東方〜二人の白狼天狗〜   作:ふれんど

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こまめこまめに作っていたら出すことができました。
今回は少し残酷な描写がはいります。苦手な方はブラウザバックを推奨します。

では始まります。


陸巻〜無力の闇〜

「くっ……なんでこんなに敵が多いの!?」

 家へ向う道には多くの妖怪がいた。

「あまりに数が多すぎる……早く大天狗様に報告しなければいけないのに……」

 先ほど、怪我を負ってしまった柊をかばいながら、次から次へと来る敵を切り倒す。そんな苦しい状況下に、椛はおかれていた。どう考えても、一対多数という、不利な状況だ。一人で自分と柊を守らなければいけないため、流石の椛でも体力が底をつき始めていた。

「はぁ……はぁ……まずい、増援を呼ばないと……流石に、辛い……」

 そう言った時だった。

「きゃあぁぁぁ!」

 後ろから悲鳴が聞こえた。別の妖怪が柊を狙ったのである。

「柊さん!」

 椛は急いで柊の所に向かう。

「柊さん!」

「いっ……あぁぁ……」

 椛が着いた時には、柊の腹部に、剣のようなものが深く突き刺さっており、血が大量に流れ出ていた。敵は、それを薙ぎ払うようにして、柊の腹部から抜いた。その時に、柊の腹部からは、さらに血が吹き出すように出て、内臓が見えるほどまでに、傷が開いた。

「うひゃひゃひゃ! 天狗の血も、程よい赤みでいい色をしているなぁ! もっとだ……!」

 敵の妖怪は、柊のそんな姿を見て笑っている。

 その妖怪の全ての行動が、椛の逆鱗に触れた。

「き……さ、まぁ!!」

 椛の剣が、その妖怪を切り刻む。

「貴様なんて殺してやる! この世から消え去ってしまえ!」

 椛の目は、憎しみと殺意のこもった目をしていた。

 その妖怪が完全に消滅した後、椛は柊に、今の段階で最も最善な応急処置を始めた。しかし、応急処置をしてる間にも敵はどんどん迫ってくる。

 「あともう少し……!」

 応急処置がもうすぐ終わりそうな時、柊が一瞬だけ動いた。

 椛はそのことに気がつく。

「柊さん! もう少し……! もう少しだけ耐えて下さい!」

 この時椛は、柊のことで頭がいっぱいで、周りが見えていなかった。しかし、柊の目には、朧気ながらも、椛のすぐ後ろにまで来ている敵の姿が見えていた。

 柊は、掠れた声で椛に言う。

「も……じ……さ、ん……にげ……」

「柊さん!? どうしたんですか!?」

 そこまで言った椛は、ようやく後ろにいる敵に気づいた。しかし、もうかわせるほどの時間はなかった。

 「あ……」

 椛が絶望を感じた時、ふいに横から押された。

 飛ばされながらも、押された方を見ると、柊さんがこちら側に倒れてきているのが見えた。

「ひい……ら、ぎ……さん……?」

 そう言いながら見えてしまった目の前の出来事に、椛は受け入れられずにいた。

 柊さんが、倒れて地面に着いた瞬間、柊さんの背中に、思い切り振り下ろされた棍棒が、直撃していた。骨の砕けた音が、頭の中に響いてくる。

 自分のせいで、柊さんがこんな目にあっている。自分が悪いことは分かっているが、そう考えただけで、自分が押しつぶされそうになる。でも、今はそんなこと言ってる場合ではない。椛は、今は柊さんを助けたい、その一心で、柊をこの場から連れて、最速で総会場へと向かった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 椛は、天狗総会場に着いたら、柊を医務室へ運び、治療してから、大天狗様に報告した。

 報告した後、椛はどうしても、自分を責めずにはいられなかった。

(なんで私は、柊さんを助けられなかったの……! 柊さんは私を庇って、あんな事になってしまった……だったら、私が……私が柊さんを庇って攻撃を受けていれば……! 一人の仲間を助けられない私なんて……こんなんじゃ、柊さんに合わせる顔なんてないよ……)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 椛の報告後、すぐに天狗達が呼び集められたが、既に応戦してる天狗もおり、集まった天狗の数は少なかった。

 大天狗様が、集まった天狗達に指示を出していく。

「二番部隊は一番部隊の援護じゃ! 哨戒班は……」

 しかし、大天狗様の言ってることは、椛の耳に全く入っていなかった。

 他の天狗が、全員指示場所に向かった後、椛は大天狗様に呼ばれた。

「椛、お主が辛いのは分かる……じゃがな、今ここでへこたれていても何も変わりはせんのじゃ。今わしらに出来ることはわしらの領域を守ること。領域を奪われて、お主が消えたら、柊も悲しむだろう。だからの、椛……今は目の前の事だけに集中するんじゃ。わしから柊には言っておくから、今は柊が起きるまで、この領域を守ってくれ。よいか? 椛、強くなると決めたのじゃろう? だったら、今度は同じような事が起きぬよう自分の仲間を守れるほどもっと強くなるのじゃ」

「……はい」

 その返事は小さいながらも、迷いのない真っ直ぐな返事であった。

 椛は決意を固め、自分の指示場所へと向かっていった。

「おぬしなら絶対に……」

 大天狗は、飛んで行く椛を見てそう呟いた。

 




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読んでくださりありがとうございました。

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