【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第二十五話 戦う事ばかりが戦いとは限らない

 

 

 

 

 

 那美姉さんと久遠に予知夢として俺の知ってることを全て話した。

 次元世界の事、闇の書の事、はやての事、守護騎士達の事、それに伴い町に被害を及ぼしたジュエルシードの事も全部説明しておいた。

 闇の書が近い未来にこの世界を滅ぼしかねない物として動き出す事を説明したら、さすがに那美姉さんもワタワタと慌てだした。

 被害の規模が久遠の祟りと比べ物にならないからな…

 

「そういうわけなんだけど、那美姉さんどうしよっか?」

 

「どうしよっかと言われても、まず闇の書の念がどういう物か見てみないと…

 けどそれほどの物、拓海君はどうにか出来たの?」

 

「以前久遠から祟りをたたき出して、その後に消し去ったやつでどうにかなるよ。

 ただそれをすると中にいる守護騎士達や管制人格も死んでしまうから。」

 

「えっと、弐の太刀で久遠の祟りみたいに弾き出したり出来ない?」

 

「久遠の時は祟りが表に出てたからしっかり弐の太刀を打ち込んで弾き出せたけど、闇の書の闇は見た限り負の念が滲み出てる位でそこがまったくわかんないんだ。」

 

「そうなの……

 あれ? 闇の書ってそのはやてちゃんの家にあるのよね。

 もう会ってきたの?」

 

「昨日こっそり侵入して確認してきました。」

 

「ちょ!?」

 

 反省はしていますが後悔はしていません。

 確認しない事にはどうにもならなかったし。

 初対面のはやてに会って『お宅の闇の書を見せてください』なんて言えるわけないだろ。

 

「まあ、不可抗力という事で勘弁して。」

 

「はぁ…もうそんな事しちゃダメだよ。」

 

「はーい。」

 

 好きでこんな事してるわけじゃないんだけどなー。

 こっそり行動してるとなぜかこんな事に…

 

「やっぱり八神はやてに会って説明したほうがいいかな?」

 

「そうだね、一番の被害者なのに何も知らないままでいるのは良くないと思う。

 私も一緒にいくから会いに行こう。」

 

「わかった、その前にちょっといいかな?」

 

「なに?」

 

「父さん母さんに話しておこうと思って。」

 

 今回は完全に自分から厄介ごとに首を突っ込むんだし事前に説明しておかないと。

 心配掛ける事もう確定だからなんだかホントすいません。

 

「そうだね、心配掛けちゃうものね。

 じゃあはやてちゃんの家に行くのは明日でいい?」

 

「うん、それでおねがい。」

 

 

 

 

 

 その夜、俺は両親にまた超常的な事件に関わる事になると話した。

 もう何度も事後的に関わっていたから、両親も少し呆れながらも理解はしてくれた。

 ただ今回は危ない事にも手を出さなきゃいけないと言ったら難色を示したが説得した。

 

「毎度毎度心配掛けてごめんなさい。」

 

「まあ、いつもの事だからな…」

 

「そうねぇ。」

 

 やっぱり両親共に呆れた様子。

 心配はしてくれているが、もう慣れてしまったという感じだ。

 

「拓海は何度もこういう事に関わってるが、拓海は将来神咲さんみたいな退魔師になりたいのか?」

 

「え? うーん……興味は無い事も無いけど、将来と言われたらあまり考えたことないな。

 今は不思議な力を試したりするのが楽しかったから、将来はこれを活かせる仕事だといいんだけど。」

 

 正直ジュエルシードやら闇の書やらで手一杯で、最近は能力開発や練習があまり出来ていなかった。

 俺の剣技で退魔師をするのもいいし、ヒーリングをもっと研究して医療に役立てるのもいい。

 今はまだ関わってないけど次元世界の魔法を手にしたら、魔導師が就く職を探す事になるかもしれない。

 管理局の戦闘に関わる職はまったく興味ないけどね。

 

 それに次元世界を旅していろんな魔法生物に会ってみたいな。

 幻想でしか存在しない生物とかホントにいるんだろうし。

 そういえばSTSのキャロがそういう職についてたんじゃなかったっけ。

 そういう職があるなら管理局にも興味は無い事は無い。

 

「まあ将来どういう職に就くかはまだ決めてないけど、とりあえず大学までは行きたいと思ってる。」

 

「そうか、まあ時間は十分にあるんだ。

 じっくり考えなさい。」

 

「うん、わかった。」

 

 原作なのは達みたいに中卒はダメだろう。

 こっちの世界に戻ってきた時に中卒じゃあいろいろ問題ないか?

 んー、とりあえず将来の為に異能を活かせる職の為の資格を取ってみようかな。

 能力がある御陰でその手の技能も習得がしやすいだろうし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の昼間。

 俺は那美姉さんと久遠と一緒にはやてに会う為に八神家にやってきた。

 念のために、また周囲を凝、霊視、魔力視をして更に円を展開して怪しい物が無いか確認した。

 リーゼ姉妹が猫の姿で監視でもしてるんじゃないかと思ってたが、一応管理局員で仕事があるから四六時中監視はしてないみたいだ。

 それらしき怪しい猫はこの周囲にはいない。

 

 ギル・グレアムの存在も那美姉さんには説明済みだ。

 闇の書の被害をどうにかしたいという考えは賛同出来るが、はやてのような子供を犠牲にしてまで如何にかしたいというのは賛同出来ないと那美姉さんもいった。

 今はこちらの存在を知られないようにする。

 はやてに接触する以上何時までも放置は出来ないから何か考えておかないと。

 

「じゃ、いくね。」

 

「うん、いいよ。」

 

「クォン。」

 

 八神家の呼び鈴を前にして、俺は那美姉さんと久遠の了解を取る。

 

 はやてへの説明は全部俺がする。

 それが俺の責任だと思うし覚悟だと思うから。

 この呼び鈴を押せば俺が知っていた未来は完全に崩壊するだろう。

 それははやての未来の一つを砕く行為であり、はやての本来得るはずだった幸せを否定する事になる。

 

 ここから先は知っている確定された未来じゃない。

 いや、もともと確定された未来なんて無かったが、どうすればいいのかわからない手探りの未来だ。

 

 闇の書を浄化すれば何とかなるものなのか分からない。

 ギル・グレアムに対しどうすれば良いのか分からない。

 闇の書の存在が管理局に露見した時どうすればいいのか分からない。

 

 何もかも分からない事だらけだ。

 正直とても恐いが、後ろにいる久遠と那美姉さんの存在が支えてくれている。

 なのはちゃんと同じ様に、俺は一人じゃない。

 

 

 

 じゃあ始めようか、俺の新しい自分を…俺の戦いを…

 

 というわけで、ポチっとな♪

 

 

-ピーンポーン!!-

 

 

『はーい、どちら様ですかー?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所が変わってさざなみ寮。

 監視や盗聴の危険も考えて、はやてには詳しい話をさざなみ寮の客間でする事にしました。

 とりあえず足が動かない病気は闇の書という超常的な本が原因とまで説明して、さざなみ寮にまで来てもらいました。

 その際、闇の書も持ってきてもらっています。

 

「お茶をどうぞ。」

 

「あ、えっと、お構いなく。」

 

「ありがとうございます。」

 

「どうも。 じゃあ、ごゆっくり。」

 

 寮の管理人さんがお茶を出してくれてはやてと俺がお礼を言う。

 向かいにはやてが座って、俺の両隣に那美姉さんと久遠が座っている。

 管理人さんが出て行くと、はやてに向かい合って話を始める。

 

「それじゃあ八神さんの足とその本の関係について説明させてもらうね。」

 

「えと、君が説明するんですか?

 そちらの神咲さんやのうて。」

 

 まあ子供の俺が説明するのは可笑しいし、那美姉さんはいつもの巫女服だ。

 どちらが説明するかと思えば、那美姉さんが適切だと思うだろう。

 

「私も全力で力になるけど、拓海君のお手伝いなの。

 この問題を本当にどうにか出来るのは、はやてちゃんと拓海君だから。」

 

「うちとこっちの子がですか?」

 

「ええ、はやてちゃんと本の事を見つけたのは拓海君だから。

 話を聞いてあげて。」

 

「わかりました。」

 

 まあ同い年くらいの子供にどうにかできる問題じゃないと思うよな。

 俺だってはやての立場だったらそう思う。

 

「じゃあ説明させてもらうね、八神さん。」

 

「えっと、お願いするわ。

 それと拓海君やったっけ?

 普通に名前で呼んでえな。

 わたしと同じくらいやろ。」

 

「分かった、じゃあはやてちゃんって呼ぶね。

 はやてちゃんの足がその闇の書が原因でオカルト的なものだってのは言ったね。

 はやてちゃんは超常現象とか不思議な力はどれくらい知ってる?」

 

「えっとぉ、それって幽霊とか超能力とかやろ。

 ニュース番組でやってたHGSってのも知っとるけど。

 あー、後この前町で巨大な樹が現れたって怪現象があったゆう話も聞いたな。」

 

「あ、それ解決したの俺とこの久遠。」

 

「クォン。」

 

「そうなんか!? 普通の可愛い子狐に見えるんやけど。」

 

 まあ、見た目普通の可愛い狐だもんね、久遠は。

 ちょっと少しだけ力を見せて信じてもらうか。

 

「久遠、自己紹介してあげて。」

 

「クォン。 久遠です、よろしく。」

 

「おお、喋ったぁ!!

 ホンマに普通の狐やなかったんやな。」

 

「じゃあ俺も…」

 

 俺は鳥用の式神符を出して発動する。

 

 

-ボフンッ!!-

 

 

「おお!!」

 

 作ったのは手に乗る程度の小さな小鳥。

 それを飛ばしてはやてちゃんの肩に乗せる。

 

「漫画とかによくある式神ってやつ。

 すごいのはまだ作れないけど、これくらいの簡単なのなら俺でも作れる。」

 

「いやいや、十分凄いで!!」

 

 はやてちゃんは式神を見て興奮しているが、本題はこれじゃない。

 闇の書と自分の未来について選んでもらわなければならない。

 式神を札に戻す。

 

 

-ポフンッ-

 

 

「ありゃ、札に戻ってもうた。」

 

「話を進めさせてもらうよ。

 俺は予知夢ではやてちゃんと闇の書の事を知った。

 予知夢って分かる?」

 

「えっと、未来の事を夢で見るって事やろ。」

 

「そう、俺は君の未来を予知夢で知った。

 今から半年くらい先に、君は足の問題が解決して新しく出来た家族と一緒になれる。」

 

「え!! ホンマか!?

 私に家族が出来るって!!」

 

「はやてちゃんが家族を欲しがっていたのも予知夢で知ってる。

 その家族もそう遠くない内に君の前に現れるよ。」

 

「そうなんか!! 楽しみやわぁ。」

 

「けどその家族もその闇の書と関係している。」

 

「えっと、それってなんか不味いって事?」

 

「いろいろ複雑なんだ。

 これから起こることを順を追って説明するね。」

 

 

 

 それからははやてに起こるであろう未来を簡潔に説明した。

 

 次の誕生日に闇の書が起動し守護騎士の四人が現れて、はやてちゃんが彼らを家族として迎え入れる。

 最初は戸惑いつつも守護騎士達もはやてちゃんの家族として平穏を共に過ごす事。

 

 けれどその平穏にも終わりが訪れ、はやてちゃんの足の麻痺が進行してくる。

 それが闇の書が原因と知った守護騎士達は、闇の書の特性である魔力の蒐集をして完成させる事ではやてちゃんを助けようと考えた。

 だが魔力の蒐集は他者に多大な迷惑を掛ける行為で、はやてちゃんに禁止されていたが守護騎士は助けるために行動に移す事。

 

 だけど守護騎士達も闇の書についての本当の問題は知らず、それでははやてを助ける事にはならないと知らなかった。

 闇の書は完成されると持ち主を最後に取り込んで、世界を滅ぼしかねない力を振るって暴走すると。

 過去に何度も闇の書は暴走を繰り返してきた事を守護騎士達は知らなかった事。

 

 そして完成された闇の書ははやてちゃんと守護騎士が取り込まれて暴走を始める。

 だけどはやてちゃんは闇の書の中で目を覚まして、書の管制人格と呼ばれる人と闇の書の暴走原因を書の中から分離する事に成功する。

 分離した暴走原因を倒す事で事件は解決する事。

 

 

 

「長々と話したけど俺が見たはやてちゃんの未来はこんなかんじだ。

 だけどこの未来は俺がはやてちゃんに説明しなかった未来だからもう確定じゃない。

 はやてちゃんはこの話を聞いてどうしたい?」

 

「どうしたい言われても、一片にそんな事話されてもよう分からんわ…

 世界が滅びかねない言われてもぜんぜん実感湧かんし…」

 

「……そうだよな~。

 世界がどうのこうのなんて言われてもスケールでか過ぎてついてけないよな~。」

 

「長い真面目な話し終わったら、急にダレたな拓海君。」

 

「だって何でこんな厄介な事を、俺達がなんとかしなきゃいけないんだって思うだろ。」

 

「そらまあ確かに。」

 

 毎回思うが子供が悩むような問題ではない。

 だけどはやてちゃんには闇の書をどうするか選んでもらわなければいけない。

 はやてちゃんの未来を変えてしまったんだから。

 

「今すぐ問題を解決する事も出来るよ。」

 

「え? そうなんか?」

 

「ああ、それが出来るから俺がはやてちゃんに説明したんだ。

 もし俺にどうする事も出来ないなら、予知夢通りになる事を祈って関わらなかったよ。

 この闇の書ってのは破壊されても転生して新たな主を見つけるらしい。

 その上、下手に闇の書を弄っても何らかの機能が働いて主を取り込むかもしれないそうだ。」

 

「とてつもなく厄介やってのはわかったわ。」

 

「けど俺はその闇の書を確実に破壊する方法を持ってる。」

 

「え?」

 

 直死の魔眼なら確実に闇に書を殺して転生も防げるだろう。

 出典もとの作品でも無限に転生する存在とかを殺す事が出来たんだし。

 

「けど、そやったら闇の書の中にいる守護騎士さん達とか管制人格っていうのは。」

 

「ああ、一緒に消える事になる。

 一瞬で終わるからはやてちゃんへの闇の書からの危害も加える暇はないだろうし、原因が無くなる事で足も治るから直ぐ歩けるようになる。」

 

 筋力が衰えてるからリハビリは必要だろうけど。

 

「それは……守護騎士さん達と管制人格さんを殺してまうって事か。」

 

「ああ。」

 

「そんなの!! そんなの……」

 

 はやてちゃんは激昂して何か言おうとするが、直ぐに止めてしまう。

 分かっているんだ、世界を巻き込みかねない物を自分の我侭で壊すななんて言えない。

 

「世界はともかくはやてちゃん自身の命も掛かっている。

 これが俺が出来る唯一確実で安全な方法だ。」

 

「他に方法はないんか?

 予知夢みたいにうちが何とか頑張れば…」

 

「予知夢通りに頑張ったとしても多くの被害者が出るし、同じ結果を出せたとしても管制人格だけは助からない結果になるんだ。

 何よりはやてちゃんが闇の書に取り込まれた後に目覚めたのは奇跡的なものだと思う。

 簡単に目覚めて闇の書をどうにか出来るなら、過去の闇の書の持ち主もそうしている。

 闇の書に取り込まれた後、気合で目覚めろって言われて出来る自身はある?」

 

「……ないなぁ。

 冗談でならともかく、世界が滅びるかどうかを気合で何とかしろなんて無茶苦茶やん。」

 

「闇の書をどうにかする手段がなければ俺はそれに賭けるしかなかったんだけどね。

 後三つ目の方法として闇の書を浄化すれば暴走をなくせるようになるかも知れない。」

 

「って、そんな方法あるんかい!?

 何で最初に言わんのや!!」

 

 はやてちゃんも俺に対してだいぶ砕けてきたなぁ。

 

「完全に未確定な方法だし絶対とは言い切れないんだ。

 闇の書ってのは魔法の産物らしいけど、俺達から見たら呪いの品でもあるんだ。」

 

「えっと、どういうことなん?」

 

「んー分かりやすく言うと人をたくさん切り殺した刀は、妖刀とかの怨念が憑いた呪われた品になる。

 闇の書は魔導書で魔力で動くけど、それとは別に霊的な怨霊が取り憑いてると考えてくれ。

 魔力が魔法の力、霊力が怨霊などの力で違う物だって事。」

 

「この本、怨霊が取り憑いてるんか?」

 

「怨霊一体なんてレベルじゃなく、それはもう百体二百体を超える様な負の念が闇の書から滲み出してるよ。」

 

「わたし大丈夫なんか!?」

 

「大丈夫じゃないでしょ。

 既に足が動かないし、最終的には死に至るって言っただろ?」

 

「あ、そっか…」

 

 呪われてると言われて随分実感が湧いたみたいだな。

 バグだの暴走などと言うよりはっきりしたみたいだ。

 

「闇の書の負の念を見た時に浄化すれば何とかなるかもしれないって思ったんだ。

 そういえば那美姉さんに闇の書を診た結果を聞いてなかった。

 どうにかなりそう?」

 

「正直これほどの負の念が篭った物は見たことないわ。

 浄化をする事は出来ない事はないと思うけど、私じゃどれほど時間が掛かるか…」

 

「闇の書の浄化をするなら俺がやるよ。

 下手に弄れば暴走しかねないって知ってるから、もし暴走したら即座に俺が闇の書を破壊する。

 暴走した際にはやてちゃんが取り込まれたとしてもそうする。

 三つ目の方法に失敗した時の対策だ。」

 

 那美姉さんに習ってる鎮魂術は浄化を行う術でもある。

 それを応用すれば浄化は出来ない事はない。

 

「拓海君、そこまでする覚悟で…」

 

「拓海君…」

 

「クゥン。」

 

 直死の魔眼を持ってたことに感謝はするけど、こんな覚悟をしなきゃいけなくなったのには参った。

 誰も殺さない選択が安全に出来ればよかったのに。

 

「俺が提示出来る選択肢は三つ。

 一つ、闇の書の即座破壊。 誰にも迷惑を掛けずにはやてちゃんは確実に助かる。 ただし、闇の書の中の人は助からない。

 二つ、予知夢通りに頑張る。 魔力の蒐集に多くの犠牲が出るし迷惑も掛ける。 うまくいくかははやてちゃんの気合次第。 それでも管制人格は助からない。

 三つ、闇の書の浄化を試す。 闇の書の暴走の原因が負の念にあるかもしれないのでそれを浄化出来れば暴走はなくなる。 ただし浄化の際に闇の書がどう反応するか分からない。 最悪はやてちゃんが取り込まれてそのまま闇の書を破壊しないといけなくなる。

 対策を纏めたらこんなところ。

 出来れば守護騎士たちが現れるまでに決めたい。」

 

「どうしてなん?」

 

「一つ目の案を実行する場合、はやてちゃんは出来るか?

 目の前に存在する相手に死んでくれなんて言うことが。」

 

「……無理やなぁ。」

 

 俺だって無理だ。

 前世の知識ではあくまで物語の存在で今更どうと言う事はない。

 だけど目の前に存在してしっかり認識してしまったら、その相手を殺す決意なんて早々出来るものじゃない。

 

「まだ時間はあるから大丈夫だけど、あまり先延ばしにしたくない。

 俺が思いつく限りの選択肢はこんなもんだけど、どうしたい?」

 

「どうしたいって…わたしが決めるんやないの?」

 

「確かに当事者ははやてちゃんだけど、独りで抱えるのは話の内容が重過ぎる。

 これらの案を遂行するには俺も必要なんだから、俺も当然考えるよ。

 もしかしたら他にいい案が思いつくかもしれない。

 無理に一人で抱えて悩む必要なんかないんだ。

 俺達も相談に乗って一緒に考えるよ。」

 

「そうよ、私はあまり役に立てないかもしれないけど相談には乗れるよ。

 だから私達にも頼ってね。」

 

「クォン。」

 

 はやてちゃんだけに決定を全て任せる気はない。

 俺だってはやてちゃんに今回のことを話すかどうか那美姉さんに結局相談したんだ。

 独りで抱えるのは辛いと言う事が少しだけ分かった。

 那美姉さんと久遠も一緒になって考えてくれると言っている。

 

 ギル・グレアムの考えで独りで生活する環境を用意されて、きっと寂しくてだけどいつの間にか慣れてしまった。

 それでも寂しいと言う思いはなくならず、原作でも守護騎士たちに家族の役割を求めた。

 現に本人の口から家族の存在に喜びの感情が感じられた。

 

 守護騎士達もそうだけどそのうちギル・グレアム一派も何とかするように考えておかないとな。

 何時まで動かないでいるか分からないし。

 

「拓海君、神咲さん、久遠、ありがとうな。」

 

 はやてちゃんはちょっと泣きそうになりながらも笑顔を見せた。

 

 この子がこんな風に何時までも笑っていられるようにしたいな。

 原作の未来はもうどこにもない。

 だけどこの子が幸せになる未来が少しだけ見えてきた気がした。

 

 

 

 

 


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