SAOにプレイヤーチャットが搭載された件【連載するよ!】 作:秋ピザ
それと活動報告でアンケやってます。50000UA突破記念の短編リクエスト企画みたいなもんです。よければ投票していってくだせぇ。
てなわけで、重要なことは書いたので本編どーぞ。
無数の闇が店長を貫き、埋め尽くす。
まさに必殺の、そして必中と言えるような威力の一撃は完全に命中したかのように思われた。
いや、実際命中はしていた。
だが、相手が悪すぎた。
「シキソクゼクウ……」
店長は少し気持ちの悪い挙動で数歩分の距離を移動しながらサボテンが放った必殺の一撃を無視して攻撃体勢に入る。
おいおい……あれじゃ悪魔城の色即是空にしか見えねぇだろ……シキソリストか。
暴走していてもナチュラルに頭のおかしいスキルを使ってくる辺りで微妙に引くわ。
「GRRRRRRRR!」
店長は、なんというか若干引き気味の俺のことなど知らないかのように構えた武器を容赦なくサボテンへ振り下ろす。
真っ黒な剣がその武骨な見た目からは想像も出来ぬほどの鋭さと威力をもってサボテンへ迫る。
まさに完璧な、必殺の一撃。
確実に倒せるはずの状況からの逆王手。店長と将棋をやるとやられるアレだ。
本来は守りが堅い相手に対しわざわざ追い詰められて王手を打たせ、そこからすぐに逆転することで容易に勝利をもぎ取る謎の高等戦術。
随分と前の話だが、店長はこの王手打たれてからの逆王手オンリー縛りで将棋の段位を得たとか言っていた。
こんなところで無駄にお得意の戦術を披露しなくても良かろうに……
そんなことを思いつつも、とりあえずアイツらが来ていないことだしまだサボテンに倒れられるとまずいと判断して俺はメニューからとある回復アイテムを取り出し、サボテンに投げ付けた。
「受け取れサボテンマン!」
それは店長の攻撃とほぼ同時にサボテンへと命中、そのHPの最大値と現在値を一時的に1.5倍にする効果をいかんなく発揮して店長の攻撃をギリギリのところで耐えさせた。
流石はユニークスキル限定回復アイテム。森林の支配者の名は伊達じゃない。
もちろんその分レアアイテムは使うが、まぁロリっ娘のためと思えば相場的に考えて一個200万コルのアイテムくらい安いもんだ。
「誰かは知らんけど助かった!もう一丁いくでぇ!【シールドプリズン】!」
そして、サボテンは俺に礼を言ってから即座に店長を先程と同じ楯の檻に閉じ込める。
店長はそれに反応して回避しようとするも、対象指定で必中なのか楯の檻は寸分狂わず店長を取り囲み、少しずつ小さくなって押し潰そうとしていく。
が、先程のように色即是空を使って逃げる気なのか店長は余裕すら浮かべている。
だがそんなことはサボテンだって理解できる筈だ。
それゆえに、今度の攻撃はさっきのソレとは違うものになる。
「……あー、ところでそこのあんちゃん。頼みたいことがあるんやけど」
「なんだ?」
俺が、サボテンの攻撃がどんなものになるのかを推測してそれに合わせた援護を思案していると、不意にサボテンが俺に声をかけてきた。
「いや、難しいことやあらへんで?ワイを全力で煽ってくれるだけでえぇ。コイツの最強技引き出すために必要なんやわ」
ふむ、煽ってほしい、ねぇ。
でもそれは店長の専売特許だぜ?
いや、まぁ俺は俺で店長が創設した世界に1000存在する煽り道の流派が1つ【黒板引っ掻きつつ発泡スチロールを擦り合わせる流】をある程度は修めているわけだが。
その代わり俺の煽りは店長と違ってガチの人格攻撃に近いからなぁ。相手のキレ方がガチ過ぎて困るんだよこれが。
これでこっちに矛先向いたらどうしよう。
「さぁドンと来いや!」
……いや、サボテン自身が言ってるから今回は許されるよな?よな?
それに教団が掲げる天使の十戒(なお天使と書いてロリと読む。全991条が存在し現在も増え続けている)にも『最終的に幼女が無事なら他の被害は大体ノーカン。いいね?』ってのが存在しているから問題ないな。
俺は頭の中で幾度となく言い訳を繰り返してから、意を決してサボテンを煽る。
「えっちょwwそこにおわすは『そんなんチートやチーターや!』で有名な鉄のウザさと鋼のクズさ、そして決して崩れぬ硬いモーニングスターのサボテン先輩じゃねぇっすかwちーっすwwwところでサボテンパイセンはALSやってたころ何人を泣かせたの?え?あぁうん答えなくていいよw興味ねぇしwwてかお前のこととか割と普通にどうでもいいわwwwそれに聞いた話じゃロリを泣かせたっつーし、もうさっさと路傍のサボテンにでもなって枯れちゃっておくれwwww……あwゴメンゴメン、よく考えるとお前は店長に手も足も出ない雑魚だもんねww枯れるより先にこのままやられるのが関の山だったかwwでも安心しろwどうせ負けたって傷を舐め合うドチクショウ仲間たちが沢山いるよ?ww黒鉄宮にさぁwwwwww」
相手の古傷を抉りつつ、人格攻撃を織り混ぜる古典的煽り、というか単純な罵倒。
店長はその行動から何から全部を煽りに使えるが、俺の場合はあくまでも相手を罵倒しまくってキレさせるタイプの煽りスタイルなのだ。
ちなみに【黒板引っ掻きつつ発泡スチロールを擦り合わせる流】の理念はあくまでも『何をしてでも相手をキレさせ、冷静な判断力を奪う』なので流派的には間違いじゃないんだよな。
さて、サボテンはこの罵倒でキレるのか?
俺の罵倒は効かない奴にやるとただ寒いだけだし、効いててくれると嬉しいんだが。
「…………■■■■(テメェ後で話付けようや)」
あ、なんだよかった。サボテンくんキレてるよ。それこそ言語能力を失うくらい完璧にキレてる。
そんなにアレが効いたのか、はたまた普通にキレやすいのか。
まぁこの感じならもっと罵倒すればもっとキレるだろう。
やってまれやってまれ。
「えっちょww多少煽られたくらいで何キレちゃってんのwお前の頭的にむしろ刺しそうな感じだってのにまさかのキレる方ですかwww冗談にしてもw草しか生えねぇww嘲笑う的な意味のなwwプギャーwwwwwもうお前煽られの達人名乗れよwミスター煽られ、どんな軽い言葉でもキレて噛みつきます……ってwwそれもサボテンまったく関係ねぇwもうお前髪型変えちまえよwww」
俺は、さらなる追い打ちとなる罵倒をサボテンに喰らわせた。
それは正に罵倒による煽りの真骨頂。人格否定による純粋な怒りを引き出す煽り。
その結果はどうだろうか。
「GRRRRRRRR!」
「■■■■■■!」
「GY……YYYYYRRRRAAAAAAAAA!!!」
「■■■!!」
サボテンが暴走しますた。
そしてなんだか楯が気のせいかさっきより邪悪な形状になっている気がするZE。
しかし気にしない。何故なら俺は悪くないから。ただただ俺に煽らせたサボテンが悪いのさ。
それに、いくら何でもキレすぎだぜ?サボテン。
俺があまりに白々しいことを考えていたその時、不意に店長が激しい戦闘を行っていたサボテンから大きく距離を取り、先程と同じ黒い剣を取り出して二刀流での攻撃を行おうとした。
通常ならば手数で押し切る作戦はこの完全メイン楯のサボテンに対し有効な策となるのだろう。
だが、それはこの場においてのみは悪手となってしまうようだった。
店長が二刀で鋭く斬り掛かろうとした瞬間、サボテンが吠える。
「■■■■■■■!【プルートオブフィアー】!」
「GYA!?」
サボテンのシャウトに合わせ、店長の周囲を濃密な闇が覆う。
そしてまさに一切の光を通さない深く暗いその闇が粘りつくように店長を拘束しつつ、残りが巨大なトラバサミを形成する。
「■■■■■■■■■■■■■■■!!!!(訳:くたばれやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)」
そして、巨大なトラバサミは店長の体を何度も何度も噛み砕く。
その存在そのものを認めないとでも言うかのように執拗に何度も噛み砕き、最後に閉じたトラバサミが大爆発。
店長ごと木っ破微塵に消し飛んだ。
……と、思われたが。
「ところがギッチョン!そいつは残像DA☆」
サボテンの必殺技を受けていたにも関わらず、店長はいまだ無傷でそこに立っていたのであった。
サボテンの盾解説。
【スキル】
MHCPとかと同系統の感情を読み取るプログラムで計測される怒りの数値により解放度合いが変化する。
【アイアンメイデン】
必殺技その1。キレやすいサボテンさんなら逆ギレしたくらいで使える。
【プルートオブフィアー】
必殺技その2。いくらキレやすいサボテンさんでもガチギレじゃないと扱えない。
なお、使用すると色々デメリットがある。
ちなみに今回隊長が若干言語能力を取り戻しているかのように見えますが、次回もまだまだ元気に暴走します。
……え?サボテンが呆気なくやられすぎ?
案ずるな、奴はまだ本当の意味での全力を出していないだけだ。たぶん。