【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます 作:ルルイ
原作の開始に気づいたのはユーノの念話からじゃなかった。
魔力操作も練習していたから、海鳴市の上空に魔力を感じる事が出来たのだ。
一瞬だったから気のせいかとすら思ったが、それが間違いではないとわかったのはすぐだった。
『(誰か力を貸して)』
魔力の感覚と共に頭に声が響いてきた。
おいおい、ジュエルシードが現れた感じがしてから一時間位しか経ってないぞ。
助け求めるの早すぎじゃないか!?
だけど今のだけじゃ何処にいるのかさっぱり分からん。
とりあえずなのはちゃんの方に鳥の式神でもつけておくか。
それでどうなるか確認できるだろう。
翌日の夜、動きがあった。
念話が再び響き渡り、助けを求める声が聞こえた。
付けておいた式神から、念話を聞いて夜遅くに家を出て行くなのはちゃんを確認できた。
鳥の式神で上空から追いかけると、動物病院の前になのはちゃんが着いたと同時にジュエルシードの暴走体が現れた。
丸っこいスライムみたいな粘液の塊のようだった。
以前久遠からたたき出した祟りみたいな感じに見えるが、見る分にはそれほど恐怖は感じなかった。
だが直後、それとは別の脅威を感じる事になる。
合流したユーノとなのはちゃん目掛けて体当たりを敢行したからだ。
二人に当たる事はなかったが一度の体当たりで塀が吹き飛んだのだ。
(ちょっとこれ不味くないか!?)
俺や美由希だったらこれくらいの事はわりと平然に出来るが、一般人だったら大怪我は確実だ。
暴走体が暴れまわるたびに塀や建物が壊れていく。
映像とあまりに違いすぎて、これでもかと言うくらいの危険を感じた。
ほっといても何とかなると考えてた事も忘れて、俺は家から飛び出して舞空術で現場に向かった。
だが現場を見張ってた式神がなのはちゃんが暴走体を封印するところを確認した。
なのはちゃんはすぐに現場を離れると、直ぐにパトカーなどが現れて人が集まりだした。
とりあえず今日の事件は終わったと式神を回収して家に戻りジュエルシードについて考え直す。
前世で見たリリカルなのはのアニメ。
それはとても楽しくて夢のある物だったが、現実で事件が起これば周りに被害か確実に残る。
災害にしろ何にしろ、周囲の住人には迷惑以外の何物でもない。
ジュエルシードを回収したからって、壊したものが直るわけじゃない。
今回は封時結界も張ってなかった様だから、周りの被害も残ってる。
一般人が戦闘に巻き込まれてたらと思うとゾッとする。
正直関わるか関わらないかと言ってる場合じゃないかもしれない。
今日は原作通りに進んだけど、何時までそれが保障されるかわかったもんじゃない。
俺も出来る限りジュエルシードの回収に回ったほうがいいかもしれない。
関わる上で一つ気がかりなのが、管理局の気や霊力に対する認識だ。
この世界では一応認知されてはいる力なので知っているかもしれないが、使い手の存在を知れば確保しようとするかもしれない。
STSの話から管理局に裏があることを知っているから、必要以上に警戒してしまい関わりたくないと思ってしまう。
とりあえずなのはちゃん達とは接触しない方向で行こう。
回収したらそれとない方法でなのはちゃん達に渡せばいい。
次に大きな被害の出る事件は巨大な木の暴走体の事件。
出来ればそれまでに先にジュエルシードを回収出来ればいいんだが…
翌日、俺は学校へは行かずにこっそりとジュエルシードの探索をしてみることにした。
さすがに理由もなく休む訳にはいかなかったので、俺の姿をした式神を代わりに学校においてきた。
式神も半自立型まで作れるようになったので、視覚を共有出来るから授業も一応受けていられるし、共有していない時は式神が自己の判断で行動してくれる。
こういう悪用は不味いと思ったが、少し悩んでまあ仕方ないと諦めた。
この式神の性能からNARUTOの影分身みたく訓練効率を上げられるかと思ったが、視覚などの感覚を共有しても処理するのは殆ど本体の頭なので頭の回転が着いていかない。
マルチタスクなどの技術が欲しくなるが、よく考えたらミッド式の魔法を学ぶには管理局には自然と関わる事になる。
魔法は知りたいが管理局には関わりたくないと言う相反する考えに悩まされるが、今はなのはちゃん達に関わらずにジュエルシードの探索を続ける事にする。
管理局に関わるかどうかは事件が終わってからでもなのはちゃん経由で問題ないだろう。
そして半日いっぱい探し回って見たがそう簡単に見つかるはずもなく、学校のほうも終わって式神を回収した。
そのタイミングで近くで魔力の反応を感じた。
恐らく原作二つ目のジュエルシードだ確信し、被害が出る前に且つなのはちゃん達が来る前にジュエルシードの様子が見れるように、気で身体能力を強化し走って現場に向かった。
向かった先に付くと、そこは俺がいつも来ている八束神社だった。
「って、灯台下暗しか。
いつも来てる場所にあるなんて…」
半日探して見つからなかったのにと思うと非常に複雑だ。
そう思いながらも石段を数段飛ばしで駆け上る。
登りきると境内には暴走体らしき巨体で異形の犬と倒れた人、そしてその前に立ち塞がる女の子姿の久遠がいた。
「!! 久遠、大丈夫か!?」
『ガアァァァァァ!!』
「クォン!!」
-ドゴロゴロロン!!-
那美姉さんは学校だから今はいないみたいだけど、いつもいる八束神社だから久遠がいても可笑しくない。
犬の暴走体が飛びかかろうとすると、久遠が相手の目の前に雷を打ち込んで牽制した。
「拓海、こいつ何かに取り憑かれてる。
だから久遠、こいつ攻撃できない。」
「そういうことか!!」
正直なのはちゃん達が来るまで逃げ回って時間稼ぎのつもりだったが、久遠がいるならそういうわけにもいかない。
俺は海鈴を取り出していつもの様に気と霊力を合成して込めて構える。
目に霊気と気を集中させ凝をして取り憑かれてる者と取り憑いている者を見極める。
「正直、俺が何処まで出来るかわからないが、やれるだけやってやる。
食らえ、斬魔剣弐の太刀!!」
久遠の一件から更に磨き那美姉さんの仕事に付き添って高めた斬魔剣弐の太刀は、既に自在に使えるようにものにしていた。
今なら連続で放つことも出来るようになっている。
取り憑かれているであろう犬を傷つけないようにしていた久遠の為にも、傷つけないように斬魔剣弐の太刀を放つ。
さすがに一撃では終わらないだろうと、放った後も身構えていたが…
-バシュンッ!!-
「は?」
斬魔剣弐の太刀が当たると暴走体の体は黒い煙になって砕け散り、後に残ったのは取り憑かれていた犬とジュエルシードだけだった。
「あ、あっけない……
もしかして見掛け倒しだったのか?」
「クゥン、拓海ありがと。」
「あ、ああ…」
実戦経験の乏しい俺が強いなどとは思わないが、正直あっけなさ過ぎた。
昨日の暴走体を見る限り一般人には脅威でも、多少力がある人間なら俺くらいでもどうにかなる程度なのか?
或いは斬魔剣弐の太刀と相性が良かったのか。
暴走体は魔力で出来てるから一応魔に属するものだからな……
少し考え込んでるうちに誰かが石段を登って来る気配を感じた。
すぐに円を展開してみればなのはちゃんとユーノであるのがわかった。
「久遠、人が来る。 狐の姿に戻って、隠れるぞ。」
「わかった……この石は?」
「放って置いていい。
これから来るやつらが回収してくれるはずだ。」
「クォン。」
-ポフンッ-
子狐の姿に戻った久遠を抱きかかえて神社の社の裏に急いで隠れる。
ここからなら境内の様子を声も聞こえて目で確認もできる。
そしてなのはちゃんがユーノを連れて石段を登りきり境内に現れた。
「ユーノ君、ジュエルシードは?」
「おかしい、ジュエルシードの気配が消えた。」
「あ、ユーノ君、人が倒れてるの。
近くに落ちてるのってジュエルシードじゃないかな?」
「ホントだ。 確かにジュエルシードの発動は感じたのに今は止まってる。
けど封印されてないから何時発動するかわからない。
なのは、レイジングハートを起動して封印を。」
「え、えっとどうやるんだっけ?」
「昨日言った起動パスワードを言うんだよ。」
「あんな長いの覚えてないよ~。」
あとはアニメで見たようなやり取りをして、なのはちゃんがレイジングハートをパスワードを無しで起動しジュエルシードを封印していった。
発動した筈のジュエルシードが止まってた事を疑問に思っていたようだが、うまくなのはちゃん達の手に渡ってよかった。
ジュエルシードが回収されたのを確認すると、なのはちゃん達とはちあわないようにに神社から離れて久遠と今日の事を話し合う事にした。
「久遠、今日は迷惑かけて悪かったな。」
「拓海、さっきの石は何?」
「あーそれは…」
正直久遠のどう説明したらいいものか。
久遠に話すなら那美姉さんも知る事になりそうだけど、そこから世間にジュエルシードの事が広まるのは不味いよなぁ…
久遠か那美姉さんに口止めして納得してもらうしかないか…
「出来れば那美姉さんには黙っておいてくれないか?
さっきの石は退魔師の人でもどうにかなるかわからないうえ、いろいろ厄介な事情があるんだ。
そんな石が今、街中にいくつも散らばってる。
だから出来るだけ人には知られずに、さっき石を封印した女の子の手に渡るようにしたいんだ。」
「クゥ、拓海大丈夫?」
「俺は大丈夫、斬魔剣弐の太刀が有効だってわかったから何とかなるよ。
もし本当に俺だけじゃ手に負えなくなったら那美姉さんに相談するから。」
物語通りなら世間に知られずにジュエルシードは回収されるはずだけど、それが絶対とはとても思えなくなってきてる。
昨日の被害を見る限り、人が巻き込まれたらただじゃすまない。
そうでなくても発動すれば周囲に多大な被害が出る。
発動する前に回収するために俺も街中を見回るつもりだ。
「クゥン、久遠も手伝う。」
「え?」
「久遠強いよ。 だから拓海の役に立てる。
拓海の事助ける。」
「…いいのか?」
「クォン(コクン)」
「ありがとな、久遠。」
正直一人じゃ心細くもあった。
ジュエルシードの存在を知っている為に、一人で対応しなければならない状況に少し気が重かった。
なのはちゃんと接触すればいいとも考えたが、同時に管理局に関わってしまう事が受け入れにくかった。
だから仕方なく一人で行動する事を決意していたが、失敗して被害をもたらしてしてしまわないかという重みを感じていた。
アニメのなのはもこんな感じだったのかと思ったが、現実で被害が起こればそれに連なってさまざまな問題も発生する。
そんな事実に力を持っているとはいえ一般人の俺が向き合う事が恐かった。
だけど久遠が一緒にいてくれると思うだけでとても気が楽になった。
こんな気持ち一人じゃ抱えきれない。
なのはちゃんとユーノだってお互いがお互いに心を支えあってるんだろうな。
まさか前に言った久遠がパートナーが本当になるとは思ってなかった。
俺は久遠を抱きしめて改めて久遠と友達になる。
「これからもよろしくな、久遠。」
「クォン!!」