東方〜二人の白狼天狗〜   作:ふれんど

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だいぶ遅くなってしまいました!申し訳ないです!
風邪をひいてしまって、作業できない日々があったので…楽しみにしてた方、いらっしゃったら、本当にすみませんでした。


今回もいろんなシーンが入ります。本格的なガールズラブ展開はないですが、もうちょっと進んだら行きそうだな~というところがあります。(ですが、ただの会話だと思います)
そして、新キャラも出てきます。
そして、今回は残酷な描写がはいります。
苦手なかたはブラウザバックを推奨します。
それでもいいかたは、


どうぞ!



拾玖巻~心の箱の知らない事実~

「んっ……」

 窓から朝日が差し込んでいる。

 私は体を起こす。

「ふわぁぁぁ……ん~!」

 大きく伸び、台所へと向かう。

「あれ、双葉ちゃんがいないな……どこ行っちゃったんだろう」

「双葉ちゃ~ん!!」

 家の中を探してみるが、どこにもいない。

「どうしちゃったんだろう……」

 私が心配していると、

「たっだいま~!」

 聞き覚えのある元気な声が玄関から聞こえてきた。

「双葉ちゃん! どこ行ってたの!? 心配したんだよ!?」

 双葉ちゃんのいる玄関へと向かう。

「ごめんごめん! ちょっと人里に買い物しに行って……て……」

 靴を脱いで上がろうとしていた双葉ちゃんが、急に動きを止めた。

「へぇ~人里なんてあったんだ……って双葉ちゃん、どうしたの?」

「柊ちゃん、もしかして……ついに……」

「え? な、なに……?」

「まだ出会ってそんなに経ってないけど……柊ちゃんって意外と大胆だね……!」

 双葉ちゃんが照れる仕草をする。

「え、ど、どういうこと?」

「だってそんな格好してるから、準備はできてるんでしょ……?」

 双葉ちゃんに言われて気が付く。

 私の片方の肩はあらわになっており、胸の部分ははだけて、裸足だった。

「ねぇねぇ」

「い、いや、ちがっ、これは……」

「……いいんだよね?」

 双葉ちゃんが私に詰め寄る。

「だ、だめだってばぁぁぁぁぁ!!」

 

 

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「で、食材とか買ってきたんだけど」

 双葉ちゃんが袋から買ってきたものを取り出す。

「いった~い。別に本気で言ったんじゃないのに」

「いやあれ絶対本気でしょ」

 

 

 先ほどの騒動は私が正当防衛でやってしまったビンタによって、その場はおさまった。

 勿論その後、私のお説教があったのは言うまでもない。

 

「って、さっきも言ったけど、人里なんてあったんだ」

「え? 知らなかったの?」

「だって私、山から出たことないよ?」

「えぇぇぇ!? そうだったの!?」

「う、うん」

「じゃあさ、じゃあさ! 行ってきなよ!」

「へ?」

「だから、行ってきなって! 人里! 楽しいし」

「え……で、でも……」

「大丈夫だって! これで好きなものでも買ってきなよ! 留守番は私がしておくからさ!」

「じゃ、じゃあ……行ってこようかな」

「よしきた! このまま真っ直ぐ行った所にあるから!」

「分かった。……じゃあ、留守番頼んだよ?」

「任せといてよ!」

「じゃあ、行ってくるね」

 私はそう言うと人里に向かった。

 

 

 双葉は、柊が出て行ったのを確認すると、

「楽しめるといいな。外の世界に。それにしても、ふわぁぁぁ……眠い……」

 この前の疲れが残っているのか、双葉は眠ってしまった。

 

 

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「あ~あ、暇だなぁ~……面白そうな事起きないかなぁ……」

 一人の妖怪はそう言った。

「でもまぁ、起きないなら自分で起こせばいいか。今までもそうだったし。てか、妖怪の山に行けば天狗がいるって聞いたけど……全然いないし……」

 山の中を歩きつづける。

「ん? あれってもしかして天狗?」

 その妖怪の視線の先には、一人の白狼天狗がいた。

「やっと、み~つけた。さて、どんな風に楽しませてくれるかな?」

 その妖怪は下準備をし、天狗に攻撃を仕掛けた。

 

 

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「このまま真っ直ぐだよね……」

 柊は歩いて人里に向かっていた。

「そんなに遠くないって聞いたけど……」

 そんなことを考えながら歩いていると、近くの草むらから音がした。

 急な音に柊は反応して身構える。

 身構えた後、音のしたほうから針が飛んできた。柊はそれを難なく避ける。

「だれっ!」

「いや~悪いね。ちょっと話がしたくってさ」

 針が飛んできた辺りから出てきたのは、青髪で見た目が今で言う中学生ぐらいの身長の男だった。

「話したいじゃないでしょ、理由は。なんで攻撃してきたの」

 警戒しながら聞く。

「バレちゃったか。仕方ない。いや~あのね~、最近そんじょそこらの妖怪だと物足りなくって飽きてきたからさ。で、そんな時、妖怪の山には天狗がいっぱいいるって聞いてね。プライドの高い天狗だとどうなるのかなって思って。あ、自己紹介まだだったね! 僕は夢宮 幻(ゆめみや げん)って言うんだ! 覚えられたら覚えてよ! で、お姉さん、名前は?」

「言うわけないにきまってるでしょ。あなたの話を聞いていたけど、結局どうしたいの? 戦いたいだけなの?」

「戦う? とんでもない。そんなことしないよ」

「じゃあ、何がしたいの……?」

「僕の目的……それはね……お姉さんみたいな天狗が狂っているところを見ることだよ!!」

 幻が言い終えた後、暗い世界に閉じ込められる。

「な、なにを言ってるの……?」

「さぁ、お姉さん……僕を楽しませてね!」

「こんなの……狂ってる……!」

 幻が針を飛ばしてくる。柊は飛んでそれを避ける。

「そうだった。天狗って飛べるんだっけ。だったら……」

 幻が何か小声でつぶやくと、幻の体が空中に浮いた。

「これで対等だね!」

 しかし、柊はニヤッと笑った。

「残念だったね……空中で天狗と対等だなんて考えちゃダメなのにね!」

 柊は斬りかかりに行く。幻が避けるそぶりはない。柊は力いっぱい剣を振る

 

 

が、

 

 

「え……?」

 

 

 なんと剣は幻の体をすり抜け、空を切った。

「な、なんで!?」

「あっはっは! お姉さん面白いよ! いいよ、特別に教えてあげる。僕の能力。僕の能力はね、別次元に体を移すことができる能力なんだ。だから、お姉さんの攻撃は、当たらないってわけ。いる次元が違うからね~。体は見えるけど、場所じゃなく、次元がちがうってこと。わかる?」

 挑発するようにまくしたててくる。

 しかし、相手の挑発に乗ってしまったらそこで終わりだ。柊は冷静を装おう。

「次元は違えど、いる場所は変わらないのなら、そこに閉じ込めてしまえば終わり!」

 柊はスペルカードを使う。

「囲符『ウィンドケージ』!」

 風が巻き起こり、幻を包み始める。風が具現化し、檻の形になった。

「たとえ場所を移動しても、この檻は中にいるものを逃がさない!」

 しかし、風の檻の中を見ても幻の姿はなかった。

「なんで檻の中にいない!?」

 柊には全く理解できなかった。抜目のないあの風の檻からどうやって脱出したのか。

 後ろから笑い声が聞こえてくる。

「あっはっはっは! いや~、さすがは天狗と言いたいぐらいだよ! こんなに楽しいのは久しぶり! でもね……まだまだこれからだよ!」

「くっ……!」

 

 

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「いや~実に滑稽だな~」

 草むらの中にいる幻はつぶやいた。

「まさかこんなにあっさり僕の『幻覚を見せる程度の能力』に騙されちゃうなんて。周りから見たらただ一人で何かやってるようにしか見えないんだけどね~。あのお姉さんは一生懸命僕の創りだした幻覚と戦ってるね」

「さて、そろそろ僕のこの能力のもう一つの使い方をしておわらせてあげようかな」

 幻の能力には、二通りの見せ方があった。

 ひとつ目は、自らが創りだしたものを相手に見せる使いかた。

 もう一つは、相手の記憶からトラウマを引っ張りだし、相手に思い出させる見せ方であった。

 もちろん、二つの見せ方に欠点はある。

 ひとつ目の見せ方の場合、自分が見たことのあるものではないと創りだすことができない。

 もう一つの見せ方は、相手にトラウマが無かったり、トラウマだと思っていなかったりすると発動できない。

 この二つが欠点であった。

 

 

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「はぁ……はぁ、はぁ……」

 何度やっても同じことだった。なぜか私の体力だけ削られていく。

「無駄だとわかっていてもやるんだね~。それはプライドとかなのかな?」

「はぁ、はぁ……うるさい……」

「まぁ、いっか。そろそろフィナーレといこうか。ここからが楽しいんだよ……!」

 私は剣を構えた。

「お姉さん、さっきは嘘ついちゃってごめんね~。前半戦は楽しませてもらったから、お礼に本当の能力を教えてあげるよ」

 幻が無駄に話している間に私の呼吸は整えられていた。

「本当の能力……? ということは嘘だったのね」

「うん! そのほうが楽しめると思ってね。実際楽しめたし」

「それで、本当の能力は……?」

「僕の能力はね……幻覚を見せる程度の能力だよッ!!」

 そう言った時、一瞬にして柊の視界が真っ暗になった。

「何っ!?」

「僕には二つの幻覚の見せ方があってね、一つはさっきみたいに、自分で創りだす方法……」

(そうか! だから攻撃があたらなかったのか!)

「もう一つはね……これからやってあげるよ……!」

 幻が言い終えた瞬間、目の前に見慣れた景色が現れた。

「この景色って……私の家……? なんで……」

 幻が話を続ける。

「もう一つの方法はね……相手の過去を具現化するんだよ。それはその人が知ってる過去も、知らない過去も、一連のシーンとして流す。区切りのいいところまでね」

 それを聞いて私はきづく。

「じゃあ、もしかしてこの景色は……」

 全身が震えだす。

 心の奥深くにあった記憶がよみがえる。目の前で映像のように流れ始める。

 

 そして……。

「お父さん……お母さん……!」

 まだ生きていた時の私の両親がうつる。

 

 

 私はこの先の未来がわかる……

 

 

 そう思うと、自然に涙が溢れてきた。

 そして、次の瞬間……。

 

 家の中に刃物を持った男が入ってきた。

 お母さんが、私を守るように抱きしめている。その中で私が声を押し殺して泣いている。お母さんを刺そうと刃物を持った男が近づいてきた。

 

 刃物が振り上げられる。

 

 そこでお父さんが私達をかばう。

 お父さんの体から、赤い液体が流れている。

「あっ……あ……あぁ……」

 自然と声が出る。

 今の私にはただ映像を眺めることしかできない。

 

 刃物を持った男は次にお母さんを刺しに来た。

 私をかばうようにして、そして倒れた。お父さんと同じく、赤い液体が流れていた。私の前に刃物を持った男が立っている。それを、昔の私は怯えて見ている。

 脇腹を思いっきり蹴られた。

 私の精神は崩壊寸前だった。

 そして、この時初めて気がついたこともあった。

 お父さんがおきあがり、私を守ろうと、必死になって男と戦っていた。

 

 しかし、傷を負ったお父さんが勝てるはずもなく……

 

 そして私は見てしまった。

 蹴られて気絶している間のことを。

 

 

 男は、お父さんの心臓に刃物を突き刺し、下腹部まで一気に切り開いた。そして、さらに八つ裂きにしていく。あまりの惨状に、私は吐いてしまった。

 そして目の前で愛していたお父さんが八つ裂きにされていくのを見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

……柊の精神は壊れてしまっていた。

「うふふ……はは……」

 目は光を捉えていない。涙が流れているだけの瞳……。

 

 

 柊はただただ笑っていた…………。

 

 

「やっぱりこの壊れる瞬間がたまらない……! ゾクゾクするんだよねぇ!!」

 壊れた柊を見て言った。

「これからどうなっていくのか……楽しみだ」




いかがでしたでしょうか。
長めでしたが、退屈せず、楽しく読んでいただけたなら、嬉しいです。
さて、今後どうなってしまうのか!楽しみにしていただけたら嬉しいです。

あとがきが短くなってしまいましたが、

読んでくださりありがとうございました!

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