【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第四十五話 技を考えてみよう

 

 

 

 

 

 今日も八神家に参上して、魔法の勉強と気の訓練と動物組みとの遊びをしている、同時に。

 マルチタスクに慣れた為か、並列思考が三つになったんだ。

 そのおかげで影分身も二体出せるようになったから一体を気製影分身、もう一体を魔力製影分身にして、それぞれの技術の向上を図らせている。

 

 本体の俺は久遠に海鈴を含めて遊び相手になっている。

 影分身に余力を与えるために魔力も気も殆ど注ぎ込んでいるので本体の俺には大して力が残ってないから、前みたいな訓練を含めた遊びじゃなくただ遊び相手になっているだけ

 この前も言ったが遊びを含んでいたとはいえ、ちょっと余裕が無いんじゃないかと思ったからだ。

 偶にはこういうのんびりとした過ごし方もいいだろう。

 力を全部分身に預けて任せきってるだけなんだけどな。

 

 

 

 それで訓練に関わらない遊びを久遠たちとしようと思ったんだが、何をすればいいのか思いつかなかった。

 今の俺の年代の子供なら気ままに遊びを思いつくんだろうけど、これまで訓練を含んだ遊びばっかりで普通に遊んだ事なんてないことに気づいた。

 まあ、今更遊びを考えるなんて必要なかったからな。

 

 それにこれまで遊ぶ友人なんて久遠くらいしかいなかった。

 必要なかったのもあるけど、少々人付き合いに問題があるか?

 同年代の友人は結局なのはちゃんだけ。

 年上でも那美姉さんとかがいるけど、あまり遊ぶという事柄じゃあないな。

 

 美由希は一応友人だけど、やることが剣術第一だからどうしても殺伐となる。

 美由希で(・)遊ぶことはあっても、美由希と遊びに行った事は無いな。

 そもそも美由希は誰かと遊びに行ったりするのだろうか?

 俺も知らない友人が居るとはなぜか思えない。

 人の事は言えないがな。

 

 美由希に人の事は言えないと思ったのは、なのはちゃん達を除けば一般の友人が俺もいないからだ。

 逆に言えば友人関係が結局原作キャラ寄りになりすぎてると気づく。

 今更原作キャラが悪いとは思わないけど、それだけじゃちょっと不味いんじゃないかと思い始めた

 実年齢の差でやり辛いかもしれないが、もうちょっとクラスメイトとの付き合いを改め直してみようかな。

 

 と思ったのだが、もう直ぐ学校は夏休みに入るんだった。

 学校の付き合う云々は夏休みが明けて二学期からになるな。

 それに夏休みに入れば沢山時間も取れるし、普通に遊びに興じる事も出来るだろう。

 宿題は分身を使えば影分身でなくても手数にはなるから、総掛かりで終わらせる事も出来る。

 異世界見学を頼んでみるのもいいかもしれないな。

 

 

 

 色々考えが脱線したがあまり遊ぶ事が思いつかなかったので、はやてちゃんの持ってる漫画でも読ましてもらっている。

 久遠と海鈴とはちょっとじゃれあっていた後は、ゴッドハンド纏バージョンで俺の膝の上で寛いでいる。

 前回の一件で使うようになったこの状態も二人は気に入っている。

 撫でられるのもいいがこっちも心地良いそうだ。

 

 ちなみに今日はアリアが魔法の先生をやっているので、影分身の俺が相手をしている。

 シャマルさんが教師役の時は久遠たちと一緒にこっちにいるんだがな。

 マルチタスクで影分身から送られてくる情報で教えてもらいながらも、本体が寛いでいるのは少し複雑な気分だ。

 勉強しながら怠けるって同時に出来るようなことじゃないし。

 

 そのキーワードでNA○UT○の螺旋手裏剣の修行を思い出した。

 実は螺旋丸自体は普通に練習して気で再現出来ている。

 まあ両手でしか作れないけど影分身も出来るようになったし、その内試してみるかな。

 性質変化も出来てるんだし。

 

 

 

 寛ぎながらも何故か技の考察になってしまうのに、自分自身心配になっていた時にシグナムさんがこっちに来た。

 手には鞘に収まったレヴァンティンがあり、あまりいい予感がしない。

 

「拓海、ちょっと付き合ってもらえないだろうか」

 

「手合わせならお断りだぞ

 今は影分身に気も魔力も殆ど回しちゃったから、俺自身には殆ど力が残ってないからな」

 

「いや、手合わせを求めているわけではないが、式神を出す事も出来ないか?」

 

「? 大した強さのは出せないが、それでもいいのか?」

 

「それで構わない

 ちょっと試してみたい技があるんだ

 これなんだが…」

 

 そしてシグナムさんに渡されたのは漫画の単行本。

 題名は【る○うに剣○ -明治○客浪○譚-】

 

「って、何読んでるんだよ…

 いや…読むのは構わないが何でまたこれなんだ」

 

「いや、先日お前が物語の技を披露しただろう

 それで主が私達にも物語の技を使えるんじゃないか言われたんだ

 主が私に勧められたのがこの本だったのだが、読んでいてなかなか面白い

 これがこの国の剣士なのだな」

 

「流石に漫画に出てるような事は有り得ないからな

 …いや、有り得なくはないのか

 今なら俺でも見せ掛けだけなら十分出来そうだし」

 

 下位の奥義なら十分に真似出来る。

 技法が伴うのは練習しなきゃ無理だけど、出来ないとは言い切れない。

 天翔龍閃の完全版は剣技だけじゃ無理としか思えないけど、高町家の剣を考えたら出来ないとは言い切れない気がする。

 九頭龍閃辺りも頑張れば十分出来る気がするし…

 

 というかシグナムさんにこの漫画なんてなんてチョイスだ、はやてちゃん。

 判ってるなと言えばその通りだが、なんか不味い物を教えてしまった気もする。

 本気でニート侍になったりしないよな…

 

「物語と実際には違う事くらい解っている

 だが技が参考になると思ったのは事実だ

 そこで拓海には技の的代わりに式神を出してもらいたい

 お前の式神なら倒しても問題ないし、技の手応えも掴めるからな」

 

「まあ、そういうことなら…」

 

 要望に応えて俺は標的になる式神を作成する。

 と言っても影分身の構成をより頑丈にするために霊力も殆ど使っているので、今出せるのはホントにショボイ中身スカスカな物だけだ。

 普通の攻撃でも消えてしまいそうな物だが、まあ唯の的だから問題ないだろう。

 姿はどういうのにするか………アイツでいいか。

 

 

-ボンッ-

 

 

 式神の術が発動して、その場に煙が舞い上がる。

 そこから現れるのは二メートルを超える大きな人型にマントをなびかせたアイツ。

 

『ひぃさびさの出番だと言うのにぃ、たぁだの的とは納得いかぁん』

 

「こいつは確か…」

 

『そぉう、わぁれはガーディアン・アナァゴ

 海鳴の守護の使命を持ったぁ、形無き幻影よぉ』

 

「以前なのはちゃんとの話の時に出したやつ

 適当にイメージしたやつだったけど、標的には丁度いいだろう」

 

 式神だから動物だろうが無機物だろうが形だけで何でも出せるが、剣で打ち込むとなれば人を想定したほうがいいだろう。

 知り合いをモデルにするのは流石に引けたから、使い捨てネタのこいつを出してみた。

 

「対人を想定するなら確かに人型のほうが打ち込みやすい

 ではガーディアン・アナァゴよ

 私の剣、受けてもらえるか」

 

『そぉの為に此度は呼ばれたのだぁ

 是ぇ非もない、全力で来るがいぃ」

 

 シグナムさんの頼みにアナァゴはいつでも来いといった様子で仁王立ちをしている。

 式神相手に了承をとるシグナムさんも可笑しいだが、それに対応したアナァゴもなんか可笑しい。

 式神は命令遂行に対してある程度自己判断が出来るんだが、こんなに流暢に受け答え出来る式神はいなかった。

 イメージが固まりすぎて、ある程度人格が確立してしまったとか?

 

「ではいくぞ

 レヴァンティン!!」

 

≪エクスプロージョン≫

 

 シグナムさんはレヴァンティンを腰にまわして、漫画通りの抜刀術をするような構えをしている。

 鞘にはレヴァンティンを収めたままでカートリッチをロードさせると、鞘ごと刀身がシグナムさんの魔力の炎に包まれる。

 いつもならこの技は紫電一閃の体勢だが…

 

「紫電!!!」

 

 レヴァンティンを鞘から抜き放ち、炎を纏っている刀身で逆袈裟にアナァゴを斬る。

 この時点で耐久力の無い式神であるアナァゴは消えるだけのダメージを受けてるが、消えるまで少しのタイムラグがある。

 そこそ更にシグナムさんは追撃をかける。

 

「双閃!!!」

 

 左手に持った炎を纏ったまま鞘で、今度は袈裟切りに切り込む。

 鞘を使った紫電一閃を打ち込む二連攻撃だ。

 当然一撃目で消えるのが確定していたアナァゴはオーバーキルを受けて消える直前だ。

 

『見事だぁ…』

 

 

――ボフンッ――

 

 

 そう最後に呟いてからアナァゴは煙になって消え去った。

 確かにイメージ通りではあるんだがちょっと行動が活発すぎないか?

 普通の式神だったら命令以外には基本的に喋らないのに。

 

「うむ、まあまあな手応えだ

 これなら多少調整すれば実戦でも使えるだろう」

 

「紫電一閃を連撃に出来れば十分有効な技ではあるね

 だけどシグナムさんの剣は刀じゃなくて片刃でも西洋剣だろ

 刀身が反ってる訳でもない直刀だから抜刀術はやりにくくないか」

 

「ああ、それが一番ネックになっていてな、技の力をなかなか出し切れない

 それでも鞘と合わせた紫電一閃の二連撃は魅力的だ

 いっそレヴァンティンが刀とは言わなくても、曲刀であったならだいぶ違うのだが…」

 

「デバイスなんだから別の形態として曲刀の状態でも追加したら?」

 

「おお!! その手があったか!!

 ならばいっそ刀の形態にして、鞘も振りやすいようにすれば完璧だ

 だがどうやってその形態を追加するか

 リインフォースに相談すれば何とかなるか?

 或いは聖王教会に当たってみるか…」

 

≪…………≫

 

 気のせいかレヴァンティンが魔改造されそうな状況にシグナムさんに何か言いたげに見えた。

 よっぽとるろ剣に嵌ったのか、技に憧れたのか。

 なんにせよ、シグナムさんは騎士から侍にクラスチェンジするようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴィータは何やってるんだ?

 さっきからアイゼンを振っては考え込んだりを繰り返してるけど」

 

「ああ、拓海か

 はやてがあたしに新しい必殺技のヒントをくれてよ

 それでどうやったら出来るようになるのか考えてんだ。」

 

 ヴィータもか。

 そういえばシグナムさんが私たちって言ってたな。

 てことは守護騎士全員にか。

 なんだか面白い事になってきたな。

 

「そうか

 で、どういうヒントをはやてちゃんはヴィータに出したんだ

 シグナムさんと同じで漫画か何か参考にしてるんだろ」

 

「まあな、見てみたけどなかなか格好良かったからあたしもやってみたいと思ってな

 だけどその技の再現の仕方がよくわかんなくって悩んでたんだ

 なんかいい案がないか拓海も考えてくれよ?」

 

「かまわないけどどういうのを参考にしてるんだ」

 

「コレ」

 

 ヴィータが差し出したのは漫画ではなくDVD のケース。

 そこに書かれているタイトルは【勇○王ガ○ガ○ガー】

 

「ゴル○ィオンハ○マーかよ!!」

 

「あれはまさにあたしの為にあるような必殺技だな

 完成したらギガントを超える切り札になるな」

 

「完成すればな」

 

 光になったら不味いだろ。

 どう考えても非殺傷設定とか出来ない技だな。

 まあハンマーを使うならヴィータ好みな技には違いないんだけど。

 

「で、どういう風に再現しようと思ってるんだ?

 そのまま再現出来そうな魔法は流石にないんだろ」

 

「似たような効果の魔法はあるかも知れねえけど、あたしはそんなの覚えてねえからな

 魔法の知識が一番あるリインなら知ってるかと思って聞いたけどダメだった

 そうなると管理局か聖王教会にいって調べるくらいしか思いつかねえ」

 

「諦めるって選択肢はないのか」

 

「ない、あたしの辞書にそんなもんはねえ」

 

 見ての通りの負けず嫌いだからな、ヴィータは。

 ゴ○ディオ○ハンマーを打ち込むヴィータも見てみたくない事も無い。

 出来るかどうかはともかく、応援はしよう。

 

「応援はするけど、俺には魔法は学び始めたばかりだから知識面では力になれないぞ」

 

「かまわねえって

 拓海はいろいろな技を自分で再現してるんだろう

 なんか参考になりそうなアイディアがあれば教えてくれ」

 

「まあそれくらいなら」

 

 専用の魔法を探す事から始めるから完成は遠そうだ。

 その魔法をグラーフアイゼンと組み合わせて再現するかも考えなきゃならないし。

 何か力になれるなら、手を貸してやりたいんだがな。

 

「やっぱり前提の必殺技のヘルア○ドへブ○から覚えなきゃいけないのか

 攻撃と防御のエネルギーを併せるってどういう意味だ?

 それでどうやって強い力になるって言うんだよ」

 

「まあ、フィクションの技なんて合理的でないことのほうが多いんだ

 自分で独自に解釈して通用できるような技の在り方を考えて…」

 

 そこでふとある技を思い出した。

 それと式神の術を組み合わせればもしかして…

 俺は即座に式神の術式を霊力で編んで発動。

 

『まぁた、わぁれかぁ』

 

「こいつって前にはやてが笑って耐えられなくなってたやつじゃねえか

 こんなの出してどうするんだよ」

 

「コレを守るように全力で強力な防御魔法を張ってくれるか」

 

「まあいいけど…」

 

『随分とひどい扱いではないかぁ』

 

 ぼやくアナァゴは無視して、ヴィータがアイゼンで防御魔法を使う。

 アナァゴは多面体のガラスに包まれるような形で防御魔法に閉じ込められた。

 コレなら内部から出ることは出来ないが、外部からもアナァゴに触れることも出来ない。

 

 準備出来た思うと俺は少ない気を使って、両手に炎気と冷気を宿す。

 更に胸の前に新たに式神の術式を出して、術式を挟むように両手を合わせる。

 合わせた手には炎気と冷気の混ざった白い気が残っており、式神の術式も残っている。

 問題無いと判断して、手にある白い気を宿す式神の術式を起動する。

 

 出すのは俺の体よりも大きなハンマー。

 これまでは大抵生き物ばかりを出してきたが、無機物を出せないとは言っていない。

 ただ武器などとしては式神の耐久度の問題であまり使えないからだ。

 

 だけど俺の予想ならこのハンマーは普通に使えるだろう。

 先ほど込めた白い気がハンマー全体で輝いている。

 

「なんだ、そのハンマー?

 式神の術で出したっぽいけど妙に光ってるぞ」

 

「ああ、ヴィータ触るなよ

 俺以外が触れたらたぶんヤバイ」

 

 気や魔力ってのは使い手の波長かなんかが合うからか、出した本人が意図しない限り自身を傷つけることは無い。

 判りやすく言うとシグナムさんが炎熱変換で出した自分の火で火傷することは無いってことだ。

 それ以外の火であれば普通に火傷するらしいから、自身の出した力は自身を傷つけることは無い。

 だからこそ俺がこの力を手で持っても大丈夫だが、他人が触れたらそこから消滅の可能性がある。

 それを確かめるためにもハンマーを振り上げて…

 

「ひかりになあれ」

 

『なにぃ、行き成『ジュワ!!』』

 

 少々棒読み気味にセリフを言いながら、防御魔法を掛けられているアナァゴに振り下ろした。

 ハンマーは防御魔法の抵抗を感じさせる事も無く素通りするように触れたところから消滅させ、アナァゴも黒板にチョークで書かれた絵を消すようにハンマーにそって消滅しながら消えた。

 あまりに抵抗が無さ過ぎたのでそのまま地面まで叩きつけそうになったが、このままでは地面も消滅させると思って振り下ろし切るのをやめた。

 

「やっぱこの技じゃ威力はあっても光にならないから再現とは言えないな」

 

「って、なんだよ今のは!!

 あたしの防御魔法素通りするように消えちまったぞ!?」

 

「そういう性質の技だからな

 どちらにしろ、普通に人に向かっては使えない」

 

 久しぶりに相転移砲の気を作って、更にその気で式神製のハンマーにしたけど、思ったより簡単に性質をそのままに武器にして形にすることが出来たな。

 まあ使うような機会は早々ないだろうけど、放出系の技であるよりは使いやすいかもしれない。

 というか、威力的には直死の魔眼にもそうそう劣らないな。

 使い勝手の良さならこっちだろうしな。

 

「それでそれはあたしにも使えるのか?」

 

「これは気と霊力での技だからヴィータには無理だな」

 

「なんだ、あたしには使えないのかよ

 威力は凄いみたいだし、見た目は似てなくもなかったのに」

 

「だけど、理論を応用すれば魔力で同じ事は出来るようになるかもしれないぞ」

 

「本当か!?」

 

 もともと相転移砲は魔法のメドローアの理論をベースに編み出している。

 なら魔力で炎と冷気を出せれば理論的には使えない事はないだろう。

 

 ただ魔力で発生させる炎と冷気には術式が必要だ。

 俺はデュランダルがあるから冷気は出せるけど、炎に変換する術式は持ってない。

 ヴィータは古代ベルカ式だからそれに合った術式を探さないと。

 

 その上、ただ発生させるだけじゃダメだ。

 炎には融解や蒸発を、冷気には凝縮や凝固する術式を付け加えて相転移させる事を明確にしないといけない。

 それを併せる事によってメドローアの理論が完成するのだから。

 

 そういえば原作で氷の魔法を使うって言うならデュランダル以外にはリインフォース・ツヴァイがいたな。

 リインさんが生きてるから誕生する可能性を奪ってしまったけど、それは仕方ないよな。

 残念だとは思うけど、それは原作の話だから罪悪感を感じると言う事はない。

 あくまでここは現実だからな。

 

「ただ、俺も魔力では出来ないし威力が威力だ

 出来るようになるのに時間は掛かるだろうし、誰にも教えない条件の上で協力してもいい」

 

「……はやてにもか?」

 

「まあ、使い方を教えないだけでいい

 使える様になるかはまだ分からないけど」

 

「なら頼むぜ

 ちゃんと出来る様になるまで付き合えよ」

 

「わかってる

 俺も出来るようになるのは見てみたいからな」

 

 この技を魔力でやると言う事は、完全なメドローアの再現になる。

 その前提となる魔法術式による炎と氷の習得から始める事になるから、俺も一応は覚えておきたいと思っている。

 そこからどう技に転用するかはヴィータ次第だ。

 

 時間は掛かるがコレが後のヴィータの新必殺技の出発点となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋の中に戻ってみればシャマルさんが一人で珍しくテレビを見ていた。

 シャマルさんは料理を除けば家事に大抵板がついていたので、一人でゆっくりテレビを見ているなんてことはあまりない。

 ふと何かの昼ドラでも見てるのかと、微妙に先入観があるなと思いながら覗いてみると…

 

『俺のこの○が真っ赤に○える!!』

 

 

-ズテンッ!!-

 

 

 予想の遥か彼方の内容だったので足を滑らせてしまった。

 というか、もしかしてコレがはやてちゃんが勧めた技か?

 

「あら、拓海君どうしたの?」

 

「いや、何でそんなの見てるのかと

 もしかしてはやてちゃんが勧めた?」

 

「ええ、そうよ

 その様子なら他のみんなの練習を見たのね

 はやてちゃんから勧められたから、みんな頑張ってるでしょ」

 

「シグナムさんもヴィータも結構乗り気でしたね」

 

 だけど何でシャマルさんがコレなんだ?

 そもそもシャマルさんは直接の戦いは専門じゃないから○ガンとは全然合わないはずなんだが。

 

「何ではやてちゃんはコレを参考にしろっていったんです?

 この話は全然シャマルさん向きじゃないはずなんですけど」

 

「そうなのよね

 確かにここまで見てみると私が扱うような技はないわ

 そもそも私って後方支援が専門だから、直接戦うような魔法は殆ど持って無いんですよ

 少ない内の一つをはやてちゃんに教えたら、ここのシーンの後に私に合った技があるんですって」

 

「この後のシーン?」

 

『爆○ゴッド○ィンガー!!』

 

 テレビには必殺技を相手にはなってる。 

 爆熱って単語からどちらかと言うとシグナムさん向けだよな。

 それでも無手の攻撃だから相性が合わない。

 

「どう見てもシャマルさん向きの技じゃないと思うんだけど

 一体どういう魔法をはやてちゃんに見せたんです?」

 

「旅の扉って言う魔法よ

 本来は攻撃魔法じゃないんだけど空間を繋げて遠距離から相手に直接触れることが出来るの

 昔はコレを利用してリンカーコアの蒐集を行なってたりしてた事があるから、攻撃もすることが出来るわ」

 

 ああ、原作でなのはちゃんの魔力を蒐集した奴か。

 思い付く限りシャマルさんが攻撃魔法を使ってるのといったら、あとは闇の書を使ったときくらいだからな。

 しかし旅の扉を基にしてこの技を提示したって事は…

 

『○ート○ンド!!』

 

 必殺技の締めに相手の胸に打ち付けた手の炎が爆発して止めを刺した。

 それを見たシャマルさんが目を見開いて気づく。

 

「ま、まさかはやてちゃんはコレが言いたかったの!?

 相手のリンカーコアを掴んで爆破しろって」

 

「たぶんそうだけど、危ないから

 場合によってはたぶん死ぬんじゃない?」

 

 この後はやてちゃんにリンカーコアの大切さと損失の危険性をシャマルさんから詳しく説明されて、この技は没となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シグナムさんやヴィータの技再現の為の素振りを、俺は眺めていた。

 隣にはザフィーラがいて同じく二人の練習を眺めている。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「…なあ」

 

「なんだ」

 

「ザフィーラは何かはやてちゃんに漫画の技でも勧められたりしなかったのか」

 

 シグナムさん、ヴィータ、シャマルさんと来れば、ザフィーラにも何かはやてちゃんが入れ知恵をしているだろう。

 リインさんははやてちゃんとユニゾンして魔法の練習をするので、ネタに走る余裕はなかったらしい。

 

「俺は盾の守護獣だからな」

 

「えっとそれは…」

 

「俺は盾の守護獣だ」

 

「いや、答えになって…」

 

「盾の守護獣に必殺技など必要ない」

 

「……あ、そうなんだ」

 

「ああ…」

 

 つまりザフィーラに勧められるような技が思いつかなかったわけか。

 徒手空拳なら幾らでも思いつくけど盾の守護獣って名前にあった技は俺もあまり思いつかないな。

 守護主体の徒手空拳ってなんだろう?

 

 ただ必要ないって言ってる割にシグナムさん達の練習を眺めてる姿に哀愁を感じるぞ。

 何故自分だけって雰囲気が薄っすらと…

 

 八神家って女性比率が高いから唯一男性であるザフィーラの肩身は狭い。

 まあ普段から狼(犬?)の姿だから女性陣はあまり気にしてる様子はないが、ザフィーラ自身はどう思ってるのやら。

 性別は関係ないが今回は割を食らってるように思える。

 

「ザフィーラ」

 

「…なんだ?」

 

「前に徒手空拳の話をしただろ」

 

「ああ」

 

「実はちょっと面白そうな技の案があるんだ

 主に素手の技になりそうなんだが、徒手空拳はまだまだ練習不足だ

 一緒に練習に付き合ってくれないか

 技の理論は簡単だからザフィーラでも使えるはずだ」

 

「!?………いいのか?」

 

 慰めとしか言いようの無い内容だが、実際に技の案自体はあるしザフィーラにも使えるものだ。

 極める事が出来ればちょっとした武術になりえるかもしれない。

 

 しかし、今の一瞬の反応を見る限り、やはり気にしていた様子。

 ザフィーラと一緒に技開発も悪くないだろう。

 

「もちろんだ

 徒手空拳、ちゃんと教えてくれよ」

 

「ああ、こちらこそ頼む」

 

 俺とザフィーラの武術の頂点への道が始まった。

 

 

 

 

 

●シグナム、○天御○流を練習開始

●ヴィータ、○ルディオ○ハンマー(メドローア方式)の開発開始

●シャマル、ゴッ○フィン○ー(ヒート○ンドのみ)の開発を断念

●ザフィーラ、新たな武術の開拓


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