いろんなことがありましたが、ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
それではどうぞ。
幻の能力がどんなものなのか予想がついた椛と双葉は、幻を探し始める。
「今度こそ、絶対に……!」
「倒しましょう!」
「見つけた!」
百メートルほど先の所に幻がいた。双葉が奇襲をかけんとばかりに近づこうとしている。それに気づいた椛は双葉を止める。
「待って下さい! あれが創りだされた幻覚の可能性があります。ここは一旦見きわめてから攻めましょう」
椛の言葉に双葉は我にかえる。感情任せになっていたようだ。
「そうだね、一回様子を見よう。ありがとう、椛ちゃん」
幻かどうかはまだ判断は出来ないが、その周りやそのずっと後ろの方向も見た。しかし、幻と思われるような姿はなかった。
「多分あれは本物だろうね」
「恐らくそうでしょう。ですが何か……」
「どうかした?」
「何か腑に落ちない気がして……」
「いやでも、椛ちゃんの能力でくまなくあの周りを見たから大丈夫だと思うよ!」
「そうでしょうか」
「うん。そうだよ! だから早く柊ちゃんを救わなきゃ」
そう言い終えた双葉が飛び立とうとした瞬間だった。
後方から殺意のこもった攻撃が飛んできた。
「双葉さん!」
椛が素早く反応し、攻撃を受け止める。
「ぐっ……!」
「も、椛ちゃん!」
咄嗟のことで、全ての攻撃を防ぎきれずに受けてしまったようだった。
「止血して処置しなきゃ!」
止血しようとした時に椛が、“椛と双葉がいたところの後ろの方”を睨んで言った。
「……やはりそこにいたんですね、幻」
椛が睨んだ先には幻がいた。
「そうだよ。よく気づいたね。気配は消していたつもりだったんだけどな」
「あんな殺意のこもった攻撃されたらそりゃあ気づきますよ」
「そんなこと言っても説得力ないし、そもそも自分達の周りに不注意すぎるね」
「やはり裏をとられていたのは私達の方でしたか」
「それで何? 僕に何の用だい?」
「あんたの能力でやったこと、全部戻しなさい!」
双葉は割って入って言う。
しかし幻は舌を出してバカにしたように言う。
「や~だね~」
だが、椛と双葉は了承してくれないことなど期待はしていなかった。
「それならば、無理にでも……」
「力づくで……」
「倒す!!」
「倒します!!」
「いいねぇ! 退屈な僕を楽しませてくれよ!」
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お母さんとお父さんが死んでいくところを思い出すと胸が苦しい。何日も泣いていた。過去を見て、自分がどんなだったのかも分かった。でも、戻ろうとしても何かが私を引き止める。いや、私が過去から離れるのを拒んでいるのか、または両親を忘れてしまうことを恐れているのだろうか。どちらかは分からないが、なんにせよ心が苦しい……。
そう思っていても過去は繰り返される。また同じ景色を見るとなると、それでさえも精神が滅入ってしまいそうだ。
だが、私の思考なんてお構いなしに過去は始まる。
けれども、今回は何かが違った。私は変化に気づき、過去をよく見てみる。
出された景色は、葬式だった。
読んでくださりありがとうございました。
なかなか忙しいですが、これからも頑張らせていただきます。
それではまた次回に。