魔法科高校の劣等生 〜夜を照らす紅〜   作:天兎フウ

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大変お待たせしました!
エタってないからセーフ。え、アウト?

とにかく、久しぶりの投稿になりました。
更新が止まっているにも関わらず、お気に入り件数がじわじわと増えていて感謝感激です。

実は一カ月前には4000文字を書き終えていたんですが、モチベーションが上がらず放置してました。ごめんなさい。
20巻でモチベーションが上がったので投稿。と言っても、書いたのは500文字程度なんですけどね。
文章力が落ちてないことを祈ります。……久しぶりの投稿は結構緊張しますね。
 


来訪者編Ⅸ

 

 

 

リーナとの戦闘があってから二日後。俺たちは何時ものメンバーで食堂に集まり昼食をとっていた。あの戦闘が終わり、真由美たちにパラサイトに仕掛けた発信機の電波と周波数を教えた後は、特に何事もなく、無事に過ごせている。二日しか経っていないともいえるが、俺の中では既に大きな事件は立て続けに起きるものとなっているので、たった二日間の平和でもなんだか素晴らしいものに感じていた。

まあ、事件がなかったというだけで、実は普段通りだったわけではない。昨日の夜、アメリカに留学中の雫から連絡があったのだ。その内容はアメリカで行われたマイクロブラックホールの生成実験のこと。その内容はとても重要なものであったが、俺は既に知っていた為にそこまで驚くようなことはなかった。どちらかといえば、俺が驚いたのは電話をしていきた雫の恰好だ。どうやら雫は酔っぱらっていたようで、ネグリジェ姿で電話してきたのだ。流石にあれは衝撃的だった。まあ、それでも起こったことといえばその程度だ。平和でなことで何よりである。

――なんてことを考えていたのがフラグになったのか。

 

「!?」

「……ッ」

「痛ッ……!」

 

俺が視界が真っ赤に染まったような感覚に陥ると同時に、深雪が気持ち悪そうに身をよじり、美月が顔を顰めて両目を閉じた。流石に三人が同時にそんな反応をすれば、全員何かが起こったということに気がつく。

 

「なに……これ……こんなオーラ、見たことない……」

「柴田さん、眼鏡をかけて」

 

美月から漏れ出た言葉に何が起きたかを理解した幹比古が咄嗟に呪符を取り出し、霊的波動をカットする結界を張り、重ねてオーラカットの役割を持つ眼鏡をかけるように言う。それで幾分か楽になったのか、美月の表情がかなり和らぐ。

 

「二人とも、何を感じた?」

「……酷く不快な霊子波が、肌をかすめたように感じました」

「パラサイトの気配だ。間違いない」

 

俺は深雪ほどプシオンに対する感受性は高くないが、一度覚えた不快な気配を捉えられないほどに低いわけでもない。

兄さんの問いに答える深雪に補足するように情報を追加すると、皆の表情が強張り緊張が満ちた。その時、狙っていたかのようなタイミングで俺の端末から着信音が鳴る。

ナイスタイミング!と内心で喝采を上げながら、七草真由美と表示される画面をタッチして通話をオンにした。

 

『紅夜くん、大変よ!』

「七草先輩、詳しい位置はわかりますか?」

 

ユニットからなんの前置きもなく飛び出してきた言葉に、俺も前置きを省いて要点だけ伝える。俺が打ち込んだ発信機の稼働限界はまだ残っている。校内に突入したパラサイトが原作通りの相手であれば、現在位置が特定できるはずだ。

 

『吸血鬼が校内に──って知ってるなら話が早いわ。例のシグナルは通用門から実験棟の資材搬入口へ向けて移動中よ。今日はマクシミリアンの社員が新型測定装置のデモに来る予定です』

「了解しました」

 

おぼろげな原作知識からパラサイトが社員に潜んでいた理由を掘り返しながら、真由美との通信を切る。そして、一息の間を入れてから皆の方向に振り返った。

 

「今の、聞いてたよな?」

「昼間から学校に乗り込んでくるなんて、いい度胸じゃない!」

「エリカ。気持ちは分かるが、落ち着け」

 

返答の代わりに、エリカが椅子が倒れることも気にせず勢いよく立ち上がる。その勢いは今にも飛び出しそうなほどのものだったが、兄さんの慌てた様子もない何時も通りの声に冷静さを取り戻す。

 

「お前たちは武器を持っていないだろう。俺たちが先に様子を見てくるから、武器を取ってこい」

「……そうね。美月、教室で待ってて」

「ほのかも美月と一緒に待っていてくれないか?」

「いえ、私もいきます!」

 

エリカが美月に待っているように言ったのに続き、ほのかに待っているよう頼む。しかし、ほのかは大きく意気込んで頼みを拒否した。

だが、パラサイトが相手ではほのかは戦力外だ。人間が相手ならば、ほのかの光を操る魔法は強力だが、実体を持たず視覚という感覚器官がないであろうパラサイトでは足手まといにしかならない。

おぼろげだが、確か原作でもそれが理由でエリカがパラサイトに狙われていたはずだ。本当ならばエリカにも待っているように言いたいところだが、それを聞くようには思えない。

とにかく、ほのかを連れていくという選択肢はなしだ。俺では、ほのかを説得できるような気がしないし、兄さんにアイコンタクトでほのかを説得するように頼む。

 

「ほのか、できれば巻き込みたくないんだ。それに、もしもの為に美月を守っていて欲しい」

「……わかりました」

「頼んだ」

 

返事を聞いた兄さんが立ち上がり、後に続くように全員が席を立つと、それぞれが目的地に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅夜たちとは別のAクラスの生徒たちと昼食をとっているリーナは、この後どうするかを迷っていた。その理由は、最近顔を合わせていなかったスターズの一員、ミカエラ・ホンゴウが潜入しているマクシミリアン・デバイスの仕事で一校に来ることになっていたからである。

同室でありながら、同じくスターズの一員でもあるシルヴィアに会いに行ってはどうかと進められたが、スターズの総長でありながら高校生をやっている自分を見られるのに何だか気が進まず、こうして迷っているというわけなのだ。

 

(……ミアに会いに行った方がいいかしら)

 

特に用事があるわけでもないが、ここ数日間仕事で顔を合わせていない為に、いい機会ではあったのだ。ミカエラの仕事も昼からだったので、時間もタイミングも丁度いい。

頭の中ではそんなことを考えながらも、表面上には出さずクラスメイトたちとの会話に答えて、最後の一皿を空にした時だ。突然、異様な波動が膨れ上がり、リーナに不快感をもたらした。

 

(これは!?)

 

幾度も感じた間違えようのないパラサイトの気配。思わず立ち上がりそうになるのを抑え、思考を巡らせる。

他の生徒たちが気付いていないのは、波動がプシオンによるものだったからだろう。しかし、何度も戦ったからこそ、リーナには相手が覆面のパラサイトということ、そして大雑把な方向も理解できた。通用門、業者が出入りする門の方だ。

 

(そうだ、ミア!)

 

場所を意識すると、連鎖的に先ほど考えていたことも思い出す。

パラサイトのいる場所が業者の専門口であるなら、ミカエラがいるはずだ。

 

「すみません、少し用事を思い出したので、失礼しますね」

 

クラスメイトたちに丁寧に断りを入れて、リーナは立ち上がった。

 

 

 

人目につかないところまで来たリーナは、駆け出しながら何故パラサイトが一校に来たのかを考える。しかし、いくら頭を捻っても一校とパラサイトの関連性を見つけられない。関係しているというだけなら、この学校にはパラサイトを狙う者が複数存在しているが、パラサイトがそれを理解しているなら、逆に近づこうとは思わないだろう。

 

『……なあ、リーナ』

 

そこまで考えて、先日の紅夜との会話が思い浮かぶ。それを振り払うように頭を振るが、一度思い出した記憶は頭の片隅で主張し続ける。

 

『パラサイトに憑かれたのはUSNA軍の兵士なんだよな?』

 

何時も浮かべている笑みを消して、珍しく他人の前で真面目に思案する紅夜は、リーナの記憶に焼き付いている。

 

『これはあくまでもほとんど根拠のない推測でしかないんだが────』

 

それはないだろうと思いたかった。

以前から考えてはいたが、それが身近な相手だと信じたくなかった。

しかし、今の状況が可能性があることを教えている。

 

『スターズ内部にパラサイトがいる可能性はないか?』

 

ミカエラの乗るトレーラーを視界に捉え、リーナは思わず尻込みしてしまった。そんな自分に気が付き、ミカエラを信じていないみたじゃないかと、自身を奮い立たせて歩き出す。

しかし、どうしても紅夜の言葉が引っ掛かり────

 

 

トレーラーから降りてきたミカエラを見て、リーナは飛び退った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ミア、貴女が白覆面だったんですか!?」

 

トレーラーを視界に入れた時、耳に入ってきたのはリーナのそんな声だった。

足を止めた俺が兄さんと深雪に視線を向けると、二人も俺の意図を理解してくれたようで、一度頷いた後トレーラーを回り込むように走って行った。

その姿を見送りながら、つなぎっぱなしだった音声通話をサスペンドから復帰させる。

 

「七草先輩、実験棟資材搬入口付近の監視装置のレコーダーをオフにしてくれませんか」

『何故、と聞いても答えてくれないわね』

「お願いします」

『ハァ……はい、切ったわよ』

「ありがとうございます」

 

真由美との通話を終えたところで丁度後ろから足音が聞こえ、CADを取りに行っていたエリカたちが走ってくる。その中にはどういうわけか克人も混じっていた。

克人はリーナがCADを取り出し、ミアと呼ばれた女性を睨みつけているのを確認すると、こちらに視線を向けてくる。

 

「紅夜、今どんな状況になっている」

「見ての通り、リーナの知り合いらしき相手がパラサイトで、リーナは今気が付いたところのようです。兄さんと深雪には他の従業員たちの確保を頼んでます」

 

克人の質問は状況を全員で共有する為のもの。だから俺も克人の質問に答えながら、エリカや幹比古にも状況を教えた。

 

「視覚と聴覚を遮る魔法を使う。機械は誤魔化せないけど……」

「既にここ周辺の監視装置は切ってあるから大丈夫だ」

「分かった」

「では吉田が結界を張った後の行動を決めよう」

 

克人は全員が首を縦に振ったのを確認すると、俺に視線を向けてくる。今一番状況を把握しているのは俺なので、そこらへんの話は任せるということだろう。

 

「やるべきことは3つ。一つは、マクシミリアンの従業員たちの安全確保と無力化だ。これについては、既に兄さんたちに任せてある」

 

状況確認と同時に役割分担を決める為に、全員の顔を見回しながら話しを続ける。

 

「二つ目は、リーナの安全確保と情報共有。これについては最低限、情報共有だけでいい」

 

こうして話している間も、リーナとパラサイトの間の緊迫感は高まっている。パラサイトはどうにかとぼけて切り抜けようとしているが、戦闘になるのは時間の問題だ。

 

「どうやら相手はリーナの知り合いのようだし、念のためにリーナの見張りも必要だろう。これについては先輩にお願いします」

 

俺は原作知識やリーナの性格からも、そのような事態になるとは思っていないが、それで全員が納得するかは別の話だ。だから、克人に監視を頼むことにした。安全の確保と隔離を同時に行うのは十文字家の魔法が最適だ。向こうもそれを理解しているので、特にもめるようなこともなく請け負ってもらえた。

 

「三つめ、パラサイトの確保。これは言うまでもなく最優先事項だ。パラサイトの捕獲について、それぞれ思うところはあるだろうけど、それは確保してから話し合うべきだ」

 

できるだけ早口で言い切り、全員が納得していることを確認する。

 

「よし、準備はいいな?」

 

そう言いながら幹比古に視線を向けると、幹比古の手から六枚の呪符が空に向けて放たれた。すると、呪符はまるで羽でも生えているかのように空中を飛んで行き、トレーラーを取り囲むように正六角形を形成する。

 

「行きます」

 

言葉と共に両手が印を結び、古式魔法の結界が発動した。

 

 

 




 
久しぶりに書いたので、途中からどんな展開を書こうとしていたのか忘れるという…
頑張って違和感のないようにしましたが、矛盾がありそうで怖いです。

今日20巻を買いましたが、最初は番外編のつもりで書いたとのことからか、個人的には読みやすい話でした。
大きな伏線もあまりなく、私としては矛盾が無さそうで安心しています。

おかげでモチベーションが上がりましたが、次の投稿はいつになることやら…(他人事)
まあ、エタらないようマイペースに続けていくつもりですので、そんな適当な感じでも良ければ、これからもよろしくです。


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