思いついたSS冒頭小ネタ集   作:たけのこの里派

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実は既に出来ていた件について。
初のチラ裏でしたけど、結構感想いただけて感謝です!

ちなみにこのお話のサーゼクスを描いてみたんですけど、モミアゲ普通にすればだいぶ印象変わった感じですが……猛烈なコレじゃない感。
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とある真紅の次期当主 3

 ――――――――『ハイスクールD×D』。

 

 駒王学園に通う性欲過多な少年、イッセーこと兵藤一誠がある日とある理由で堕天使に殺され、そこに現れた学園一の美女リアス・グレモリーが一誠を悪魔として転生させてから物語が始まる。

 数々の神話体系が絡み合った学園ファンタジーバトルエロコメディーだ。

 

 それが俺の生まれた世界。

 このように軽くあらすじを省略して説明してみたのだが、お解り頂けただろうか?

 つまりこの世界にはあらゆる神話の神々が現存しているということなのである。

 

 勿論その神話の中には聖書の世界観も入っており、天使や悪魔、堕天使も存在している。原作に於いてこの三大勢力が原作主人公にとって序盤的な舞台といえよう。なんせ主人公も悪魔だ、当然だろう。

 そしてそんな人外の中には私利私欲で動き人々や多勢力に被害を及ぼす存在もいるだろう。

 

 そんな世界で人外の存在である悪魔に生まれ落ちた異物こそが俺、サーゼクス・グレモリーである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三話 サーゼクス・グレモリー

 

 

 

 

 

 

 

 

 サーゼクス・グレモリー。

 魔王リアス・ルシファーの実の弟で、元72柱グレモリー家次期当主。

 若手筆頭株にして、次代の魔王最有力候補。

 そして純血悪魔にも拘らず、偶然神滅具『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を手に入れた歴代最強の赤龍帝。

 

 18歳時にて以上の輝かしい肩書きを持つサーゼクス・グレモリーは、転生者である。

 

 前世の記憶と、この世界が創作物として描かれていた作品の知識を有している。

 それ故に、彼は自身を認識した三歳の時から苦悩していた。

 

 かつて聖書勢力は聖書の神を筆頭にした天使軍に、全能神故にその権能を以て様々な物を創り上げた。

 そこから堕天使、悪魔と敵対勢力が増えていったものの、当初は間違いなく最強勢力の一角と言えるモノだった。

 

 だがその栄華は今、見る影も無いほど著しく弱体化した。

 

 悪魔勢力単体に限る話なら、先の大戦(ハルマゲドン)で四大魔王を筆頭にソロモン72柱の、その半数が断絶するほどに死傷者を出した。

 最早悪魔は絶滅危惧種だ。

 

 今の勢力の戦力は、世界全体から見ても精々中の上あれは上出来だろう。

 しかもそれは、新たに建てた現四大魔王の内の二人。悪魔の変異体、超越者と呼ばれる現ルシファーと現ベルゼブブという単体戦力の高さ故。

 史上最強の悪魔とそれと同格と称される二人ならば、それこそ世界最強の神格である破壊神シヴァに食らい付くことすら出来るかもしれない。

 

 が、悪魔勢力全体戦力を見れば余りにも脆弱。

 

 もし二人の手に負えない事態が多発すれば、悪魔は容易にその弱体化を世界に知られることになるだろう。

 そうすれば一神教故に様々な神話勢力を侵略、呑み込んで多くの恨みを買った聖書勢力の末路は滅びだ。

 

 原作知識を持っているサーゼクスは、その事を客観的に理解していた。

 にも拘らず大半の上級悪魔は過去の栄光を引き摺り、悪魔こそは至上等と曰わり何の危機感も持っていない。

 絶滅危惧種である自覚は有っても、危機感が何一つ無いのだ。

 

 作中では何故か上手くいっていたが─────いや、 まるで上手くいっては居なかったのだが─────それでも聖書勢力は一応形になって前に進んでいた。

 

 だが、それは物語特有の演出上のお蔭。

 その設定が現実に反映され、原作と同じ様に振る舞えば万事解決─────等と思えるほどサーゼクスは馬鹿ではなかった。

 

 ソレ以前に、メインヒロインのポジションに居る者が男になっている時点で、そんな夢想は終わっている。

 

 だからと云って、サーゼクスは何もかもを見捨てて逃げ出せる類いの人間では、悪魔ではなかった。

 

 そこで彼は考えた。

 悪魔界を維持しつつ、彼がグレモリー当主になった際に何とか平和に過ごせるように。

 

「取り敢えず鍛えよう」

 

 力が無ければ、言葉は通らない。

 そうして彼は紆余曲折の末、歴代最強の赤龍帝に成っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「王手」

「ぬ」

 

 駒王学園の生徒会室で、俺は幼馴染みに将棋で王手を掛けられていた。

 

「はぁ、遂に将棋でも負けてしまったな。もうボードゲームでソーナには勝てないな」

「頭が良いのとボードゲームはイコールではありません。それに戦闘能力は貴方の足下にも及ばないのだから、得意分野で勝てない訳にはいきません」

 

 短髪ながら美しい黒髪に、一見眼鏡にしか見えないモノを掛けている、正しく委員長を体現した様な美少女が、俺に勝てたのが余程嬉しかったのか薄く頬を染めていた。

 

 幼馴染みの名はソーナ・シトリー。

 学園では支取蒼那と名乗っている、次期シトリー家当主の上級悪魔だ。

 尤も俺にとってはもう一つ肩書きが存在するのだが─────それを紹介する機会はまた今度にしよう。

 

 彼女の言う悪魔としてという言葉は、実力の事を言っている。

 良くも悪くも、悪魔は実力主義だ。

 実力と能力が有れば転生悪魔─────現ベルゼブブが開発した『悪魔の駒』と呼ばれるモノによって人間等が悪魔に転生した者達─────でも、本来貴族しか成れない上級悪魔にもなれ、更に上の最上級悪魔にもなれる。

 事実転生悪魔で二人ほど最上級悪魔に成った者が居る。

 

 しかし逆に力が無ければ、仮に貴族の生まれだとしても蔑まれてしまう。

 基本的に悪魔の力の優劣は悪魔だけが持つエネルギーである魔力の強弱なのだが、稀に魔力が極端に少ない悪魔が生まれることがある。

 原作に於ける主人公(兵藤一誠)や、俺の従兄弟がソレだったりする。

 

 まぁ、世界は別に魔力一辺倒ではなく様々なエネルギーが存在したのと、俺が発破掛けたお蔭でその従兄弟は原作以上の力を得たのだけども……。

 彼がその様な実力を得られたのは、ひとえに血の滲むような努力の末。

 

「それは、まだソーナが心労で眼を回す前から血反吐吐いていたんだ。寧ろ抜かされたら自信を無くす」

『そうだな。数多くいた所有者の中でも、相棒程己を鍛えた赤龍帝は居なかったな』

「ソレ以前に、純血の悪魔が赤龍帝になる自体初だろう」

 

 二人の会話に、俺の左手から割り込む声が響く。

 

『俺がもっと早く目覚めていれば解ったかも知れんが、残念ながら起きたのは相棒の言う契約直後だからな。力になれずスマン』

 

 そう、俺は約十年前に幼い兵藤一誠と契約し、偶々拾い、棄てようとしたエロ本の対価として彼に宿っていた神器、二天竜の片翼である赤竜の帝王(ドライグ)の魂の宿った『赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)』を手に入れてしまった。

 

 だがそこで疑問が生じる。

 

 元来神器とは生まれながらの先天的な物品。ある種才能といえるだろう。

 それの摘出は、今だ神器システムが謎に包まれ制作者が死亡しているため謎だが、確認されている全ては保持者の死亡が引き換えである。

 それは原作でも証明されている事だ。

 

 だが俺の場合は違い、保持者であろう兵藤一誠は何ら変わり無く。

 しかし人間以外が持ち得ない神器を俺が手に入れてしまった事だ。

 

 元々が研究職の魔王、超越者アジュカ・ベルゼブブが直々に検査して分かったことは、原因不明という結果だった。

 

 それでも魔王様が候補に挙げた可能性は二つ。

 

 一つは、契約者の本来あり得ない考え方と、神器との間で起こった天文学的数値の偶然の代物。

 これはアジュカ・ベルゼブブとしては本来可能性としても挙げたくないそうなのだが、ソレでもあくまで可能性。

 そもそも一般人の、しかもかなり倒錯した考え方を持つ神滅具保持者と偶然契約出来た時点で奇跡なのだ。

 

 そして二つ目は、俺が元々神滅具を保有していた可能性。

 

 ハッキリ言って前者より可能性は低いのだそうだ。

 検査の結果、俺が悪魔と人間とのハーフなんて事も無く、キチンと純血悪魔であると保証されたのもソレを後押しした。

 

 元よりグレモリーの象徴である赤髪に、母親譲りの滅びの魔力を行使することが出来る俺の出生が疚しいものではないのは、誰の目にも明らかだった。

 元よりコレは魔王派の悪魔でも極僅かしか知らない事なので、そこまで大事には成らなかった。

 

 後に赤龍帝であることを公表したが、入手方法まで公表する必要は無い。

 死にかけの人間との契約の末、とでも誤魔化せばどうとでもなる。

 

 これは何より、兵藤一誠への配慮だ。

 もし彼が神器を持っていた可能性が他に知られれば、彼を解剖して調べようとする者も出てくるやも知れないからだ。

 尤も、兵藤一誠との契約は俺と、契約書類等を処分するよう直接動いた姉、魔王リアス・ルシファーとその眷属のみ。

 

 故に悪魔達の噂で兵藤一誠の名が出てくることは無かった。

 

「神器といえば、確かソーナが所に神器持ちの元一般人を転生させたって聞いたが。ホラ、生徒会で唯一の男子生徒という事で、先週兵藤達三人組が罵詈雑言喚き散らしてたのを良く覚えてる」

「全く彼等は……。あの子、匙の事ですね。時期に貴方達と顔合わせさせたいですが、何分最近転生したばかり。もう少し時間を置くつもりです。それに神器の訓練も行っていますし」

「一般人からの転生は俺も経験した事はないから、口出しする事でもないか」

 

 将棋の駒と盤を片付けてくれた生徒会副会長を勤め、ソーナの『女王』───真羅椿姫に軽く手を振って感謝を伝える。

 

「それに悪魔としてなら、俺より眷属揃えてるソーナの方が確りやっているだろう。俺の所はゲームに出せない奴も多い」

「まぁ……貴方の場合は、最大戦力がゲームに出れませんし、貴方自身にもある程度制約がありますから」

 

 そう、俺の眷属(ヒッキー)は一部の例外を除きレーティング・ゲームに出ることが出来ない。

 何故ならソイツは主神クラスの実力を持つ等という反則に近い実力だ。

 

 本来その力は隠していたのたが、一年前の俺の婚約者探しを切欠に起こったアホみたいな事件が原因で露呈。

 見事制限を掛けられた。

 

 史上最強の悪魔である現ルシファーと、それに並ぶ現ベルゼブブ以外に止めることの出来ない奴がゲームに出られる訳がなかった。

 

「まぁ、アレのお蔭で魔王の影響力はより大きくなったが……アレはなぁ」

「はぁ……。解っていますがお互い苦労しますね」

「お、お二人とも……」

 

 俺とソーナの溜め息に、真羅が引き気味に苦言する。

 場合によっては不敬にすらなる発言だったりするのだが、真羅はソーナとは付き合いも長い。良くも悪くも身内事なので何とも言い難いのだ。

 そんな時、生徒会室の扉をノックする音が響く。

 

「どうぞ」

 

 ソーナの促しにガラッ、と生徒会室の扉を開けて入ってきたのは、170強ある俺と同じぐらいの長身に長く尖った耳。美しい金の髪を側頭部でサイドポニーに纏めた、白衣を着た美女だった。

 朱乃程ではないにしろ十二分に女性としての凹凸に、男を悉く堕落させんとする妖美さにも関わらずその肉体は程よく鍛えられ、その表情は人間味が非常に薄い。

 

「失礼します、サーゼクス様。ご報告したいことが」

「取り敢えず鈴蘭、学校で様付けはよせ。俺を社会的に殺す気か?」

「……申し訳ありません」

 

 彼女の名前は鈴蘭。

 この学園では保険医を勤めている。

 外見はパツキン巨乳極まりないが、コレでも元堕天使だったりする。

 

「アーシア・アルジェントの入国を確認しました」

「……そうか」

「アーシア・アルジェント、ですか」

 

 ソーナが苦々しく名前を口にする。

 無理もない。彼女は、彼女の善意を利用した自分達悪魔の被害者。

 心苦しいのは俺も同じである。

 

「彼女に対しては、白音と黒歌が迎えに行っています。堕天使の方はヴァレリー様が分身で監視しておられますが」

「は? 黒と白は解るが、ヴァレリーが? さっき会ったけど、何だ。労働意欲でも湧いたのか?」

「曰く、『オーちゃんと一緒にMPKされて苛ついてるから気晴らし』だそうです」

「というか、封印は……」

「アイツは何気に主神クラスだ。いくらアジュカ様でも、一年以上も封印するのは不可能だろう」

 

 ヴァレリー・フォウォレ。

 魔神の断片を持つデイウォーカーを死なせない為、神滅具で丸ごと取り込んだ吸血鬼でも魔神でも人間でもない引き篭もり。

 先程述べた制限を掛けられ、封印処置を掛けられた転生悪魔。

 

 尤も、その封印はとうの昔に形骸化。

 本人は気軽に分体を用いてゲーム等のメディア作品を買い漁っているアホだ。

 何より、世界最強(・・・・)をゲーム廃人にした罪は重い。

 

「……これが、パワーインフレというモノでしょうか。サーゼクス、貴方どうやってあの娘を眷属にしたんです」

 

 上級悪魔に配布される、非悪魔を悪魔に転生させるシステム『悪魔の駒』。

 『(キング)』を除いたチェスの駒を形造られ、駒を適正数その者に与えることで、転生悪魔として眷属にする。

 繁殖能力が人と比べ著しく低い、絶滅危惧種である悪魔を増やすため、現魔王ベルゼブブが造り上げた制度。

 これによって転生悪魔ではあるが悪魔は増えたが、他の問題が発生したのだが。

 

 そして、変異の駒(ミューテーション・ピース)と呼ばれる特異な悪魔の駒が存在する。

 悪魔の駒における本来、複数の駒を使うであろう資質を宿した転生体を一つの駒で済ませてしまう偶然の産物。

 

「倍加の譲渡───随分と選択対象が高かったからな」

 

 それを、俺は人為的に量産できる。

 

 神滅具(ロンギヌス)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』。

 通常駆動は十秒毎に保有者の能力を倍加させる能力と、それを他者に譲渡する能力を有する神器。

 

 俺がやったのは、それを『悪魔の駒』に譲渡しただけ。

 

「まぁ、俺の力量を超える奴を転生させる場合は注意してはいるがな」 

「当たり前です」

 

 力に溺れたり、理に反して眷属を蔑ろにしたりした場合、待っているのは反逆だ。

 現在の悪魔界の問題の一つ。

 反逆し主を殺したり逃げたした転生悪魔の事を、はぐれ悪魔と呼ぶ。

 

 コレが発生する原因は二つ。

 一つは悪魔に転生することで力に溺れ、理性を喪って魔物に変異、堕ちた場合に起こる転生悪魔が原因のパターン。

 もう一つが、主である悪魔が無理矢理対象を転生させ、眷属にしたり、蔑ろにしたツケで起こる純血悪魔が原因パターン。

 

 特に古い悪魔は人間を見下し、嘆かわしい事に眷属を物扱いする者が少なくない。

 

「今、転生悪魔全員が反乱起こしたら、仮に鎮圧出来ても中長期的には詰むだろうに」

「仕方がないでしょう。寿命が永遠に近いが故の弊害ですよ」

 

 転生したことで、同じ悪魔となった新たな同胞に対する態度ではないのに。

 しかし、理屈をプライドが邪魔をする。

 そもそも理屈など見ていないのかもしれない。

 

 原作という、来るべき難題の嵐を前に憂鬱に成らざるを得ない状況に、溜め息しか出ない。

 

「はぁ……何か有ったらまた来る」

「……何も無かったら来ないのですか?」

「…………その返しは卑怯だろう」

 

 あざとさが増え始めた幼馴染みに苦笑しながら、生徒会室を鈴蘭と共に後にする。

 

「鈴蘭、あの屑はどうしている」

「静観に徹しています。おそらく、タイミングを窺っているのでしょう」

「マッチポンプしか出来ないのか、あの下衆は」

 

 脳裏に浮かぶのは、笑みを浮かべる優男を演じている屑。

 考える度に消したくなる衝動に襲われながら、何とか殺せないか方法を模索する。

 しかしアレは仮にも現魔王の弟。

 クッソ忌々しい事にポジションは俺。ソーナと同じ。

 

「コカビエルさっさと暴走してくれないか……それで和平交渉。そしてあの下衆を処分したい。膿まとめて掃除したい。しかし……現状不可能か」

「必要とあらば全て処分しますが」

「お前を捨て駒にはせんよ」

 

 三大勢力が和平か休戦でもしない限り、敵の戦力低下を促したあの下衆の行為は罰せられるモノではない。

 

「早くと問題を解決して、覇龍の調整をやるか」

「その時は、僭越ながらお付き合いします」

 

 

 

 




一応HSDDはここで終了ですが、あと一話ネタバレしかない捏造設定話を更新するかもです。
その後は『ダンまち』を二話更新します。もう出来てるので連日更新になると思いますので、よかったら読んでやってください。


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