に向かおうとするが一姉に呼び止められる。
「雄二も遊びましょうよ」
「…友達と約束がある」
「そう…なら仕方ないわね」
この時俺は弟の言葉に戦慄が走った。
(そっそうか、その手があったか!良し)
そして俺も雄二と同じように言おうとするが…。
「あっ俺も…」
「大樹は友達がいないから大丈夫よね?」
「…はい」
だが、一瞬で封殺された。確かに、俺には友達がいない。まぁ、転生者で子供っぽくないところでクラスでも孤立しているからな。しかし雄二には女友達がたくさんいる、あんなに無口なのに!やはり世の中顔なのか、イケメンなのか!
そんな事を考えていると、もうそこに雄二の姿はなかった。
「それじゃあ二人で外に行きましょうか!」
「…はぁ、分かった行くよ」
こうして今日、俺は一姉と二人きりで出掛けることとなった。
今俺は一姉と手を繋ぎながら歩いている。結構恥ずかしい。
しかしこうして、一姉の事を思い返してみるととにかく大変だった。ある日俺が前世の事をノートに書いているところを、一姉に見つかってしまった事がある。その時、余りにも一姉はしつこく迫って来たので軽く格闘戦になったりしたのだ。そして一時間の格闘の末になんとか死守したのだ。いや~あの時は大変だった。
そんな事を思い出していると、一姉が俺に話しかけてくる。
「確かに今日は暑いけど、こんな暑い日にこそ体を動かしましょうよ」
「…そうだね」
「よし、公園でサッカーをしましょう」
「サッカーか…」
「どうしたの、そんな顔をして?」
「いや、何でもない」
「そう…」
俺はこの時そういえば前世でサッカーをした事を思い出した。まぁ持ち前の不幸で散々な目にあったが…。
そんな事を考えてると、目的地の公園に着いた。
一姉は距離を取ると、家から持って来たボールを下に置き俺に向かって蹴る。
そして俺はそのボールを足で止めて蹴り返す。それを繰り返しずっとパスをする。
「学校は楽しい?」
「えっ、うんまぁ一応…」
「そう…。大樹は友達がいないから見たいだから心配なのよ」
「えっ別に大丈夫だよ。一応雄二もいるし…」
「雄二は弟でしょう。それに雄二にはしっかり友達がいるわ…全員女友達だけど」
この一瞬、彼女の周りに殺気が出たような気がした。お願いだ雄二、そろそろ男の子の友達を作ってくれ。
俺が冷や汗を掻いてもパスは続く。
「確かに雄二はイケメンだけど…あっもちろん大樹もイケメンよ」
「お世辞はいいよ…」
「あら?お世辞じゃないわよ。本当にカッコいいのよ」
その時、一姉は微笑んだ。俺もその時、本当に一姉に惚れかけたが直ぐさま正気に戻る。
「別に、一姉にそんな事言われても嬉しくないし…」
「ふふふふ」
そんな会話を続けていると、いつの間にか日が沈みかけていて夕方になっていた。
「じゃあそろそろ日も沈んできたし帰ろうかしら?」
「ああ、そうだね」
こうしてまた一姉と手を繋ぎながら家に向かう。
「今度は雄二も連れて、三人でキャッチボールでもしましょう」
「…ああ」
「もう、もっと喜びなさいな。今日は楽しかったでしょう?久しぶりに姉とも話せて」
「楽しかったよ…」
どうやら俺は意外にも、この時間を楽しく感じていたらしい。
まぁ、こんな会話をしながら俺らは家に帰って行った。