不定期なので許してください。
ではどうぞ
「わかったわ。永琳、お願い」
「承ったわ」
そう言うと、永琳は柊に近づき、瓶に入った液体を柊の口の中に流し込んだ。その刹那、柊の体がほのかに光りだした。
「あっ」
いち早く変化に気づいた椛が声を上げた。
「柊さんの耳が……」
光が、柊の上に集まっていく。姿が人間へと戻ろうとしていた。
「……っ」
双葉は何も言わなかった。
やがて光は収束し、ゆっくりと天に向かって消えていった。
「う……うぅん……」
あれ、ここは……?
「柊さん!」
呼ばれた方に顔を向けると双葉ちゃんと椛さんがいた。
「あれ、私、どうして……」
だめだ、頭がぼーっとしてて何も考えられない。
「良かった! 生き返った!」
生き返った? というより、なぜかいつもより声が小さく聞こえる。
「あの、生き返ったってどういう……」
「全く、無茶するからよ」
「紫……なんでここに」
「あなたは死んだのよ、一回」
「え、死んだって……じゃあなんでいきてるの……?」
「それは永琳の薬のおかげよ。あなたの体、もとは人間なんだから、あんな連戦で妖力使ってたらその元の霊も消えちゃうわよ」
「消えちゃうって……」
急いで頭に手をやる。
そこには、いつもあった耳は無くなっていた。
「じゃあ私は今……」
「そうよ、人間に戻ってしまったの」
過去の私なら喜んでいたのだろう。ただ、今の私にはショックとしか言えなかった。
もしかして、もう一緒に闘えないのだろうか。そんなことが頭をよこぎった。
「とにかく、回復したてなのだから今日は休みなさい」
そう言うと、紫は出ていった。
あれ、急に眠けが……。
「柊ちゃん? あれ、寝ちゃったのか。じゃあ私達もとりあえず今日のところは帰ろうか」
「そうですね、柊さんの妨げになってはいけませんし」
そう言って、全員帰っていった。
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「おい、犬走」
呼ばれた先には、大天狗がいた。
「なんでしょう大天狗様」
「柊が人間に戻ったということは真なのか?」
「そうですが、それをどこで?」
「つい先程、八雲から聞いたのじゃ。まぁそれはどうでもいいのだが、柊が人間になった今、一つ問題が出来てしまった」
一呼吸おいて、大天狗は言った。
「犬走、天狗界の掟は知っておるな?」
「はい、存じています」
「山は天狗のテリトリー。だから、たとえ共に闘えど、種族が違えば山から追い出さねばならぬ」
「……はい、分かっています。ですが……」
「これは今まで守られてきた伝統じゃ。それを一人の欲望のために崩さなければいけないのか? またこれは、柊の為でもある。人間という身で山にいたとしても、山には人食い妖怪などたくさんおる。ろくに外出などできなくなるだろう。そうすれば、ずっと屋内にいることになる。いや、もしかしたら家を破壊してまで喰いに来るやつも出てくるだろう。お主はそれらから柊を守れるというのか?」
「それは……」
「しかたがないのだ」
「でも、とりあえずは今日は!」
「今日はしょうがないから、別によい。ただ……明後日までには、山への未練を切らせ、柊を人里へといかせるのだ。わかったな?」
「…………はい。わかりました」