思いついたSS冒頭小ネタ集   作:たけのこの里派

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これ投稿するのやめよっかなぁと思うほどメタな会話しかしてない。
まぁチラ裏だし良いよね。

という事で転生事情のお話。
これとあと一話投稿したらHSDDは一先ず終わりです。



とある真紅の次期当主 2

「失礼する、って誰も居ないのか」

 

 午前中の授業が終り、俺は俺の作った部活の部室のある旧校舎に向かう。

 尤も、辿り着いた部室には誰も居ないため、何とも寂しい気持ちに襲われたのだが。

 

「朱乃と鈴は彼女の探索に行ったし、祐斗は剣道部。白はこの時間帯なら菓子でも買いに行ってるか。黒は付き添いか? 見事に全員不在か」

 

 ソコから部室の奥の本棚に隠した扉を開き、旧校舎らしからぬ小綺麗な廊下を通って一室の扉に辿り着く。

 本来最上級悪魔か、それに匹敵する者しか破れない封印術式を俺は気軽に破る。

 俺が破れるのは、既に何度も破壊され形骸化しているからだ。

 

「ノックしてもしもーし」

「うーい、開いてるよー」

 

 部屋の主は、だらけきった声で俺を歓迎する。

 

 目も眩むような輝く金髪に、宝石のような紅の瞳。

 恐ろしく端整で、まるで人形のようなイメージすら湧かせる程の絶世の美少女だ。

 

 正し、その金髪美少女がジャージを着て横になりながらゲームに興じていなければ。 

 

「おっ、サーゼクスじゃん。おひさー」

「よォ、ヒキニート生活の調子はどうだヴァレリー」

「サイコー」

 

 部屋の主は、ベッドに横になりテレビを観てコントローラー片手に、()()()()調()()()()()俺に返事を返す。

 

「アレ? あけのんは?」

「パトロール行ってる。その馬鹿みてぇな渾名やめね? 朱乃、ガキみたいで嫌がってたぞ?」

「がっはっは! 全体の肉体年齢がインフレしてるこの世界でも、精神年齢ならあけのんより年上だからねー! JKにパワハラし放題だゲハゲハ!!」

「ちっちぇ」

 

 傾国ぐらい容易そうな絶世の美少女が、ゲス顔を晒している。

 何とも残念である。

 

「あそっか、もう直ぐなんだ。原作開始」

 

 ヴァレリー・フォウォレ(・・・・・)

 俺同様、所謂前世の記憶とやらを持っている同郷者であり、原作知識を共有する共犯者でもある。

 

「もうかなりブッ壊れてるけどな」

「メインヒロインが野郎で、他のヒロインが既に軒並み攻略済みだからのぅ。ネトリ物にならん限り破綻してるし!」

「ソコじゃねぇよ。ていうか攻略言うな気分悪い」

 

 とは言ったものの物語が始まる前に破綻しているが故に、原作知識はそこまで絶対的な物ではないのだが。

 

 元七十二柱の一つ、グレモリー公爵家長女にして次期当主。

 兄に四大魔王の一人、ルシファーを持つ美少女、リアス・グレモリー。

 それが主人公の命を救い、そして主人公が惚れる事になる物語のメインヒロインだ。

 

 だが『リアス・グレモリー』という悪魔は、数百年前に居なくなっている。

 

「まさか兄妹逆転ものとは。このヴァレリーの目をもってしても見抜けなんだ……!」

「リハクごっこやめい」

 

 ヴァレリーの述べたように、本来のルシファーはサーゼクス・ルシファー。リアスの兄だ。

 

 だがこの世界のグレモリー家は兄妹ではなく姉弟。

 ルシファーの座に収まっているのも、リアスである。

 

 つまりリアス・グレモリーではなく、リアス・ルシファー。

 そしてグレモリー次期当主が俺、弟のサーゼクス・グレモリー。

 

 原作の配役と生まれと立場が逆転しているのだ。

 つまりメインヒロインが居ない事を意味している。

 

「ソレに主人公もアレでしょ?」

「……まぁ、堕天使に狙われる理由は無いな」

 

 原作主人公、兵藤一誠。

 一般人である彼が主人公足り得る理由であり、堕天使に殺される要因は、今は亡き聖書の神が死に際に遺した神器と呼ばれる異能を持っていたからだ。

 

 彼が主人公として成長出来たのも、その神器が神器の中でも神滅具(ロンギヌス)と呼ばれる13個しかない上位神器を宿していたからだ。

 しかし、兵藤一誠は現在神器を持っていない。

 

「なぁオイ、普通神器抜かれたら死ぬよな」

「ボクみたいに、神器そのものが複数の亜種でない限りねー」

 

 兵藤一誠は幼い頃に自身の神器を失っている。

 幼いサーゼクスとの契約で、初めて手に入れたエロ本と引き換えに。

 

「つーか、エロ本と神滅具を等価値と考える奴が居るとは思うまいて」

「あの閃光と暗黒の龍絶刀も何度も言ってたじゃん。元々キミに宿ってたんじゃないかって位に同調してるって。それにイッセー君拉致って検査しても問題ないって結果出たし」

「その後どんな感じに公表するかも問題だったしな」

 

 というか、唯でさえヴァレリーという神滅具保有者を眷属にしている為、貴族派の連中がくだらんちょっかいが鬱陶しいこと極まりないのだ。

 尤も、神滅具を複数所持しているに等しい為、戦力の集中が過ぎるのだが。

 

「で?主人公が戦闘不能でメインヒロインが不在な時点で原作なんてガバガバでしょ。それに敵キャラもほとんど内戦でルシファー様が皆殺しにしちゃったんでしょ?」

 

 ヴァレリーが遠い目をして呟く。

 思い出すのは、我が麗しの姉の暴威。

 彼女は一年前のルシファーご乱心事件の目撃者だ。

 というより、ご乱心を止める為に全力を振り絞ったからこそ、今封印されているのだが。

 

「まぁ……ていうか、もう一人の廃人は?」

「PKがクソだからって不貞寝してるよー」

「染まったなぁ」

 

 四大魔王の悉くが俗物である為か、超然とした存在が俗物に堕ちた様を見ると感慨深くなる。

 

『何故だッ、ファーブニルといい何故誇り高きドラゴンが……!!』

「自分がおっぱいドラゴン呼ばわりよか、遥かにマシだと思えば良いと思うぞー」

『相棒ぉおおおおおお!! 感謝するぞぉぉおおッッ!!!』

 

 ヴァレリーの言ったように、正史におけるドライグの宿主である兵藤一誠の二つ名は『乳龍帝(おっぱいドラゴン)』。

 神器の上位駆動である『禁手(バランスブレイカー)』に、メインヒロインの乳首を触って至った度しがたい傑物()である。

 現代に馴染み深いとはいえ、マトモなドラゴンとしての感性を持つドライグとしては堪えられるものではない。

 事実正史では、ストレスの余り幼児退行すら起こしていた。

 

「─────はぁ、こういうメタ話出来るのってサーゼクスだけだから助かるよ」

「でもこうして二人居るんだから、三人目が居るかもしんねぇぞ? 尤も俺達みたいに現状に受容的ならまだ良いが……」

「アンチ・ヘイト系転生者?」

「居ないとも言えませんからねぇ。二次的に定番だし、三大勢力はツッコミ所満載だからよ」

 

 転生者という特異性を二人は身を以て知っている。

 同時に、その危険性も。

 

 様々な二次創作で描かれたオリ主だった。踏み台転生者など極めて多種多様。

 静かに暮らしたい者も居れば、ありがちなハーレム願望の持ち主もいるだろう。

 というか、転生者ではないが原作主人公がソレだ。

 ソレならまだ解りやすくて助かる。

 

 現在確認している転生者は俺ととヴァレリー自身達だけだが、それでも自分達と照らし合わせて転生者が完全な一般人として生まれる可能性は低いと断言できる。

 

 問題は悪魔や三大勢力に対して敵意や悪意を持っている場合だ。

 物語が始まる導入部分がブッ壊れてるものの、原作知識も馬鹿にならない。

 何せ自分達が散々有効活用していたのだ。

 

「まぁ、この世界で踏み台系は居ないと思うが」

「踏み台系主人公って、要はシミュレーテッドリアリティでしょ?」

 

 自分が主人公だと、現実感を喪わせるほどの全能感が不可欠なのだ。

 挫折や苦悩が伴い、壁にぶつかる。

 そして漸く現実を認識することができるのだ。

 

「神様転生とかでよくある、特典を貰えて原作知識もあったら、そりゃあ発症するとは思うよ。でもサーゼクスの場合は自分がゴミと思える程の強者が一杯居るじゃん?」

「確かになぁ。俺の言うこと全然聞いてくれないし─────」

 

 余りに過酷な社会状況に生まれた少年は、壊れた蓄音機の様に自身の不満を思い出し発狂してしまう。

 

「――――――姉さん現代の倫理観を持ってくれ。え? ルシファーなら近親相姦は基本? いやそれは違うでしょ立場わかってお願い何で身内の事になると途端に暴走するんだよマジでお願い糞貴族共現実見やがれいい加減にしろ主神級が三人以上来たらマジで詰むからお前らなんざシミも残らんぞ神滅具持ちが四人ゲリラ戦で攻めてきたら同じく終わりだから大人だろ解れよ老害が何で子供の俺がこんなこと考えねぇといけねぇんだよふざけんなががががががががgggggggggg」

「あー、なんかスイッチ入っちゃったかー。最近随分落ち着いてたのに」

 

 抱えてるストレス具合が察せれるだろう。

 

「ボクはそもそも死なないために足掻きまくったからねぇ。世界の厳しさを知れば、リアルを認めないといけないからね」

「世知辛いねぇオイ」

 

 生憎と、二人は現実の厳しさを知っている。

 サーゼクスはこれからの未来を憂い、ヴァレリーは乗り切ったからこそ生きている。

 

「はぁ。相変わらずみたいだから、俺行くわ」

「ハーイお疲れーって、ソーナちゃんトコ?」

 

 ソーナ・シトリー。

 駒王学園生徒会長にしてサーゼクス同様悪魔で元七十二柱の一つ、シトリー家次期当主だ。

 そしてサーゼクスの幼馴染みでもあり、何より姉を魔王に持つ者同士でもある。

 

「しっかしソーナちゃんも育ったねー」

「何がだよ」

「胸だよ」

「アホだろお前。ていうかアレはお前が聖杯使ったからじゃねぇか」

 

 ヴァレリーの所有する神滅具(ロンギヌス)幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』は生命操作に長けている回復系最強神器。

 それを応用して女性ホルモンを過剰分泌。バストサイズを大きくする程度容易い。

 

 勿論、魂さえあれば死者すら蘇らせる聖杯の正しい用途では決して無いが。

 

「ふーん、何でボクが聖杯使ったか考えなかったのー?」

「……セクハラしたかったかじゃねぇのか?」

「あっれー? その間は何なのかなーっ」

 

 きゃーっ、この女たらしの甲斐ありー! と、戯言を吐くバカの額をはたき、あびゃーと奇声をバックに旧校舎を出る。

 そのまま生徒会室へとに向かおうとすると、烏型の使い魔が現れて俺の肩に停まる。

 

 それは、パトロールに向かっている朱乃のモノだった。

 

 

『─────複数の堕天使が町に入るのを確認しました』

 

 

 

 




サーゼクス・グレモリー
 グレモリー家の二児、長男で次期当主で転生者。学校での偽名は暮森陸人。

神器(セイグリットギア):『赤龍帝の籠手』
禁手亜種(アナザー・バランスブレイカー):『赤龍帝の紅羽織(クリムゾン・ブーステッド・コート)』 形状:外套型
覇龍:『真紅の天魔(クリムゾン・ジャガーノート・ジュデッカ)

最近の悩み:国家滅亡の危機に大人の大半が能天気。


ヴァレリー・フォウォレ
 とある理由で、ヴァレリーを主軸にギャスパーの全てと聖杯の力で同化した元ハーフヴァンパイアのヒキニート。

神器(セイグリットギア):『幽世の聖杯』、『停止世界の邪眼』
禁手亜種(アナザー・バランスブレイカー):『宵闇蝕の(フォービトゥン・バロール)魔神聖餐杯(・グラール・デーモン)

最近の悩み:もう少ししたら原作的に封印が解除され、ヒキニート生活が出来なくなる。

一応以上が、軽い味方の転生者の情報。
次回は原作との相違点の設定放出予定。

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