東方〜二人の白狼天狗〜   作:ふれんど

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今回は急展開にしてみたつもりです。
そして、途中から二人別々の視点で物語が進んでいきます。

感想くださった方、ありがとうございました。

それでは、始まります。


肆巻〜災厄の予兆〜

 充分休んだからか、翌日の朝には、すっかり良くなっていた。

「あの……ほんとすみませんでした」

「いえ、いいんですよ。では、訓練を始めていきますが、始める前にこれを来てください」

 そう言われて、包みを受け取った。

「これは……?」

「それはあなたが今後着て行く服です。おおかた任務で使うと思いますよ。それに、その服装だと動きにくいでしょうし」

 そういえばそうだった。私は今の今まで、幻想郷に来る前の服で過ごしていた。言われるまで気が付かなかったが、今思うととても動きにくい。

 この服を用意してくれた椛さんに、「ありがとうございます!」と、お礼を言って、包みの中の服を取り出し、着替える。

 

――着替え中――

 

「どうですか?」

「はい! 動きやすくて、とてもいいです!」

「それはよかったです。では、訓練を始めましょうか」

「は……」

 私が返事を返すのと同時に、山のほうで大きな音がした。

「な、なに!?」

 いきなりのことに慣れていない私が、焦りながらあたりを見回している時、椛さんはすぐに、目を凝らすようにして音がした方を見た。

「まずい……!」

 椛さんの表情には焦りの色が見えた。

「柊さんはここにいてください!」

 椛さんはそう言うと、剣と盾を持って音のした方へ向かっていった。

「あっ! も、椛さん!?」

 私が呼びかけた時には、既に飛び立った後だった。私は言われた通り、待つ事にした。

 家の外にいる者の気配にも気付かずに……。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 一方椛は、音のした所へと向かっていた。

 椛はあの一瞬で、その時にやるべき事をしっかりと判断し、自分の能力で音のした地点を見ていたのであった。そのため、爆発した地点に真っ直ぐ向かう事が出来た。

「確かここら辺だったはず……」

 椛が着いた時には既に、数名の天狗がいた。そばにいる仲間に何が起こったのか聞いてみる。

「何が起こったんですか?」

「いや、それがな……分からねぇんだ……」

「分からないとは?」

「爆発したってのは確かなのに、全くないんだよ」

「無い……何がですか?」

「痕跡だよ。爆発の痕跡が全くないんだ」

「痕跡がないですって? そんな事って……」

「そうだ、普通だと絶対ありえない事なんだ。爆発はたしかに起こった。それは山の中にいる妖怪達が、ほぼ全員見てるだろうよ。でも来てみたら痕跡なんてない。こんな状況だから何も分からねぇんだ……」

「そうですか……分かりました。ありがとうございます」

 仲間と離れた後、椛は考えた。

(爆発が起こったのに痕跡が無い……でも、爆発したところは能力で見たからそれは確かな事実……)

 いろんな仮定を考えてみるが、どれも答えにはたどり着かない。

「う~ん……」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 椛さんが出て行ってから、早くも一時間が経とうとしていた。

「大丈夫だよね……椛さん……」

 待っている間、ずっと椛さんの事を心配していた。しかし、心配する中、いきなり扉を叩く音がしてきた。

「えっ……?」

 聞き間違いかと思いつつ、耳を傾ける。すると、叩いている音がはっきりと聞こえてきた。誰かが外から扉を叩いている……。

(こんな時間に誰が……?)

 不思議に思ったが、次第に扉を叩く音が大きくなっていく。

 私の中の恐怖が膨れ上がり、足も震えだしていた。

(ここにいちゃ……だめだ!)

 私は裏口に走りだしていた。その時、扉が勢いよく開いた。

 扉を叩いていたものが入って来て、中を見渡す。そいつは、裏口が開いていることに気が付き、裏口から出て、私の事を追い始めた。

 裏口から逃げるときに見えたもの、それは、この世のものとは思えない、黒いドロドロとした塊のようなものだった。

「はぁ……はぁ……なんなの! あれは!?」

 見た途端寒気吐き気が止まらなかった。あんなものは見たことがない。

 私は後ろを振り返らず、後ろから迫る恐怖に、泣きながら必死に逃げていた。

 

 この時はまだ、これが異変だという事に誰も気が付いていなかった……。

 

 

 

 




今回もいかがでしたでしょうか。
今回から異変にしてみました。
ハラハラしてもらいたく、このようにしましたが、どうでしたでしょうか? ハラハラしなくても、ハラハラしても楽しんでいただけたのなら嬉しいです。
では、読んでいただき、ありがとうございました。
感想や意見など、いただけたら嬉しいです。

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