そして、途中から二人別々の視点で物語が進んでいきます。
感想くださった方、ありがとうございました。
それでは、始まります。
充分休んだからか、翌日の朝には、すっかり良くなっていた。
「あの……ほんとすみませんでした」
「いえ、いいんですよ。では、訓練を始めていきますが、始める前にこれを来てください」
そう言われて、包みを受け取った。
「これは……?」
「それはあなたが今後着て行く服です。おおかた任務で使うと思いますよ。それに、その服装だと動きにくいでしょうし」
そういえばそうだった。私は今の今まで、幻想郷に来る前の服で過ごしていた。言われるまで気が付かなかったが、今思うととても動きにくい。
この服を用意してくれた椛さんに、「ありがとうございます!」と、お礼を言って、包みの中の服を取り出し、着替える。
――着替え中――
「どうですか?」
「はい! 動きやすくて、とてもいいです!」
「それはよかったです。では、訓練を始めましょうか」
「は……」
私が返事を返すのと同時に、山のほうで大きな音がした。
「な、なに!?」
いきなりのことに慣れていない私が、焦りながらあたりを見回している時、椛さんはすぐに、目を凝らすようにして音がした方を見た。
「まずい……!」
椛さんの表情には焦りの色が見えた。
「柊さんはここにいてください!」
椛さんはそう言うと、剣と盾を持って音のした方へ向かっていった。
「あっ! も、椛さん!?」
私が呼びかけた時には、既に飛び立った後だった。私は言われた通り、待つ事にした。
家の外にいる者の気配にも気付かずに……。
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一方椛は、音のした所へと向かっていた。
椛はあの一瞬で、その時にやるべき事をしっかりと判断し、自分の能力で音のした地点を見ていたのであった。そのため、爆発した地点に真っ直ぐ向かう事が出来た。
「確かここら辺だったはず……」
椛が着いた時には既に、数名の天狗がいた。そばにいる仲間に何が起こったのか聞いてみる。
「何が起こったんですか?」
「いや、それがな……分からねぇんだ……」
「分からないとは?」
「爆発したってのは確かなのに、全くないんだよ」
「無い……何がですか?」
「痕跡だよ。爆発の痕跡が全くないんだ」
「痕跡がないですって? そんな事って……」
「そうだ、普通だと絶対ありえない事なんだ。爆発はたしかに起こった。それは山の中にいる妖怪達が、ほぼ全員見てるだろうよ。でも来てみたら痕跡なんてない。こんな状況だから何も分からねぇんだ……」
「そうですか……分かりました。ありがとうございます」
仲間と離れた後、椛は考えた。
(爆発が起こったのに痕跡が無い……でも、爆発したところは能力で見たからそれは確かな事実……)
いろんな仮定を考えてみるが、どれも答えにはたどり着かない。
「う~ん……」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
椛さんが出て行ってから、早くも一時間が経とうとしていた。
「大丈夫だよね……椛さん……」
待っている間、ずっと椛さんの事を心配していた。しかし、心配する中、いきなり扉を叩く音がしてきた。
「えっ……?」
聞き間違いかと思いつつ、耳を傾ける。すると、叩いている音がはっきりと聞こえてきた。誰かが外から扉を叩いている……。
(こんな時間に誰が……?)
不思議に思ったが、次第に扉を叩く音が大きくなっていく。
私の中の恐怖が膨れ上がり、足も震えだしていた。
(ここにいちゃ……だめだ!)
私は裏口に走りだしていた。その時、扉が勢いよく開いた。
扉を叩いていたものが入って来て、中を見渡す。そいつは、裏口が開いていることに気が付き、裏口から出て、私の事を追い始めた。
裏口から逃げるときに見えたもの、それは、この世のものとは思えない、黒いドロドロとした塊のようなものだった。
「はぁ……はぁ……なんなの! あれは!?」
見た途端寒気吐き気が止まらなかった。あんなものは見たことがない。
私は後ろを振り返らず、後ろから迫る恐怖に、泣きながら必死に逃げていた。
この時はまだ、これが異変だという事に誰も気が付いていなかった……。
今回もいかがでしたでしょうか。
今回から異変にしてみました。
ハラハラしてもらいたく、このようにしましたが、どうでしたでしょうか? ハラハラしなくても、ハラハラしても楽しんでいただけたのなら嬉しいです。
では、読んでいただき、ありがとうございました。
感想や意見など、いただけたら嬉しいです。