魔法科高校の劣等生 〜夜を照らす紅〜   作:天兎フウ

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初投稿です。

いろいろとミスが多いかもしれませんが、その場合は優しく教えていただけると助かります。

よろしくお願いします。



プロローグ

  

 

 

転生というのを知っているだろうか?二次小説などで見るアレだ。

その二次小説でよくあるパターンと言えば、神様のミスで死んでしまい特典付きで転生する、所謂神様転生というやつだと思う。

さて、何故俺がこんなことを考えているかというとだ。

 

 

俺、転生しました!

 

 

いや、自分でも意味がわからない。

冷静に思考しているが、コレは一周回って落ち着いたというやつだ。混乱しすぎると一周回って冷静になるというのが本当の事だったことが実証された。

 

本当に意味がわからない。

 

俺は神様なんかに会ってないし、況してや死んだ憶えすらない。普通に寝て、起きたら身体が赤ん坊になっていたのだ。

これで混乱しない方がおかしいだろう。

 

……うん、取り敢えず寝るか。

 

なんか考えるのが面倒になってきた。

現実逃避ではない、これは戦略的撤退だ。

そんな誰ともなしに意味のない言い訳をしながら、俺の意識は闇に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、俺が転生して一ヶ月経った。

何か展開が早いとかなんとか聞こえた気がしたが、何もすることがないのだから仕方がない。赤ん坊のすることなんて食うことと寝ること、そしてたまに動くことだけだ。

 

とまあ、それは置いといて。

 

不思議なことにこの一ヶ月、俺の父親と母親を見たことがない。何か事情があるのだろうか? まぁ、そのうちわかるだろう。

他にも不思議なことやわかったことがあるので、ここまでで判明した事を一度整理してみよう。

 

1.転生した理由は全く持ってわからない。

 

これについては考えてもわからないからもう諦めた。

とにかく二度目の人生を楽しみたいと思う。

 

2.どうも俺はかなり裕福な家に生まれたらしい。

 

これはかなり早い段階でわかった事だ。

何しろ俺がいる部屋が見るからに豪華で、とてつもなく広い。それに加え、高級ホテルのような内装をしているのだ。こんな部屋に入れる人物など、かなり限定されるだろう。

 

3.俺の年齢は1歳半といったところのようだ。

 

通りで生まれたばかりにしては動きやすいわけだ。

年齢がわかったのは俺が自分の足で立った時に、世話をしてくれるメイドさんらしき人がぽろっと漏らしてくれたのだ。

どうも前世――――かは分からないが、転生した俺の意識が戻る前は体調があまり良くなかったようで、今まで立ったことがなかったらしい。その時に興奮したメイドさんが、会話の中で俺の年齢を言っていた。

 

4.俺は双子の弟らしい。

 

前に一度、俺と同い年くらいの女の子が部屋に来て一緒に遊んだのだが、どうやらその女の子が俺の双子の姉だったみたいだ。

一度しか会ったことがないのは、体調が良くなかった俺が大事をとって別の部屋に移されたからだそうだ。

 

ここまでが昨日までに判明したことだ。

転生して一ヶ月も経ったにしては情報が少ないと思うが、俺の部屋には体調を考えてあまり人が来ないので、仕方がないだろう。

 

さて、問題なのはここからだ。

次は今日判明したことをまとめよう。

 

1.俺と姉の名前が判明した。

 

ついに、俺と姉の名前がわかった。

元々名前は判明していたが、今日まで苗字がわからなかったのだ。

しかし、その苗字が今日になって、ついにわかったのだ。

 

俺の名前は、四葉紅夜(よつばこうや)

 

そして、姉の名前は、()()()()

 

アレ? 気のせいだよな? なんか聞き覚えがあるけど、気のせいだよな?

魔法科高校に通ってる劣等生(笑)って名のチートお兄様で聞いた名前だけど、気のせいだよな?

四葉って主人公の家系だったけど、気のせいだよな? な!?

 

2.俺は魔法の才能があるらしい。

 

 

…………人の夢と書いて、儚いって読むよね。

 

 

 

 

 

 

 

魔法科高校の劣等生の世界、しかも主人公の弟に転生したという衝撃の事実が発覚してから色々考えた。

結果

 

強くなればどうにでもなる!

 

という結論に落ち着いた。

かなり強引だが、この世界では強さが重要だ。十巻までではあるが、原作知識によればこの世界はかなり物騒だし、トップは実際に実力を伴っていることが多い。

幸いなことに、俺は日本のトップ十師族。その中でも、最も力を持つ四葉家の直系だ。魔法の才能は遺伝するとされ、俺も例外なく才能を持っている。努力さえすれば、世界トップレベルの強さに十分届くのだ。

俺は四葉直系、つまり女である姉の深雪を抜き、次期当主候補第一位になってしまった訳だ。さらに主人公の弟に生まれたからには、騒動に巻き込まれるのは必然。場合によっては、即ガメオベラ(Game over)

ならばいっそのこと、それを楽しめるくらい強くなればいい。

そういった考えの元、先程の結論に落ち着いたのだ。

そうと決まれば特訓だ。時間は有り余る程にある。

 

 

さあ、目指すは最強だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅夜が転生してから早くも7年の年月が経ち8歳になっていた。

そこで、問題が一つ。

 

────病気になって隔離されてます……。

 

こんな時にどんな顔したら良いかって?

笑うしかねぇ!!

 

「あっははは―――げほっ!」

 

とりあえず笑ってみたはいいが咳込んでしまう。それだけ、紅夜の状態は悪かった。

紅夜は知る由も無いが、発症した病気はあの九島光宣と同じ病気だった。ただ、紅夜の病気は九島光宣は少しだけ違うところがある。

 

九島光宣の病気は、膨大な量の想子(サイオン)が体中に張り巡るサイオンの管の容量をオーバーして、サイオンの管を突き破り、破壊と修復が繰り返されることによって、体調を崩すというものだった。

しかし、紅夜の場合はサイオン量は確かに膨大だが、管の容量は十分あった。

 

では何故病気になっているのか?

 

それは紅夜がサイオンの制御がうまくできずに、体の中を膨大な量のサイオンが暴れ回っており、そのせいで管がズタズタに引き裂かれている所為だ。

九島光宣に比べて改善の余地はあるのだが、症状としては紅夜の方が酷かった。

なにせ、まともに歩くこともできず、体調が良くなったと思って少しでも運動をすると、途端に体調を崩すのだ。

しかも、深雪の弟だけあってなまじ魔法の干渉力が高いので、サイオンが暴走してしまうと周囲に莫大な被害をもたらす。

初めて暴走した時など、紅夜のいた屋敷が半壊した上に近くにいた約10人の人達が巻き込まれて死亡してしまった。紅夜は齢半月にして初めての殺人を経験したのだ。

 

死んでしまった10人には悪いが、不幸中の幸いと言うべきか、その時紅夜は体調を崩して別邸に移されていたので、被害は最小限で収まった。

 

紅夜自身にはこの病気になった理由は見当がついていた。

恐らく転生して前世の記憶を持っていたことによって、前の世界にはなかったサイオンに対応できなくなり、結果、制御に失敗して暴走を起こしているのだろう。

だが本人は多分月日が経てば制御ができるようになるだろうから、それまでの辛抱だと割り切っていた。

事実、紅夜が転生したころに比べれば、今はサイオンが暴走する事が減ってきている。

この調子なら、原作が始まるまでには普通の生活を送れるようになるはずだ。

 

そんなことを考えていると、突然殆ど人が来ない筈のこの部屋の扉がノックされていることに気が付き、ベッドから体を起こす。

 

「ん? はぁーい」

「紅夜、入ってもいい?」

「ああ、深雪? もちろんいいよ」

 

扉を開けて入って来たのは紅夜の双子の姉、四葉深雪と、そのガーディアンで兄でもある達也だった。

 

「久しぶりね紅夜。体調はどう?」

「久しぶり。体調は最近はかなりよくなってるよ」

「そう、よかったわ」

 

こんな調子で、その後もしばらく話をしていると、深雪が突然立ち上がった。

 

「ごめんなさい。そろそろお稽古の時間だわ」

「そうなのか? じゃあ稽古頑張って」

「ええ、また来るわ」

「ああ、今日は来てくれてありがとな」

 

いつも通りの挨拶をすると深雪は部屋から出て行く。それを見送った達也はこちらに向き直ると口を開いた。

 

「さて、挨拶が遅れたな。久しぶりだ紅夜」

「久しぶり兄さん(・・・)

 

今の会話からわかったと思うが紅夜と達也は結構仲が良い。理由としては病気で隔離され、あまりにも暇だった紅夜が、よく達也に話しかけていたから。それと――――――

 

「それで、例のアレは?」

「ああ、もちろん出来ている」

「おお、流石兄さん。早く見せてくれ!」

「そう急かすな」

 

達也は笑いながらそう言って、手に持っていた黒いアタッシュケースを差し出した。紅夜は嬉しそうにアタッシュケースを受け取るとロックを外し、蓋を開く。

 

「……おぉ!」

 

アタッシュケースの中を見た紅夜から、押さえきれぬ興奮の声が漏れる。そして、その中に入っていた拳銃型の機械を手に取った。

 

「これが俺専用の特化型CADか……」

 

CADを明かりにかざすと、その黒を基調にした中に走る鮮やかな紅いラインが光を反射する。

 

「自分で設計したCADなのに、大げさ過ぎるだろう」

「設計した物と実物とでは全く違うんだよ」

 

苦笑しながら言ってきた達也に即座に反論する。

そう、これは紅夜が設計したCADだ。あまりにも暇だった紅夜はCADに手を出し、かなりハマってしまった。

その時に原作の内容から達也に進めてみたところ、原作通り才能を発揮して、それ以来魔法やCADについて話すことが多くなり、距離が近づいたというわけだ。

 

「少し試してみたいな。兄さん、こいつの中に何か魔法を入れてある?」

「ああ、一応お前の得意な加速系魔法を入れてある。それとも他に何か入れておくか?」

「いや、魔法は自分で入れておくから別にいいよ。じゃあ早速」

 

紅夜はCADを握ると想子サイオンを流し込む。そして想子(サイオン)に反応したCADから起動式を読み取り魔法演算領域内で魔法式を組み立てる――――前に魔法を中断した。

 

「さすが兄さん。いい仕事をするな。これならコンマ3秒もかからずに魔法が発動できそうだ」

 

術式を『視て』わかった結果に素直に賞賛する。

 

「それは魔法の発動に時間がかかる俺への当て付けか?」

「そんなんじゃないから!」

「冗談だ」

 

クックックと笑う達也を見てなんだか珍しいなぁ、なんて思う。多分何だかんだ言って、兄さんもCADが出来たのが嬉しいのだろうと紅夜も笑みを浮かべた。

 

「そういえば、そのCADの名前は決めてあるのか?」

「ああ、とは言っても今思いついたんだけど……」

 

黒と紅の怪しげな美しさを見せるCADを頭上に掲げる。

 

「【ダークネス・ブラッド】それがこいつの名前だ」

「【ダークネス・ブラッド】か。ずいぶんと物々しい名前だが、見た目にピッタリだな」

「だろ?」

 

紅夜は早く病気を直し、こいつを思いっきり使いたいなぁ、と【ダークネス・ブラッド】を握る手に力を込めた。

 

 

 

 

 




 
ありがとうございました。




それにしても、【ダークネス・ブラッド】

……黒歴史確定ですね



追記
ヒロインの決定に伴い後半を三人称にしました。少し読みにくいかもしれませんがご了承ください。



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