僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。 作:楠富 つかさ
「部屋に来たはいいけど、なにする? まだ十時だけど…」
「え、寝ないの?」
「まだ早いよ?」
まぁ、昔に比べると非常に規則正しい生活リズムだとは思うが……お肌を考えれば当然のことなのだ。
「この時間帯って麻琴、メールしないでしょ? てっきり寝てるのかと」
「あー、その時間になると電池なくなるのよ」
「麻琴のスマホ……初期型だもんね。それは仕方ないわ」
「ていうかさ悠希、その格好でさ、谷間は見えるけどブラの肩紐が見えないのだよ。ひょっとして……ノーブラ? つか寝るときはしない系の人?」
「う……うん。お姉ちゃんもお母さんもそうしてるよ」
「へぇ……」
「そのいやらしい目はやめてほしい」
「揉んでいい?」
「いいって―――」
「本当に!?」
「最後まで聞きなさいよ!!」
どんだけがめついのよ! まったく……。流石に怒りたくもなるよ。もっとも、ボクが知らないような女の子に同じこと言ったら、もっと怒ると思うけど。あれ!? なんでそんなことを……。
「本当にダメ? 女の子同士ってこんな感じだよ? 明音っちは触らせてくれたよ?」
明音さーん、なにやってんのよ……。
「ね? いいでしょ?」
なんというか、頼まれたら断れない性格の人の気持ちが分かる……。あーでも、やっぱり……。
「ちょっとだけだよ? 優しくだよ?」
「あ、ありがとう!! んじゃ早速」
麻琴の手が真っ直ぐにボクの胸まで伸びる。Tシャツ越しに優しく触れられる。
「柔らかい……フニフニだよ」
女の子にしては少し大きめの手……というか、長い指を持つ麻琴の手が、ボクの胸をゆっくりと押してくる。その力加減が結構巧いというか、丁度よくて気持ちいい……。だんだん思考が鈍くなってる気がする……。
「悠希、ベッドに横になって。そうそう。シャツも捲っちゃうね」
生温くなった脳は耳から入った指令を遂行するだけだった。ベッドに仰向けになると、麻琴がボクの上に乗り、押し倒されたような構図になる。
「あーあ、あたしが男だったらなぁ。確実に三回はイケるのに…。ま、堪能させてもらおう」
麻琴の指が直にボクの胸に触れる。じんわりと、ゆっくりと正に堪能するという表現がしっくりくる程に、麻琴はボクの胸を揉みしだく。その快感の波は……もぅ、いいや。
「ぁ……うぅ……んあぁ!」
「あ、えっと……これ以上やるとあたしの理性が吹っ飛ぶから……やめようか?」
「何言ってんのよ? もう私の理性が吹き飛んでいるのよ? 責任取ってよ。……というか、もっと……ね?」
「いいの? あたし……女の子だよ?」
「何を今さら遠慮してるのよ……。麻琴にだったら何をされてもいいよ」
「―――ていう夢を見たのに、何で断るのよ!!」
「話長いよ! いい加減にしてよ!」
「だって! あの夢を正夢と信じて虎視眈々と狙ってたのに。ちなみに、明音っちの胸は触ったことないよ。今のところ」
はぁ……。麻琴の頼みを断ったら、こんなことになるなんて……。ま、ある意味では私の貞操の分岐点だったわけね。
「もう疲れたよ。寝よう」
「取り敢えず、朝帰りは正夢になったね。でねでね、その後がさ、夢の悠希の乱れっぷりがさ――」
「聞きたくない!」
そんな感じで、ボクと麻琴の長い一日は終わったのです。夏休み最終日となる翌朝、寝惚けた麻琴にキスをされそうになったのは、ここだけの話だ。ただ、この日からあまり間を置かずに再び貞操の分岐点に立たされることをボクはまだ知らなかった。