SAOにプレイヤーチャットが搭載された件【連載するよ!】 作:秋ピザ
それとプレイヤーチャットは今回ないのよ。
……みたいな。
……俺がやられてる?しかもたかが四人に?マトモな人間四人に?
ありえねぇだろ。
これが黒の剣士とか、おっさんとか、マトモじゃないやつらが徒党を組んで襲ってきてるのなら理解できるさ。
アイツらはみんなバケモノに片足突っ込んでる。だから集まれば俺を越えたっておかしくない。
でも今回の相手は、マトモな人間だ。バケモノに片足突っ込んでるとかそういうのが一切なく、普通の人間だ。
なのに俺がやられる。
おかしいよな。おかしいだろ?おかしいって言えよ。なぁ!
俺は吹っ飛ばされた先で、自分が対応しきれずにやられたことをいまだ受け入れられずにいた。
これまでだって、リアルだって、どんなに強いやつらが集まって一斉に襲ってきてもそれがマトモな人間であるならば簡単に乗り越えてきた筈だ。
なのになんで今回に限ってダメなんだ。今回に限って俺がやられるんだ。
それが運命って言われても納得も理解もできない。ただただイライラする。
「覚悟せぇやぁぁぁぁぁ!!!」
そんなことを考えている最中にも敵は襲ってくるが、今の俺には反応も出来ず、叩き込まれるシールドバッシュを受けて大きく吹っ飛ばされる。
。
……あれ?おかしいな。俺はこんなに簡単に心を折られるような奴だったっけ。
壁に叩き付けられ、衝撃をその身で受けながらそんなことを考えた。
確かに現実では幾度となく格上相手に負けてきた。しかし心までは折られなかったはずだ。
ほら立てよ、立つんだ俺。
そうして自分を鼓舞してみても、身体は微塵も動かない。
意識を失った訳じゃない、でも何か心と身体に致命的なズレが出来たような感覚。
……いや、もしかしたらこのズレはずっと俺が抱えていたのかもしれない。
「あは……」
そんなことを思うと、まったく面白くもないのに何故だか少し笑えてきた。
嗚呼、面白くない。不愉快だ。
敗北は人を強くする?一の勝利より十の敗北?勝ち負けは重要じゃない?
そんなもの、まやかしだ、嘘だ、出任せだ。
だって実際そうじゃないか。俺は勝つ度に強くなってきたし、一の勝利で千を掴み進化を遂げてきた。
そして今一度の敗北で積み上げた全てが壊れかけている。
もしかしたらもう負けているのかもしれない。
負けて全部失って、ここまで身体を動かしてきたナニカまで失って、俺に残ったのはなんだ?
何もない。
なんにもないんだ。
体力ゲージはまだ僅かに残ってギリギリで勝負が付いていないことを示している。
だが……もう無理だ。勝ち目はない。
俺を俺たらしめていた物すら失って動けない俺に、勝つ道はない。
奇しくもそれは、多くの漫画やアニメに存在する孤高にして最強な天才キャラたちが初めて“勝てない”ことを知ったときのようで。
……あぁそうだ、もういっそ降参してしまおうか。
“隊長”なんてものはもう居ない、居るのはただの屍、なんてことを示すためにわざと降参してしまおうか。
それも良いかもしれないな、と思い俺はメニューから決闘の降参を宣言するボタンを呼び出す。
そしてそれを押し、降参しようとしたその時……
俺の頭をある男の言葉がよぎった。
かつて最強の男として、皇帝を意味する二つ名を付けられ、しかし敗北し続けて最弱と呼ばれ、最下位ザーとまで呼ばれたあの男の、魂の叫びが。
その叫びが頭の中で何度も反響し、俺の魂を揺さぶり、何か良く分からないものを呼び醒ました。
“ソレ”は俺ですら何も分からず、しかし何故だか理解出来てしまう。
コイツを使えば負けない、と。
呼び醒まされたソレは、俺の中で今にも暴れだしそうなほどの荒らぶる力で俺を誘う。
俺は誘われるまま、ソレに手を伸ばし……
使わずに、喰った。
喰ったと言う表現が正しいのかどうかはさておき、喰って吸収した。
土壇場で目覚める良くわからないものは強いがロクなものが無いと歴史は証明しているのでね。
だから使うでもなく、再封印するでもなく、喰った。
血肉にして一方的に使うために。
……嗚呼、力が溢れてきて仕方がない。喰ったつもりなのにまだ腹の中で暴れているような感覚だ。
素晴らしい。やはりそれくらいないと喰った甲斐がない。
……ただまぁ、少しばかりコイツはちゃんと試してやらないといけないな。
俺は先程のように意思の抜けた眼を保ちつつ、近くに居る敵を見る。
1、2、3、4人。
いや、雑魚も含めればその十倍はあるだろう。
ククク……良いだろう、まずは手始めにコイツらを潰してやる。
だから、ここでまずは最初に記念として、アレを叫ぼう。
俺の中で良くわからんものを目覚めさせてくれたあの言葉をな。
俺は降参ウィンドウを消去しながらこっそりと息を吸い込み、足に力を入れて立ち上がる準備をし、そして立ち上がりながら叫ぶ。
「……嫌だ……俺は……オレハ……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【視点:ろーくん】
……我が生涯に……一片の悔いなs……
「ろーくんさん死なないでくださいっ!」
……悔いしかないな。よし起きよう。
数分前店長による犬耳エフ子ちゃん攻撃によって気絶させられた俺は、未練をなくして旅立ちそうになっていたギリギリのところでエフ子ちゃんにより現世へ引き戻されていた。
状態としては仮面ライダーゴーストみたいなもんだと思ってくれ。だからこのまま100日以内にロリのお願いを15回叶えないと俺は死ぬ。原因は目標を果たせなかったことによる自殺だけど。
うん、まぁとにかく一旦俺が置かれてしまった窮地のことは置いといて今の状況を確認しよう。
そして普段は近付けないような距離でエフ子ちゃんを愛でつつ、店長のバカに殺す気かと言ってグーパンチを喰らわせてやろうじゃないか。
なぁに、近くで見当たらなくてもどうせあのバカのことだ、多分ケンカ売ってろくでもないことになってるのは間違いない。
きっと広い所で今も決闘しているんだろうさ。
よし、今からそこに向かって殴ってやろう。流石にちょっと理不尽だし道理に合わない気もするけど、とにかく殴ってやろう。
どうせ俺にはロリ以外に殴ってはいけない相手と言うものが存在しないんだ。だから安心して殴れるぜ。
それはたとえ自分の上司でも、育ての親でも産みの親でも(あ、でもこれだと俺は産みの親に育てられたから親だけ二回殴ることになるな……まぁいいか)関係無い
どうせロリ以外なら殴っても心はまったく痛まんしな。
クズと言おうが構わないぞ。慣れてるからな!
こう見えて小学校の頃の二つ名が『ロリコンの妖精』と『ガチペド魔法使いさん』だからもうどんな罵倒も通用しないのだ!
……なんか気分が悪くなったからこの話は終わりにして店長を探すとしようか。
俺は考え事をやめて周囲を見渡してみる。
どこかに人混みがあるならばそこの中心に居るのが店長だと見て間違いないが、そんな都合のいい人混みは見当たらない。
あるのはただエフ子ちゃんという世界有数のロリっ娘と、街の風景と、鎧を着たプレイヤーたちのみ。
うん、こうしてるとなんだかエフ子ちゃんとデートしてるみたいな感覚になるが、きっとエフ子ちゃんはそんなことを考えてなど居ないのだろう。
もしそれを言われたら吐血して死ぬよ。リアルに。
「こうしてると、まるでデートみたいですね」
「ぐふっ……」
「あっえっ、だ、だだだ大丈夫ですかろーくんさん!?」
おーっと、会心の一撃だ。俺のロリコンソウルに1000000R(単位はロリ。1000000Lとも言う)のチャージ!限界を越えた!今なら店長ともやりあえるかもしれない!
とにかくエフ子ちゃん天使過ぎるんだよコンチクショウ!かやひこはクソだけどエフ子ちゃんを産んだこのSAOには感謝するしかねぇぜ!ヒャッハー!!!!!!!!!!!!!!!
もはやテンションの上がりすぎで様々な極限を越えてしまった俺は、ついに脳のクロック周波数を加速させ意識を10倍速の世界に到達させる。
エフ子ちゃんの動きも1/10だ。
可愛さは100倍だ。
ロリ力は……ただでさえ“物凄く”(ここ大事)可愛いのに1000倍あいすくりーm……もとい1000倍だ。
そんな絶好の撮影チャンスを俺が逃す理由はない。
1/10の世界の中、俺はレスポンスの悪い簡易メニューに苛つきながら、スクリーンショット機能を呼び出してとにかく撮りまくった。
勝負は約10秒間。1000000Rによって限界を超えた俺でも流石にそれ以上はキツい。
だから……10秒で決めるっ!
これが必殺のっ!ジュウナナレンダァ!/秒だぁぁぁぁぁ!!!
……だが、現実は残酷なり。
「オレハ………負ケタクナイィィィィィィィィィィィィィィィィィィッッッ!!!!!」
俺の加速は、突如として響いた“声”により掻き消される。
「なんだと……」
おかしい、俺の幼愛加速世界(ロリータ・アクセルワールド)は言葉1つで止められるようなものじゃないはず……あ、いやでも思いもよらぬ方向から一定以上の出力のロリータフォースによる攻撃なら止められるけどね?
だが今の言葉にロリータフォースは乗せられていなかった。
おかしい、ヒジョーにおかしい。
そして俺は明らかにおかしいことをする人物を一人知っていて、ソイツを今探している。
……犯人は、店長だ。
おまけ解説
【呼び醒まされたモノ】
隊長の家の人間全員が秘めているかもしれないし秘めていないかもしれない良く分からん因子の具現……みたいなもの。
使うとテンション1000%アップ、狂気100倍、戦闘力は10~1000倍になる。
隊長は今回、それをヘルカイザーさんのあの台詞で解放し、使うだけならともかく取り込もうとしちゃったのでテンションと狂気が更に10倍になり言語能力が僅かに退化している。
【幼愛加速世界】
ろりーたあくせるわーるど。飽くなきロリへの愛情により覚醒する、極めたロリコンのみが持つ究極奥義。
極限の集中により体感時間を引き延ばし、ロリっ娘の一瞬の笑顔やパンチラを逃さない。
なおろーくんの加速倍率は業界トップで、本人すら限界が見えていない。