では弐拾参巻、どうぞ。
「クソッ! どこにいやがる! 犬走、見つからねぇか?」
「すみません! 先ほどから各方向を探しているのですが、見つかりません!」
椛のいる哨戒班は、山全体を移動しながら探していた。
だが、手がかりすら何もつかめておらず、全く進展がないまま、一時間が経とうとしていた。
「こんなに見つからないことなんてあるのか!? もう山は一通り見たぞ!?」
移動しながら探していると、目の前に弾幕が張られていた。
班員がとっさに声をかける。
「班長!!」
「だぁ~! もうめんどくせぇな!」
巻き起こした風で弾幕を消す。
しかし、また弾幕を張られる。
「かかれ! 今こそ天狗を潰す時だ!」
天狗に不満を持っている妖怪達が騒ぎを聞き、天狗を潰そうと襲い掛かってくる。
「チッ……雑魚共が……てめぇらなんぞにかまってる暇なんてねぇんだよ!」
先程と同様に弾幕を消し、指示を出す。
「離れすぎずに、何人かまとめて相手してやれ! 天狗に逆らったことを後悔させてやれ!」
「はいっ!!」
それを聞いた班員達は、敵の中に突っ込んでいく。
天狗一人一人の力は強いため、妖怪達は蹴散らされていく。
だがしかし、数が違った。
一人一人は強くとも、さすがに一度に相手にできる数には限界がある。
「チッ……クソッ! 数が多すぎた!」
「鴉丸さん! このままだと数で押し切られます!」
勿論、逃げるという選択肢はだれでも持っている。
だが、天狗にはプライドというものがある。こんな下級妖怪なんぞに背を向けて逃げてもいいのか。
プライドが許さなかった。
逃げていいはずがない。
逃げたとしたら、それはこの下級妖怪共に恐れをなしたことと一緒である。だから、決して逃げるわけにはいかなかったのだ。
自分たちのプライドを傷つけないために。
「班員全員に告ぐ! 押し切られないように、死ぬ気でかかれ! そして互いに助け合いながら戦え!! こんな雑魚共なんかに負けるんじゃねぇ!!」
「はっ!」
各々がスペルカードを使い、敵を怯ませながら剣で斬り倒していく。
ただただ斬り続ける。
「まだまだ続けろ!」
しかし、次第に体力も底をつき始め、集中力も切れていく。
「あっ……!」
一人が剣を落としてしまった。
すぐに剣を拾おうとするが、敵に押さえつけられ、上に乗られる。
どけようとするが、首を絞められる。
「ッ……!」
隊長がこれに気づく。
「まずい! 誰か助けに行けねぇか!?」
聞いてはみるが、やはり自分たちの敵の相手をすることで精一杯のようだった。
「くっ……!」
だんだんと、どかそうとする力が弱まっていく。
「クソッ……! 何とかならねぇのかよ!?」
しかし、叫んだところで現状は変わらない。
「もう少し、もう少しもってくれ! 頼む!」
首を絞められている仲間に聞こえるように言うと、可能な限り敵を離し、助けに向かう。
「そこからどけぇ!!」
首をはねようと剣を振るが、
鈍い金属音がなり、剣が跳ね返される。
敵の仲間が剣で攻撃を防いだのだった。
「邪魔するんじゃねぇ!」
攻撃をするが、防がれる。
「時間がねぇ……もう少しだ! 頼む! もう少し耐えてくれ……!」
しかし、限界が近いようだった。
手から力が抜けていっていた。
(クソッ……! 俺は班員を守ることすらもできねぇのか……!)
ただ手が地面につくことを眺めることしかできなかった。
敵の首を絞めていた手が離れた。
(クソッ! 俺のせいで……! 俺のせいで……!)
そう思っていたとき、首を絞めていた敵が吹き飛ばされ、鴉丸の前にいた敵も吹き飛んだ。
「なんだ!?」
そこには、先程死んだと思っていた班員が立っていた。
「お前……! 生きていたのか!」
「隊長、忘れましたか? あたしの得意技は演技ですよ。隊長までひっかからないでください」
思ってみれば、あの場から助かるには死んだフリをするしかなかった。
あの状況で咄嗟に判断をし、行動にうつせるとは凄いと思う。
しかしフリでも、やけに時間がリアルすぎて、本気で死んでしまったんだと信じてしまっていた。
「まぁ、お前が無事で本当によかった。じゃあ、このまままだいけるか?」
「えぇ、いけますよ」
「じゃあこの辺りは任せたぞ」
鴉丸も、持ち場に戻り、敵を倒していく。
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天狗が総会場に集まっている頃、幻が家を見つけた。
その家はまさに今、あの二人がいる家だった……。
はいどうも。
今回もいかがでしたでしょうか。
前回宣言した通り、少し長めに書いてみました。
長く感じましたかね?
もうすぐ11月です。
だんだんと寒くなります。体調管理にはしっかり気を付けて、これからも頑張っていきたいと思います。
では、今回も読んでくださり、ありがとうございました。