SAOにプレイヤーチャットが搭載された件【連載するよ!】 作:秋ピザ
こっちが一段落付いたら書いてみようかな、なんて思いつつどうせエタるまでが半ニートさんスタイル。
まぁ、んなこたぁ置いといて、本編をどうぞ。
俺たちは、あれからも数え切れないほどの屍を積み重ねた。
脱衣麻雀であるがゆえに、負ければ脱がなければいけない。
だから俺もろーくんも、あと女も巻き込まれる形で全員が例外なくインナー1枚になっていた。途中で何回も持っている衣服系アイテムと別の服をクイックチェンジですり替えるという超高等技能を発揮してさも重ね着をしているように見せかける汚い手まで使ったのに、だ。
まぁ女はそれが使えなかったから今は『負けるたびに妙なパーツ追加。30個を超えたらやり直し』というルールになっているがね。
……しかし、俺たちの屍も無駄にはなっていない。
これまでとはレベルの違う凄まじい
名実ともに、次が最後の一戦。
俺の向かい側ではろーくんが、エフ子の向かい側にはネコミミなど適当にパーツが付着している女がそれぞれ真剣な目で牌をシャッフルしている。
ここが天下の分かれ道。勝てば天国負ければ地獄……勝利の女神はどちらに微笑むのか。
そんな神妙な気持ちになりつつ、俺とろーくんは至極真剣に人間の限界に挑戦する。
俺とろーくんが選んだイカサマは、ろーくんがひたすら他の2人から意識を奪い、その裏でいくつか把握できていない牌をこっそりと見せ、俺がイカサマで見たものも含めて全ての牌の位置と動きを把握することで完璧に近い精度で狙いの牌を得るそれ。
俺が持つ、人間の中では最高峰の性能を持つ脳を使ってなお失敗することもあるそのイカサマは、この大一番においてほぼ完璧に作動している。
見える……見えるぞ!お前たちが動かす牌の、全てが!
この大一番において、俺はいわゆるアスリートで言うところの『ゾーン』に入っていた。
さっきまで完全にはとらえきれていなかった牌の動きが、今は余すところなく完璧に把握できている。
意識は加速し、まるで尋常でなく強烈な向かい風に向かって歩いている時のような感覚に襲われるほどだ。奇妙な全能感すらある。
もしかしたら、今なら狙えるんじゃないだろうか。
極限の集中がもたらした訳の分からない全能感に従うように、俺は混ぜ途中の牌の中から、必要な牌だけを探し出して動きを追う。
そして不自然にならないようにそれを狙った位置に集め、積み込む。
決してばれないように慎重に、しかし大胆に。
完璧に行われたその暴きようのないイカサマは、俺が親になったこのゲームにおいて、現実ではありえないような奇跡を発生させる。
「……天和で九連宝燈だ、乙」
ゲームの開始と共に、終了。
きっと他のゲームでは起こりえないことだろう。そして、このゲームであってもこの上がり手は多分起こらない。
天和はさっきからエフ子がバンバン出しているせいで忘れがちだがそもそも普通は一生に一度も見ないし、それは九連宝燈も同様。
イカサマを疑うしかない状況だが……証明は、ほぼ不可能。
「……えっ」
ほら、エフ子もポカンとしている。
さっきまで幸運でバカみたいに連続でとんでもない上がり方ばっかしてたお前にポカンとされる覚えはない。
クックック……これが大人の実力って奴よ。
バカみたいなことを心中で呟きつつも、俺はかつてないほどの歓喜に満ちていた。
いろいろなストレスがまとめて全部13光年くらい先まで吹っ飛んでいく。
13光年とか微妙?気にするな。今大事なのは結果なんだよ。
あのエフ子が脱衣麻雀でマッパに剥かれた。そう、つまるところは
ハレルヤ!素晴らしい!
何を言ったらいいのか分からんが、とりあえずこれだけは言っておこう。
「ついに俺はこの理不尽を突破した!もう負ける気がしねぇ!」
「もう思い残すことはないな……」
俺とろーくんはほぼ同時に、死亡フラグとも取れるセリフを吐いた。
分かっていても抑えることが出来なかった。
この達成感は誰にも理解することはできまい。
「はぁ……負ける気がしないってんならクエスト攻略してよ」
「「さて、それはともかく脱衣麻雀のルールだ。さぁ脱いでくれ」」
「いや話聞いて!?」
俺は疲れ果てた表情でクエスト攻略を催促する女を全力で無視しながら、ろーくんと奇妙なコンビネーションを発揮してエフ子に罰ゲーム実行を要求した。
なお、レーティング的によろしくない描写を防ぐ倫理コード設定は……聞くまでもないだろう。
ろーくんへのご褒美なんだから、是非もないよネ!
「うぅ……もうおよめにいけないです……」
またもや奇妙なコンビネーションを発揮、気持ち悪いまである連携によってエフ子の
俺はただテンションのままに。ろーくんは煩悩のままに。
目的は違えど、お互いにそれをやる理由は1つ。
「これが勝者の権利って奴さ!」
「ハァハァ……あ、ところでお嫁に行けないなら俺に貰われてくごぶっ」
……と、思ったらわりと大間違いだったが、まぁ気にしない。
今はこの姪っ子とイベントに裏口的な方法で参加しようとして7徹し、結果見事優勝した時のそれすら上回るこの興奮に任せてしまえばいいのだ。ひゃっほう。
俺は隣でエフ子のあられもない(幸いにして生まれたまま、ではないし下はこたつに入っているのでKENZENだ)姿をガン見してぬいぐるみの皮を被ったハンマーを投げつけられて悶絶するろーくんを気にすることなく、徐々にテンションを加熱していく。
……ここのところずっと屍を積み重ねてきたことによるストレスも、フラストレーションも、なにもかもをただただ今現在のテンションを上げるための起爆剤にして、俺は先ほどのゾーン到達時には届かないまでも、平常時を超える圧倒的な速度で思考を回転させ、次に何をするべきかを考える。
───最大の目的は既に成した。
───ならば何をするか?分かり切ったことだろう。
俺はなんの意味もない自問自答を行い、次に自分が何をするべきかを把握した。
そしてメニューから刀スキルの入った聖晶瓶と、突属性の威力を20%強化、斬属性は80%弱体というピーキーな効果を持つ太刀を取り出して装備し、久しぶりに握る両手武器(別に片手でも何の問題もないけれど)の感覚を馴らすようにいくつかの構えを取る。
上段、中段、下段、下の下段、いわゆる『無形の構え』もどき、太極拳的なやつ、からの無駄なソードスキル発動……一切の継ぎ目なく行われたそれは多分、金を取っても怒られはしない程度のものではあっただろう。
「おぉ……これでようやくクエストが……」
そんな中、俺が構えを取っていたのを見て、先程の脱衣麻雀でしっかり負けてきわどい格好になっている女が涙目になりながらよく分からないことをほざいていたが……無視だ無視。
たとえこれから実際にクエストに挑むにしたって、わざわざ教えてやるまでもないだろう。
その後、俺は構えの練習をもう2セットほど行ってから刀をしまい、深呼吸をしたのちにクエスト挑戦用のゲートを見る。
……俺がアレを一歩でも踏み超えれば、決戦が始まる。
はっきり言って、今回ばかりは相手が強すぎて真面目に戦わないといけないから少しばかり憂鬱だ。
ゲームなんだから楽しむ余裕くらいは出来るように設定しとけよかやひこ……
俺は心の中でそう思いつつ、ついでにさりげなく中指を立て、いよいよ本格的にボスたちとの決戦に臨むのだった。
俺たちの戦いはこれからだ!
半ニート先生の次回作にご期待ください。
……嘘ですまだ続きます。
とりあえず麻雀ネタを出し切ったので次からはようやく戦闘……今回ばかりは本当です。ワタシウソツカナイヨホントウダヨ。