東方〜二人の白狼天狗〜   作:ふれんど

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今回、残酷な描写が含まれます。
苦手な方はブラウザバック推奨です。(感じ方は個人によりますが)




それでもいいというかたは、どうぞ



参拾参巻~疑い~

「もういいわ……。お前ら仲良くあの世に送ってやるよ!」

 椛と双葉は身構える。

「『ファントム・サブスタンス』!!」

 そう唱えた幻の周りに投げナイフが並び始めた。

「何をする気なんでしょうか?」

「まぁいいよ! 今まで幻覚しか使ってないから、どうせあれも幻覚よ! さっさと攻めてしまえば終わり!」

「待ってください! まだそれが幻覚とは確認していないのに! 危険です!」

 双葉が幻に向かっていくと、幻は投げナイフを双葉に向かって投げる。

「あんたもマヌケね! 敵の前で幻覚を創り出すなんて! こっちはもうわかってるn……」

 鈍い音が脳内に響く。

「えっ……?」

 一瞬何が起こったのか理解できなかった。

「な、んで……?」

 幻覚だと思い込んでいたナイフが双葉の左足に刺さっていた。

「え、う、うそ……。あ、あぁ……」

 足の力が抜け、同時に体の力も抜けていく。そしてようやく、脳が何が起こったのかを理解して、体が痛みを感じ始める。

「いっ、あぁぁ…………!」

「双葉さん!」

 もう一本のナイフが飛んできて、双葉の右腕を直撃する。

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」

 痛みに叫んだ双葉が落ちてくる。

 椛は何とかして受け止めようと急いで落下点に移動する。しかし、あともう少しというところで見えない壁に激突した。

「なんで壁が……!」

 そして双葉が落ちてくる。

「双葉さん!!」

「う、あぁ……」

 何とかまだ意識があるようで一安心したいが、そんなことをしている暇などない。

 椛は何とかして壁を壊そうとする。

 しかし、攻撃が通っているような手ごたえはなく、びくともしない。剣の切れ味が落ちるばかりで、だいぶ刃こぼれもしてきていた。

「双葉さん! 大丈夫ですか!」

 声なら届くかと思い、大声で呼びかけてみるも、音すらも遮断されているようだった。

 助けたいのにどうすることもできないまま、壁抜こうから双葉を見ていた時、いつの間にか、幻が双葉の前にいた。

「幻!? まずい! 双葉さん!」

 その呼びかけも虚しく、幻の行動をただ眺めていることだけしかできなかった。

 

 

 

 ただ、その幻の起こした行動に、椛は目を見開いていた。そして、これ以上とない怒りを見せるほどの行動だった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 双葉はいたみをこらえ、なんとかして足のナイフを抜こうとしていた。とにかく退くことが優先だと思っていたのだろう。

 少しずつ少しずつ抜いていた。

 

 

 が、

 

 

 はっとして顔を上げると、幻が何食わぬ顔でたっていた。

「なっ! 来るな!」

 そんなことを言うが、幻がそんなことを聞いてくれるわけがない。

 ぐいぐいと近づいてきて、双葉に近づくとこう言った。

「抜くのに困ってるのなら、僕が引き抜いてあげようか?」

 双葉の背筋に悪寒がはしる。

(何を考えてるの……やめて、そんなことしたら……!)

 幻が双葉の左足に刺さっているナイフに手をかける。

「や、やだ……。やめて、お願い……お願いだから……それはやめて……!」

 どうなるのかを想像するだけで、涙が出てくる。

 痛みが怖いのももちろん。こんなやつに弄ばれている未来がどうなるのかの恐怖もあった。

 幻のナイフを握る力が強くなる。

「やだっやだっ! やめてお願い、お願いだから! いやっ、いやっ……いやぁぁぁぁ!」

 幻は一度ぐっとナイフを押し込むと、一気に引き抜いた。

 双葉は痛みのあまりに、悲鳴を上げることなく失神してしまった。

「やっぱりいいね。恐怖に歪む顔は。しかも、ちょうど僕の一番の能力が効かなかったやつだから都合がいい」

 椛のほうに向き直る。

「確かにこの女が言っていたこともあたりだ。僕がさっき発動した技は、幻覚を本物にする技。細かく言えば、僕が幻覚で創り出したものを、僕が本物だと思えば本物になるし、幻覚だと思えば幻覚になる。さて……」

 

 

「次はお前だ」

 

 

 

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(幻の能力がまだ他の人にも続いているということはまだ幻は生きている。だったらこれ以上被害を増やさないためにも何とかしなきゃ!)

 とは言ったものの、どれくらいの時間が経ったのか、今山がどういう状況なのかもわからない。ともかく、椛さんと双葉ちゃんを探すことにした。

「そういえば、どうして私医務室にいたんだろう」

 その他不思議に思ったことについて考えながら椛さんの家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に着いたとき、あまりの惨状に私は絶句した。玄関はほとんど原型をとどめておらず、扉が離れたところに落ちている。家の中は物というより、家の部品が散らばっていたり、柱が折れて倒れていた。

「なっ、なんでこんなことに……?」

 家の現状に呆気に取られるが、はっと気づく。

「椛さんと双葉ちゃんは!?」

 もし家にいて被害をを受けていったらと思うと不安になってきて、家の中を探し始める。しかし、その心配も杞憂に終わり、幸い椛と双葉はその時に家にいなかったようだ。

 ほっと胸を撫で下ろす。

「でも、どこにいるんだろう。とにかく急がなきゃ」

 そのとき、遠くの方で大きな音が聞こえた。




今回もいかがでしたでしょうか。
楽しんでいただけたのなら幸いです。


感想などに返信はできませんが、感想をくださったり、評価するほどの作品だと思って、評価していただけると大変喜びます。


それでは、今回も読んでいただきありがとうございました。

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