我が名はグリンデルバルド   作:トム叔父さんのカラス

7 / 30
初のヨーテリア笑顔回
そして記念すべき初発狂回


7話 研究報告は笑顔で

「んふ・・・ふひ、ふひひ」

 

 完成したぞ、えへ、えへへ。

 授業を受けながらも徹夜を繰り返し目に真っ黒な隈が出来て早半月、プロテゴ・マキシマとエンゴージオの複雑な二つの理論を組み合わせ、安全かつ効率良く発動出来る呪文。研究ついに成せりだ。

 クラゲみたいな何かがゲッダンしてるけどきっと幻覚だ、問題無い。

 

「うお、来たぞ」

 

 この前の一件で悪人扱いは和らいだが今度はキチガイ扱いだ、構わんよ。

 二週間以上ふひふひ言ってりゃ、そりゃ狂ってるようにしか見えんだろ。

 

「ヨ、ヨーテ、大丈夫か?今日は特に酷いぞ」

「んー?? ふひっ、ふひひひ」

「あダメだこれ」

 

 フィルチ君、狼狽えるでない、これは嬉しいのだよいつになく。しばらく絡まなくって悪かったのう。

 

「一応今日の闇の魔術の防衛術、決闘の真似事するらしいぜ? 体調悪いなら見学した方が」

「ぬぁりません!」

「ひぃっ!?」

 

 バカ野郎実験に最適じゃないか、何で見学すんのよ意味分かんない。リドルにぶちかましてやろう、ふひひ。

 

「コロスコロスコロスコロス」

 

 ああリドルよお、いっつも馬鹿にしやがって、その癖いやに絡んで来やがって。

 お前は嫌いだけど自然とよく絡んでる、もう軽い友人って言えるんだろうよ。だのにいつまで見下しているんだ?

 絶対に叩きのめしてやる、俺はお前より上なんだよ、クソガキが。

 ん、何? レイブンクローと合同? 知るか、蹴散らしてくれるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ皆、よく来てくれた。

 今日は今までの授業で一等危険な内容となっているぞ」

 

 教室に入ってくるなりマジな顔で言う我らがイケメン教師メリィソート先生。

 今日は中央に3つの台が配置され、見てみると成る程、隙間無く保護呪文が過剰なくらいかけられている。柔らかそう。

 

「今日はレイブンクローとスリザリン合同で決闘をやってもらう。

 真似事とは言え危険性はピンキリだ、毎年やめろと校長に怒られている。

 しかし諸君らには技が必要だ。

 闇の魔法使いは容赦ない、戦い方を知らん奴にも手をあげる。

 なので君達には少しでも連中に対抗出来るようになってもらう」

 

 レイブンクロー生が息をのみ、スリザリン生全員の目が濁る。どうしたんだね君達、体調不良か?

 

「さて、優秀な者に手本を見せて貰う。

 スリザリン。ミスターリドル、ミスグリンデルバルド、上がりたまえ。

 レイブンクロー。ミスターフリットウィック、ミスターテイラー、頼むぞ」

 

 ふひ、ふひひひ! 覚悟しろよぉリドル坊や!

 今まで散々コケにしやがって、何ニヤニヤしてんだ殺すぞ。小便垂れ流して死ぬがよい。

 

「合図したら始める、戦略、呪文は自由だ。

 ただし相手にケガはさせるな」

「安心しろグリンデルバルド、僕は手加減する余裕ガァァッ!?」

 

 んははははは! やかましいわ!

 いきなり杖向ける無礼なお前が悪い、杖で某暗黒の人みたくリドルを触れずに拘束する、これぞダンブルドア直伝フォースの力(仮)である。教えた本人にも効いたから完璧やで。

 

「リドル、マナーがなってないぞ。

 格式ある伝統は守らねばならん」

 

 そうだとも、マナーのなってない子供は精神年齢30代後半の俺が教育してやろう。

 んふ、では偉大なお人の言葉を借りましょう。

 優雅に錫杖を持ってない手を胸に当て、ゆっくりと腰を曲げさあ一言。

 

bow to death.Riddle(お辞儀をするのだ、リドル)

 

 ンッギモヂ″イ″イ″イ″イ″イ″イ″!!

 やばいこれは気分良すぎるぞ! さっすがお辞儀の台詞! 爽快感が違う!

 挨拶は済んだ、デュエルのお時間だ。さあ解放してやるよリドル、全力で来い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お辞儀をするのだ、リドル」

 

 トム・リドルはプライドの高い男だ。

 だがヨーテリア・グリンデルバルドの事はそれなりに評価していた。そう、評価だ。

 彼女と険悪ながらも共に過ごし、もはや彼女は自分の所有物とすら見ていた。

 あくまで自分よりは下。そう扱っていた。

 だのにこの女は、まるで上位者のように自分に決闘の作法を説いた。

 何を上から語っている?

 誰に向かって説いている?

 一体誰を見下している、グリンデルバルド。

 リドルは激怒した、見下されている事に。

 お前には、お前にだけは、見下されたくは無い!

 僕はお前より上だ、お前は僕の物だ。なのに僕に、逆らうんじゃない!

 

 

 

 

 

「このっ、貴様ァッ、覚悟はいいな!?」

 

 解放した瞬間に激昂して杖を向けるリドル。

 さてご覧に入れよう我が研究成果、ずっと再現したかったロマン魔法。

 折角だから脳内では元ネタの名前を叫ぼうか。

 直立し錫杖を高く掲げ、魔力を籠め、床を突く!

 

〈プロテゴ・エンゴージオ!膨れろ守り!〉(ア サ ル ト ア ー マ ー !)

 

 瞬間、俺の周囲に魔力の膜が収縮され意外と再現の難しかった緑の光が教室を照らす。

 皆が呆然とする中、この魔法は発動する、収縮していた光を一気に解き放つ!

 

「〈コンフリンゴ!〉」

 

 リドルが呪文を放つが、無駄無駄ぁ! これは全てを消し飛ばすのよ!

 リドルの放った呪文が急膨張する膜に消し飛ばされ、さらに衝撃波でリドルさえ吹き飛ばし、哀れ吹き飛ばされたリドル坊やは台の上で派手に転がり意識を失う。

 

「・・・んふ」

 

 ふふふ、やった、やったぞ。

 

「んふふふふっ」

 

 ついに出来た、俺の前世の記憶。某ロボゲーの、アサルトアーマー。

 自分の周囲一定範囲を焼き払い、範囲内の弾頭等を消し飛ばす攻防一体の切り札。

 

「アハッ、アハハハッ」

 

 俺が、この手で。

 

「アッハッハッハッハッ! アーハハハハァァッ!!」

 

 再現、してみせたぞぉぉ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メリィソートは唖然とした。

 グリンデルバルドは血筋の割には良識があり、抜けている面もあり、不器用で可愛いげのある生徒だと思っていた。

 初めて見る彼女の笑顔と笑い声は、11歳とは思えぬ妖しげな魅力に満ち、普段の低いハスキーな声はなりを潜め、腹の底に響く甲高い高笑いは正しく、魔女。

 

「貴様・・・」

 

 何故だ?

 何故そんなに楽しそうに笑う?

 何故そんなに悦に浸った笑顔が出来る?

 お前は友人を傷つけたんだぞ。

 

「ミス、グリンデルバルドォッッ!」

「先生、ここは私に」

 

 隣で手早く決着をつけたフリットウィックが、その小さな体でメリィソートの前に立つ。

 フリットウィック。小さいながらに優秀で、レイブンクロー内での実技は、現時点で1年トップを独占する男だ。

 

「なに、たかだか愚かな一生徒、先生の手を煩わせなくても良いでしょう。

 実戦演習みたいな物ですよ」

 

 不敵に笑い台に上がるフリットウィック。

 新たな獲物に気がついたのか高笑いをやめ、熱っぽい息を吐くグリンデルバルド。

 

「何だ? お前も実演に協力してくれるのか?」

 

 興奮しているのか上気した顔で、フリットウィックに微笑む化け物。しかし彼は穏やかに笑い返す。

 

「ええ、不足ながら、全力で参りますよ」

「アハッ、いいよいいよ、とことんやろう、まだまだ研究したいんだぁぁっ!」

 

 グリンデルバルドが杖を掲げた。まずい、あれが来る。

 

「みんな、伏せなさい!」

「〈インペディメンタ、妨害せよ〉」

 

 驚くべき早さで唱えられた呪文は、見事グリンデルバルドの詠唱を中断させる。

 

「んふ、やっぱり隙が大きいな、〈エンゴージオ!〉」

 

 斜めに構えられた錫杖から放たれた呪文がフリットウィックの足下を膨張させる。

 

「搦め手は使わんと無理だよなぁ?」

「うーん、馬鹿の一つ覚えでは無いかぁ」

 

 苦笑いしながら言うフリットウィックは、飛んでくる呪文をステップで避け、武装解除呪文を放つ、が。

 

「〈プロテゴ!〉やっぱすぐに切れちゃうな」

 

 やけに展開の早い盾の呪文に防がれる。

 

「・・・女子には失礼だけど、仕方ない」

 

 フリットウィックが突然距離をつめ、彼女と数歩の間合いに入り。

 

「〈エンゴージーー〉」

「シィッ!」

 

 何と左腕で彼女の腹を殴り付けた。

 

「ぐ、お″お″ッ!?」

 

 腹を押さえてうずくまるグリンデルバルド。やったか? メリィソートがそう思った瞬間ーー

 

「おま、え″え″え″え″!!」

 

 目を見開き唾液を垂らしながら、鬼のような形相で、彼女はフリットウィックを睨んだ。

 

「もう加減なんざ知るか、ブッ殺してやる!

 〈プロテゴ・エンゴージオ〉ォ″ォ″ォ″!!」

 

 まただ、あの呪文が来る! メリィソートが皆を庇おうとした瞬間

 

「〈エクスペリアームス!〉」

 

 高らかに唱えられた呪文が、グリンデルバルドの杖と、彼女自身を吹き飛ばす。

 

「あ″あ″あ″っ!?」

 

 きりもみしながら彼女は吹き飛ばされ、床に落ちてゴロゴロと転がり、完全に目を回して動かない。

 まさか、本当に? とフリットウィックを見ると、彼はこちらを見て、微笑み一礼した。

 

「お粗末様でした」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソが」

 

 何でだよ、何で俺がこんな目に。

 俺は今、山のように反省文を書いていた。

 暴れた件は授業内容もあり免除されたが、問題はリドルを故意に気絶させた事だ。

 言い訳はしないが、やっぱり納得いかない。だって決闘だぜ? 事故もあるだろう。

 それにあの馬鹿には散々研究邪魔されたんだ、仕返しくらいしたって良いじゃないか。

 

「進んでるかい? グリンデルバルド」

 

 そら来たよリドル坊や、何が気絶だよピンピンしてんぞ。

 小さいのまで連れて、さっきの奴か? とりあえずフィルチおじさん元気出してよ、何でそんな顔して入って来るの。

 

「冷やかしは死ね帰れ」

「ダメじゃないか被害者を罵倒しちゃ、反省文の意味がないよ」

「な″に″お″う″!?」

「しかしグリンデルバルド、ケガは無いですか?

 私も必死だったのでちょっと不安で」

 

 ケガは無いよ加減完璧ねあんた。

 何つったけ、フリットウィック?

 ・・・ん? フリットウィック?

 

「なあ、あんた名前は?」

「フリットウィックですけど」

「親はゴブリンか?」

「え? いえ、おばあちゃんがゴブリンですけど、うわぁ!?」

 

 フリットウィック先生だああ!

 レイブンクローの寮監、みんなのチビ先生だ! すげええ、本当にちっちゃい!

 

「グリンデルバルド、ぐるじ、ぐぼぼ」

「アーガス、あの馬鹿急に抱きついたよ」

「やっぱり休ませれば良かった、二週間不眠不休なんてやったばっかりに」

 

 成る程、若い頃は英国無双って設定あったな、それでか!

 ちょっとビビってたのよ。いやー納得納得、かわいいのう。

 

「息が、助け、アバッ」

「落ちちまった!? ヨーテ、離すんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、反省文おしまい、眠いわぁこのまま寝れるくらい眠いわぁ。

 部屋に戻るなりベッドに倒れ込みぐったりとなる俺。ふかふかやわー二週間ぶりやわー。

 しばらくコロコロとベッドの上を転がる俺。しかし、まさか負けるとは思わなかった。

 攻撃と防御を兼ね備えた俺の呪文、やっぱり予備動作がデカイのが痛いか? 実戦じゃ完全に大技だ、狙いすぎたら多分手痛い反撃を受けるだろう。

 ただの趣味で作った呪文だけどこれ欠陥品だな、ちょっと手を加えないと。

 その他の分野にも手を出すか、エンゴージオみたく盲点なのがあるかも。

 

「・・・んふ」

 

 ああ糞、明日が楽しみになっちゃうじゃないか。




作者ながらリドルもヨーテリアも気が早すぎるし歪んでるんだよなぁ。



5月30日、フリットウィック先生をハッフルパフ生でハッフルパフ寮監にしていた間違いを修正、ご報告に感謝致します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。