我が名はグリンデルバルド   作:トム叔父さんのカラス

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在学編
4話 ホグワーツ初日


 組分けも終わり食事もとった。

 やはりというか、スリザリンでも俺の周囲には何故だか空いたスペースがあった。ゆっくり食えたから良いけど。

 整列し談話室に向かう際はデカいせいか最後尾だった為、アンニュイな笑みを浮かべていたダンブルドアに下品なハンドサインをしてやった、当然だ。

 で、今寮にいるわけだが、何故か俺、個室である。

 まあ中身いい歳したお兄さんだし、女の子と相部屋になるよりはマシかな。

 とりあえず孤独を感じるので談話室へ向かう。

 談話室に入るとそこにはいけすかないエリート、つまりトム・リドルが上級生と、それはもう親しそうに話していた。

 敬語でおべんちゃらをベタベタと、うざいわ。

 

「お前」

 

 とりあえず名前に覚えがあるので身の上でも聞こうかな、もしかしたら原作の主人物かも?

 

「トム・リドルだな?」

「そうだよ、僕がトム・リドルだ」

 

 周りはぎょっとしてるけど、コイツは普通に返事をした。

 

「お前、身内に名の売れた奴は?」

「いないよ。残念ながらね」

「ふぅん、ならいいや」

 

 親が偉人とかならすぐ判断出来たのに、残念。

 

「グリンデルバルド、リドルに何をする気だ?」

 

 上級生が1人口を挟んでくる。気に入らない、人と話すなら目を見ろ。そんなんじゃ立派な社蓄になれんぞ。

 

「何をって、何?」

「とぼけるな、お前の親は闇の魔法使いだ。お前も何かおぞましい事が出来るんだろう。

 それをリドルにやる気なんだろ?そうはさせないぞ」

 

 はっは、俺の親父?ただの工場勤務の大酒飲みだぜ?

 闇の魔法使いで選民主義の糞野郎なんかじゃない。

 だからさあ。

 

「もう一度言ってみろ、コイツをお前のケツにブチこんでやる」

 

 分かったような口きくなよ、クソガキ。と胸ぐらを掴んで錫杖を目の前に突き付けてやる。

 

「いいか、あれは俺の親父なんかじゃない。今度一緒にしやがったらただじゃおかないからな」

 

 真っ青になった上級生を突き飛ばし、捨て台詞を吐いてその場を離れる。

 腰が抜けた上級生は、ケツを押さえて情けない声をあげている。いい気味だぜ、はっはっは。

 談話室から出る際フィルチおじさん(少年)とすれ違ったが、思いきり睨まれたので舌打ちだけして捨て置いた。

 さて、ダンブルドアを殴りに行かないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「割とすまないと思っておる」

 

 談笑していたゴーストを脅して、ダンブルドアの教室にたどり着くと、いきなり謝罪の言葉を投げ掛けられる。

 

「ふざけんな、あんな場で高らかに。

 なんで隠すように根回ししてくれなかった」

「した筈なんじゃが多分忘れられとるのう」

 

 何でだよ、結構大切な事だよこれ、トロールにでも頼んだのか?

 

「おかげで寮で孤立してる、ガキと絡むのも嫌だけど酷いよこれ」

「すまないのぅ・・・」

 

 ダンブルドアが頭を下げた時、ちょうど教室に誰か入ってきた。

 タイミング悪すぎワロエナイ、これ変な噂流れちまうぞ。

 

「ダンブルドア先生? ヨーテリアもですか」

 

 にゃんこー!!マクゴナガル先生やー!

 

「コイツが俺のフルネーム隠さないで学校中に広めたから文句言ってる」

「隠したら組分けで不備が出ますよ、先生は悪くありません」

 

 にゃんこ!? あんたは俺の味方だと思ったのに!

 

「しかし、困りましたね。

 ヨーテリア、あなた確実に孤立してますし、食事の時も痛ましくて仕方ありませんでした。

 どいつもこいつも過剰すぎですよ・・・」

 

 出た、素の毒舌マクゴナガル先生。

 優しさと辛辣さを兼ね備えた女神様や。

 

「ところでマク、いやミネルバ、何しに来たんだ?

 2年はもう授業あるの?」

「いえ、先生に変身術の教鞭をと」

 

 なるほど、猫になるための補習だな。

 この人のアニメーガスの勉強は、ダンブルドアがしてくれたらしいからね。

 これ邪魔しちゃいけなかった奴や、悪いことしちゃったなー。

 

「ミネルバや、何度も言うが変身術はのう、上級生がひぃひぃ言ってようやく物にできる分野なんじゃ。

 今の時点のレベルで十分じゃと思うよ」

「まだです、せめて猫擬きになれないと。

 耳しか変わらないなんて、全く変わってないのと一緒です」

 

 何・・・だと?

 

「猫耳?」

「まあそうですね」

「見たい」

 

 猫耳少女や! 現実で猫耳少女が見れるぞ!

 素晴らしい、男の子のロマンだぜオイ、是非見たい、すぐ見たい! ツンツン猫耳にゃんこ先生が見たい!

 

「ヨーテリアが珍しく目を輝かせておる、ミネルバや、頼めるかのう?」

「構いませんよ」

 

 にゃんこ先生が優雅な仕草でパチンと指を綺麗に鳴らす。

 すると彼女の頭頂部から、彼女の髪と同じ色の茶色の耳が生える。

 ・・・これは・・・おぅ・・・。

 

「どうしましたヨーテリア。

 あの、呼吸が荒くて、怖いですよ」

「ふおおおお!!」

 

 ヒャア! 我慢出来ねェ! もふるぞぉぉア!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨーテリア、ちょっと、やめなさい!?」

「ウヒョォォオ! 猫耳だ、猫耳だあああ!」

 

 ダンブルドアはちょっと引いていた。

 普段死んだ魚のような目で、悪漢のような振る舞いをするヨーテリアが、今は目に危険な輝きを灯しながら完全に裏声でミネルバに飛びかかっている。

 そして体格で勝るヨーテリアに勝てる筈もなく、簡単に押さえられたミネルバはいいように猫耳をもふられている。

 

「ダンブルドア先生、助けてください」

 

 不満そうな顔で助けを求めるミネルバ。

 しかし年相応の表情で、幸せそうにもふるヨーテリアを見ると、どうしても止めたくない。

 

「止めたくないのぅコレ」

「そこをなんとか、あ″痛っ!?」

 

 ヨーテリアが猫耳にかじりつく、というかしゃぶりつく。

 

「んふ」

 

 なんと幸せそうな顔をするのだろう。

 下からミネルバ、ヨーテリア、ピーちゃん、さながら団子三兄弟、なんと愉快な光景か。

 

「眼福じゃのぅ」

 

 しばし立場を忘れて安らぐダンブルドアであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやあ、堪能した、思わず耳が引っ込むまで続けてしまった。思いきり張り手を食らったが価値はあった。

 さて、もういい時間だ、部屋で寝よう。ホグワーツのベッドは最高級らしい、きっと良い夢が見れるぞぉ。

 

「離せよこの、クソ! クソ野郎!」

 

 わお、談話室にてフィルチ坊やが喧嘩しておる。

 でも彼 魔法が使えないから、拘束されとるな。

 

「へんっ、出来損ないのスクイブめ。魔法も無しに僕に勝てるもんか」

 

 新一年の知らんのが犯人か。

 オーケーオーケー押さえておくのは正解ぞ。

 

「スクイブにスクイブって言って何が悪いんだ。

 スクイブの癖に逆らった罰だぞ!〈アグアメンディ、水よ!〉」

 

 新一年が杖を向けると、フィルチへ向けてホースのように水が噴射される。

 むごい事しやがるなあ、周りは大笑いしてるだけか。イジメだよこれは。

 

「はははは! 早く呪文で防いでみろ!」

 

 なんとまあ悦に入った声か、気に入らんな。茶々入れてやるか。

 

「おい、やりすぎだぞ」

 

 軽く声をかけると周りはギクリとするが、調子に乗った一年はそのまま俺に杖を向ける。

 

「ヨーテリア・グリンデルバルド! 闇の魔法使いの一族め、純血の僕に楯突くのか!

 いいだろう、お前にも罰だ! このスリザリンから追い出してやるぞ!」

 

 わお、やるの?

 お兄さんイライラしてきた、正義の味方気取りか、上等だよ。

 えーと、杖を真正面に向けて・・・やっぱ錫杖でかいな、直立せんと構えられない。

 イメージは盾を杖の前に展開、だっけ?

 魔力の込め方? 知らん、力めばいける。ではいきますかクソガキが。

 

「〈アグアメンディ、水よ!〉」

「〈プロテゴ〉ォォオ″オ″ッッ!!」

 

 派手に盾を展開して驚かせようとして、大声で呪文を唱えた。

 失敗したのかやりすぎたのか知らんがーー

 

 

 

 

  俺の目の前の空気が、爆ぜた。

 

 

 

 

「うわあああ!?」

 

 空気の衝撃波であろう、それに吹き飛ばされ尻餅をつく一年。弾き飛ばされた水が全部かかっている。

 

「わ、わひっ、ひぃっ」

 

 完全に腰抜かして涙目になってる。一番びっくりしてんの俺なんだけど。

 

「ごっ、ごめんなさいぃぃぃっ!」

 

 マジ泣きしながら逃げてった。ごめん坊っちゃん、やりすぎた。

 さて、倒れたままのフィルチ坊やだが。

 

「お情けのつもりかよ」

 

 全身びっしょりで俺を睨んでいた。

 濡れ鼠だな、風邪ひくわこんなの。

 

「いらん世話なんだよ、クソアマ」

「来い」

 

 フィルチ坊やの首根っこを掴んで、俺の部屋に引きずっていく。

 多分、シャワーあるし使わせよう。

 風邪ひかれても困るし、ルームメイトに見られたら惨めだろう。

 

「は、離せよ、畜生!何しやがる!?」

「黙ってろ」

 

 部屋に引きずり込んで回りを見渡す、シャワーはある。よろしい。

 坊やの服を力ずくで剥ぎ取ってシャワーに投げ込む。

 服はダンブルドアに買わせた男物でいいだろ、まだ一度も着てないしね。

 さて、温かいものが欲しいだろう、置かれてた嗜好品の紅茶袋と蜂蜜を用意、水は蛇口っぽいのがあるから大丈夫。

 勝手に湯のわく魔法のヤカン発見、さあ湯を沸かすがいい。

 フィルチは、うん。素直に浴びてる。

 ものの数秒で温かいお湯が沸いた、物理法則もクソも無いな。

 コップに紅茶袋とお湯、蜂蜜を放り込み、適当にスプーンでかき混ぜ一舐め味見、うんおいしい。さすがホグワーツ。

 丁度良くフィルチが出てきた、置いといた服は着てる、よろしい。

 

「何で男物の服なんか」

「数着買わせた、まだ着てないから安心しろ。

 とにかくコイツを飲め、異論は認めない」

 

 少々強引に紅茶を飲むよう強制すると、少し戸惑っていたが、しっかり飲んだ。

 フィルチちゃんいい子よ~(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーガス・フィルチはスクイブだ。

 魔法族なのに魔力が無く、魔法が使えない。

 親には落胆され、同年代の子供には嘲笑され、さっきのように虐げられるのが日常だった。

 スクイブだと笑われ、怒りのまま殴りかかり、魔法で鎮圧され辱しめられる。

 アグアメンディを受けながらフィルチは、諦めに似た感情を浮かべながら自嘲気味な笑みを浮かべ思った。

 ああ、ここまで来ても変わらないのか、と。

 自分はスクイブだから、これからずっと、こんな思いをし続けるのだろう、と。

 だから今の状態が理解出来なかった。

 同年代でも最悪クラスの札付きが、何故自分をシャワーに入れ、乾いたタオルと服を提供しあまつさえ紅茶まで用意してくれてるのか。

 

「とにかくコイツを飲め、異論は認めない」 

 

 脅迫気味に迫られ、仕方なく紅茶を口にする。

 驚いた事に、粗暴な彼女が入れた紅茶は、不似合いなほど暖かく、甘かった。

 

「ふぐっ・・・うう″っ・・・」

 

 初めてだ、こんなに世話を焼かれたのは。

 

「ひぐっ・・・えぐぅっ」

 

 初めてだ、こんなに優しくされたのは。

 

「うぐっ・・・!あ″あ″あ″ぁ″ぁ″~!」

 

 初めてだ、こんなに嬉しいのは。

 この人について行こう、一生支えよう、この恩は絶対に忘れない。フィルチはそう誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィルチさん泣いちゃったどうしよう。


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