東方〜二人の白狼天狗〜   作:ふれんど

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今回も少々ながら残酷なところがはいります。
残酷な場面がお好みでない方はブラウザバックを推奨いたします。
そんなこと関係ないと言う人はどうぞ。


漆巻~能力の目覚め~

 椛が飛んでいった後、大天狗は柊の様子を見に行った。

「あやつなら、きっと乗り越えてくれるはずじゃ」

 ふすまを開けて、治療室の中に入り、柊の状態を見ようとした。しかし、部屋を出る時まで、布団にいたはずの柊が消えていた。いや、正確にいうと柊の休んでいた布団も消えていた。

「な……どうってる!? どうして柊が消えた……!?」

 さすがの事態に、大天狗も驚きを隠せない。

(な、なぜ柊だけでなく、布団も消えた……?)

 そこまで考えて、はっと気づく。

「柊が消えただけなら、柊が連れ去られた可能性もあった。だが、持っていく必要のない布団まで消えたということは……いろいろと可能性はあるが、一番高いのは、柊の能力……か。しかし、なぜ今……?」

 最後に、どうでもいい疑問が出たが、今は余計なことを考えている暇はないので、忘れることにした。

「さて……これが能力だったとすると、どんな能力が考えられる……?」

 そんなことを言って考えだすが、数十秒後、とんでもないことに気づいてしまう。

「待て……! もし、柊の能力が瞬間移動だとしたら……それはまずい! どこに居るかも分からない! しかも、今こんな状態の森に移動したとなると、下手をすれば死ぬかもしれん!」

 大天狗は焦り始める。

「とりあえず、山全体を回るか……? だが、それだと効率が悪すぎる……」

 固まってても仕方ないため、何か手がかりがないか、柊のいた場所に行く。しかし、向かった矢先、大天狗の足に何かぶつかった。

「っ! ……こんな場所に物なんておいてあったか……」

 言いながら下を見ると、そこには、また驚くものがあった。

「ひ、柊!?」

 ついさっきまで消えたと思っていた柊がいたのであった。

(今、また瞬間移動したというのは、都合がよすぎる。もしやこれは……透明化できる能力……?)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 椛は合流した仲間たちと戦っていた。

「おい犬走! 次の標的はどこだ!」

「十時の方角で、およそ四十メートルです!」

「分かった!」

 正確に敵の場所を特定して、仲間に伝える。

 椛が合流した後から格段に効率は上がり、そのエリアはものの数分で、そのエリアの敵を全滅にまで追い込んでいた。

「八時の方角! 百メートルで、恐らくあれが最後です!」

「よし!」

 仲間の一人が最後の敵を倒しに向かった

 

 はずだった。

 

 本当に一瞬の出来事だった。

 倒しに向かった仲間の首と胴体が、真っ二つに裂けたのだ。周りに血や臓器が飛び散る。

「「え……」」

 そこにいた天狗たちが静まり返り、呆然とする。

 異臭で現実に引き戻されると同時に、恐怖がこみ上げてくる。先程までとは違う殺気を感じた。

 

 ようやく一人が沈黙を破り、止まっていた時間が動き出した。

「くっ……クソ! お前ら逃げろ! 俺がこいつをひき止めている間に!」

 そう言いながら突っ込んでいった。

「ま、待てって! ここは一旦退こう! いくらお前でも……それは無理だ……!」

と、仲間の一人が言ったが、

「こんなの野放しにしておけないだろ! それに……死んじまった班員のためにも、こいつだけは絶対にやらなきゃいけねぇ……! だから、ここは俺一人に任せて早く逃げろ!」

「くっ……」

 その天狗はとまどっていたが、

「おい! はやくしろ!」

「わ、分かった……」

 渋々、承知するしかなかった。

 仕方なさそうに、全員の方を向く。

「時間を無駄には出来ない! 行くぞ!」

 全員で、その場から離れた。

「生きて戻ってこいよ……」




今回サブキャラが凄い主役っぽくて、本主人公の方々の出番が全然無かった気がしますが、きにしないでください!というより、気づいててもツッコまないで下さい!
読んでいただき、ありがとうございました。

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