【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第二十二話 戦いたくない思いと戦う覚悟

 

 

 

 

 

 魔法少女達の前に式神アナァゴが現れた翌日。

 新たなジュエルシードが発動し、お互いのデバイスも修復が完了して相まみえる。

 当然俺も式神を使って様子を窺っていた。

 

 今回はクロノが現れるはずなので霊力を使った式神を配置。

 魔力は当然使えば気づかれるし、気は生命力から生成されるので生き物と判断されるかもしれない。

 よって探知方法が無いだろう霊力で作った式神で様子を窺う事にした。

 

 暴走体も二人の攻撃で倒されジュエルシードは直ぐに封印された。

 そして封印されたジュエルシードを間に挟んで向かい合う。

 

『ジュエルシードに衝撃を与えたらいけないみたいだ。』

 

『昨夜みたいな事になったらレイジングハートもバルディッシュもかわいそうだもんね。』

 

『うん、だけど譲れないから。』

 

 そういってフェイトはバルディッシュをなのはちゃんに向けて構える。

 だが、なのはちゃんはレイジングハートをフェイトに向けずにそのまま構えを解いた。

 

『…私がジュエルシードを集めるのはユーノ君の為。

 それからジュエルシードの暴走で皆に迷惑をかけたくなかったから。』

 

『?』

 

 なのはちゃんはそのままの体勢でフェイトに語りだす。

 この時ってこんな会話だったっけ?

 

『昨日フェイトちゃん達がいなくなった後、あの人に言われたの。

 私の使う魔法は使い方を間違えれば人を傷つけて周りに迷惑をかけちゃうって。』

 

 あちゃ、言うタイミングが悪かったか…

 ずいぶんと気にして、話の流れ変えちまったし。

 この後の話の流れ、大丈夫か?

 

『私はフェイトちゃんとお話がしたいだけ!!

 フェイトちゃんと戦いたい訳でも傷つけたい訳でもないの!!

 だからお願い!! 闘わずに私の話を『ストップだ!! ここでの戦いは危険すぎる!!

 時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。

 詳しい事情を聞かせてもらおうか。』

 

 ここで出てくるか、クロノォ!!

 話の流れ的には間違ってないが空気読めなさ過ぎるぞ!!

 なのはちゃんががんばって話してる最中じゃないか!!

 

 

-ドゴゴゴゴゴン!!-

 

 

『逃げるよフェイト!!』

 

『……うん。 あ、ジュエルシード。』

 

 そこへアルフが牽制に放った魔力弾が着弾した。

 アルフは更に魔力弾を放ってフェイトが逃げる隙を作る。

 フェイトは封印して放置されたジュエルシードに向かって飛ぶが…

 

『クッ、させるか!!』

 

 それを防ごうとクロノが魔力弾をフェイトに放つ。

 フェイトはその攻撃のせいでジュエルシードになかなか近づけない。

 

 

『なのは、大丈夫?』

 

『フェイトちゃんとお話してたのに…』

 

 戦闘を避けていたユーノがなのはちゃんの下に現れるが、なのはちゃんは俯いて震えている。

 泣いているわけじゃないのは式神の目からもはっきりと分かる。

 

『なのは?』

 

『フェイトちゃんと戦わないでいい様にお話しようと思ってたのに…』

 

 なのはちゃんがレイジングハートを強く握って構える。

 

『な、なのは?』

 

『お話してたのに突然横から入ってきて!!

 ちょっとは空気読めなのーー!!!』

 

【ディバインバスター】

 

 

-ギュオオォォォォンンン!!!-

 

 

『なっ、うわあああぁぁぁぁぁ!!』

 

 クロノがぶち切れたなのはちゃんのディバインバスターに飲まれて海に消えた。

 普通に考えたら管理局員ぶっ飛ばすのは不味いだろうが、今回はクロノの自業自得だろう。

 結局人にぶっ放してるなのはちゃんもどうかと思うが…

 

 

 

 なのはちゃんがクロノをぶっ飛ばしてしまった隙にフェイトとアルフはジュエルシードを持って逃走してしまった。

 これにはぶっ放して落ち着いたなのはちゃんも反省の色を見せて、その後はユーノと共にアースラに行くことになった。

 海の藻屑になったクロノは転送で回収されたっぽい。

 

 

 

 

 

 あの後、さすがにアースラまで式神を追尾させる訳にはいかなかったので、その後の話がどうなったか分からない。

 一時間ほどでその場になのはちゃんとユーノは戻ってきた。

 

『ユーノ君、私どうしたらいいのかな…』

 

『なのは。』

 

『ジュエルシードの回収は管理局の人たちがやってくれるっていうけど、私はフェイトちゃんとお話がしたい。

 けど恐いんだ……向き合えば戦う事になってフェイトちゃんを傷つけたり周りに迷惑をかけちゃうんじゃないかって。』

 

『まだ時間はあるよ。

 ゆっくり考えよう。』

 

『うん、そうだね…』

 

 なのはちゃんは俺の言った事に相当悩みこんでるみたいだ。

 ここまで悩んで身動きが取れなくなるほどとは予想以上だった。

 こうなると、この後のフェイトとの戦いに不参加になるかもしれない。

 

 管理局が来たからジュエルシードの回収はやってもらうだろうから問題ないけど、フェイトが救われないかもしれない。

 もともと俺が手を出すつもりじゃなかった問題だけど、なのはちゃんの邪魔をするつもりじゃなかった。

 これはフォローを入れておかないと…

 

 

 

 

 

 なのはちゃんは家に帰って自分の部屋で休んでいた。

 まだ悩んで答えが出ない様子でユーノがそれを見て心配している。

 式神は部屋の窓の傍に隠して声が聞こえる場所に配置した。

 他に人がいないので丁度いい。

 

『≪悩んでいるようだなぁ、桃色光線の少女よぉ。≫』

 

『んにゃあぁぁ!?』

 

『この声は!!』

 

 今回は式神から通して声を出してるわけじゃない。

 式神からだと見つかる可能性があるので、陰陽術の本に載ってた木魂法(こだまほう)という遠距離に声を飛ばす術を使っている。

 声を飛ばすだけなので聞くには別の術が必要だが、今回は式神に聞き専門になってもらう。

 

『≪そう、わぁれは地球皇帝……でぇわなく。

 この海鳴を守るやぁみの守護者、ガーディアン・アナァゴォ。

 桃色光線の少女よ、先ほどの戦い見せてもらったぁ。

 ジュエルスィードを封印してくれた事には、れぇいを言おう。≫』

 

『(いったいどこから声が)…あ、ありがとうございます。

 後、桃色光線の少女じゃなくて高町なのはです~。』

 

『(念話じゃなくてどこからともなく声が聞こえてくる。

 これがこの世界の魔法?)』

 

 二人は突然の木魂法に驚いてるみたいだ。

 まあ突然若本ボイスが聞こえれば誰だって驚く。

 

『≪だぁが、その後の電気少女とのたたかぁい。

 お前の行動に迷いがぁ見えたぁ。≫』

 

『(フェイトちゃんは電気少女なの?)

 それは…。』

 

『≪昨日のわぁれの言葉にだぁいぶ悩んでいるようだなぁ。

 なぁにを悩んでいるのか申してみぃよ。≫』

 

『……私、どうしたらいいのかわかんなくなっちゃって。

 フェイトちゃんとはお話したいけど、戦えば魔法でフェイトちゃんも周りも傷つけちゃうかもしれない。

 それがとっても恐いんです。』

 

『≪なぁるほどぉ≫』

 

 俺にも分からない悩みではない。

 久遠の祟りの時だって飛び込んでからは無我夢中だけど、後になってだいぶ恐くなった。

 那美姉さんがいうには、前に封印が解けた時は多くの犠牲が出たって。

 美由希とはよく稽古してるけど実戦とは違う。

 好き好んで怪我したいとも思わないし、誰かを傷つけたいとも思わない。

 

 なのはちゃんはそれを選択しなければいけない立場になっている。

 裏に回って姿を現さない俺と違って当事者だ。

 そもそも9歳の子供が悩むような問題じゃない。

 

 なのはちゃんが戦わなければ恐らくフェイトは救われない。

 だからといって戦えと言うわけにもいかない。

 子供にそんな事言いたくないし、何より俺が戦おうとしていないからだ。

 表立って戦おうとしない俺がそんなこと言う資格はないし、仮に俺が戦ってもフェイトを救う事は出来ないだろう。

 

 俺にはそこまでフェイトに対する思い入れはない。

 フェイトに関わろうとする強い気持ちがあるから、なのはちゃんがフェイトを救える。

 だからこそ俺が足踏みさせてしまったなのはちゃんをフォローしないといけない。

 

『≪桃色光線の少女よぉ、人はそれぞれに譲れない物をぉ、守らねばならない物があるぅ。

 わぁれが守りたいものはこの町で暮らす人々ぉ、そぉしてその者達の変わらぬ平穏だぁ。

 故にあのジュエルスィードは魔術的に価値にある物には違いないが、わぁれにとっては無用の長物ぅ。

 否、町の平穏を脅かすものである以上、有害な物でしかなぁい。

 わぁれの言いたいことが分かるかぁ?≫』

 

『えっと、その…ごめんなさい。』

 

『≪わぁれはジュエルスィードをお前達に渡したぁ。

 電気少女が求める様に、それが価値ある物であるにもかかわらずぅ。

 そうしたのは、ジュエルスィードよりも町の平穏が大事だからだぁ。

 桃色光線の少女よぉ、お前の電気少女と話したいという思いはどれほどのものだぁ?

 諦められるものなのかぁ?≫』

 

『それは…………私、諦めたくないです。

 フェイトちゃんとお話して……私、あの子と友達になりたい!!』

 

 どうやらなのはちゃんの気持ちも固まってきたみたいだ。

 このまま引いてしまうかと思った時は少しハラハラしてしまったが、この様子なら諦める事はなさそうだ。

 後はどう戦う事に対する覚悟を決めさせるか…

 

『≪ならば戦うがいい。

 己の持ちうる全てを懸けて、電気少女にぶつかっていけぃ!!≫』

 

『けど戦ったら周りを壊しちゃって皆も傷つけちゃうかも……』

 

『≪強くなればよぉい。

 魔法の力を理解し磨いて無意味な犠牲を出さぬようにする術(すべ)を考えよぉ。

 それでも戦う以上、何かを壊し誰かを傷つける事はやぁむ負えないだろう。≫』

 

『じゃあ、どうやって戦えばいいんですか!?』

 

『≪だからこそ強くなれぇ。

 力だけではない。 心も鍛え失敗にも挫けずに立ち向かう不屈の心を持てぇ。

 間違えれば過ちから正しい道を学び、そこで立ち止まることなく自分の道を歩んでいくぅ。

 それが成長というものだぁ。≫』

 

『自分の道…』

 

『≪過ちを犯すことは恐かろぉう。

 だぁがお前にはお前を支える仲間がいよう。

 そこにいる喋るイタチと胸に輝く赤い宝石がぁ。≫』

 

『そうだよ、なのは。(フェレットだってば)』【マスター】

 

『ユーノ君、レイジングハート……』

 

 励ます事も若本の喋り方も疲れてきた…。

 言ってる事はそれらしい事だけど、俺自身が戦う者で無い以上、実の篭っていない言葉だ。

 

 俺がジュエルシードを何とかするのはただの作業のようなもので、人と戦う事ではなかった。

 そんなことにそこまでの覚悟も必要なかったが、なのはちゃんはフェイトと向き合うということは戦うという事だ。

 戦う覚悟の無い者に、戦いを語る資格は無いとはよく言ったものだ。

 俺にはなのはちゃんの今の悩みや気持ちが理解出来ていないだろう。

 

 ジュエルシードを一人でどうにかしようと思ったとき、久遠が一緒に居てくれる様になってとても気持ちが軽くなった。

 久遠が俺の心の支えになってくれたからだ。

 一人というものは不安なものだ。

 それを俺は久遠の御蔭で学べた。

 

 だけどそれまでだ。

 なのはちゃんは全力でフェイトにぶつかっていくだろう。

 今の俺には出来ないような覚悟を胸に秘めて。

 

『≪わぁれが教えられるのはこんなものだろぉう。

 良いか、失敗を恐れる事はなぁい。

 お前は一人ではないのだからぁ。≫』

 

『はい!!』

 

 とりあえずは決心は出来たと思うけど、俺自身が信用出来ないから他のアドバイスをしておこう。

 

『≪まだ戦いに対する覚悟が出来ないのであれば、お前のパァパに相談するといぃ。≫』

 

『え? お父さんですか?』

 

『≪聞いた話ではぁ、かつてお前のパァパは優秀な戦士だったぁと言う話だぁ。

 戦う事に関しては、わぁれより良いアドバイスが聞けるだろぉ。≫』

 

 ぶっちゃげ丸投げです。

 俺なんかのノリと勢いのアドバイスより、本職だった人のほうが役立つだろう。

 投げっぱなしでホントに申し訳ない。

 

『えっと、昔お父さんはボディーガードやってたって言ってたような…』

 

『≪心当たりがあるなら真実だろぅ。

 最後に一つだけ言っておく。≫』

 

『はい。』

 

『≪お前の姉上にぃ……≫』

 

『え、お姉ちゃんに?』

 

『≪…………≫』

 

『……あの』

 

『≪…強く生きろと……言わなくてもよぉい。≫』

 

『え!! なんなの!?』

 

『≪でぇは、さらばだぁ!!

 ぶるああああぁぁぁぁぁぁ!!!≫』

 

『お姉ちゃんに何があったの~!?』

 

 最後のは特に意味は無い。

 

 

 

 だけど戦わせたくないと言っておきながら、その道を指し示さなきゃいけない自分に反吐が出る。

 原作通りとか関係なく、分かっていても距離をおいている自分が情けなかった。

 とっととこんな事件終わって平穏な日々に戻ってほしいと思う。

 

 

 

 

 

●木魂法を披露


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