今回から、また今まで通りにやっていけたらなと思っています。
では、久しぶりに
どうぞ
――椛の家――
「柊ちゃん……」
双葉は、どうにかして柊を元に戻せないかをずっと考えていた。
だが、なぜこうなっているのか、この状態はどんなものなのかの情報が何も無いため、方法なんて見つかるわけもなかった。
「やっぱり私のせいだ……」
双葉が自分を責め始めた時だった。
家の玄関の辺りで爆発音がした。
「!?」
双葉は柊をなるべく安全なところに連れて行く。
幸い、玄関からの位置は遠かったため、破片などが飛んで来るようなことはなかった。
双葉は玄関へと向かう。
立ち込める砂埃の中に人影があった。
ゆっくりとこちらに来ている。
「おっじゃまっしま~す!」
そう言って砂埃の中から出てきたのは、一人の妖怪だった。
足を止めずに入ってくるが、入った時には既に、目の前に双葉が立っていた。
その妖怪は双葉に気づいたようだ。
「あれっ? この家の中に妖怪がいたんだぁ~」
その妖怪は、双葉を見据えてそう言った。
「あなた何者?」
双葉は率直に聞く。
「僕? 僕はねぇ、夢宮 幻っていうんだ! でもねぇ、さっきから天狗達に名前を言ってるんだけどね、誰も覚えてくれないんだよ。困っちゃうよね!」
幻というやつはそう言った。
双葉は、今の幻の言葉の中で、気になったことを聞いた。
「あなたさっき、天狗達に名前を言ってるって言ってたけど、なんのために?」
幻は惜しみなく話しだす。
「いやぁ、実はね、今までいろんな妖怪にもやってきたんだけど、今度は天狗が壊れるのを見たくなってね。壊すついでに名前を教えてるんだよ。やっぱり思った通り、天狗は一味違ったね。最初はねぇ、確か白狼天狗のお姉さんでしょ。次はねぇ……」
双葉の耳が反応した。
今の、白狼天狗のお姉さんは柊のことで、こいつが柊ちゃんをあんな目に合わせたんだと直感で感じた。
双葉の中で、殺意が沸き起こる。
今すぐにでも殺りたい。双葉には、その頭しかなかった。
こんなに自慢気に話してきて、尚且、天狗も倒してきたということもあるから、腕にはよほど自信があるように見える。
だが、双葉は感じていた。
この妖怪には、まやかしの強さしかないことが。
双葉には、幻が能力だけに頼っているように見えていた。
幻は、まだ楽しそうに話している。
双葉は、殺気を悟られぬように幻を呼ぶ。
「ねぇ……」
幻は呼ばれたことに気が付き、話をやめた。
「ん? なn……」
双葉は、幻が話をやめ、こっちを向いた瞬間に思いっきり殴り飛ばした。
幻が家の外まで吹き飛ばされる。
その勢いのまま、大木に全身をうった。
「やっぱり……」
双葉はつぶやく。
「強い妖怪なら、少しは衝撃を和らげてダメージを減らすはずなのに、あいつは何もしようとしなかった。やっぱり能力が少し強いだけね」
双葉は幻が飛ばされたところに向かう。
双葉の今の行動には、ちゃんと理由があった。
一つは、今言ったように、相手の実力を知るため。
そして何より、もう一つの理由のほうが大切だった。
もう一つは、柊からこいつを遠ざけるためだった。
今、家の中で一人という状態も危ないが、あのままあの場所で戦っていても、その方が危険性が高いと判断したからであった。流れ弾にあたってしまうかもしれないし、見つかれば人質にとられてしまう可能性もあったからだ。
双葉が幻のところへついた時、驚くべきことが起こっていた。
幻が既に立ち上がっていたのだった。
「あ! お姉さんなかなか凄い力持ってるね! でも、いきなりでびっくりしちゃったよ!」
幻は笑いながら話してきた。
(そんな……嘘でしょ!? 全力とは行かないけど、八割ほどの力だったのに無傷だなんて……!)
ここで双葉は気づく。いや、気づかされた。
(避けられなかったから喰らったんじゃない……避ける必要がなかったから避けなかったのか……! 試していたのは私じゃなくて、あいつだったんだ……!)
「白狼天狗のお姉さんと戦ったけど、やっぱりまだ君のほうが少しは暇が潰せそうだよ! しっかし、あのお姉さんはほんとマヌケだったなぁ~」
幻は思い出し笑いをしている。
その言動が双葉を完全に怒らせた。
「あんたを……絶対に許さない……ッ!」
幻はそれを見て楽しみ始める。
「え~? 明らかに見た目がか弱そ~な君が、どうするっていうの? ねぇねぇ、どうするのぉ?」
幻は挑発をしてくる。
だが双葉は、自分のことよりも、柊を馬鹿にされたことに怒っていたため、幻の言葉など、耳に入っていなかった。
「絶対に……殺す……!」
今回は間がかなり空いてしまった久しぶりの投稿、いかがでしたでしょうか。
ここからしばらくですね、双葉と幻の戦い話に入る予定です。
でも中盤から終盤にかけて、本家のキャラはちゃんと出しますからね?
もしかしたら長くして一話でおわるかもしれませんね。
というわけで、次回からは双葉と幻が激突します!
それでは、今回も読んでくださり、ありがとうございました!