どうも皆様、天兎 フウです。
魔法科高校の劣等生 〜夜を照らす紅〜 を読んで頂き、誠にありがとうございます。
えー、実はご報告があります。とは言ってもそんなに大したことではありません。
私の諸事情により次回の更新が遅れることになると思います。本当に申し訳ありません!
ですが、8月中には更新できると思いますので気長にお待ち下さい。
さて、今回の話しですが以上の報告の為に急いで書いたものですので短いです。更に次の更新へのつなぎのような話しなので読まなくても然程問題はありません。
まあ、せっかく書いたので流し読み程度に読んで頂ければ嬉しいです。
では、どうぞ!
俺たちがいる部屋にノックの音が響く。深雪が応じてドアを開くと、そこには五十里と花音が立っていた。深雪の案内に促されて部屋に入った二人は、この部屋に自身を呼んだ兄さんの前で立ち止まる。
「わざわざすみません」
そう言って頭を下げる兄さんに五十里は問題ないと気安げに手を振る。そんな五十里に兄さんはもう一度頭を下げた。
「それで、何か分かったの?」
早速本題に入る五十里に兄さんも応じて情報端末に身体ごと向く。
「一通り検証してみました。やはり、第三者の介入があったと見るべきですね。五十里先輩、確認していただけますか」
「了解。……さすがに司波君は仕事が早いね」
「紅夜にも手伝ってもらいましたから」
「それでもだよ」
五十里は兄さんと俺に感心を表現しながら椅子に座る。そして慣れた手つきで脳波アシスト付モノクル型視線ポインタを装着するとキーボードに手を持っていき、親指をクリックボタンに置く。五十里の操作によって卓上の小型ディスプレイに映る、実写映像とシミレーション映像が同時に動き出す。そして事故の場面に差し掛かったところでタイムゲージによって映像がスローダウンする。シミュレーション画面の上部に水面の変化に影響を与える数字が表された。そして問題の水面が陥没した瞬間、項目にunknownが表示され、水面に何かしらの干渉があったことを明確に示していた。
画面を止めた五十里が振り返る。
「……予想以上に難しいね、これは」
「啓、どういうことなの?」
「花音も知っている通り、九校戦では外部からの魔法干渉を防ぐ為に厳重な監視網を引いている。でも司波くんの解析によれば水面を陥没させた力は水中に生じている。外部から水路に魔法式を転写すれば間違いなく監視装置に引っかかるからあり得ない。可能性としては水中に工作員が潜んでいた、ってことくらいだけど……それこそあり得ないしね……」
「司波君の解析が間違っているんじゃないの?」
「それはない」
一瞬、深雪が顔色を変えたのでヒヤッとしたが、深雪が何かを言う前に五十里が疑念を否定した。正直、助かった。
「司波君の解析は完璧だ。少なくとも僕のスキルでは、これ以上のことはできないし間違いも見つけられない」
これには花音と五十里も揃って考え込んでしまった。
「実は水面に干渉した方法には心当たりがあるんです」
俺の言葉に俯いて考え込んでいた五十里と花音は弾かれたように顔を上げた。
「ちょっとそれ本当!」
「落ち着いて、花音。それで、どういうことだい紅夜君」
「それを話す為に友人を呼んでいるんですけど……そろそろか?」
俺が呟いた直後、狙ったようなタイミングで再びドアがノックされた。深雪が来訪者の対応に向かい、そしてすぐに戻ってくる。戻ってきた深雪の後ろには美月と幹比古の二人が付いて来ていた。
「ご紹介します。俺のクラスメイトの吉田と柴田です。二人とも知っているとは思うが、二年の五十里先輩と千代田先輩だ」
「二人にはさっき俺が言った通り、水中工作員の謎を解く為に来てもらったんですよ」
当然、これだけでは言葉が足りない為に分かるはずもないので説明を続ける。
「俺たちは今、渡辺先輩が第三者による魔法的妨害を受けた可能性について検証してる」
幹比古たちへの説明に幹比古は眉を顰め、美月は納得の表情でうなずいた。まあ、美月に関しては俺がメガネを外すようにお願いしたのだから、少し考えれば分かることだったのだろう。
「渡辺先輩が体勢を崩す直前、水面が不自然に陥没した。この水面陥没はほぼ確実に水中からの干渉によるものだ。コース外から気付かれることなく水路内に魔法を仕掛けることは不可能だ。だとすれば、魔法は水中に潜んでいた何者かによって仕掛けられたと考えるべきだ、というのが俺たちの見解だ」
兄さんがそこまで説明したところで幹比古の目に鋭い光が帯びる。
「しかし生身の魔法師が水中に潜んでいたと考えるのは荒唐無稽です。ならば、魔法を行使する人間以外の何かが水路内に潜んでいたと考えるのが合理的でしょう」
五十里と花音は顔を見合せ、お互いに戸惑いの表情を浮かべる。二人が問いを返してくるのには少しの時間を要した。
「司波君たちは
五十里の言葉に兄さんと俺は同時に頷く。
現代魔法を行使する魔法師は、通常、サイオンの波動によって魔法を知覚している。だが、
「吉田は精霊魔法を得意としている魔法師です。また、柴田は霊子光に対して鋭敏な感受性を有しています」
「だから二人に来てもらったんだね」
兄さんは五十里の確認に対してもう一度頷くと視線を幹比古へと向けた。
「幹比古、専門家としての意見を聞きたい。数時間単位で特定の条件に従って水面を陥没させる遅延発動魔法は、精霊魔法によって可能か?」
「可能だよ」
「それはお前にも可能か?」
「準備期間による。今すぐやれと言われても無理だけど、半月くらい準備期間をもらって会場に何度か忍び込む手筈を整えてもらえれば、多分可能だ」
こうして兄さんと幹比古の質問と応答は打てば響くように続けられた。幹比古に聞きたいことが聞き終わった兄さんは次に美月の方へと向き直る。
「美月、渡辺先輩の事故のとき、SBの活動は見なかったか?」
「えっと、突然のことだからよく見えなかったんですけど、渡辺先輩が体勢を崩したときに水中で何かが光ったように見えました」
残念ながら事故が起きたとき、七校選手のCADは見ていなかったようだが美月は十分な成果は見せてくれた。これで兄さんが事件の真相に迫るのも少しは速くなるだろう。
「そういえば試合の前に紅夜さんがメガネを外すように言ってくれたおかげでSBが見えたんですけど、もしかして紅夜さんは今回の事件で何か起こると知っていたんですか?」
「ちょっと、紅夜くん。それ本当!?」
美月の言葉に反応して花音が俺に食って掛かるような勢いで問い詰める。とはいえ、この事態をある程度予測していた俺は、まず花音を落ち着かせてから台本通りの台詞で言い訳する。
「……これはオフレコで頼むんですが、この大会が始まる数日前に会場に侵入者が入ったらしいんです。恐らく幹比古の言うSBの準備はここで行ったんだと思います。この時はそれほど重要なことではないと思っていたんですけどね」
花音が俺に文句を言う前に先手を打っておく。花音が何も言わずに話を聞く体勢に戻ったのを確認して話を続ける。
「さらにパーティーの日の夜に賊が入り込もうとしていました。これは俺だけじゃなく幹比古も知っているはずだ」
「あ、ああ。あの時は僕と紅夜と達也の三人で賊を捕らえたからね」
突然話を振られて少し慌てるが幹比古はすぐに立て直すと真剣な表情で証言する。
「それから何かあるとは思って警戒していたんですが、今日まで何も起こらなかったんです。けど今日のバトルボードの会場に入った時に、なんというか直感で何か起こるって感じたんですよ。まさかここまでのことが起きるとは思っていませんでしたけど」
さらに続けて「俺が話していればこんなことは起きなかった」と言って落ち込んだように見せれば完璧だ。
「いや、今の話を試合前にしていたら、恐らく選手のコンディションに影響していただろう。紅夜くんの判断は正しいよ」
「……ありがとうございます。そう言ってもらえると気が楽になります」
予想通り五十里は俺の言葉を信じてくれた上にフォローをしてくれたのでお礼を言っておく。なんだか少し罪悪感が起きるが、計画通りになってくれた。花音は腑に落ちない顔をしていたが、一応納得したのか特に何も言わない。幹比古も花音と同様で難しい顔をしているが何も言わない。美月に至っては完全に俺を信頼しているらしく、無条件で信じてくれているようだった。俺の言葉が出任せだと知っている兄さんと深雪も、兄さんはポーカーフェイスで沈黙を貫き、深雪も笑顔の仮面を被ったまま、何も言わなかった。
◆
あの後もいろいろと話し合ったが結局は全てが予測の域を出ることはなく、ほとんど原作と変わらずに終わってしまった。そして話し合いが終わった後には深雪が摩利の代役としてミラージ・バッド本戦に出場することになったりしたが、それも大体原作通りに進んだ。しかし、明日は大会四日目。つまり本戦は一旦休みになり、新人戦が始まることになる。原作との道筋もここで完全に分かれるだろう。新人戦の最初の日に行われる競技はバトルボードとスピードシューティング。つまり――――
―――――――さあ、俺の出番だ。大いに暴れようじゃないか!
紅夜は本気を出せることにテンションが上がってます。
だから、試合で暴れさせても仕方がないですよね?
では、次回の更新でまたお会いしましょう。
……こういうセリフ、1回言ってみたかったんですよね。