その場面からです。
ではどうぞ
「私に能力……ですか……?」
自分自身に能力があるなんて初めて聞いたし、そんなものあったのかと驚く。
「そうじゃ。わしがお主の様子を見に来た時、お主の体と布団が消えていたのじゃ」
「消えていた……といいますと?」
「そのままの意味じゃ。見えなくなっていたんじゃよ」
「もしかして……それが私の能力の効果ですか?」
「恐らくな。だからわしは、お主の能力は、透明化の能力じゃないかと考えている」
……開いた口が塞がらない。
(え、なに? そんな能力私が使っていいの? いやでも、デメリットとかは絶対あるだろうし……)
そんな葛藤を繰り返していると、
「しかし、透明化だと考えているが、まだ確証はない。そこでじゃ、今一度確認するために能力を使ってほしいのじゃが……できるか?」
と言われた。
私には、特に断る理由なんてないため、喜んで引き受けた。
「は、はい! やってみます!」
しかし、簡単に引き受けたものの、どうやって能力を発動させるのか検討もつかない。
「あ……あの……大天狗様……」
「ん? なんじゃ?」
「その……能力ってどうやって発動させれば……」
「そうか、わからなかったか、すまなかったの。やり方……そうじゃな……例えば、念じてみるのはどうじゃ? うちの天狗には念写するのもおるからの」
「わかりました。やってみます」
私は目を閉じて、消えろと念じてみる。
沈黙が続く。
おそらく、結論を言えば、
「何も起こりません……」
「そうか……じゃあまだコントロールできていないのか、もしくはやり方が違うのか……」
――考えること八分――
ここで私は、一つの考えに辿り着く。
「私さっき念じた時になにも対象を決めてなかったから、もしかしてできなかった……?」
「ほぅ……それもあるかもしれんの……試す価値はあると思うが、やってみるか?」
「はい、やってみます」
私は再び目を閉じて念じてみる。
(布団よ消えろ布団よ消えろ布団よ消えろ……)
――数十秒後――
これぐらいでいいのだろうか、念じるのを止め、目を開けてみる。しかしそこは、さっきと一風変わらぬ風景があった。
「できませんでした……」
「そうか、できないか……う~む……どうしたものか……」
「う~ん……どうすればいいんでしょうか……」
そう言いながら枕に手をつけたその時であった。
「え……?」
手元にあった枕が消えていた。
「柊! お主どうやって能力を使ったんじゃ! 枕が……枕がきえているではないか!」
「え……えぇぇぇぇ!?」
自分でもどうやったのかわからない。
「え、えぇっと……思い出して、さっき何をしたか……」
必死に、さっきやったことを思い出そうとする。そして、私の中で歯車が、かみ合わさったかのように全て合致した。一つの答えに辿り着く。
(さっき私は枕に触れた……ということは、触れたら透明にすることができる……?)
試しに、布団に触れてみる。すると、そこにあった布団が消えてしまった。
「やっぱりそうだ……触れたら透明になるんだ……大天狗様! 触れると能力が発動します!」
「そうじゃったか、だからあの時も……いやはや、発動条件がわかってよかった」
ここで私が、あることに気が付く。
「でもこれって……」
「うむ? どうした?」
「なんでもかんでも触れると消えるって、すごく不便じゃ……」
「いや、大半の妖怪はそうなんじゃが、おそらくまだ能力を制御できていないだけじゃろう」
「じゃあ、自在に操ることは可能なんですか?」
「そうじゃな。練習すればすぐにでも制御できるようになるじゃろ。しかしまた、便利な能力じゃな……」
(透明か……やっぱり便利なんだな。そんなに便利なら、もう足を引っ張らなくても大丈夫になるかな……)
私は、これまでにないくらい、能力を使いこなそう。そして、誰かのためになれるようになろうと決心していた。
「そうだ、この能力の解除の仕方が……」
「いや、解除はおそらく触れられるか、あるいは、柊の意思で解除できると思うぞ」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「いや、いいんじゃ。柊の能力がどんなものかもわかったことじゃし」
そういうと、大天狗様は立ち上がって私に言った。
「あとはお主の練習次第じゃな。自分でその能力の欠点や、どこまで扱えるのかを知っておくことも大切じゃ」
「はいっ!!」
私は大きな声で返事をした。
今回も最後まで読んで下さり、ありがとうございました。いままでよりもほんの少しですが、量を増やしてみました。少しずつでも多くなっていけばいいと思っておりますので、これからも頑張っていきます。
今回も最後まで読んで下さり、ありがとうございました。