東方〜二人の白狼天狗〜   作:ふれんど

41 / 42
遅れてしまい、すみません。
不定期なので許してください。
ではどうぞ



参拾捌巻~運命~

「わかったわ。永琳、お願い」

「承ったわ」

 そう言うと、永琳は柊に近づき、瓶に入った液体を柊の口の中に流し込んだ。その刹那、柊の体がほのかに光りだした。

「あっ」

 いち早く変化に気づいた椛が声を上げた。

「柊さんの耳が……」

 光が、柊の上に集まっていく。姿が人間へと戻ろうとしていた。

「……っ」

 双葉は何も言わなかった。

 やがて光は収束し、ゆっくりと天に向かって消えていった。

 

 

 

 

 

 

「う……うぅん……」

 あれ、ここは……?

「柊さん!」

 呼ばれた方に顔を向けると双葉ちゃんと椛さんがいた。

「あれ、私、どうして……」

 だめだ、頭がぼーっとしてて何も考えられない。

「良かった! 生き返った!」

 生き返った? というより、なぜかいつもより声が小さく聞こえる。

「あの、生き返ったってどういう……」

「全く、無茶するからよ」

「紫……なんでここに」

「あなたは死んだのよ、一回」

「え、死んだって……じゃあなんでいきてるの……?」

「それは永琳の薬のおかげよ。あなたの体、もとは人間なんだから、あんな連戦で妖力使ってたらその元の霊も消えちゃうわよ」

「消えちゃうって……」

 急いで頭に手をやる。

 そこには、いつもあった耳は無くなっていた。

「じゃあ私は今……」

「そうよ、人間に戻ってしまったの」

 過去の私なら喜んでいたのだろう。ただ、今の私にはショックとしか言えなかった。

 もしかして、もう一緒に闘えないのだろうか。そんなことが頭をよこぎった。

「とにかく、回復したてなのだから今日は休みなさい」

 そう言うと、紫は出ていった。

 あれ、急に眠けが……。

 

 

 

 

 

 

「柊ちゃん? あれ、寝ちゃったのか。じゃあ私達もとりあえず今日のところは帰ろうか」

「そうですね、柊さんの妨げになってはいけませんし」

 そう言って、全員帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「おい、犬走」

 呼ばれた先には、大天狗がいた。

「なんでしょう大天狗様」

「柊が人間に戻ったということは真なのか?」

「そうですが、それをどこで?」

「つい先程、八雲から聞いたのじゃ。まぁそれはどうでもいいのだが、柊が人間になった今、一つ問題が出来てしまった」

 一呼吸おいて、大天狗は言った。

「犬走、天狗界の掟は知っておるな?」

「はい、存じています」

「山は天狗のテリトリー。だから、たとえ共に闘えど、種族が違えば山から追い出さねばならぬ」

「……はい、分かっています。ですが……」

「これは今まで守られてきた伝統じゃ。それを一人の欲望のために崩さなければいけないのか? またこれは、柊の為でもある。人間という身で山にいたとしても、山には人食い妖怪などたくさんおる。ろくに外出などできなくなるだろう。そうすれば、ずっと屋内にいることになる。いや、もしかしたら家を破壊してまで喰いに来るやつも出てくるだろう。お主はそれらから柊を守れるというのか?」

「それは……」

「しかたがないのだ」

「でも、とりあえずは今日は!」

「今日はしょうがないから、別によい。ただ……明後日までには、山への未練を切らせ、柊を人里へといかせるのだ。わかったな?」

「…………はい。わかりました」

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。