東方〜二人の白狼天狗〜   作:ふれんど

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弐話目です。今回は前回よりも長めに書いてみました。また、文章がおかしくなっているかもしれませんが、ご了承下さい。それでは始まります。


序章弐〜終わりと始まり〜

 呼び止められた私は恐る恐る振り向く。するとそこには、見知らぬ女性が立っていた。

「いきなり呼び止めてしまってごめんなさいね。あなたに少し聞きたいことがあって」

 そう言うと、女性はこちらに歩いてきた。しかし、知らない人を近づけることには抵抗があるため、少し怯えながらも近づくのを止めるように言った。

「こ、こっちに来ないで。あと……聞きたいことがあるなら、まずは私の質問くらい、こ、答えてもらっていいでしょ」 

 私がそう言うと、女性は少し考える素振りを見せてから、

「う~ん……それもそうね。で、何が聞きたいのかしら?」

と、交渉に応じてくれた。

 まずは、相手のことを知ることが優先的なので、私は一呼吸おいてから、ごく普通の質問をぶつけてみる。

「貴方はだれなの?」

「私は八雲 紫。ちなみに、スキマ妖怪よ」

「妖怪……?」

 いきなり妖怪だと言われて動揺してしまう。

 私はもとより妖怪なんてものは信じていない。だが、先ほどの自分の尻尾を見た時から、信じずにはいられなかった。

 そんな中、動揺してる時につい、口が滑ってしまった。私はその時に、なんでそんなことを言ってしまったのか自分でもわからない。ただ、言いたかったのだ。

「で、その妖怪が私になんかようかい?」

…………。

 不意に口から出た言葉が、時間を止めたように感じた。言った後に後悔と恥ずかしい気持ちがこみあげてくる。

(あ……あぁぁぁ! 言ってしまったぁ! 恥ずかしいって! 恥ずかしすぎるよ!)

 自分で言うのも何だが、恐らく私の顔は今真っ赤であろう。

(言ってしまったから変な状況になってる! この状況どうしよう! 自分でまいた種とはいえ、これはひどすぎるって!)

 

……数秒が何分かに思えるほどの長い沈黙が続く。

 

(あぁ……! これは怒らせちゃったよ! 馬鹿にされたと思って絶対怒ってるって……)

 そう思った次の瞬間。

「あっはははは! うふふ……ふふ!」

(え?)

「ふふっ……! な、なかなか面白いことを言うじゃない……! 妖怪と、ようかいを掛け合わせるなんて……!」

 意外な展開に空いた口が塞がらない。まさか笑うなんて思ってもなかった。

 

――八雲 紫が笑うこと数分――

 

「ふ~……なかなか面白かったわ。で、質問はもういいかしら?」

(あんなので数分も笑い続けられるもんなの……)

 しょうもない疑問が残るが、そんなことを考えてる暇はないので、話を続ける。

「……はい、ありません」

「じゃあ、今度はこっちが聞く番ね」

 八雲 紫はそう言うと一呼吸おいてから、

「あなたここら辺で狼を見なかった?」

と、聞いてきた。

 柊は、場の空気が重くなったのを感じた。

「狼……ですか……え、えぇ、見ましたよ。でも、目を閉じたらいなくなっていて」

「そう……目を開けたらいなくなってて、今の現状と……ならあれしか考えられないわね」

「え? あれって何ですか?」

「恐らくその狼、あなたに憑いてるわ」

「え? どういうことですか?憑いてるって……」

「あなたと対峙したその狼は幽霊だったの。こう言ってしまうのは申し訳ないけど、もう死んでるってことね。でも、何か未練が残っていたのかしら。霊の状態でうろついていたから、保護したのだけれど、逃げてしまったの」

「そうだったんですか……」

「それで逃げている途中にあなたにあって、多分あなたに取り憑いたのだと思うわ」

「そんな状況だったんですか……でも、なんで私にとり憑いたんでしょう……」

「ごめんなさいね。それは私にも分からないわ」

「そうですか……」

「まぁ、とり憑いたって言える根拠はあなたに付いている耳と尻尾ね」

「え? 耳と尻尾ですか?」

 尻尾はわかっているが、耳と言われたため、自分の手を耳にやって見る。

(耳って言われてもそんな変わってるはずなんて……)

 しかし、もとあった耳の場所に耳はなく、頭には違和感があった。

 頭に手をあててみると、そこには、ピコピコと動く耳があった。

「えぇ!? なんでこんなところに耳が生えてるの!?」

「あら、気づいてなかったの?」

「はい……」

「あなた本当に面白いわね」

 紫にクスクスと笑われてしまう。

「そうですか……で、私ってとりつかれてるんですよね? それって大丈夫なんですか?」

「どういう意味かしら?」

「その、体が乗っ取られて勝手に動く~とかって……」

「あぁ、そういうことなら心配はいらないわ。その狼は悪いことしないみたいだし、残念だけど、もう長くはないみたいね……そうね、考えられる理由としてはもう長くはないから、最低でも魂を残すためにとり憑いたのかもしれないわね……」

「そうなんですか……」

「それはそれでいいけど、あなたこれからどうするの? 普通の生活には戻れないでしょう?」

「あっ……」

 言われてみれば確かにそうだ。こんな、耳と尻尾がついている状態で普通の生活に戻ったら、どうなるかわかったもんじゃない。

「そうね……困ってるなら……あなた面白いし、もしよかったら幻想郷に来ない?」

「幻想郷……?」

「そうよ、あなたのような妖怪たちがいる世界よ」

「え……私っていつ妖怪になったんですか?」

「狼が消えたときからよ。憑かれたとは言ったけど、その狼の全てがあなたの中にあるわけだから、あなたは狼と同化したのと一緒よ。だから妖怪になったも同然なの」

「そうなんですか……」

 人間ではない。

 そう遠回しに言われた発言には、恐ろしいほど威圧感があった。

……もう人間として生きていくことができない。

「その幻想郷ってところには、私と同じような種族とかいるんですか……?」

「そうね、あなたは恐らく白狼天狗だから、山にいると思うわ」

「わかりました」

 人間として生きていけない。妖怪になってしまったのなら、妖怪として生きていく。それが今ある私の道ならば、進むしかない。

 

 もう後戻りはできないのだから……。

 

「お願いします。私を幻想郷に連れて行って下さい」

 覚悟は決まった。私はここから新しい道を進む。

「そう、分かったわ。じゃあ、あなたの準備が出来たら迎えにいくわね」

「分かりました」

 そう言って八雲 紫と分かれた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 私は早くに、両親をなくしていた。だから、私の家にはおばあちゃんしかいないため、「大学だから、一人暮らし始める」と言っておいくだけで大丈夫だろう。

「もういいかしら?」

「はい。もう何もありません」

 必要最低限のものを持ってそう言った。

「じゃあ、行くわよ」

 そういって八雲紫が手を出すと、そこに空間の裂け目のようなものが現れた。

「ここを通って行くわ。さぁ、入って」

 私は深呼吸をしてから、その空間の中に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 




とても長くなってしまいましたが、読んでいただきありがとうございます。
次回からは章が変わります。今後も精一杯書いていくので、よろしくお願いします。

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