「くっ……強い……!」
二対一で戦っているはずなのに、一人とは思えないほどの強さで椛と双葉の相手をしている。
「その程度か! それで僕を倒そうなんざ百年早いね!」
幻は殺傷弾を雨のように降らせてくる。
「双葉さん、これではだめです。一度範囲外に出ましょう!」
二人は殺傷弾の降る範囲外に移動をした。
「あいつに体力の限界はないの!? さっきからあんなに降らせてくるのに!」
「……私の考えですが恐らく、あれの全部が全部本物とは限らないはずです」
「どういうこと? 椛ちゃん」
「普通、あんなに殺傷弾を降らせていれば体力の消耗が激しいのは勿論、山への被害もも大きいはずですが、先ほどから見ていても被害が小さすぎます」
「なるほど! じゃあとりあえず斬っていけば本物か幻覚か見分けがつくんだ」
「そうなんですが、奴は近づかれたりなどをされた時、すなわち向こう側にとってチャンスだと思った時になったら必ず実弾を使ってくるはずです。そこには注意をしなければいけません」
「そうなったら、二方向から攻めれば少しは迷わせることもできるかもしれないね」
「気を惹きつけられればいいのですが……もう一つ疑うべきことが……」
そこで二人の目の前に実弾が落ちてきたが、うまくかわして別の場所へ移動する。
「あまり時間がないですね。それで、もう一つ疑うことは幻本体です。幻覚弾を打ち出すだけの幻を作っておいて、そこに少しずつ実弾を混ぜているということも考えられます」
「ん……? どういうこと?」
「幻自体が幻覚で、幻覚の弾を撃ち出していて、そこに本物の幻が少しずつ実弾を紛れさせているかもしれないということです」
「それだと幻がどこにいるかわからないのか」
「そうです、それが厄介なんです。どうにかしてどちらの線が濃厚かわかればいいんですが」
「まぁ、とにかく殴ればわかるんでしょ? 私には能力が効かないみたいだし」
「……ふふっ。そうですね、やりましょうか」
双葉と椛は互いに逆方向を向き、走り出す。そして、幻を二方向から襲える位置に来ると、二人は息を合わせて幻に向かって飛ぶ。
「「はぁぁぁ!!」」
「それなら僕が迷うって寸法かい?」
そう言うと幻は両方の攻撃を受け止めた。
「そっ……」
「そんな……」
「言っただろう、百年早いって!」
幻は二人を地面に向けて振り下ろす。地面に叩きつけられた衝撃で大量の砂埃が舞う。
「う、ぐっ……強い……」
「どこからそんな怪力が……」
幻が二人の前に下りてくる。
「真っ向から僕を倒そうなんてやめたほうがいい。絶対に倒せない」
「願ったり叶ったりですね。わざわざ来てくれるなんて!」
椛のその言葉で、突風が巻き起こる。
「これは、砂か! クソッ、視界が!」
さきほど舞った砂埃を椛が突風で巻き上げ、幻の視界を奪ったのだ。
「倒せるか倒せないなんて、まだ決まってないのに決め付けないでください。誰かに、先を決められてる未来なんて嫌です。私の未来は私で決める……あなたが決めるものじゃない! 私は、いや……私たちは貴様を倒す!」
最後よくある言葉だわーとか言わない!言っちゃだめ!
今回も読んでいただきありがとうございました。