楽園を求む転生者   作:厨二王子

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9話 俺は…

俺は今ひたすら、暗い道をがむしゃらに走っていた。一姉の乗っていたバスのルートは誘拐される前に把握していたので、その記憶を頼りに走っている。

 

買い物の帰りに、俺は誘拐されるとどこかの工場に連れてかれ、監禁された。しかし車に乗っている時間が短かったことからおそらく、そう遠くはない場所だと思った。

監禁されていた時間はだいたい十五日間くらいで、俺は警察に発見された。だが、誘拐犯は素人で本来俺はもう少し早く発見されるはずだったらしいのだが、二つの原因で俺の発見が遅くなったらしい。

 

一つは目撃者がいなかったというところだ。これはまあ仕方がない、運がなかった。

しかし二つ目はあの糞な父が身代金の要求の電話で自分の息子ではないと言い、切りやがったことだ。俺はこれを警察の人から聞いた時、怒りで頭がどうにかなりそうだった。今は一姉のことでらそれどころではなかったので直ぐに冷静になり、警察署から走り出した。

 

俺は走りながらタクシーを探すが中々見つからない。しかしそのまま走っていると、見知った顔と車が目に入り直ぐにその人のもとへ向かう。

その人とは茅場晶彦だ!

俺は茅場のところに行くと、どうやら俺の様子を見て大変な事態と察したようで、車をだしてくれた。

 

車に入った俺は、直ぐに茅場に目的地と事情を話した。

 

「なるほど…分かった。直ぐに、大樹くんが言った場所へ向かう。しっかり捕まっていたまえ」

 

「頼む…」

 

「なに君の協力は本当に助かったのでね、このくらい問題ない」

 

俺は車の中でひたすら一姉の無事を願う。

どうにか間に合ってくれよ…。

 

おそらく、一姉たちがいる場所は谷から落ちたということで、山の下の方にいるだろう。煙がでているところだとも思っった。

なので、俺はそこに着くと車から直ぐに出て、山の中へ走り出す。後ろから茅場が何か言っているが、俺には聞こえなかった。

 

山の中を俺はひたすら走っていると、何度も転びそうになるがその度に体勢を建て直し走る。

 

しばらく真っ直ぐ走っていると、声が聞こえてきた。聞き慣れた声…一姉の声だ、あとほかの人の声も聞こえる。

俺は顔を上げると、目の前の光景を見て絶望した。

 

一姉の身体に人…いや化け物が二匹噛みついていた。その近くには眼鏡をかけた少女がこちらに向かい、走ってきてる。

俺は大きな声で叫んで、一姉のところに向かおうとした。

 

「一姉!」

 

それを聞いた一姉は一瞬驚きこちらを見て怒鳴った。

 

「大樹来ちゃだめよ、その子を…天音を連れて逃げて!」

 

俺は一姉のところに向かおうとするが、一姉に止められる。確かに、俺一人行ったところで、あの化け物をはらえないだろう。それに、一姉の後ろの方にまだ何匹か化け物がいるのが見えた。

 

「だけど…」

 

「愛してるわよ、大樹。彼女をお願い…」

 

「くそ!」

 

俺は天音の手をとると、来た道を引き返し走り出す。化け物は赤い眼をギラつかせこちらを追ってくる。

 

「あの…」

 

「…」

 

天音は何か言おうとするが、俺は無言で外まで走り出す。どれくらい走ったか分からないが、暗闇から少し光が差し道路が見えて来た。

そこには、茅場が大声で車からこちらを呼んでいる。

 

「こっちだ!」

 

俺はその声を聞き車に着くと、扉を開け天音を押し入れて俺も乗る。茅場は俺ら二人が乗ったことを確認すると、車をだした。

車の中から見ていたが、あの化け物たちはどうやら一姉のところに引き返した見たいで、とりあず俺らは一安心する。

 

静かな車の中最初に口を開いたのは茅場だった。

 

「どうやら自分の姉を救うことは出来なかったようだね」

 

「…」

 

「しかし人も極限状態になればあのような化け物になってしまうとは驚きだったよ」

 

「ああ…」

 

そのような会話を茅場とすると、再び車の中は静かになる。すると今度は天音が口を開いた。

 

「ごめんなさい」

 

「何が?」

 

「私のせいで…」

 

「いやあんたは関係ないよ…俺が無力だったから…」

 

「でも…」

 

「…」

 

この話をした後、まだ彼女は何か言っていたようだが、俺は聞いていなかった。

 

「とりあえず近くの警察署の方に向かう。それでいいかね?」

 

「はい…」

 

「…」

 

こうして俺らは警察署に行き、事情聴取を受けた。まぁ、俺は特に何も聞いていなかった。

天音は警察署に保護者が向かいに来るそうで、ここで別れた。そして俺は茅場の車で家まで送って貰い、家に着いた。

 

「私は今日ここに来たのは、伝えることがあったからなのだが…今の君に言う価値はないな」

 

「…」

 

「まあいい。ここでお別れだ、次はSAOでまた会おう」

 

茅場はそう言うと、車に乗り帰っていく。俺は家に帰ると、二階に上がり自分のベットに倒れて涙を流し続けた。

 

 

一姉を助けられなかった時

 

チート能力をくれなかった神を…

 

この悲しい運命を…

 

そしてなにより無力な自分を…

 

俺は恨んだ。

 


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