僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。 作:楠富 つかさ
取り敢えず麻琴にこの二週間の話を事細かに話してやった。そうしてのんびりしていると。
「君ら二人して美人だね。どこの中学校? っとその前に自己紹介。アタシは
颯爽と現れて、手口のいいナンパのように話し掛けてきた少女を眺める。背は麻琴より高く、スポーティーな印象を受ける。ペッタンコ感が否めないが自覚があるのか、さっきからボクの胸元をチラチラ見ている……。このムッツリさんめ……。
「よろしく初美さん。ボクは姫宮悠希で、こっちは雛田麻琴よ」
「中学はすぐそこの土橋一中だよ。悠希は幼馴染みで、私の嫁。盗っちゃだ―――あた!! 何すんのさ嫁!?」
叩かれても尚、ボクを嫁と呼ぶ麻琴に制裁をもう一発だけ下し初美さんに向き直る。
「勘違いしないでよねっ。そういう関係じゃないんだから!!」
………しまった……なんかツンデレみたいな台詞を口走ってしまった。
「まあ、ツンデレっぽい部分もあるけど本当は優しくていい娘だから。よろしくな、綾」
麻琴がギリギリのところで話を結んだ。初美さんは自分の席に着いた。『は』から始まる名字だから近い席だろうと思ったが、麻琴の前の席だった。
それから暫くすると、担任の男性教師が入ってきた。三十路だが、そこそこ若く見えた。容姿も悪くなく女子生徒からの評判も良さそうだ。元男子の自分が言うのもアレだが……。
副担任は女性で、こちらは年齢に対してさらに幼く見える。採用から二年目の先生らしいが……、この人って車の運転をしても平気なのかと疑いたくなるほどだ。正直言って同い年くらいにしか見えない。ちなみに、ボクが入部しようとしている料理部の副顧問をしているようだ。
さて、先生の紹介も終わり身体検査となった。女子高とはいえ、更衣室で着替える。まぁ、担任みたいに男性教員も数名いるから当然だろう。ちなみに、男性教員がいるのは防犯や学校行事での力仕事要員だと予想している。
「麻琴、ボクは……」
そう、いくらお母さんの修行を経て女子力を高めたからって根は少年のままだ。女子の着替えなんて……。
「悠希は私だけを見ていればいいの」
……それもアウトでしょうに……。
微妙に気後れしながらも入った更衣室の窓には厚手のカーテンがされていた、入り口の戸のガラスもすりガラスになっていた。また、カギもかけることができる。こういった細かい心遣いが女子達からの人気に繋がるらしい。
壁には棚が据え付けられ、そこに服を置けるようになっている。
その棚の方を向いて着替えを始める。取り敢えずスカートの下から短パンを穿き、スカートを下ろす。一息吐いてからブレザーを脱ぎ、リボンタイを取る。ブラウスのボタンを幾つか外すと、
「やっぱり大きいな……クラスでダントツじゃないか?」
「綾もそう思う? だよねぇ」
初美さんと麻琴の会話が筒抜けなんですが……。無視して体操服を着る。
……肩こり、辛いなぁ……。
体操服に着替えたら学校のアチコチを回って検診を受ける。分かったことは正確な身長と視力が落ちたことくらいかな。席によっては眼鏡が必要になるらしい。女の子になってから視力が落ちたような気はしてたし。
残りの午前は検診に全て費やされた。お昼はボクと麻琴と初美さん。それから、初美さんの親友の
それはさておき、お弁当です。今朝から丹精込めて作りましたよ。つい気合いが入っちゃったや。甘めの玉子焼きにタコさんウインナーや彩りのトマト
一番のこだわりは小さな唐揚げ。女の子になって食べられる量は減ったけれど、幸いにして味の好みは変わらなかった。鶏肉に下味をつけて、あまり脂っこくならないように注意して作ったのだ。レモン汁をかけてサッパリと……って麻琴!!
「一つ貰ったよ。また腕上がった? 中学の頃に貰ったのより美味しい!!」
いつもだ。ボクがお弁当を作ると麻琴が必ずどれか貰っていってしまう。唐揚げがあると確実に唐揚げを……。二人して好物なのだから仕方ない……でも!
「あなたのために作った訳じゃないんだからね!! 褒められたって……うぅ」
まただ……ツンデレじゃないんだよボクは……。八重歯ないし。いや、八重歯があったらツンデレって訳でもないけど……。
「ごめんな。でも、あまりに美味しそうで」
くぅ……最近、ボクの幼馴染みが天然ジゴロな気がする……。